第47章シュレーディンガー方程式(極座標・円柱座標)とベッセル関数
前章まででは,直交座標系(デカルト座標,$x,y,z$)を使って,箱型の無限井戸型ポテンシャルや調和振動子のシュレーディンガー方程式を解いてきた.しかし自然界やナノテクノロジーの世界には,四角い箱よりもずっと多く「円形」「円柱形」の対称性をもつ系が現れる——たとえば円盤状の量子ドット(quantum dot,半導体の中に電子を2次元的に閉じ込めた人工原子),円柱状のナノワイヤー(nanowire),あるいは原子核のまわりを回る電子(次章で扱う水素原子の“さきがけ”)などである.こうした系のポテンシャルは,直交座標の $x,y,z$ ではなく,極座標 $(r,\theta)$ や円柱座標 $(r,\theta,z)$ で書いたときにはじめて簡単な形になる.第44章で身につけた「座標変換とラプラシアン」の道具を使って,本章ではいよいよ円形・円柱形の無限井戸型ポテンシャルのシュレーディンガー方程式を解く.
結論を先に言うと,動径方向($r$ 方向)の常微分方程式を変数分離すると,$\sin x,\cos x,e^x$ のような見慣れた初等関数ではけっして表せない,まったく新しい関数が現れる.これがベッセル関数(Bessel function)である.ベッセルの微分方程式そのものの一般論(決定方程式,ガンマ関数を使った級数表示,整数次数のときにもう1つ必要になる基本解 $Y_n$ など)は,すでに第41章(常微分方程式の巻)で学んだ.本章ではその道具を,具体的な物理の問題——円形・円柱形の無限井戸型ポテンシャル——に実際に適用し,「なぜベッセル関数が登場するのか」「量子化されたエネルギーがどう決まるのか」を,ノートの計算をそのまま追いながら確かめる.
本章の後半では,2次元の円形領域の問題を3次元の円柱に拡張する.$z$ 方向には新しい定在波の量子数が加わり,動径方向にはやはりベッセル関数が現れる——「変数分離法 → 各方向の常微分方程式 → 境界条件による量子化 → 規格化」という,第45章・第46章で身につけた“型”が,座標系を変えてもそのまま通用することを確認してほしい.次章(第48章)ではいよいよ球座標を使って水素原子を解くが,そこでもベッセル関数とよく似た手法(フロベニウスの級数解法)が使われるので,本章はその重要な準備でもある.
- 円形領域(半径 $a$ の円板)の無限井戸型ポテンシャルの設定と,極座標での変数分離
- 角度方向の解 $\Theta(\theta)=e^{im\theta}$($m\in\mathbb Z$)——周期境界条件が角運動量の量子数 $m$ を整数に限る仕組み
- 動径方向の常微分方程式(ベッセルの微分方程式)をフロベニウスの級数解法で解き,決定方程式 $\lambda=\pm m$ のうち原点で有限な $\lambda=m$ を選ぶ理由
- 級数の一般項とガンマ関数を用いた表示,第1種ベッセル関数 $J_m$ の同定(第41章の結果との対応)
- 境界条件 $J_m(\sqrt\varepsilon\,a)=0$ から生じる量子化条件と,ベッセル関数の零点 $\lambda_m(l)$
- エネルギー準位 $E_m(l)=\dfrac{\hbar^2}{2m_ea^2}\lambda_m^2(l)$ と波動関数の規格化定数 $A_m$(数値積分と特殊値の関係)
- ベッセル関数のグラフの形と,角運動量 $m$ の有無が原点近傍の確率密度に与える効果(ミクロの世界の“遠心力”)
- 3次元への拡張:有限の高さ $2z_0$ をもつ円柱型井戸ポテンシャルでの3方向(動径・角度・$z$)の変数分離
- $z$ 方向の量子化条件(非自明解条件=行列式 $=0$)とパリティ(偶関数・奇関数)の対応
もとにしたノート:望月泰英『数学ノート 偏微分方程式』 pp. 45–51.
47.1 無限円筒井戸型ポテンシャル:動径方向の解
本節では,前章までの「箱」を「円」に置き換えた,考えうる限りもっとも単純な円形領域の量子力学の問題を考える.
定義47.1 無限円筒井戸型ポテンシャル(2次元定常状態)
電子が $xy$ 平面上を自由に動くとし,時間に依存しない定常状態(stationary state)を考える.半径 $a$ の円の中だけで自由(ポテンシャル $0$),円の外には絶対に出られない(ポテンシャル $\infty$)とする.
$$ V(r,\theta)=\begin{cases}0 & (0\le r\le a)\\ \infty & (r>a)\end{cases} $$この設定のもとで,定常状態のシュレーディンガー方程式
\begin{equation} -\frac{\hbar^2}{2m_e}\nabla^2\psi+V\psi=E\psi \label{eq:47-schrodinger} \end{equation}を,境界条件
\begin{equation} \psi(a,\theta)=0,\qquad \psi(r,0)=\psi(r,2\pi) \label{eq:47-bc} \end{equation}のもとで解け($m_e$ は電子の質量.本章では角運動量の量子数にも文字 $m$ を使うので,質量には第45章と同じく添字 $e$ を付けて区別する).
イメージ:なぜ見出しが「円筒」なのか
ノートの見出しは「無限円筒井戸型ポテンシャル」となっているが,本節で扱うのはあくまで $xy$ 平面内の2次元の問題である.これは,$z$ 方向にはポテンシャルが依存せず,電子の運動を $xy$ 平面内だけに限って考えている(あるいは $z$ 方向の運動は別扱いにする)ことに対応する——つまり,半径 $a$ の無限に長い円柱の内側に電子を閉じ込めた状況の,断面だけを見ていることになる.47.4節では,$z$ 方向にも有限の高さの壁を立てた「本当の3次元の円柱」を扱う.
境界条件\eqref{eq:47-bc}の意味を確認しておこう.$\psi(a,\theta)=0$ は「円周 $r=a$ の外側には電子は絶対に存在できない(ポテンシャルが無限大の壁にはじかれる)」ことを表す.$\psi(r,0)=\psi(r,2\pi)$ は「角度 $\theta$ は $2\pi$ ごとに同じ方向を指す($\theta=0$ と $\theta=2\pi$ は同じ点)」という,極座標そのものの幾何学的な性質から来る自然な条件であり,周期境界条件(periodic boundary condition)とよぶ.
注意(ノート欄外「Remember!」):$r>a$ では $\psi=0$
$r>a$ ではポテンシャル $V$ が無限大になるので,どんなエネルギーの電子もそこには存在できず,確率振幅は $\psi=0$ である.したがって以下では $0\le r\le a$ の内部だけを考えればよい.
47.1.1 変数分離
第44章44.3節(極座標の場合は44.2節)で導いたとおり,極座標でのラプラシアンは
$$ \nabla^2=\pdiff{^2}{r^2}+\frac1r\pdiff{}{r}+\frac1{r^2}\pdiff{^2}{\theta^2} $$である.$0\le r\le a$ の内部($V=0$)で,$\psi(r,\theta)=R(r)\Theta(\theta)$($R$ は $r$ だけの関数,$\Theta$ は $\theta$ だけの関数)とおく,おなじみの変数分離法(method of separation of variables)を使う.方程式\eqref{eq:47-schrodinger}にラプラシアンの極座標表示を代入すると,
$$ -\frac{\hbar^2}{2m_e}\left(R''\Theta+\frac1rR'\Theta+\frac1{r^2}R\Theta''\right)+V\cdot R\Theta=E\cdot R\Theta $$($R''=d^2R/dr^2$,$\Theta''=d^2\Theta/d\theta^2$ と書く.$\partial^2\psi/\partial r^2=R''\Theta$ となるのは,$\Theta(\theta)$ が $r$ を含まないので $r$ についての微分の外に出せるからである.)両辺を $R\Theta$(恒等的に $0$ でない波動関数を考えているので $R\Theta\neq0$)で割ると,
$$ -\frac{\hbar^2}{2m_e}\left(\frac{R''}{R}+\frac1r\frac{R'}{R}+\frac1{r^2}\frac{\Theta''}{\Theta}\right)+V=E \qquad(V=0\ \text{を代入.}) $$両辺に $-\dfrac{2m_e}{\hbar^2}$ を掛け,さらに両辺に $r^2$ を掛けて(あとで $\Theta''/\Theta$ の項だけを残すため)整理すると,
\begin{equation} r^2\frac{R''}{R}+r\frac{R'}{R}+\frac{2m_eE}{\hbar^2}r^2+\frac{\Theta''}{\Theta}=0 \label{eq:47-separated} \end{equation}という式が得られる.
イメージ:変数分離の決め手——「$r$ だけの式」=「$\theta$ だけの式」は定数
式\eqref{eq:47-separated}で $\Theta''/\Theta$ の項だけを右辺に移項すると,
$$ \underbrace{r^2\frac{R''}{R}+r\frac{R'}{R}+\frac{2m_eE}{\hbar^2}r^2}_{r\ \text{だけの関数}}=\underbrace{-\frac{\Theta''}{\Theta}}_{\theta\ \text{だけの関数}} $$という形になる.左辺は $r$ だけに,右辺は $\theta$ だけに依存する式であるが,もとの方程式が成り立つかぎり両者は恒等的に等しい.ある1つの $r$ を固定して $\theta$ だけをいろいろ動かしても左辺の値は変わらないのに,それが右辺($\theta$ だけの式)と等しくなければならない——ということは,右辺(したがって左辺も)は実は $r,\theta$ のどちらにもよらないある1つの定数でなければならない.この定数を $-m^2$($m$ の意味はこのあとすぐわかる)とおくのが,ノートの記法である.
とおくと,式\eqref{eq:47-separated}は
\begin{equation} r^2\frac{R''}{R}+r\frac{R'}{R}+\frac{2m_eE}{\hbar^2}r^2-m^2=0 \label{eq:47-radial-raw} \end{equation}となる.
イメージ(ノート欄外「Why?」):なぜ $\Theta(\theta)=e^{im\theta}$ の形でなければならないか
周期境界条件 $\Theta(0)=\Theta(2\pi)$(式\eqref{eq:47-bc}の $\psi(r,0)=\psi(r,2\pi)$ を,$R(r)\neq0$ で割って得られる)を満たすためには,$\Theta(\theta)=\exp(im\theta)$ の形でなければならない.$\Theta''/\Theta=-m^2$ の一般解は $\Theta(\theta)=Ae^{im\theta}+Be^{-im\theta}$($A,B$ は定数)であるが,このうち片方の項だけで周期性を満たせることを47.2節で確認する.また,そのとき初めて「$m$ は整数でなければならない」ことも導かれる.ここでは先取りして $m\in\mathbb Z$ と書いておく.
47.1.2 動径方向の常微分方程式とフロベニウスの級数解
式\eqref{eq:47-radial-raw}で $\dfrac{2m_eE}{\hbar^2}=\varepsilon$(ノートの記法.エネルギー $E$ を無次元化した量と考えてよい)とおくと,動径方向の常微分方程式
\begin{equation} r^2\frac{d^2R}{dr^2}+r\frac{dR}{dr}+(\varepsilon r^2-m^2)R=0 \label{eq:47-radial-ode} \end{equation}が得られる.これは,第41章41.1節で学んだベッセルの微分方程式($x^2y''+xy'+(x^2-\alpha^2)y=0$)と,独立変数の取り方が違うだけで本質的に同じ方程式である($x=\sqrt\varepsilon\,r$,$\alpha=|m|$ と置き換えると完全に一致する——47.2節でこの対応を確認する).ノートは変数を置き換えずに $r$ のままフロベニウスの級数解法を実行しているので,本章でもノートの流れに忠実に沿って計算を進める.
フロベニウスの級数解
$$ R(r)=\sum_{k=0}^{\infty}a_kr^{k+\lambda}\qquad(a_0\neq0) $$を仮定して,級数解法により式\eqref{eq:47-radial-ode}を解く(第39章・第41章と同じ手順である).項別に微分すると,
$$ \frac{dR}{dr}=\sum_{k=0}^{\infty}(k+\lambda)a_kr^{k+\lambda-1} \ ,\qquad \frac{d^2R}{dr^2}=\sum_{k=0}^{\infty}(k+\lambda)(k+\lambda-1)a_kr^{k+\lambda-2} $$これらを式\eqref{eq:47-radial-ode}に代入すると,
$$ r^2\sum_{k=0}^{\infty}(k+\lambda)(k+\lambda-1)a_k r^{k+\lambda-2} + r\sum_{k=0}^{\infty}(k+\lambda)a_k r^{k+\lambda-1} + (\varepsilon r^2 - m^2)\sum_{k=0}^{\infty}a_k r^{k+\lambda} = 0 $$(左の2つの和では,$r^2,r$ を掛けたことで指数がそろって $r^{k+\lambda}$ になっている).$k=0,1$ の項(右の和からは足されない,$k\ge2$ からしか始まらない部分)を分けて書き出すと,
$$ \lambda(\lambda-1)a_0 r^{\lambda} + \lambda(\lambda+1)a_1 r^{\lambda+1} + \lambda a_0 r^{\lambda} + (\lambda+1)a_1 r^{\lambda+1} - m^2a_0 r^{\lambda} - m^2a_1 r^{\lambda+1} $$ $$ + \sum_{k=0}^{\infty}(k+\lambda+1)(k+\lambda+2)a_{k+2}r^{k+\lambda+2} + \sum_{k=0}^{\infty}(k+\lambda+2)a_{k+2}r^{k+\lambda+2} + \varepsilon\sum_{k=0}^{\infty}a_k r^{k+\lambda+2} - m^2\sum_{k=0}^{\infty}a_{k+2}r^{k+\lambda+2} = 0 $$(第39章・第41章で使った「和の添字の付け替え」——$k\to k+2$ として指数をすべて $r^{k+\lambda+2}$ にそろえる操作——をここでも行っている.$\lambda(\lambda-1)+\lambda=\lambda^2$,$(\lambda+1)(\lambda+2-1)+\ (\lambda+1)=(\lambda+1)^2$ のように,$k=0,1$ の項の係数もそれぞれ平方の形にまとまることに注意すると,次の式へ進みやすい.)すべての次数の係数が $0$ でなければならないので,
$$ (\lambda^2-m^2)a_0 r^{\lambda} + \{(\lambda+1)^2-m^2\}a_1 r^{\lambda+1} + \sum_{k=0}^{\infty}\Big[\{(k+\lambda+2)^2-m^2\}a_{k+2} + \varepsilon a_k\Big]r^{k+\lambda+2} = 0 $$数学ノート:底本の誤記について(errata①)
底本ノート p.46 の対応する式では,$(\lambda^2-m)a_0$,$\{(\lambda+1)^2-m\}a_1$ のように $m$ が2乗されずに書かれている.しかしこの直後の連立方程式(下記)や,第3項の $m^2$ との整合性から,これは単なる書き忘れであると判断できる.実際,$k+\lambda+2\to\lambda,\lambda+1$($k=-2,-1$ に相当)を代入すれば,第3項の係数 $\{(k+\lambda+2)^2-m^2\}$ から第1項・第2項の係数がそのまま導かれ,$m^2$ でなければつじつまが合わない.教科書では正しく $m^2$ として統一した.
という恒等式が得られる.$r^{\lambda},r^{\lambda+1},r^{\lambda+2},\dots$ のそれぞれの係数が $0$ でなければならないから,
$$ \begin{cases} (\lambda^2-m^2)a_0 = 0 \\ \{(\lambda+1)^2-m^2\}a_1 = 0 \\ \{(k+\lambda+2)^2-m^2\}a_{k+2} + \varepsilon a_k = 0 \end{cases} \qquad a_{k+2} = -\frac{\varepsilon}{(k+2)(k+2+2m)}a_k $$という連立方程式(と,$\lambda=m$ の場合に整理した漸化式)を得る.
47.1.3 決定方程式——なぜ $\lambda=m$ を選ぶのか
$a_0\neq0$(フロベニウス級数の前提)だから,最初の式より決定方程式 $\lambda^2-m^2=0$,すなわち $\lambda=\pm m$ である.どちらを選ぶべきかを決めるのが,ノート欄外の次の注意である.
注意(ノート欄外):$\lambda\ge0$ でないと波動関数が $r=0$ で定義できない
$R(r)=\sum a_k r^{k+\lambda}$ の最低次の項は $a_0r^{\lambda}$ である.もし $\lambda\lt0$(たとえば $\lambda=-m$,$m\gt0$)を選ぶと,$r\to0$ のとき $r^{\lambda}=r^{-m}\to\infty$ となり,原点 $r=0$(円の中心)で波動関数が発散してしまう.波動関数は「電子がそこに存在する確率振幅」を表すので,どこかで無限大に発散するのは物理的に許されない.したがって $a_0\neq0$ より $\lambda=m$ とすると,$a_1=0$ が(次の段落で見るように)自動的に従う.
例題47.1 $\lambda=-m$ を選んだ場合の原点でのふるまい
$m=2$ として,$\lambda=-m=-2$ を選んだ場合の $R(r)$ の最低次の項 $a_0r^{-2}$ が,$r\to0$ でどうふるまうか,具体的な数値で確認せよ.
解答 $a_0=1$ として,$r=0.1,\,0.01,\,0.001$ のときの $R(r)\approx a_0r^{-2}$ の値を計算すると,
$$ r=0.1:\ R\approx100,\qquad r=0.01:\ R\approx10^4,\qquad r=0.001:\ R\approx10^6 $$となり,$r$ を$10$分の$1$にするごとに $R$ は$100$倍に増大する.つまり $r\to0$(円の中心に近づく)につれて $R(r)\to\infty$ であり,波動関数がまったく収まらない.これは確率解釈($|\psi|^2$ が確率密度になる)と矛盾するので,$\lambda=-m$($m\neq0$)は物理的な解として採用できない(sympy/numpyで検算済み).
$\lambda=m$ とすると,$a_1$ についての式は $\{(m+1)^2-m^2\}a_1=(2m+1)a_1=0$ となる.$m\ge0$ のとき $2m+1\gt0$ なので,これが成り立つのは $a_1=0$ のときだけである.漸化式
$$ a_{k+2} = -\frac{\varepsilon}{(k+\lambda+2)^2-m^2}a_k\ ,\qquad(\text{ここでも底本は}\ m^2\ \text{を}\ m\ \text{と誤記している.errata①と同様に訂正.}) $$より,$a_1=0\Rightarrow a_3=0\Rightarrow a_5=0\Rightarrow\cdots$ となり,
$$ a_1=a_3=a_5=\cdots=0 $$である.したがって係数が $0$ でなく残るのは,偶数番目の $a_0,a_2,a_4,\dots$ だけである.
47.1.4 係数の計算と一般項
$\lambda=m$ を漸化式に代入すると $(k+m+2)^2-m^2=(k+2)(k+2+2m)$($A^2-B^2=(A-B)(A+B)$ の因数分解,$A=k+m+2,B=m$)となるので,
$$ a_{k+2}=-\frac{\varepsilon}{(k+2)(k+2+2m)}a_k $$を $k=0,2,4$ と順に使うと,
$$ a_2 = -\frac{\varepsilon}{2\cdot(2+2m)}a_0 \qquad a_4 = -\frac{\varepsilon}{4\cdot(4+2m)}\cdot a_2 = \frac{(-\varepsilon)^2 a_0}{2\cdot4\cdot(2+2m)(4+2m)} $$ $$ a_6 = -\frac{\varepsilon}{6(6+2m)}a_4 = \frac{(-\varepsilon)^3}{2\cdot4\cdot6\,(2+2m)(4+2m)(6+2m)}a_0 $$という3つの式が並ぶ.分母の構造を見ると,$2\cdot4\cdot6\cdots(2n)=2^nn!$($2$を$n$個くくり出すと$n!$が残る),$(2+2m)(4+2m)\cdots(2n+2m)=2^n(1+m)(2+m)\cdots(n+m)$(同じく$2$を$n$個くくり出す)であるから,これを$n$段くり返すと,
$$ a_{2n} = \frac{(-\varepsilon)^n}{2^n\,n!\cdot2^n(1+m)(2+m)\cdots(n+m)}a_0 = \frac{(-\varepsilon)^n}{2^{2n}\,n!\,(1+m)(2+m)\cdots(n+m)}a_0 $$という一般項が得られる.ここで $(1+m)(2+m)\cdots(n+m)=\dfrac{\Gamma(n+m+1)}{\Gamma(m+1)}$(第41章41.2.2節,定理41.1の漸化式 $\Gamma(\alpha+1)=\alpha\Gamma(\alpha)$ を $n$ 回くり返し用いた関係)を使うと,
$$ a_{2n} = \frac{(-\varepsilon)^n\,\Gamma(m+1)}{2^{2n}\,n!\,\Gamma(n+m+1)}a_0 $$となる.このままだと分子に $\Gamma(m+1)$ が残って式が煩雑なので,$a_0$ の中に $1/\Gamma(m+1)$ を含めて $a_0':=a_0/\Gamma(m+1)$ と再定義する(第41章41.2.3節で $J_\alpha$ の級数を導いたときとまったく同じ処理である).こうすると,
\begin{equation} a_{2n} = \frac{(-\varepsilon)^n}{2^{2n}\,n!\,\Gamma(n+m+1)}a_0' \label{eq:47-a2n} \end{equation}という簡潔な形にまとまる.以下では,記号を煩雑にしないために,この再定義した $a_0'$ をあらためて $a_0$ と書く(ノートの記法にそのまま合わせるためでもある).
したがって,動径方向の解は
$$ R(r) = \sum_{k=0}^{\infty}a_{2k}r^{2k+m} = a_0\sum_{k=0}^{\infty}\frac{(-1)^k}{k!\,\Gamma(k+1+m)}\cdot\frac{(\sqrt{\varepsilon})^{2k}}{2^{2k}}r^{2k+m} $$ $$ = a_0\cdot\frac{2^m}{\sqrt{\varepsilon}^{\,m}}\sum_{k=0}^{\infty}\frac{(-1)^k}{k!\,\Gamma(k+1+m)}\left(\frac{\sqrt{\varepsilon}\,r}{2}\right)^{2k+m} $$となる.ここで,ノート欄外の指示にしたがって $a_0\dfrac{2^m}{\sqrt{\varepsilon}^{\,m}}=C$(新しい定数)とおくと,
\begin{equation} R(r) = C\sum_{k=0}^{\infty}\frac{(-1)^k}{k!\,\Gamma(k+1+m)}\left(\frac{\sqrt{\varepsilon}\,r}{2}\right)^{2k+m} \label{eq:47-R-series} \end{equation}という形に整理できた.この級数の和の部分は,$x=\sqrt\varepsilon\,r$,$\alpha=m$ とおけば,第41章定義41.2の第1種ベッセル関数 $J_m(x)=\sum_{k=0}^\infty\frac{(-1)^k}{k!\,\Gamma(m+k+1)}(x/2)^{2k+m}$ の級数とまったく同じ形をしている.次節でこの対応を確認し,$R(r)$ を正式にベッセル関数で書き表す.
47.2 動径方向の解とベッセル関数(規格化・エネルギー準位)
47.2.1 $R(r)$ をベッセル関数で表す
47.1節末の式\eqref{eq:47-R-series}の級数部分は,$x=\sqrt\varepsilon\,r$ とおくと,第41章定義41.2の第1種ベッセル関数 $J_m(x)=\sum_{k=0}^\infty\dfrac{(-1)^k}{k!\,\Gamma(m+k+1)}(x/2)^{2k+m}$ の級数定義とぴったり一致する.したがって,
\begin{equation} R(r) = C\sum_{k=0}^{\infty}\frac{(-1)^k}{k!\,\Gamma(k+1+m)}\left(\frac{\sqrt{\varepsilon}\,r}{2}\right)^{2k+m} = C\,J_m(\sqrt{\varepsilon}\,r) \label{eq:47-R-bessel} \end{equation}と書ける.こうして,円形領域の無限井戸型ポテンシャルの動径方向の解は,第1種ベッセル関数そのものであることがわかった.($m\ge0$ として話を進めているが,$m$ が負の整数のときも $J_m$ の定義がそのまま使え,第41章41.3.4節で証明した $J_{-n}(x)=(-1)^nJ_n(x)$ が成り立つ.)
例題47.2 $J_0(r)$ の級数の最初の数項と原点近傍でのふるまい
式\eqref{eq:47-R-bessel}で $m=0$ とし,級数の最初の3項($k=0,1,2$)を求めよ.また,それを使って $J_0(0)=1$ であることと,$r$ が小さいときの近似値を確かめよ.
解答 $m=0$ のとき,$\Gamma(k+1)=k!$ なので式\eqref{eq:47-R-bessel}($\sqrt\varepsilon=1$,$C=1$ とした場合)は
$$ J_0(r)=\sum_{k=0}^{\infty}\frac{(-1)^k}{(k!)^2}\left(\frac r2\right)^{2k} =1-\frac{r^2}{4}+\frac{r^4}{64}-\frac{r^6}{2304}+\cdots $$となる($k=0$ の項は $1$,$k=1$ の項は $-\dfrac1{1}\left(\dfrac r2\right)^2=-\dfrac{r^2}4$,$k=2$ の項は $\dfrac1{4}\left(\dfrac r2\right)^4=\dfrac{r^4}{64}$).$r=0$ を代入すると,$k=0$ の項だけが残って $J_0(0)=1$ である.これは47.3節の図47.3で見る $J_0(r)$ のグラフが,$r=0$ で最大値 $1$ から出発することと一致する.さらに $r=0.1$ を代入すると,最初の3項の和は $1-0.0025+0.0000015625\approx0.9975016$ となり,$J_0(r)$ の真の値(scipy.special.jvで計算)$0.9975015620\ldots$ と小数第6位まで一致する(sympy/scipyで検算済み).$r$ が小さいほど級数の高次の項は急速に小さくなり,少ない項数でよい近似が得られることがわかる.
47.2.2 境界条件と量子化——ベッセル関数の零点
境界条件 $R(a)=0$(式\eqref{eq:47-bc})を式\eqref{eq:47-R-bessel}に適用すると,$C\neq0$($R$ が恒等的に $0$ でない)だから,
$$ J_m(\sqrt{\varepsilon}\,a)=0 $$でなければならない.これが,箱型ポテンシャル(第45章)での「$\sin$ や $\cos$ が $0$ になる」という条件($\sin(ka)=0\Rightarrow ka=n\pi$)の,円形領域での対応物である——ただし今度は,初等関数の $\sin$ ではなく,ベッセル関数 $J_m$ の零点を使わなければならない.
定義47.2 ベッセル関数の零点 $\lambda_m(l)$
$J_m(\alpha)=0$ をみたす正の実数 $\alpha$ を小さい順に並べたものを $\lambda_m(1)\lt\lambda_m(2)\lt\lambda_m(3)\lt\cdots$($l=1,2,3,\dots$)と書く.$\sin$ や $\cos$ の零点($\pi,2\pi,3\pi,\dots$)とちがって,$J_m$ の零点は初等関数として閉じた式では書けず,数値的に求めるしかない(本節末の表47.1にまとめる).
境界条件から $\sqrt{\varepsilon}\,a=\lambda_m(l)$,すなわち
\begin{equation} \varepsilon=\frac{\lambda_m^2(l)}{a^2}=\frac{2m_eE}{\hbar^2} \qquad\therefore\quad E_m(l)=\frac{\hbar^2}{2m_ea^2}\lambda_m^2(l) \label{eq:47-energy} \end{equation}が得られる.これが,円形領域に閉じ込められた電子のエネルギー準位である.箱型ポテンシャルのエネルギー $E_n=\dfrac{\hbar^2\pi^2}{8ma^2}n^2$(第45章)とそっくりの形——「(定数)×(量子数の2乗)」——をしているが,量子化を担う数がここでは整数の量子数 $n$ ではなく,ベッセル関数の零点 $\lambda_m(l)$ であるという点が新しい.
47.2.3 角度方向の解の確定——$m$ が整数である理由
47.1節で先取りした角度方向の方程式 $\Theta''+m^2\Theta=0$ に戻ろう.この方程式は第35章で学んだ定数係数2階線形同次微分方程式であり,特性方程式は $\mu^2+m^2=0$,すなわち $\mu=\pm im$($i$ は虚数単位)である.したがって一般解は
$$ \Theta(\theta) = Ae^{im\theta} + Be^{-im\theta}\qquad A,B:\text{定数} $$数学ノート:底本の誤記について(errata②)
底本ノート p.46 では,この一般解の第2項が $B\bar e^{-im\theta_0}$ のように,$e$ の上にバー記号が付き,$\theta$ に添字 $0$ が付いた形で書かれている.しかしこれは,直前の特性方程式 $\mu=\pm im$ から来る一般解の形($e^{\pm im\theta}$,バーも添字も付かない)とも,このあとの議論($\theta$ を独立変数のまま扱い,境界条件 $\Theta(0)=\Theta(2\pi)$ を課す)とも整合しない.バー記号・添字 $0$ とも書き癖による誤記と判断し,教科書では $\Theta(\theta)=Ae^{im\theta}+Be^{-im\theta}$ として扱った.
である.いまはまだ $m$ が整数だとは決めていないことに注意しよう——ここまでは,$m$ は単に「$\Theta''/\Theta$ の値を $-m^2$ とおいたときの,そのパラメータ」というだけの実数である.
定理47.1 周期境界条件から $m\in\mathbb Z$ が導かれる
周期境界条件 $\Theta(\theta+2\pi)=\Theta(\theta)$(式\eqref{eq:47-bc}の $\psi(r,0)=\psi(r,2\pi)$ を,あらゆる基準角 $\theta$ について要求したもの)がすべての $\theta$ で成り立つためには,$m$ が整数でなければならない.
証明
$\Theta(\theta+2\pi)=Ae^{im(\theta+2\pi)}+Be^{-im(\theta+2\pi)}=Ae^{im\theta}e^{i2\pi m}+Be^{-im\theta}e^{-i2\pi m}$ である.これが,すべての $\theta$ について $\Theta(\theta)=Ae^{im\theta}+Be^{-im\theta}$ と一致するためには($e^{im\theta}$ と $e^{-im\theta}$ は $m\neq0$ のとき1次独立な関数なので,係数どうしが一致しなければならない),
$$ e^{i2\pi m}=1\qquad\text{かつ}\qquad e^{-i2\pi m}=1 $$が必要である(この2つの条件は実は同じものである:$e^{-i2\pi m}=1/e^{i2\pi m}=1/1=1$).オイラーの公式(第21章)$e^{i2\pi m}=\cos(2\pi m)+i\sin(2\pi m)$ がちょうど $1$ になるのは,$\cos(2\pi m)=1$ かつ $\sin(2\pi m)=0$ のとき,すなわち $2\pi m$ が $2\pi$ の整数倍のとき——つまり $m$ が整数のときだけである.(証明終わり)
こうして $m\in\mathbb Z$(正・負・$0$ のいずれでもよい)であることが確定した.また,$A,B$ の2つの項のうち1つあれば十分である——なぜなら,$e^{-im\theta}=e^{i(-m)\theta}$ は,$m$ を $-m$ に取り替えた場合の $\Theta$ と同じ形をしているので,$B\neq0$ の項は「量子数 $-m$ の状態」として別枠で数えればよいからである.そこで,ノートにしたがい
$$ \Theta(\theta)=Ae^{im\theta}\qquad(m\in\mathbb Z) $$とする.
47.2.4 波動関数の規格化
波動関数は,全空間(半径 $a$ の円板)にわたる確率の総和が $1$ になるように規格化(normalization)する.
$$ \int_0^{2\pi}\int_0^a R^2(r)\cdot\Theta^2(\theta)\ r\,dr\,d\theta = 1 $$(極座標の面積要素は $r\,dr\,d\theta$ であったことを思い出そう.)$R,\Theta$ の積の形をしているので,この2重積分は $r$ 積分と $\theta$ 積分の積に分かれる.したがって,
$$ \int_0^a R^2(r)\,r\,dr = 1\qquad\text{かつ}\qquad\int_0^{2\pi}|\Theta(\theta)|^2 d\theta = 1 $$であれば十分である(このように積を1に分割するのは,必要条件ではなく十分条件だが,$R,\Theta$ を別々に規格化しておけば全体の規格化も自動的に満たされるので,量子力学ではふつうこの方針をとる).式\eqref{eq:47-R-bessel}を代入すると,
$$ C^2\int_0^a J_m^2\!\left(\frac{\lambda_m(l)}{a}r\right) r\,dr = 1 \ ,\qquad \int_0^{2\pi} A^2 e^{im\theta}\cdot e^{-im\theta}\,d\theta = 1 $$($|\Theta|^2=\Theta\bar\Theta=Ae^{im\theta}\cdot\overline{Ae^{im\theta}}=A^2e^{im\theta}e^{-im\theta}=A^2$,$A$ は実数にとってよい.)右の式は $\int_0^{2\pi}A^2\,d\theta=2\pi A^2=1$ よりただちに $A=1/\sqrt{2\pi}$ とわかる.左の式については,
$$ \int_0^a J_m^2\!\left(\frac{\lambda_m(l)}{a}r\right) r\,dr = A_m $$とおくと,$C^2A_m=1$ より $C=1/\sqrt{A_m}$ である.したがって,規格化された波動関数とエネルギー準位は,
となる.積分 $A_m$ は初等関数では書けないので,数値的に(コンピューターで)計算するしかない——ノートの欄外にも「コンピューターで $A_m$ の値が分かる」とある.
47.2.5 $A_m$ の具体的な値とベッセル関数の零点表
ノートでは,$J_m(\lambda_m(l))=0$(零点の定義そのもの)を使って $A_m$ の積分を計算機(Mathematica)で実行し,次の閉じた式を得ている.
数学ノート:ベッセル関数の積分公式(一般形)
一般に,$\lambda$ を $J_\nu$ の零点($J_\nu(\lambda)=0$)とするとき,次の恒等式が成り立つことが知られている(ロンメル(Lommel)の積分公式とよばれる;証明にはベッセルの微分方程式を使ったやや技巧的な計算が必要なので,本書では結果だけを認めて使う).
$$ \int_0^a J_\nu^2\!\left(\frac{\lambda}{a}r\right) r\,dr=\frac{a^2}{2}\,J_\nu'(\lambda)^2=\frac{a^2}{2}\,J_{\nu-1}(\lambda)^2 $$(最後の等号は,$J_\nu(\lambda)=0$ のとき漸化式 $J_\nu'(x)=J_{\nu-1}(x)-\dfrac\nu x J_\nu(x)$(47.3節例題47.6で導く)の右辺第2項が消えることによる.)ノートの $A_{-2},A_{-1},A_0,A_1,A_2$ の式は,この一般公式を $\nu=-2,-1,0,1,2$ のそれぞれについて具体的に書き下し,さらに $J_{-n}=(-1)^nJ_n$(第41章)を使って $J_{-2}=J_2,\,J_{-1}=-J_1$ に書き換えたものである.
下線を引いた因子は,$\lambda_m(l)$ が $J_m$ の零点であること($J_m(\lambda_m(l))=0$,ノート欄外の注記)から恒等的に $0$ になる項である(ノートでは斜線と小さな「$0$」の書き込みでこれを示している).たとえば $A_0$ では,下線部 $J_0^2(\lambda_0(l))=0^2=0$ が消えて $A_0=\dfrac{a^2}2J_1^2(\lambda_0(l))$ という簡単な形だけが残る.これらの式は,すべて数値積分によって直接検算できる(本節末の検算参照).
ノートには,$m=-2,-1,0,1,2$,$l=1,\dots,6$ についてのベッセル関数の零点 $\lambda_m(l)$ の数値表(Mathematicaで計算)が載っている.教科書でも再掲する.
| $l\,\backslash\,m$ | $-2$ | $-1$ | $0$ | $1$ | $2$ |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 5.1356 | 3.8317 | 2.4048 | 3.8317 | 5.1356 |
| 2 | 8.4172 | 7.0156 | 5.5201 | 7.0156 | 8.4172 |
| 3 | 11.620 | 10.1735 | 8.6537 | 10.1735 | 11.620 |
| 4 | 14.796 | 13.3237 | 11.7915 | 13.3237 | 14.796 |
| 5 | 17.960 | 16.4706 | 14.9309 | 16.4706 | 17.960 |
| 6 | 21.117 | 19.6159 | 18.0711 | 19.6159 | 21.117 |
ノートには,表の右上に「($\lambda_m\neq0$)」という注記と,そこから導かれる結論「$\therefore$ 最低エネルギー $\gt0$」という一文が書き添えられている.これは,式\eqref{eq:47-energy}で $E_m(l)=\dfrac{\hbar^2}{2m_ea^2}\lambda_m^2(l)$ であり,表47.1のどの零点も($m,l$ によらず)厳密に $0$ より大きい正の値であることから,どんな量子数の組 $(m,l)$ についてもエネルギーが必ず正になる——電子は,どんなに条件を選んでもエネルギー $0$(静止した状態)にはなれない,という意味である.これは第45章の1次元・2次元の無限井戸型ポテンシャルで見た「基底状態のエネルギーも $0$ より大きい」という性質(零点エネルギー,zero-point energy)が,円形領域でも同じように成り立つことを示している.
また,ノートの欄外には「$l$ が大きくなると,$\lambda_m(l+1)-\lambda_m(l)\fallingdotseq3$ くらいになる」という観察も書かれている.実際に表47.1の隣接する値の差を計算すると,$m=0$ の場合で $5.5201-2.4048=3.1153,\ 8.6537-5.5201=3.1336,\ 11.7915-8.6537=3.1378,\dots$ のように,$l$ が大きくなるにつれて差はしだいに円周率 $\pi\approx3.1416$ に近づいていく.これは,$x$ が大きいところではベッセル関数が$J_m(x)\approx\sqrt{2/(\pi x)}\cos(x-m\pi/2-\pi/4)$(漸近展開,本書では証明しないが有名な公式である)のように,振幅がゆっくり減衰する余弦関数に近づくために,零点の間隔が余弦関数の半周期 $\pi$ に近づくことの表れである.零点の位置そのものにも,$\lambda_m(l)\approx\left(l+\dfrac m2-\dfrac14\right)\pi$($l$が大きいとき)という近似式が知られている.表47.1で確かめると,$m=0,l=6$ では真の値 $18.0711$ に対し近似値 $(6-0.25)\pi=18.0642$ と,相対誤差 $0.04\%$ 程度でよく合っている(数値検算はこの章末で行う).
47.3 ベッセル関数のグラフと具体例
ここまでで,円形領域の無限井戸型ポテンシャルの解が完全に求まった.本節では,実際にベッセル関数 $J_m(r)$ のグラフを見て形を確認し,物理的な意味を読み取ったうえで,ノートにある2つの具体例(基底状態と,ある励起状態)を実際に計算する.
47.3.1 $J_m(r)$($m=0,\pm1,\pm2$)のグラフ
物理的意味(ノートの Consideration):ミクロの世界の“遠心力”
図47.3から,$m=0$ のときだけ $r=0$(円の中心)での確率密度 $|\psi|^2$ が最大になっており,$m\neq0$ のときは $r=0$ での確率密度がちょうど $0$ になっていることが読み取れる.つまり,電子が角運動量をもって回転しているとき($m\neq0$)は原点から遠ざかり,回転していないとき($m=0$)は原点にいる確率が高くなる.これは,ミクロの世界(量子力学)でも,古典力学の遠心力(centrifugal force)に似た効果——回転していると中心から追いやられる——が働いていると解釈できる(ノート原文の「自分の考察」).実際,動径方向の方程式\eqref{eq:47-radial-ode}を $r\to0$ で見ると,$m^2/r^2$ の項が実効的なポテンシャルに $+m^2\hbar^2/(2m_er^2)$ という,$r\to0$ で発散する反発力(遠心力ポテンシャル,古典力学でも角運動量をもつ質点の有効ポテンシャルに同じ形の項が現れる)を付け加えているとみなせる——これが,$m\neq0$ の波動関数が原点近くで小さくなる数学的な理由である.次の例題47.6で,この違いを数式のうえでも直接確認する.
47.3.2 具体例——基底状態と励起状態のエネルギーと波動関数
例題47.3(ノートの計算) $m=0$,基底状態のエネルギーと波動関数
$m=0$ で,エネルギーが最も低い状態(基底状態,$l=1$)のエネルギーと波動関数を求めよ.
解答 表47.1より $\lambda_0(1)=2.4048$ である.式\eqref{eq:47-energy}より,
$$ E_0(1) = \frac{\hbar^2}{2m_ea^2}(2.4048)^2 \fallingdotseq 2.8915\cdot\frac{\hbar^2}{m_ea^2} $$である.また,$A_0=\dfrac{a^2}2J_1^2(2.4048)$(47.2.5節の公式で下線部を落としたもの)に,ベッセル関数の値 $J_1(2.4048)\fallingdotseq0.51915$(数値計算)を代入すると,
$$ A_0 = \frac{a^2}{2}J_1^2(2.4048) \fallingdotseq 0.13476\cdot a^2 $$したがって,規格化定数は
$$ \frac{1}{\sqrt{2\pi A_0}} = \frac{1}{\sqrt{\pi}\,a\,J_1(2.4048)} \fallingdotseq \frac{1.08675}{a} $$であり,波動関数は
$$ \psi(r,\theta) = \frac{1.08675}{a}J_0\!\left(\frac{2.4048}{a}r\right) = \frac{1.08675}{a}\sum_{k=0}^{\infty}\frac{(-1)^k}{(k!)^2}\left(\frac{2.4048}{2a}r\right)^{2k} $$となる($m=0$ なので $e^{im\theta}=1$,角度に依存しない完全に対称な波動関数である.sympy/scipyで検算済み).
例題47.4(ノートの計算) $m=2$,3番目に低いエネルギー状態
$m=2$ で,3番目にエネルギーが低い状態($l=3$)のエネルギーと波動関数を求めよ.
解答 表47.1より $\lambda_2(3)=11.620$ である.
$$ E_2(3) = \frac{\hbar^2}{2m_ea^2}\lambda_2^2(3) \fallingdotseq 67.5122\cdot\frac{\hbar^2}{m_ea^2} $$また,$A_2=\dfrac{a^2}2J_1^2(\lambda_2(3))$ より,$J_1(11.620)\fallingdotseq-0.23245$(数値計算.符号は絶対値だけが効くので気にしなくてよい)を使うと,
$$ \frac{1}{\sqrt{2\pi A_2}} = \frac{1}{\sqrt{\pi}\,a\,\abs{J_1(\lambda_2(3))}} = \frac{2.42718}{a} $$したがって波動関数は
$$ \psi(r,\theta) = \frac{2.42718}{a}e^{i2\theta}J_2\!\left(\frac{11.620}{a}r\right) = \frac{2.42718}{a}e^{i2\theta}\sum_{k=0}^{\infty}\frac{(-1)^k}{k!(k+2)!}\left(\frac{11.620}{2a}r\right)^{2k+2} $$である(sympy/scipyで検算済み).$E_2(3)\approx67.5\,\hbar^2/(m_ea^2)$ は,例題47.3の基底状態 $E_0(1)\approx2.89\,\hbar^2/(m_ea^2)$ のおよそ23倍であり,角運動量 $m=2$ と動径方向の振動の速さ($l=3$)の両方がエネルギーを押し上げていることがわかる.
47.3.3 ベッセル関数の漸化式——発展的な内容
ノートには書かれていないが,ベッセル関数どうしを結びつける漸化式(recurrence relation)を知っておくと,47.3.1節の Consideration をもっと定量的に理解できる.ここでは,級数の項別微分だけを使って,自分の手でこの漸化式を導いておこう.
例題47.5(発展) ベッセル関数の漸化式と $J_1(x)=-J_0'(x)$
第41章定義41.2の級数 $J_m(x)=\sum_{k=0}^\infty\dfrac{(-1)^k}{k!\,\Gamma(m+k+1)}\left(\dfrac x2\right)^{2k+m}$ を使って,$\dfrac{d}{dx}\bigl[x^mJ_m(x)\bigr]=x^mJ_{m-1}(x)$ を示せ.また,これを使って $J_1(x)=-J_0'(x)$ を導け.
解答 $x^mJ_m(x)=\displaystyle\sum_{k=0}^\infty\dfrac{(-1)^k}{k!\,\Gamma(m+k+1)}\cdot\dfrac{x^{2k+2m}}{2^{2k+m}}$ を項別に微分する(べき級数はその収束域内で項別微分してよい——これは第41章41.3.2節で見た「級数はすべての $x$ で収束する」という事実の応用である).
$$ \frac{d}{dx}\bigl[x^mJ_m(x)\bigr]=\sum_{k=0}^\infty\frac{(-1)^k(2k+2m)}{k!\,\Gamma(m+k+1)}\cdot\frac{x^{2k+2m-1}}{2^{2k+m}} $$ここで $2k+2m=2(k+m)$ であり,$\Gamma(m+k+1)=(k+m)\Gamma(k+m)$(ガンマ関数の漸化式,第41章定理41.1)だから $\dfrac{k+m}{\Gamma(m+k+1)}=\dfrac{1}{\Gamma(k+m)}$ と約分できる.したがって,
$$ \frac{d}{dx}\bigl[x^mJ_m(x)\bigr]=\sum_{k=0}^\infty\frac{(-1)^k\cdot2}{k!\,\Gamma(k+m)}\cdot\frac{x^{2k+2m-1}}{2^{2k+m}} =x^m\sum_{k=0}^\infty\frac{(-1)^k}{k!\,\Gamma\bigl(k+(m-1)+1\bigr)}\left(\frac x2\right)^{2k+(m-1)}=x^mJ_{m-1}(x) $$(最後の和は,$J_{m-1}(x)$ の級数定義そのものである).こうして $\dfrac{d}{dx}[x^mJ_m(x)]=x^mJ_{m-1}(x)$ が示された.左辺を積の微分公式で展開すると $mx^{m-1}J_m+x^mJ_m'=x^mJ_{m-1}$ であるから,両辺を $x^m$($\neq0$)で割って
\begin{equation} J_m'(x)=J_{m-1}(x)-\frac mxJ_m(x) \label{eq:47-recurrence-A} \end{equation}という漸化式が得られる(例題中の関係A).とくに $m=0$ を代入すると,右辺第2項が $0$ になって,
$$ J_0'(x)=J_{-1}(x) $$である.さらに第41章41.3.4節の結果 $J_{-n}(x)=(-1)^nJ_n(x)$ を $n=1$ で使うと $J_{-1}(x)=-J_1(x)$ だから,
$$ J_0'(x)=-J_1(x)\qquad\text{すなわち}\qquad J_1(x)=-J_0'(x) $$を得る(scipy.special.jvpとjvで,$x=0.5,1,\dots,10$ の複数の点で数値的に検算済み——$J_0'(x)$ と $-J_1(x)$ は完全に一致する).同様に,$x^{-m}J_m(x)$ を項別微分すると(解答は同様なので省略する)$\dfrac{d}{dx}[x^{-m}J_m(x)]=-x^{-m}J_{m+1}(x)$ が示され,これを展開すると $J_m'(x)=\dfrac mxJ_m(x)-J_{m+1}(x)$(関係B)が得られる.関係Aと関係Bの辺々を引くと,
\begin{equation} J_{m-1}(x)+J_{m+1}(x)=\frac{2m}{x}J_m(x) \label{eq:47-recurrence-B} \end{equation}という,もう1つの有名な漸化式も得られる(章末演習47.6で使う).
例題47.6 原点近傍の確率密度——Considerationの定量的な確認
例題47.3の $m=0$ の波動関数と,例題47.4の $m=2$ の波動関数について,$r=0$ における確率密度 $|\psi(0,\theta)|^2$ をそれぞれ計算し,47.3.1節の Consideration の主張($m=0$ のときだけ原点の確率密度が最大)を数式のレベルで確認せよ.
解答 $m=0$ の場合,$J_0(0)=1$(例題47.2で確認済み)なので,
$$ \psi(0,\theta)=\frac{1.08675}{a}J_0(0)=\frac{1.08675}{a},\qquad |\psi(0,\theta)|^2=\left(\frac{1.08675}{a}\right)^2\approx\frac{1.181}{a^2} $$となり,原点で確率密度は有限な最大値をとる.一方,$m=2$ の場合,級数 $J_2(x)=\sum_{k=0}^\infty\dfrac{(-1)^k}{k!(k+2)!}(x/2)^{2k+2}$ の最低次の項は $k=0$ の項 $\dfrac{1}{2}(x/2)^2=x^2/8$ であり,$x=0$ を代入すると恒等的に $0$ になる(これは,級数のどの項も $x^{2k+2}$ という $x^2$ 以上の次数しか含まないためで,$m$ が正である以上は必然的にそうなる).したがって,
$$ \psi(0,\theta)=\frac{2.42718}{a}e^{i2\theta}J_2(0)=\frac{2.42718}{a}e^{i2\theta}\times0=0,\qquad|\psi(0,\theta)|^2=0 $$である.これで,$m=0$ の状態だけが原点で確率密度が最大になり,$m\neq0$(ここでは $m=2$)の状態は原点で確率密度がちょうど $0$ になる,というConsiderationの主張が,具体的な数値のレベルで確認できた.一般に $J_m(x)$ の級数は $x^m$ から始まるので(第41章定義41.2),$m\ge1$ ならつねに $J_m(0)=0$ である.
47.3.4 円板の振動パターンとのアナロジー
波動関数 $|\psi(r,\theta)|^2$ が $0$ になる場所(節(node))に注目すると,量子数 $(m,l)$ の組ごとに特徴的な模様が浮かび上がる.これは,太鼓の膜(円板)を振動させたときにできる「クラドニ(Chladni)図形」とよく似た構造をもつ——実際,円板の振動も同じベッセルの微分方程式で記述される(第41章の応用の欄でも触れた).図47.4に,いくつかの $(m,l)$ について,$\cos(m\theta)$ の形の実数の組み合わせをとったときの節線(節円と節直径)を示す.
47.4 無限円柱型ポテンシャル(3次元)
47.1〜47.3節では,$z$ 方向の運動を考えない(あるいは無視できる)2次元の問題を扱った.本節では,$z$ 方向にも有限の高さの壁を立てた,本当の3次元の円柱の中に電子を閉じ込める問題を解く.
数学ノート:ノートに未完のまま残された設定(errata③)
底本ノート p.49 には「※無限円筒井戸型ポテンシャル(時間変動)」という見出しのもと,「電子が $xy$ 平面上を動くとき,」という書き出しだけがあり,具体的なポテンシャル $V$ の式や境界条件は書かれないまま,ページの残りが白紙になっている.次ページ p.50 の「(3)」で,同じ円柱形状についての定常状態の問題が改めて設定され,そちらは最後まで解かれている.教科書では,この中断した「時間変動」版がどう完結するかを,下の47.4.1節末で自分の手で補っておく.
イメージ:中断した「時間変動」版はどう完結するか
ノートが書きかけて止めてしまった「時間変動」版とは,波動関数が $\Psi(r,\theta,z,t)$ のように時刻 $t$ にも依存する,時間に依存するシュレーディンガー方程式 $i\hbar\pdiff{\Psi}{t}=\hat H\Psi$(第45章で学んだエネルギー演算子 $\hat E=-\dfrac{\hbar}{i}\pdiff{}{t}$ を使うと $\hat H\Psi=\hat E\Psi$ とも書ける)を解く問題である.これは,実は本節でこのあと解く定常状態の問題(時間に依存しないシュレーディンガー方程式 $\hat H\psi=E\psi$)が解ければ,追加の計算なしにただちに解決する.なぜなら,$\Psi(r,\theta,z,t)=\psi(r,\theta,z)T(t)$ とさらに時間方向に変数分離すると,$i\hbar\dfrac{T'}{T}=\dfrac{\hat H\psi}{\psi}$ となり,左辺は $t$ だけの関数,右辺は $(r,\theta,z)$ だけの関数だから,47.1節と同じ論法でどちらも定数(これを $E$ とする)でなければならない.$T$ の方程式 $i\hbar T'=ET$ は変数分離形の1階線形微分方程式(第33章既習)で,直接積分すると $T(t)=e^{-iEt/\hbar}$(積分定数は $\psi$ の側の規格化に押し込めて $1$ とおいた)である.したがって,時間変動版の答えは,本節で求める定常状態の波動関数 $\psi(r,\theta,z)$ と,決まったエネルギー $E$(式\eqref{eq:47-energy-3d-full})を使って,
$$ \Psi(r,\theta,z,t)=\psi(r,\theta,z)\,e^{-iEt/\hbar} $$と完結する.ノートが「時間変動」を主題にしながら定常状態の設定に切り替えたのは,おそらく「まず $\psi$ を求めれば,時間依存性は $e^{-iEt/\hbar}$ を掛けるだけで自動的に付いてくる」ということを見越していたためだと考えられる.
数学ノート:見出しの誤記について(errata④)
底本ノート p.50・p.52 の見出しはいずれも「(3) 無限球型ポテンシャル」「(4) 無限球型ポテンシャル」となっている.しかし p.50〜p.51の設定・解法は円柱座標 $(r,\theta,z)$ にもとづくものであり(境界条件も $\psi(a,\theta,z_0)=\psi(a,\theta,-z_0)=0$ など,明らかに円柱の側面と上下の面を表している),p.52以降で使われる球座標 $(r,\theta,\varphi)$ とは異なる.したがって p.50の見出しは「無限円柱型ポテンシャル」の誤記と判断し,教科書ではそのように改めた(p.52からの球座標の問題は,次章第48章の水素原子の準備として,そちらで扱う).
定義47.3 無限円柱型ポテンシャル(3次元定常状態)
電子が $xyz$ 空間を自由に動くとし,定常状態を考える.半径 $a$,高さ $2z_0$ の円柱の内側だけでポテンシャルが $0$,外側は $\infty$ とする.
$$ V(r,\theta,z) = \begin{cases} 0 & (0\le r\le a,\ -z_0\le z\le z_0) \\ \infty & (r>a,\ z\lt-z_0,\ z_0\lt z) \end{cases} $$このとき,$-\dfrac{\hbar^2}{2m}\nabla^2\psi + V\psi = E\psi$ を,境界条件
$$ \psi(a,\theta,z)=0,\qquad\psi(r,\theta,\pm z_0)=0,\qquad\psi(r,0,z)=\psi(r,2\pi,z) $$のもとで解け($m$ は電子の質量.角運動量の量子数と文字が重なるが,ノートの記法にそのまま従う).
境界条件について一言注意しておく.底本ノート p.50 では,この境界条件は文字通り $\psi(a,\theta,z_0)=\psi(a,\theta,-z_0)=0$,$\psi(r,0,z)=\psi(r,2\pi,z)$ とだけ書かれている(errata④のbox note内に引用したとおりである).しかしこれは,$z=\pm z_0$ という特定の高さでの側面上の1点だけの条件ではなく,「側面 $r=a$ 全体(あらゆる $\theta,z$ について)で $\psi=0$」「上面・下面 $z=\pm z_0$ 全体(あらゆる $r,\theta$ について)で $\psi=0$」ということの省略表記だと考えられる——実際,47.4.2節・47.4.4節の解法は,$R(a)=0$($\theta,z$ によらず)と $Z(\pm z_0)=0$($r,\theta$ によらず)をそれぞれ独立な条件として使っている.教科書ではこの意図をくみ,上のように境界条件を明示した形で書いた.
47.4.1 3方向への変数分離
円柱座標でのラプラシアン(第44章)は
$$ \nabla^2=\pdiff{^2}{r^2}+\frac1r\pdiff{}{r}+\frac1{r^2}\pdiff{^2}{\theta^2}+\pdiff{^2}{z^2} $$である.変数分離 $\psi(r,\theta,z)=R(r)\Theta(\theta)Z(z)$ を仮定して代入すると,
$$ -\frac{\hbar^2}{2m}\left(R''\Theta Z + \frac1r R'\Theta Z + \frac1{r^2}R\Theta''Z + R\Theta Z''\right) + VR\Theta Z = ER\Theta Z $$両辺を $R\Theta Z$ で割ると,
$$ -\frac{\hbar^2}{2m}\left(\frac{R''}{R} + \frac1r\frac{R'}{R} + \frac1{r^2}\frac{\Theta''}{\Theta} + \frac{Z''}{Z}\right) + V = E $$となる.47.1節の1つ目の「Remember!」と同じ理由で,$r\gt a$ または $|z|\gt z_0$(ポテンシャルが無限大の領域)では $\psi=0$ である.したがって,以下では $0\le r\le a,\,|z|\le z_0$($V=0$)の内部だけを考えると,
$$ \frac{R''}{R} + \frac1r\frac{R'}{R} + \frac1{r^2}\frac{\Theta''}{\Theta} + \frac{Z''}{Z} = -\frac{2mE}{\hbar^2} $$となる.47.1節と同じ論法——$\dfrac{Z''}{Z}$ の項と,残りの $r,\theta$ だけに依存する項は,互いに独立な変数の関数でありながら和が定数 $-2mE/\hbar^2$ にならなければならないので,それぞれ単独で定数——を使うと,
$$ \frac{Z''}{Z}=-\omega^2\qquad(\omega\ は新しい分離定数) $$とおける.残りの部分は
$$ \frac{R''}{R} + \frac1r\frac{R'}{R} + \frac1{r^2}\frac{\Theta''}{\Theta} + \frac{2mE}{\hbar^2} - \omega^2 = 0 $$となり,これに $r^2$ を掛けてさらに $\Theta''/\Theta=-m^2$(47.1節と同じ角度方向の分離)を使うと,最終的に3本の独立な常微分方程式
$$ \begin{cases} r^2\dfrac{d^2R}{dr^2} + r\dfrac{dR}{dr} + \left(\varepsilon r^2 - m^2\right)R = 0 & \cdots\ ① \\[6pt] \dfrac{d^2\Theta}{d\theta^2} + m^2\Theta = 0 & \cdots\ ② \\[6pt] \dfrac{d^2Z}{dz^2} + \omega^2 Z = 0 & \cdots\ ③ \end{cases} \qquad\left(\varepsilon:=\frac{2mE}{\hbar^2}-\omega^2\right) $$に分かれる.①は動径方向,②は角度方向,③は $z$ 方向の方程式である.驚くべきことに,①は47.1節の式\eqref{eq:47-radial-ode}と($\varepsilon$ の定義が少し変わった以外は)まったく同じ形をしている——これは,どちらも「円柱座標のラプラシアンから,動径方向だけを取り出す」という同じ操作の結果だからである.
47.4.2 ①動径方向——47.1〜47.2節の結果をそのまま使う
①は47.1〜47.2節ですでに解いた方程式であるから,結果だけを書けば,
$$ R(r) = C_0\sum_{k=0}^{\infty} \frac{(-1)^k}{k!\,\Gamma(k+1+m)}\left(\frac{\sqrt{\varepsilon}}{2}r\right)^{2k+m} = C_0\, J_m(\sqrt{\varepsilon}\,r) $$境界条件 $R(a)=0$ より,$J_m(\alpha)=0$ をみたす $\alpha=\lambda_m(l')$($l'\in\mathbb{N}$;ここでは動径方向の量子数を $l'$ と書き,あとで登場する $z$ 方向の量子数 $l$ と区別する——ノート自身がこの節でこの書き分けをしている)とおくと,
$$ \sqrt{\varepsilon}\,a = \lambda_m(l') \qquad\therefore\quad \sqrt{\varepsilon} = \frac{\lambda_m(l')}{a} \ ,\qquad R(r) = C_0\, J_m\!\left(\frac{\lambda_m(l')}{a}r\right) $$である.$\varepsilon=2mE/\hbar^2-\omega^2$ の定義を使うと,エネルギーは
\begin{equation} E = \frac{\hbar^2}{2m}\left(\frac{\lambda_m(l')^2}{a^2} + \omega^2\right) \label{eq:47-energy-3d-partial} \end{equation}となる.$\omega$ の量子化は,③を解いたあとで確定する.
47.4.3 ②角度方向
②は47.1〜47.2節とまったく同じ方程式なので,47.2.3節の結果(周期境界条件 $\Theta(0)=\Theta(2\pi)$ から $m$ が整数に限られること)がそのまま使える.一般解
$$ \Theta(\theta) = A_0\,e^{im\theta} + B_0\,e^{-im\theta}\qquad(m\in\mathbb{Z}) $$は境界条件 $\Theta(0)=\Theta(2\pi)$ をみたす.47.2.3節と同じ理由($e^{-im\theta}$ は $-m$ を新しい量子数とみなせば別枠で数えられる)で,項は1つあれば十分なので $B_0=0$ とし,
$$ \Theta(\theta) = A_0\,e^{im\theta} $$とする.
47.4.4 ③ $z$ 方向——箱型ポテンシャルの復習
③ $\dfrac{d^2Z}{dz^2}+\omega^2Z=0$ は,第45章で解いた1次元箱型ポテンシャルの方程式とまったく同じ形である.一般解は
$$ Z(z) = D_0\cos\omega z + E_0\sin\omega z $$である.境界条件 $Z(z_0)=Z(-z_0)=0$(円柱の上面・底面で波動関数が消える)を代入すると,
$$ \begin{cases} Z(z_0) = D_0\cos\omega z_0 + E_0\sin\omega z_0 = 0 \\ Z(-z_0) = D_0\cos\omega z_0 - E_0\sin\omega z_0 = 0 \end{cases} $$($\cos$ は偶関数,$\sin$ は奇関数だから $\cos(-\omega z_0)=\cos\omega z_0$,$\sin(-\omega z_0)=-\sin\omega z_0$ であることを使った.)これは $D_0,E_0$ についての連立1次方程式であり,$D_0=E_0=0$ という自明な解以外の解($D_0,E_0$ の少なくとも一方が $0$ でない解)をもつためには,第12章で学んだ非自明解条件(係数行列の行列式が $0$)が必要である.
$$ \begin{vmatrix} \cos\omega z_0 & \sin\omega z_0 \\ \cos\omega z_0 & -\sin\omega z_0 \end{vmatrix} = 0 $$を計算すると,$-\cos\omega z_0\sin\omega z_0-\sin\omega z_0\cos\omega z_0=-2\sin\omega z_0\cos\omega z_0=-\sin2\omega z_0$(2倍角の公式)であるから,
\begin{equation} \sin2\omega z_0=0 \qquad\therefore\quad 2\omega z_0=l\pi\ \ (l\in\mathbb{Z},\ l\ge1) \label{eq:47-z-quantize} \end{equation}という量子化条件が得られる.$l=1,2,3,\dots$($\omega\gt0$ ととるので $l$ は正の整数)に応じて,$D_0,E_0$ のどちらが $0$ になるかが決まる.具体的に $l$ が奇数のとき(行列式の1行目と2行目を見比べると,$\sin\omega z_0=0$ となり $E_0$ は任意,$D_0\neq0$ の解が許される),$l$ が偶数のとき($\cos\omega z_0=0$ となり $D_0=0$,$E_0\neq0$ の解が許される)に対応して,
\begin{equation} Z(z) = \begin{cases} D_0\cos\left(\dfrac{l\pi}{2z_0}z\right) & (l=1,3,5,\dots) \\[6pt] E_0\sin\left(\dfrac{l\pi}{2z_0}z\right) & (l=2,4,6,\dots) \end{cases} \label{eq:47-Z-solution} \end{equation}である.
例題47.7 $z$ 方向の解の偶奇(パリティ)
式\eqref{eq:47-Z-solution}で,$l=1$ の解 $Z(z)=D_0\cos\!\left(\dfrac{\pi}{2z_0}z\right)$ が偶関数($Z(-z)=Z(z)$)であること,$l=2$ の解 $Z(z)=E_0\sin\!\left(\dfrac{\pi}{z_0}z\right)$ が奇関数($Z(-z)=-Z(z)$)であることを確かめよ.また,なぜこのような偶奇の対応になるのか,ポテンシャルの対称性の観点から説明せよ.
解答 $\cos$ は偶関数だから $Z_{l=1}(-z)=D_0\cos\!\left(-\dfrac{\pi}{2z_0}z\right)=D_0\cos\!\left(\dfrac{\pi}{2z_0}z\right)=Z_{l=1}(z)$ であり,偶関数であることが確かめられる.$\sin$ は奇関数だから $Z_{l=2}(-z)=E_0\sin\!\left(-\dfrac{\pi}{z_0}z\right)=-E_0\sin\!\left(\dfrac{\pi}{z_0}z\right)=-Z_{l=2}(z)$ であり,奇関数であることが確かめられる(数値的にも,$z_0=1.3$ として $9$ 個の点で $Z(z)-Z(-z)$($l=1$)と $Z(z)+Z(-z)$($l=2$)を計算すると,どちらも計算機の丸め誤差の範囲で $0$ になることを確認した).
この偶奇の対応は,ポテンシャルが $z\to-z$ の入れ替えについて対称($V(z)=V(-z)$,円柱を上下ひっくり返しても同じ形)であることの帰結である.一般に,ポテンシャルが空間反転に対して対称なとき,シュレーディンガー方程式の解は「偶関数」か「奇関数」のどちらかに選ぶことができる(もし解 $Z(z)$ が偶奇どちらでもなければ,$Z(z)$ と $Z(-z)$ はどちらも同じエネルギーの解になるので,その和 $Z(z)+Z(-z)$(偶関数)と差 $Z(z)-Z(-z)$(奇関数)を新しい解として選び直せる).さらに,最もエネルギーが低い基底状態($l=1$)は節をもたない偶関数($\cos$,第45章の1次元箱型ポテンシャルの基底状態と同じ形)になり,次に低い状態($l=2$)は中央 $z=0$ に1つだけ節をもつ奇関数($\sin$)になる,という対応も,第45章の1次元箱型ポテンシャルですでに見たパターンと同じである.
47.4.5 波動関数の規格化とエネルギー準位のまとめ
波動関数の規格化は,47.2.4節と同様に3方向の積分の積に分解できる.円柱座標の体積要素が $r\,dr\,d\theta\,dz$(47.4.1節のラプラシアンと対になる体積要素で,2次元の場合の $r\,dr\,d\theta$ に $dz$ が加わっただけである)であることに注意すると,
$$ \int_{-\infty}^{\infty}\int_0^{2\pi}\int_0^{\infty} \psi\cdot\bar\psi\ r\,dr\,d\theta\,dz = 1 $$(ノートの積分区間は $r,z$ を無限大まで書いているが,これは「波動関数が $r>a,\,|z|>z_0$ で恒等的に $0$ である」ことを踏まえれば,実質的には $0\le r\le a$,$-z_0\le z\le z_0$ の範囲の積分と同じである.)動径方向の規格化は,47.2.4〜47.2.5節の $A_m$ とまったく同じ量を,零点の番号だけ $l$ から $l'$ に読み替えて使う.
$$ A_m(l') := \int_0^a J_m^{\,2}\!\left(\frac{\lambda_m(l')}{a}r\right) r\,dr = \frac{a^2}2\,J_{m-1}^{\,2}\bigl(\lambda_m(l')\bigr) $$(最後の等号は47.2.5節のロンメルの積分公式である).したがって $C_0^{\,2}A_m(l')=1$ より $C_0=1/\sqrt{A_m(l')}$ である.
数学ノート:底本の誤記について(errata⑤)
底本ノート p.51 の動径方向の規格化積分は,$r$(極座標・円柱座標の体積要素に現れるヤコビアン)を書き落として $\displaystyle\int_0^\infty J_m^{\,2}\!\left(\frac{\lambda_m(l')}{a}r\right)dr=\frac1{A^2}$ となっている(積分区間も $[0,\infty)$ のままである).47.2.4節(2次元の場合)では同じ積分に正しく $r$ が付いているので,これは3次元へ拡張する際の書き落としと判断できる.この誤りは見た目以上に重大で,$r$ を付けずに $[0,\infty)$ まで積分すると,ベッセル関数の漸近形 $J_m(x)\sim\sqrt{2/(\pi x)}\cos(x-m\pi/2-\pi/4)$($x\to\infty$)より被積分関数は $J_m^2\sim1/x$ 程度でしか減衰せず,積分はそもそも有限確定値に収束しない(scipy.integrate.quadで積分区間を $R=10,100,1000,10000,100000$ まで広げて数値積分すると,値は $0.774\to1.078\to1.382\to1.686\to1.583$ と定まった値に収束せず,発散することを確認済み).一方,本文のように $r$ を補って積分区間を $[0,a]$(波動関数が $r>a$ で恒等的に $0$ であることに対応する区間)に直すと,$a=1,\lambda_0(1)=2.404826$ のとき $\int_0^1J_0^2(2.404826\,r)\,r\,dr=0.13475706$ となり,47.2.5節の公式 $\frac{a^2}2J_1^2(\lambda_0(1))=0.13475706$ と完全に一致する(数値積分で検算済み).教科書では,$r$ を補い積分区間を $[0,a]$ に直した上で,47.2.4〜47.2.5節の $A_m$ をそのまま流用する形に改めた.また,ノートは規格化定数を新しく $A$ とおいて $C_0=A$ と書いているが,本書では47.2.4節の $A_m$(積分の値そのもの)と記号が紛らわしくなるため,そのまま $C_0$ を用いている.
角度方向は $\displaystyle\int_0^{2\pi} A_0^{\,2}\,d\theta = 1$ より $A_0=1/\sqrt{2\pi}$,$z$ 方向は $\displaystyle\int_{-z_0}^{z_0} Z^2(z)\, dz = 1$ より $D_0=E_0=1/\sqrt{z_0}$($\cos^2,\sin^2$ の半周期平均が $1/2$ になることを使うと,$\displaystyle\int_{-z_0}^{z_0}\cos^2\!\left(\frac{l\pi}{2z_0}z\right)dz=z_0$ となることから確かめられる)である.まとめると,
となる.量子数は3つ——角運動量の量子数 $m\in\mathbb Z$,動径方向の量子数 $l'=1,2,3,\dots$(ベッセル関数の何番目の零点か),$z$ 方向の量子数 $l=1,2,3,\dots$(定在波の腹・節の数)——であり,箱がもう1方向広がったぶんだけ,量子数も1つ増えている.これは第45章で2次元・3次元の箱型ポテンシャルを扱ったときと同じ構造である.
47.5 まとめと演習
47.5.1 まとめ
- 円形・円柱形の対称性をもつポテンシャルでは,極座標・円柱座標でラプラシアン(第44章)を使い,$\psi=R(r)\Theta(\theta)$(あるいは $R(r)\Theta(\theta)Z(z)$)の形で変数分離する.
- 角度方向の方程式 $\Theta''+m^2\Theta=0$ の解 $\Theta(\theta)=e^{im\theta}$ に,周期境界条件 $\Theta(\theta+2\pi)=\Theta(\theta)$ を課すと,$m$ は整数でなければならない(定理47.1).
- 動径方向の方程式はベッセルの微分方程式そのものであり,原点 $r=0$ で波動関数が有限であるという物理的要請から,決定方程式 $\lambda=\pm m$ のうち $\lambda=m$($\ge0$)だけを採用する.
- 級数解はガンマ関数を用いて第1種ベッセル関数 $J_m$ にまとまる(第41章の一般論の具体例).
- 境界条件 $R(a)=0$ から,$\sqrt\varepsilon\,a$ がベッセル関数の零点 $\lambda_m(l)$ に等しいという量子化条件が生じ,エネルギー準位 $E_m(l)=\dfrac{\hbar^2}{2m_ea^2}\lambda_m^2(l)$ が定まる.
- $m=0$ の状態だけが原点で確率密度最大,$m\neq0$ の状態は原点で確率密度$0$——ミクロの世界の「遠心力」効果.
- 3次元の円柱では,$z$ 方向にもう1つの量子数 $l$(定在波の腹・節の数)が加わり,非自明解条件(行列式$=0$)から量子化条件 $\sin2\omega z_0=0$ が導かれる.ポテンシャルの上下対称性から,$z$ 方向の解は偶関数($l$奇数)と奇関数($l$偶数)に分かれる.
47.5.2 演習問題
演習47.1 $J_{-1}(x)=-J_1(x)$ の級数による確認
式\eqref{eq:47-R-bessel}の級数(あるいは第41章定義41.2)を使って,$m=1$ のときの $J_{-1}(x)$ の級数を書き下し,各項が $-J_1(x)$ の級数の対応する項と一致することを確かめよ.
ヒント:第41章41.3.4節の一般証明 $J_{-n}(x)=(-1)^nJ_n(x)$ の $n=1$ の場合を,具体的な級数の項で再確認する問題である.$\Gamma(-1+k+1)=\Gamma(k)$ が $k=0$ で定義されない($k=0$の項は消える)ことに注意.
演習47.2 $(m=0,\ l=2)$ のエネルギー
無限円筒井戸型ポテンシャル(2次元)で,$m=0,\ l=2$ の状態のエネルギー $E_0(2)$ を,$\hbar^2/(m_ea^2)$ を単位として求めよ.
ヒント:表47.1から $\lambda_0(2)$ を読み取り,式\eqref{eq:47-energy}に代入するだけでよい.
演習47.3 $z$ 方向を周期境界条件に変えた場合
47.4.4節の境界条件 $Z(z_0)=Z(-z_0)=0$(円柱の上面・底面で波動関数が消える,ディリクレ型)の代わりに,周期境界条件 $Z(z_0)=Z(-z_0)$,$Z'(z_0)=Z'(-z_0)$(円柱を輪のようにつなげた場合に対応する)を課すとどうなるか.$Z(z)=D_0\cos\omega z+E_0\sin\omega z$ に対してこの条件を適用し,量子化条件を求めよ.
ヒント:$Z(z_0)-Z(-z_0)=2E_0\sin\omega z_0$,$Z'(z_0)-Z'(-z_0)=-2D_0\omega\sin\omega z_0$ となる.これらが両方とも $0$ になり,かつ $D_0,E_0$ をどちらも $0$ にしなくてよい条件を考える.
演習47.4 角度方向の周期性と $m$ の整数性
$\Theta(\theta)=e^{i2\theta}$($m=2$ の場合)が $\Theta(\theta+2\pi)=\Theta(\theta)$ をみたすことを直接確認せよ.また,もし $m=2.3$(整数でない)だったとすると,この周期性がどうなるか,式で示せ.
ヒント:オイラーの公式で $e^{i2\pi m}$ を計算し,$m$ が整数かどうかで値がどう変わるかを比べる.
演習47.5 規格化定数 $A_0$ の数値積分による確認
$a=1$ として,$A_0=\displaystyle\int_0^1J_0^2(\lambda_0(1)\,r)\,r\,dr$ を数値積分で計算し,47.2.5節の公式 $A_0=\dfrac{a^2}2J_1^2(\lambda_0(1))$ の右辺の値と一致することを確認せよ.
ヒント:scipy.integrate.quadなどの数値積分ルーチンと,scipy.special.jvを組み合わせて計算する.
演習47.6 漸化式を使って $J_2(x)$ を $J_0,J_1$ で表す
例題47.5で導いた漸化式\eqref{eq:47-recurrence-B}($J_{m-1}(x)+J_{m+1}(x)=\dfrac{2m}{x}J_m(x)$)を $m=1$ として使い,$J_2(x)$ を $J_0(x),J_1(x)$ とその他の初等的な式だけで表せ.
ヒント:$m=1$ を代入すると $J_0(x)+J_2(x)=\dfrac2xJ_1(x)$ になる.
47.5.3 参考文献
- 望月泰英『数学ノート 偏微分方程式』(手書き講義ノート).本章の底本.
- George B. Arfken, Hans J. Weber, Frank E. Harris, Mathematical Methods for Physicists, 7th ed., Academic Press, 2012.(ベッセル関数と円柱座標の境界値問題)
- David J. Griffiths, Darrell F. Schroeter, Introduction to Quantum Mechanics, 3rd ed., Cambridge University Press, 2018.(円形・円柱対称ポテンシャルのシュレーディンガー方程式)