第41章特殊関数 — ベッセル関数とラゲールの多項式
前章(第40章)では,ルジャンドルの微分方程式に第39章のフロベニウスの理論($x=0$ が確定特異点(regular singular point)であるとき,$y=x^\lambda\sum_{k=0}^{\infty}a_kx^k$ の形の級数解をもつ,という理論)を適用し,次数が非負整数のときに限って無限級数が途中で止まり,多項式解(ルジャンドルの多項式)が得られることを見た.本章では同じ道具を,工学・物理学・材料科学のいたるところに現れる2つの微分方程式——ベッセルの微分方程式(Bessel's differential equation)とラゲールの微分方程式(Laguerre's differential equation)——に適用する.
ベッセルの微分方程式は,円柱座標(cylindrical coordinates)でラプラス方程式や波動方程式・熱伝導方程式を変数分離すると必ず現れる方程式である.たとえば,太鼓の膜(円板)の振動,円柱状の棒の中の熱の伝わり方,光ファイバーの中を伝わる電磁波のモード——これらはすべてベッセルの微分方程式の解(ベッセル関数)で記述される.この方程式を第39章の方法で解くと,ルジャンドルの場合とは対照的に,次数がどんな実数であっても級数が無限に続き,多項式にはならない.しかしその無限級数は,日常使う $\sin x,\cos x,e^x$ と同じくらい「行儀のよい」関数(すべての実数 $x$ で収束する関数)になる.本章の前半(41.1〜41.3節)では,この無限級数を実際に手を動かして作り上げ,その過程でガンマ関数(階乗の一般化)という新しい道具を手に入れる.
後半(41.4〜41.5節)で扱うラゲールの微分方程式は,量子力学における水素原子のシュレーディンガー方程式の動径部分(原子核からの距離 $r$ だけに依存する部分)に現れる方程式であり,材料科学科の学生にとっては電子軌道・化学結合を理解するための出発点の1つである.この方程式は,ルジャンドルの方程式と同じように,パラメータ $m$ が非負整数のときに多項式解(ラゲールの多項式)をもつ.さらに一歩進んで,この多項式を何回か微分すると得られる「随伴ラゲール多項式」が,水素原子の動径波動関数そのものであることにも触れる.
- ベッセルの微分方程式にフロベニウスの級数解法を適用し,決定方程式 $\lambda=\pm\alpha$ を導く過程($a_1=0$ とする理由を含めて)
- ガンマ関数 $\Gamma(\alpha)=\int_0^\infty x^{\alpha-1}e^{-x}dx$ の定義と性質 $\Gamma(\alpha+1)=\alpha\Gamma(\alpha)$,$\Gamma(n+1)=n!$(階乗の一般化)
- ガンマ関数を使って,第1種ベッセル関数 $J_\alpha(x)=\displaystyle\sum_{k=0}^{\infty}\frac{(-1)^k}{k!\,\Gamma(\alpha+k+1)}\left(\frac{x}{2}\right)^{2k+\alpha}$ の級数表示を導き,その収束半径が常に $\infty$ であることを比の判定法で示す
- 次数 $\alpha$ が整数でないときと整数 $n$ のときで一般解の形が変わること,整数のとき $J_{-n}(x)=(-1)^nJ_n(x)$(線形従属)となることの証明
- 階数低下法(reduction of order)を使って,整数次のときにもう1つの独立な基本解 $Y_n(x)$(第2種ベッセル関数)を構成する方法
- ラゲールの微分方程式にフロベニウスの級数解法を適用し,決定方程式が重解 $\lambda=0$ になること,$m$ が非負整数のとき級数が有限項で止まって多項式解(ラゲールの多項式 $L_m(x)$)になることの証明
- (発展)ラゲールの微分方程式を $N$ 回微分して随伴ラゲール微分方程式を導く方法(数学的帰納法),ロドリーグの公式,随伴ラゲール多項式 $L_m^N(x)$ の級数表示
もとにしたノート:望月泰英『数学ノート 常微分方程式』 pp. 66–72.
41.1 ベッセルの微分方程式とフロベニウス級数解
実数のパラメータ(次数,order)$\alpha$($\alpha\ge0$ を考えることが多いが,以下の議論はどんな実数 $\alpha$ でも成り立つ)を固定して,次の2階線形微分方程式を考える.
$$ x^2\frac{d^2y}{dx^2}+x\frac{dy}{dx}+(x^2-\alpha^2)y=0 \tag{41.1}\label{eq:41-bessel-ode} $$これをベッセルの微分方程式(Bessel's differential equation)という.19世紀の数学者ベッセル(Friedrich Bessel)が天体力学の研究の中で調べた方程式で,その解をベッセル関数(Bessel function)とよぶ.この方程式が実際にどんな場面で現れるかは,41.3節末の物理的意味の欄でまとめて触れる.
41.1.1 $x=0$ が確定特異点であることの確認
式\eqref{eq:41-bessel-ode}を,最高階の微分の係数($x^2$)で割って標準形にそろえる.$x\neq0$ として両辺を $x^2$ で割ると,
$$ \frac{d^2y}{dx^2}+\frac{1}{x}\frac{dy}{dx}+\left(1-\frac{\alpha^2}{x^2}\right)y=0 $$となる.一般に2階線形微分方程式を $y''+P(x)y'+Q(x)y=0$ の形に書いたとき,ここでは
$$ P(x)=\frac1x,\qquad Q(x)=1-\frac{\alpha^2}{x^2} $$である.$P(x),Q(x)$ はどちらも $x=0$ で分母が $0$ になり定義できないから,$x=0$ はこの方程式の特異点(singular point)である.しかし第39章で学んだように,$xP(x)$ と $x^2Q(x)$ がどちらも $x=0$ でテイラー展開できる(=解析的な)関数であれば,$x=0$ は確定特異点(regular singular point)とよばれ,フロベニウスの級数解法が使える.実際に計算すると,
$$ xP(x)=x\cdot\frac1x=1=\underset{a_0}{(1)}+0\cdot x+0\cdot x^2+\cdots,\qquad x^2Q(x)=x^2-\alpha^2=\underset{b_0}{(-\alpha^2)}+0\cdot x+1\cdot x^2+0\cdot x^3+\cdots \tag{41.2}\label{eq:41-bessel-pq} $$となり,どちらも(もともと多項式なので)$x=0$ で明らかにテイラー展開できる.したがって $x=0$ は確定特異点であり,ベッセルの微分方程式は
$$ y=x^\lambda\sum_{k=0}^{\infty}a_kx^k=\sum_{k=0}^{\infty}a_kx^{k+\lambda}\qquad(a_0\neq0) \tag{41.3}\label{eq:41-frobenius-ansatz} $$の形の級数解を少なくとも1つもつ.
数学ノート:決定方程式の一般形(第39章の復習)
式\eqref{eq:41-frobenius-ansatz}を確定特異点をもつ方程式に代入すると,$x$ の最低次の項($k=0$ の項)の係数がつねに
$$ \lambda^2+(a_0-1)\lambda+b_0=0 $$という2次方程式(決定方程式,indicial equation)になる($a_0=\lim_{x\to0}xP(x)$,$b_0=\lim_{x\to0}x^2Q(x)$,第39章定理).この2次方程式の根 $\lambda$ が,級数解の最初の指数($x^\lambda$ の $\lambda$)を決める.これは,定数係数2階線形方程式(第35章)で基本解を $y=e^{\lambda x}$ とおいて導いた特性方程式 $a\lambda^2+b\lambda+c=0$ とちょうど同じ役割(級数・基本解の指数 $\lambda$ を決める代数方程式)を果たしている——ただし決定方程式はフロベニウス級数特有の形をしており,係数は $P(x),Q(x)$ の $x=0$ でのふるまい($a_0,b_0$)から決まる点が,定数係数の場合の係数 $a,b$ とは異なる.
式\eqref{eq:41-bessel-pq}より $a_0=1$,$b_0=-\alpha^2$ だから,ベッセルの微分方程式の決定方程式は
$$ \lambda^2+(1-1)\lambda+(-\alpha^2)=\lambda^2-\alpha^2=0 $$となり,$\lambda=\pm\alpha$ の2つの根をもつ.以下でこれを,級数を直接代入することで自力で確かめながら,係数 $a_k$ たちの間の関係(漸化式)まで求めよう.
41.1.2 級数の代入と係数の比較
式\eqref{eq:41-frobenius-ansatz}を項別に微分すると,
$$ \frac{dy}{dx}=\sum_{k=0}^{\infty}(k+\lambda)a_kx^{k+\lambda-1},\qquad \frac{d^2y}{dx^2}=\sum_{k=0}^{\infty}(k+\lambda)(k+\lambda-1)a_kx^{k+\lambda-2} $$である(べき関数の微分公式 $(x^n)'=nx^{n-1}$ を,指数が整数とは限らない $k+\lambda$ の場合にもそのまま使ってよい——これは高校で習うべき関数の微分公式が実数指数でも成り立つことの応用である).これらを式\eqref{eq:41-bessel-ode}の各項に代入すると,
$$ x^2\cdot\frac{d^2y}{dx^2}=\sum_{k=0}^{\infty}(k+\lambda)(k+\lambda-1)a_kx^{k+\lambda},\qquad x\cdot\frac{dy}{dx}=\sum_{k=0}^{\infty}(k+\lambda)a_kx^{k+\lambda} $$(それぞれ $x^{k+\lambda-2}$,$x^{k+\lambda-1}$ に $x^2$,$x$ を掛けたので,指数がそろって $x^{k+\lambda}$ になったことに注意).また $x^2y=\sum a_kx^{k+\lambda+2}$,$-\alpha^2y=-\alpha^2\sum a_kx^{k+\lambda}$ である.これらをすべて足し合わせて $=0$ とおくと,
$$ \sum_{k=0}^{\infty}\Big\{(k+\lambda)(k+\lambda-1)+(k+\lambda)-\alpha^2\Big\}a_kx^{k+\lambda}+\sum_{k=0}^{\infty}a_kx^{k+\lambda+2}=0 $$ここで中括弧の中を整理する.$(k+\lambda)(k+\lambda-1)+(k+\lambda)=(k+\lambda)\big\{(k+\lambda-1)+1\big\}=(k+\lambda)^2$($(k+\lambda)$ をくくり出した)だから,
$$ \sum_{k=0}^{\infty}\big\{(k+\lambda)^2-\alpha^2\big\}a_kx^{k+\lambda}+\sum_{k=0}^{\infty}a_kx^{k+\lambda+2}=0 \tag{41.4}\label{eq:41-bessel-two-sums} $$という,2つの級数の和がつねに $0$ になる,という式が得られた.
イメージ:2つの級数の指数をそろえる(添字の付け替え)
式\eqref{eq:41-bessel-two-sums}の左の級数は $x^\lambda,x^{\lambda+1},x^{\lambda+2},\dots$ という指数の列,右の級数は $x^2$ が余分に掛かっているせいで $x^{\lambda+2},x^{\lambda+3},x^{\lambda+4},\dots$ という指数の列である.2つの級数を1本にまとめて「$x^{k+\lambda}$ の係数は全部 $0$」という条件を引き出すには,両方の級数を同じ指数の記号でそろえる必要がある.そこで右の級数だけ,和の添字を $k$ から $j=k+2$ に付け替える($k=j-2$,$k=0,1,2,\dots$ のとき $j=2,3,4,\dots$).すると
$$ \sum_{k=0}^{\infty}a_kx^{k+\lambda+2}=\sum_{j=2}^{\infty}a_{j-2}x^{j+\lambda} $$となる.和の記号 $j$ はただの「数える文字」なので,改めて $k$ と書き直してよい($\sum_{j=2}^{\infty}a_{j-2}x^{j+\lambda}=\sum_{k=2}^{\infty}a_{k-2}x^{k+\lambda}$).こうして右の級数も「$x^{k+\lambda}$ の形」でそろった.
この付け替えを使うと,式\eqref{eq:41-bessel-two-sums}の左の級数を $k=0,1$ の項と $k\ge2$ の項に分けて,
$$ (\lambda^2-\alpha^2)a_0x^{\lambda}+\big\{(\lambda+1)^2-\alpha^2\big\}a_1x^{\lambda+1} +\sum_{k=2}^{\infty}\Big[\big\{(k+\lambda)^2-\alpha^2\big\}a_k+a_{k-2}\Big]x^{k+\lambda}=0 $$と書き直せる($k=0,1$ の項には,右の級数からは何も足されない――右の級数は $k\ge2$ からしか始まらないから).これがすべての $x$ について成り立つ恒等式だから,$x^\lambda,x^{\lambda+1},x^{\lambda+2},\dots$ の係数がそれぞれ $0$ でなければならない.すなわち,
$$ (\lambda^2-\alpha^2)a_0=0,\qquad \big\{(\lambda+1)^2-\alpha^2\big\}a_1=0,\qquad \big\{(k+\lambda)^2-\alpha^2\big\}a_k+a_{k-2}=0\ \ (k\ge2) $$を得る.最後の関係式で,和の添字を $k\to k+2$ と付け替える(つまり,これから先は「$a_k$ から $a_{k+2}$ を作る」という向きで使いたいので,$k\ge2$ を $k\ge0$ に,$a_k$ を $a_{k+2}$ に読み替える)と,ノートと同じ記法になる:
$$ (\lambda^2-\alpha^2)a_0=0,\qquad \big\{(\lambda+1)^2-\alpha^2\big\}a_1=0,\qquad \big\{(k+\lambda+2)^2-\alpha^2\big\}a_{k+2}+a_k=0\ \ (k=0,1,2,\dots) \tag{41.5}\label{eq:41-bessel-recurrence} $$(右端の等式は,$(k+\lambda+2)^2-\alpha^2=(k+\lambda+2-\alpha)(k+\lambda+2+\alpha)$ と因数分解できることも覚えておくと,41.2節の計算で便利である.)
41.1.3 決定方程式と $a_1=0$ の理由
$a_0\neq0$(フロベニウス級数の前提)だから,式\eqref{eq:41-bessel-recurrence}の最初の式より $\lambda^2-\alpha^2=0$,すなわち
$$ \lambda=\pm\alpha $$である(41.1.1節の決定方程式の一般形から得た結果と一致することを確認しておこう).次に,$a_1$ について考える.もし $a_1\neq0$ だったとすると,式\eqref{eq:41-bessel-recurrence}の2番目の式から $(\lambda+1)^2-\alpha^2=0$ でなければならない.$\lambda=\alpha$ の場合と $\lambda=-\alpha$ の場合を調べると,
$$ \lambda=\alpha:\ (\alpha+1)^2-\alpha^2=2\alpha+1=0\ \Longrightarrow\ \alpha=-\frac12,\qquad \lambda=-\alpha:\ (1-\alpha)^2-\alpha^2=1-2\alpha=0\ \Longrightarrow\ \alpha=\frac12 $$となる.つまり「$a_1\neq0$」が許されるのは,$\alpha=\pm1/2$ というごく特別な場合だけである.
注意:なぜ $a_1=0$ としてよいのか
私たちが求めたいのは,任意の実数 $\alpha$ に対して成り立つ級数解の作り方である.$\alpha=\pm1/2$ でしか使えない特別な項($a_1x^{\lambda+1}$ の項)を式に残しておくと,一般の $\alpha$ に対しては式\eqref{eq:41-bessel-recurrence}の2番目の式が「$0\cdot a_1=0$」以外にはなり得ず矛盾してしまう.そこで,一般の $\alpha$ について議論するために
$$ a_1=0 $$と定める.これは決して「$\alpha=\pm1/2$ のときの情報を捨てている」わけではない——$\alpha=1/2$ の場合の特別な級数の項は,実はもう一方の指数($\lambda=-\alpha=-1/2$ の側の解)にすべて現れることになる.一般解は $\lambda=\alpha$ の解と $\lambda=-\alpha$ の解の2つを組み合わせて作るので,情報が失われることはない.
$a_1=0$ とすると,漸化式 $\{(k+\lambda+2)^2-\alpha^2\}a_{k+2}=-a_k$($k=0,1,2,\dots$)を $k=1$ から始めて追いかけると,$a_1=0\Rightarrow a_3=0\Rightarrow a_5=0\Rightarrow\cdots$ となり,
$$ a_1=a_3=a_5=\cdots=0 $$である.したがって,係数が $0$ でなく残るのは $a_0,a_2,a_4,\dots$ という偶数番目の係数だけであり,これらは
$$ a_{k+2}=\frac{-a_k}{(k+\lambda+2)^2-\alpha^2}\qquad(k=0,2,4,\dots) $$という漸化式で,$\lambda=\alpha$ のときと $\lambda=-\alpha$ のときのそれぞれについて求めればよい.次節でこれを実行する.
例題41.1 $\alpha=2$ のときの決定方程式と係数 $a_2,a_4$
$\alpha=2$ のとき,ベッセルの微分方程式の決定方程式を解き,$\lambda=\alpha=2$ の側の係数 $a_2,a_4$ を $a_0$ で表せ.
解答 決定方程式は $\lambda^2-\alpha^2=\lambda^2-4=0$ より $\lambda=\pm2$.$\lambda=\alpha=2$ の側を考える.漸化式 $\{(k+\lambda+2)^2-\alpha^2\}a_{k+2}=-a_k$ に $\lambda=2,\alpha=2$ を代入すると,
$$ \{(k+4)^2-4\}a_{k+2}=-a_k $$$k=0$:$\{(0+4)^2-4\}a_2=-a_0$,すなわち $(16-4)a_2=-a_0$ より
$$ a_2=-\frac{a_0}{12} $$$k=2$:$\{(2+4)^2-4\}a_4=-a_2$,すなわち $(36-4)a_4=-a_2$ より
$$ a_4=-\frac{a_2}{32}=-\frac{1}{32}\times\left(-\frac{a_0}{12}\right)=\frac{a_0}{384} $$を得る(41.2節で導く一般公式 $a_{2n}=\dfrac{(-1)^n}{n!\,2^{2n}(\alpha+1)(\alpha+2)\cdots(\alpha+n)}a_0$ に $\alpha=2$,$n=1,2$ を代入すると,$a_2=\dfrac{-1}{1!\cdot4\cdot3}a_0=-\dfrac{a_0}{12}$,$a_4=\dfrac{1}{2!\cdot16\cdot(3\cdot4)}a_0=\dfrac{a_0}{384}$ となり,上の計算と一致する.sympyで検算済み).
41.2 ガンマ関数と第1種ベッセル関数
41.2.1 $\lambda=\alpha$ のときの一般項
41.1節末の漸化式に $\lambda=\alpha$ を代入すると,$(k+\alpha+2)^2-\alpha^2=(k+2)(k+2\alpha+2)=(k+2)\{(k+2)+2\alpha\}$ となるので(これは $A^2-B^2=(A-B)(A+B)$ の因数分解で $A=k+\alpha+2,\ B=\alpha$ としたものである),漸化式は
$$ a_{k+2}=\frac{-a_k}{(k+2)(k+2+2\alpha)} $$となる.$k=0,2,4,\dots$ と代入して,$a_2,a_4,a_6$ を実際に計算してみよう.
$$ a_2=-\frac{a_0}{2\cdot(2+2\alpha)}=-\frac{1}{2\cdot2(\alpha+1)}a_0 $$($2+2\alpha=2(\alpha+1)$ とくくった.)続けて $k=2$ を代入すると,
$$ a_4=-\frac{a_2}{4\cdot(4+2\alpha)}=-\frac{1}{4\cdot2(\alpha+2)}\times\left\{-\frac{1}{2\cdot2(\alpha+1)}a_0\right\}=\frac{1}{2\cdot4\times2^2(\alpha+1)(\alpha+2)}a_0 $$($a_2$ の式を代入し,マイナス符号どうしが打ち消し合って $+$ になったことに注意.)さらに $k=4$ を代入すると,
$$ a_6=-\frac{a_4}{6\cdot(6+2\alpha)}=-\frac{1}{6\cdot2(\alpha+3)}\times\frac{1}{2\cdot4\times2^2(\alpha+1)(\alpha+2)}a_0=-\frac{1}{2\cdot4\cdot6\times2^3(\alpha+1)(\alpha+2)(\alpha+3)}a_0 $$という3つの式が並んだ.分母の構造をよく見ると,$2\cdot4\cdot6\cdots(2n)=2^n\cdot n!$($2$ を $n$ 個くくり出すと $1\cdot2\cdot3\cdots n=n!$ が残る)であり,符号は1段ごとに反転しているので $(-1)^n$,$(\alpha+1)(\alpha+2)\cdots(\alpha+n)$ の部分は1段ごとに項が1つずつ増えている.したがって,この計算を同じやり方で $n$ 段繰り返すと(数学的帰納法で正当化できる:「$a_{2(n-1)}$ について主張が成り立てば,漸化式を1回使って $a_{2n}$ についても成り立つ」という形の帰納法である),
$$ a_{2n}=\frac{(-1)^n}{2\cdot4\cdot6\cdots(2n)\times2^n(\alpha+1)(\alpha+2)\cdots(\alpha+n)}a_0 =\frac{(-1)^n}{n!\cdot2^{2n}(\alpha+1)(\alpha+2)\cdots(\alpha+n)}a_0 \tag{41.6}\label{eq:41-a2n-elementary} $$という一般項が得られる($2\cdot4\cdots(2n)\times2^n=2^n n!\times2^n=2^{2n}n!$ を使った).ベッセルの微分方程式の解の1つ($\lambda=\alpha$ のときのもの)は,
$$ y_1=\sum_{k=0}^{\infty}a_{2k}x^{2k+\alpha} $$である.
41.2.2 ガンマ関数
式\eqref{eq:41-a2n-elementary}の分母には $(\alpha+1)(\alpha+2)\cdots(\alpha+n)$ という「連続する数の積」が現れている.$\alpha$ が整数のときなら,これは階乗の一部として書けそうだが,$\alpha$ が整数でない一般の実数のときは,そのままでは階乗の記号 $n!$ が使えない.そこで,階乗を実数(さらには複素数)に拡張する道具を導入しよう.
定義41.1 ガンマ関数(Gamma function)
$\alpha\gt0$ に対して,
$$ \Gamma(\alpha)\overset{\text{def}}{=}\int_0^{\infty}x^{\alpha-1}e^{-x}\,dx \tag{41.7}\label{eq:41-gamma-def} $$と定める(この積分をガンマ関数という).
注意:この積分がきちんと存在すること
式\eqref{eq:41-gamma-def}の積分は,積分区間が $[0,\infty)$ と無限に伸びている上に,$\alpha\lt1$ のときは被積分関数 $x^{\alpha-1}e^{-x}$ が $x\to+0$ で発散する.つまりこれは第5章で学んだ広義積分(5.4節)と無限積分を組み合わせたものである.$x\to\infty$ では $e^{-x}$ が $x^{\alpha-1}$ よりずっと速く $0$ に近づくので積分は収束し,$x\to+0$ の広義積分も $\alpha\gt0$ なら収束する(詳しい収束の証明には立ち入らないが,直感的には「$e^{-x}$ の急減少が指数関数的にべき関数の増大に勝つ」ということである).
ガンマ関数のいちばん重要な性質は,次の漸化式である.
定理41.1 ガンマ関数の漸化式
$$ \Gamma(\alpha+1)=\alpha\,\Gamma(\alpha)\qquad(\alpha\gt0),\qquad\qquad \Gamma(1)=1 $$証明
$\Gamma(1)=\displaystyle\int_0^\infty x^0e^{-x}dx=\int_0^\infty e^{-x}dx=\big[-e^{-x}\big]_0^\infty=0-(-1)=1$(広義積分・無限積分の計算はいずれも高校数学の範囲の不定積分に極限を添えるだけでよい).
$\Gamma(\alpha+1)$ については,定義どおり書いて部分積分(高校既習の積分公式 $\int u'v\,dx=uv-\int uv'\,dx$ を,$u'=e^{-x}$(→ $u=-e^{-x}$),$v=x^\alpha$(→ $v'=\alpha x^{\alpha-1}$)として使う)を行う.
$$ \Gamma(\alpha+1)=\int_0^\infty x^\alpha e^{-x}dx =\Big[-x^\alpha e^{-x}\Big]_0^\infty-\int_0^\infty\big(-e^{-x}\big)\cdot\alpha x^{\alpha-1}dx $$右辺第1項は,$x\to\infty$ で $x^\alpha e^{-x}\to0$($e^{-x}$ の減少がどんなべき関数の増大にも勝つため),$x=0$ でも $\alpha\gt0$ なら $0^\alpha e^0=0$ なので,$\big[-x^\alpha e^{-x}\big]_0^\infty=0-0=0$ である.したがって
$$ \Gamma(\alpha+1)=\alpha\int_0^\infty x^{\alpha-1}e^{-x}dx=\alpha\,\Gamma(\alpha) $$を得る.(証明終わり)
この漸化式を繰り返し使うと,$\Gamma(n+1)=n\,\Gamma(n)=n(n-1)\Gamma(n-1)=\cdots=n(n-1)\cdots1\cdot\Gamma(1)=n!$($n$ が正の整数のとき)となる.すなわち,
$$ \Gamma(n+1)=n!\qquad(n=0,1,2,\dots) $$である.こうしてガンマ関数は,階乗 $n!$ を「整数でない実数」にまで拡張したものになっている——これが $\Gamma$ を導入するそもそもの動機である.
例題41.2 $\Gamma(5)=4!$ の確認
定理41.1の漸化式を繰り返し使って,$\Gamma(5)=4!$ であることを確かめよ.
解答 $\Gamma(5)=\Gamma(4+1)=4\,\Gamma(4)=4\times3\,\Gamma(3)=4\times3\times2\,\Gamma(2)=4\times3\times2\times1\,\Gamma(1)=4!\times1=24$.一方 $4!=4\times3\times2\times1=24$ なので,たしかに $\Gamma(5)=4!=24$ である(sympyで検算済み:$\Gamma(5)=24$).
同じ漸化式を繰り返し使うと,$(\alpha+1)(\alpha+2)\cdots(\alpha+n)$ という「連続する数の積」もガンマ関数でひとまとめに書ける.漸化式 $\Gamma(z+1)=z\Gamma(z)$ を $z=\alpha+n,\alpha+n-1,\dots,\alpha+1$ の順に $n$ 回使うと,
$$ \Gamma(\alpha+n+1)=(\alpha+n)\Gamma(\alpha+n)=(\alpha+n)(\alpha+n-1)\Gamma(\alpha+n-1)=\cdots=(\alpha+n)(\alpha+n-1)\cdots(\alpha+1)\,\Gamma(\alpha+1) $$すなわち
$$ (\alpha+1)(\alpha+2)\cdots(\alpha+n)=\frac{\Gamma(\alpha+n+1)}{\Gamma(\alpha+1)} \tag{41.8}\label{eq:41-gamma-product} $$という関係が得られる.これを使って,式\eqref{eq:41-a2n-elementary}を整理しよう.
41.2.3 第1種ベッセル関数の級数表示
式\eqref{eq:41-a2n-elementary}の $a_0$ を,天下り的に見えるかもしれないが,次のようにガンマ関数を使って選んでおく.
$$ a_0=\frac{1}{2^\alpha\,\Gamma(\alpha+1)} $$(このように選ぶ理由は,代入してみれば最終的な式がいちばん簡潔になるからである——ちょうど第40章でルジャンドルの多項式の規格化定数を「あとから振り返って一番よい形になるように」選んだのと同じ発想である).これを式\eqref{eq:41-a2n-elementary}に代入すると,
$$ a_{2k}x^{2k+\alpha}=\frac{(-1)^k}{2^{2k}\,k!\,(\alpha+1)(\alpha+2)\cdots(\alpha+k)}\times\frac{1}{2^\alpha\,\Gamma(\alpha+1)}\,x^{2k+\alpha} $$ここで式\eqref{eq:41-gamma-product}($n=k$ の場合)を使うと,$(\alpha+1)(\alpha+2)\cdots(\alpha+k)\,\Gamma(\alpha+1)=\Gamma(\alpha+k+1)$ であり,さらに $k!=\Gamma(k+1)$(定理41.1の系)だから,分母は
$$ \underset{=\,\Gamma(k+1)}{k!}\times\underset{=\,\Gamma(\alpha+k+1)}{(\alpha+1)(\alpha+2)\cdots(\alpha+k)\,\Gamma(\alpha+1)}=\Gamma(k+1)\,\Gamma(\alpha+k+1) $$とひとまとめにできる.また $2^{2k}\times2^\alpha=2^{2k+\alpha}$ なので,
$$ a_{2k}x^{2k+\alpha}=\frac{(-1)^k}{\Gamma(k+1)\,\Gamma(\alpha+k+1)}\cdot\frac{x^{2k+\alpha}}{2^{2k+\alpha}}=\frac{(-1)^k}{k!\,\Gamma(\alpha+k+1)}\left(\frac{x}{2}\right)^{2k+\alpha} $$($\Gamma(k+1)=k!$ に戻した.また $x^{2k+\alpha}/2^{2k+\alpha}=(x/2)^{2k+\alpha}$ とまとめた.)したがって,
$$ y_1=\sum_{k=0}^{\infty}\frac{(-1)^k}{k!\,\Gamma(\alpha+k+1)}\left(\frac{x}{2}\right)^{2k+\alpha} \tag{41.9}\label{eq:41-y1-series} $$という,たいへん見通しのよい級数表示が得られた.41.3節で,この $y_1$ に正式な名前($J_\alpha(x)$)を与える.
41.2.4 $\lambda=-\alpha$ のときの解
もう1つの決定方程式の根 $\lambda=-\alpha$ に対応する解 $y_2$ を求めよう.41.1.2節の漸化式 $\{(k+\lambda+2)^2-\alpha^2\}a_{k+2}+a_k=0$ に $\lambda=-\alpha$ を代入すると $\{(k-\alpha+2)^2-\alpha^2\}a_{k+2}+a_k=0$ となる.
イメージ:なぜ「$\alpha$ を $-\alpha$ に置き換えるだけ」でよいのか
$\lambda=\alpha$ の場合の漸化式の分母 $(k+\alpha+2)^2-\alpha^2$ を見比べてみよう.$\alpha\to-\alpha$ と置き換えると,$(k-\alpha+2)^2-(-\alpha)^2=(k-\alpha+2)^2-\alpha^2$ となり,これは $\lambda=-\alpha$ の場合の漸化式の分母とぴったり一致する($\alpha^2$ は $\alpha\to-\alpha$ で値が変わらないことがポイントである).また $a_0$ の定義式 $a_0=1/(2^\alpha\Gamma(\alpha+1))$ も,$\alpha\to-\alpha$ と置き換えれば $1/(2^{-\alpha}\Gamma(-\alpha+1))$ になる.つまり,41.2.1〜41.2.3節の計算全体が,$\alpha$ という文字を通してしか登場しない($\lambda$ という独立な文字は使っていない)ので,$\lambda=\alpha$ の場合の結果の $\alpha$ をすべて $-\alpha$ に置き換えれば,それがそのまま $\lambda=-\alpha$ の場合の結果になる.
したがって,式\eqref{eq:41-y1-series}の $\alpha$ を $-\alpha$ に置き換えるだけで,
$$ y_2=\sum_{k=0}^{\infty}\frac{(-1)^k}{k!\,\Gamma(-\alpha+k+1)}\left(\frac{x}{2}\right)^{2k-\alpha} \tag{41.10}\label{eq:41-y2-series} $$を得る.次節で,この $y_1,y_2$ を正式な特殊関数として定義し,一般解の形を確定させる.
41.3 ベッセルの微分方程式の一般解
41.3.1 第1種ベッセル関数の定義
41.2節で得られた2つの級数解 $y_1$(式\eqref{eq:41-y1-series})と $y_2$(式\eqref{eq:41-y2-series})に,正式な名前を与えよう.
定義41.2 第1種ベッセル関数(Bessel function of the first kind)
実数 $\alpha$($-\infty\lt\alpha\lt\infty$)に対して,
$$ J_\alpha(x)\overset{\text{def}}{=}\sum_{k=0}^{\infty}\frac{(-1)^k}{k!\,\Gamma(\alpha+k+1)}\left(\frac{x}{2}\right)^{2k+\alpha} \tag{41.11}\label{eq:41-jalpha-def} $$と定め,これを$\alpha$ 次第1種ベッセル関数(Bessel function of the first kind of order $\alpha$)という.すなわち $y_1=J_\alpha(x)$,$y_2=J_{-\alpha}(x)$(式\eqref{eq:41-y2-series}は $J_\alpha(x)$ の定義式で $\alpha$ を $-\alpha$ に置き換えたものになっている)であり,$J_\alpha(x)$ はベッセルの微分方程式\eqref{eq:41-bessel-ode}の基本解の1つである.
「基本解の1つ」とわざわざ書いたのは,これだけではまだ「一般解」(独立な2つの基本解の1次結合)にならないからである.一般解の形は,次数 $\alpha$ が整数かどうかで大きく変わる——このことを41.3.3節・41.3.4節でくわしく調べる.その前に,まず定義41.2の級数が具体的にどんな関数になるのかを,簡単な場合で確かめておこう.
例題41.3 $J_{1/2}(x)$ を初等関数で表す
$\alpha=\dfrac12$ のとき,$J_{1/2}(x)=\sqrt{\dfrac{2}{\pi x}}\,\sin x$ となることを示せ.
解答 定義41.2に $\alpha=1/2$ を代入すると,
$$ J_{1/2}(x)=\sum_{k=0}^{\infty}\frac{(-1)^k}{k!\,\Gamma\!\left(k+\dfrac32\right)}\left(\frac{x}{2}\right)^{2k+1/2} $$となる.まず分母の $\Gamma(k+3/2)$ を,$\Gamma(1/2)=\sqrt\pi$(本章冒頭の前提でも触れたとおり,これは第7章のガウス積分の計算からわかる値である)から出発して閉じた形にする.定理41.1の漸化式 $\Gamma(z+1)=z\Gamma(z)$ を $\Gamma(1/2)$ に $k+1$ 回くり返し使うと,
$$ \Gamma\!\left(k+\frac32\right)=\left(k+\frac12\right)\left(k-\frac12\right)\cdots\frac32\cdot\frac12\cdot\Gamma\!\left(\frac12\right) =\sqrt\pi\cdot\frac{1\cdot3\cdot5\cdots(2k+1)}{2^{k+1}} $$である($k+1$ 個の因子 $\frac12,\frac32,\dots,k+\frac12$ のそれぞれから分母の $2$ をくくり出すと,分子には奇数 $1,3,5,\dots,2k+1$ が $k+1$ 個並ぶ).分子の「奇数だけの積」$1\cdot3\cdot5\cdots(2k+1)$ は,$(2k+1)!=1\cdot2\cdot3\cdots(2k+1)$ から偶数の積 $2\cdot4\cdots(2k)=2^kk!$ を割り出したものに等しいから,
$$ 1\cdot3\cdot5\cdots(2k+1)=\frac{(2k+1)!}{2^kk!} $$これを代入すると,
$$ \Gamma\!\left(k+\frac32\right)=\sqrt\pi\cdot\frac{(2k+1)!}{2^kk!\cdot2^{k+1}}=\frac{(2k+1)!}{4^kk!}\cdot\frac{\sqrt\pi}{2} \tag{41.12}\label{eq:41-gamma-half-integer} $$という閉じた形が得られる($k=0,1,2,3$ で数値を代入すると $\Gamma(3/2)=\sqrt\pi/2$,$\Gamma(5/2)=3\sqrt\pi/4$,$\Gamma(7/2)=15\sqrt\pi/8$,$\Gamma(9/2)=105\sqrt\pi/16$ となり,sympyで検算済み).これを $J_{1/2}(x)$ の級数に代入すると,
$$ \frac{1}{k!\,\Gamma(k+3/2)}=\frac{1}{k!}\cdot\frac{4^kk!}{(2k+1)!}\cdot\frac{2}{\sqrt\pi}=\frac{2\cdot4^k}{(2k+1)!\sqrt\pi} $$($k!$ どうしが約分で消えた).したがって
$$ J_{1/2}(x)=\sum_{k=0}^{\infty}(-1)^k\cdot\frac{2\cdot4^k}{(2k+1)!\sqrt\pi}\cdot\frac{x^{2k+1/2}}{2^{2k+1/2}} $$ここで $4^k=2^{2k}$ だから $\dfrac{4^k}{2^{2k+1/2}}=\dfrac{1}{2^{1/2}}=\dfrac{1}{\sqrt2}$ であり,$\dfrac{2}{\sqrt2}=\sqrt2$ なので,
$$ J_{1/2}(x)=\sqrt{\frac{2}{\pi}}\cdot x^{1/2}\sum_{k=0}^{\infty}\frac{(-1)^k}{(2k+1)!}x^{2k} =\sqrt{\frac{2}{\pi}}\cdot\frac{1}{\sqrt x}\sum_{k=0}^{\infty}\frac{(-1)^k}{(2k+1)!}x^{2k+1} $$(最後の等号では $x^{1/2}=x/\sqrt x$ として,和の中の指数を $2k+1$ に合わせた).ところが和 $\displaystyle\sum_{k=0}^{\infty}\dfrac{(-1)^k}{(2k+1)!}x^{2k+1}=x-\dfrac{x^3}{3!}+\dfrac{x^5}{5!}-\cdots$ は,まさに $\sin x$ のマクローリン展開(第4章既習)そのものである.よって
$$ J_{1/2}(x)=\sqrt{\frac{2}{\pi}}\cdot\frac{\sin x}{\sqrt x}=\sqrt{\frac{2}{\pi x}}\,\sin x $$を得る(sympyで,級数を6項目まで展開して両辺が一致すること,および $x=2.3456$ での数値(級数を40項足したもの)が $\sqrt{2/(\pi x)}\sin x$ と小数第8位まで一致することを検算済み).このように,半整数次のベッセル関数は初等関数(三角関数)で表せることが知られている——これは球ベッセル関数とよばれ,のちに電磁気学や量子力学(球対称なポテンシャルのもとでの波動方程式)で重要な役割を果たす.
41.3.2 収束半径 — なぜ全ての実数で使えるのか
級数\eqref{eq:41-jalpha-def}は,本当にすべての実数 $x$ に対して意味をもつ(収束する)のだろうか.高校で学んだ比の判定法(ratio test:$\left|\dfrac{c_{n+1}}{c_n}\right|\to r$ のとき,級数 $\sum c_n$ は $r\lt1$ なら収束,$r\gt1$ なら発散する,という判定法)を,係数の絶対値の比に対して使う.式\eqref{eq:41-a2n-elementary}の $a_{2n}$($a_0$ を式\eqref{eq:41-jalpha-def}の規格化に合わせたもの,すなわち $a_{2n}=\dfrac{(-1)^n}{n!\,\Gamma(\alpha+n+1)}\cdot\dfrac{1}{2^{2n+\alpha}}$ の分母部分)を使って,隣り合う偶数番目の項の比を計算すると,
$$ \left|\frac{a_{2n}}{a_{2n+2}}\right| =\left|\frac{(n+1)!\,\Gamma(\alpha+n+2)}{n!\,\Gamma(\alpha+n+1)}\right| $$となる.ここで $\dfrac{(n+1)!}{n!}=n+1$(階乗の定義そのもの)であり,$\dfrac{\Gamma(\alpha+n+2)}{\Gamma(\alpha+n+1)}=\alpha+n+1$(定理41.1の漸化式 $\Gamma(z+1)=z\Gamma(z)$ を $z=\alpha+n+1$ として使った)だから,
$$ R^2=\lim_{n\to\infty}\left|\frac{a_{2n}}{a_{2n+2}}\right|=\lim_{n\to\infty}(n+1)(\alpha+n+1)=\infty \tag{41.13}\label{eq:41-convergence-radius} $$($n\to\infty$ のとき $(n+1)(\alpha+n+1)$ は $n^2$ のオーダーで際限なく大きくなる).したがって収束半径は $R=\infty$,すなわち級数\eqref{eq:41-jalpha-def}はどんな実数 $x$ に対しても絶対収束する.これは,日常使う $\sin x,\cos x,e^x$ のマクローリン級数がすべての実数で収束するのとまったく同じ性質であり,第39章のべき級数解法の一般論(確定特異点のまわりのフロベニウス級数は,もとの方程式の $P(x),Q(x)$ が「悪さをする」次の特異点までは必ず収束する)とも整合する——ベッセルの微分方程式\eqref{eq:41-bessel-ode}の特異点は $x=0$ だけであり,$x=0$ 以外に特異点がないので,$x=0$ を除くすべての複素数(したがってすべての実数)で級数が収束するのは自然なことである.
41.3.3 次数が整数でないとき:一般解
次の定理では,記号 $\in$(「属する」,is an element of)を使う.$\alpha\in\mathbb{Z}$ は「$\alpha$ が整数の集合 $\mathbb{Z}$ に属する」,すなわち「$\alpha$ が整数である」ことを表す.その否定を表す記号が $\notin$(属さない)であり,$\alpha\notin\mathbb{Z}$ は「$\alpha$ が整数でない」ことを表す.
定理41.2 ベッセルの微分方程式の一般解
ベッセルの微分方程式\eqref{eq:41-bessel-ode}の一般解は,次数 $\alpha$ が整数かどうかに応じて次のようになる.
(I) $\alpha\notin\mathbb{Z}$(整数でない)とき,
$$ y=C_1J_\alpha(x)+C_2J_{-\alpha}(x) $$(II) $\alpha\in\mathbb{Z}$(整数)のとき,$\alpha=n$ とおくと,
$$ y=C_1J_n(x)+C_2Y_n(x) $$ここで $Y_n(x)$ は $n$ 次第2種ベッセル関数(Bessel function of the second kind)とよばれる関数で,41.3.5節で構成する.($C_1,C_2$ は任意定数.)
注意:なぜ場合分けが必要なのか
(I) の場合は $J_\alpha(x)$ と $J_{-\alpha}(x)$ が線形独立(互いの定数倍で表せない)なので,この2つをそのまま組み合わせれば一般解になる.ところが (II) の場合,つまり次数が整数 $n$ のときは,$J_n(x)$ と $J_{-n}(x)$ が線形従属になってしまう——同じ関数を定数倍しただけのものを2つ並べても,2階線形微分方程式に必要な「独立な2つの基本解」にはならない.そこで整数次のときだけ,$J_{-n}(x)$ の代わりに,$J_n(x)$ とは独立な別の関数 $Y_n(x)$ をわざわざ探さなければならない.以下,41.3.4節でこの「線形従属になってしまう」ことを証明し,41.3.5節でその代わりとなる $Y_n(x)$ を実際に構成する.
まず (I) の場合,すなわち $\alpha$ が整数でない場合を確かめる.$x\to+0$ のとき,定義41.2の級数の先頭の項($k=0$ の項)だけを取り出すと,
$$ J_\alpha(x)\sim\frac{1}{\Gamma(\alpha+1)}\left(\frac{x}{2}\right)^{\alpha},\qquad J_{-\alpha}(x)\sim\frac{1}{\Gamma(-\alpha+1)}\left(\frac{x}{2}\right)^{-\alpha} \qquad(x\to+0) $$である($k\ge1$ の項は,$k=0$ の項に比べて $x^2,x^4,\dots$ の分だけ小さくなるので,$x\to+0$ では無視できる——これを「$x\to+0$ での主要項(漸近形)」という).もし $J_\alpha(x)=cJ_{-\alpha}(x)$($c$ はある実数)という関係がすべての $x\gt0$ で成り立ったとすると,両辺の $x\to+0$ での主要項を比べて,$x^\alpha$ の係数と $x^{-\alpha}$ の係数(を $c$ 倍したもの)が一致しなければならない.ところが $\alpha$ が整数でない(とくに $\alpha\neq0$ である)以上,$x^\alpha\to0$ と $x^{-\alpha}\to\infty$(あるいはその逆)というまったく異なるふるまいを $x\to+0$ で示すので,どちらの主要項も恒等的に $0$ でない限り,両者が定数倍で一致することはありえない(もし一致するなら $\alpha=-\alpha$,すなわち $\alpha=0$ となってしまい,$\alpha$ が整数でないという仮定に反する).よって $J_\alpha(x)$ を $J_{-\alpha}(x)$ の実数倍で表すことはできない,すなわち線形独立である.したがって,$\alpha\notin\mathbb{Z}$ のとき一般解は
$$ y=C_1J_\alpha(x)+C_2J_{-\alpha}(x) $$である.
41.3.4 次数が整数のとき:線形従属性 $J_{-n}(x)=(-1)^nJ_n(x)$
次に $\alpha$ が整数の場合を調べる.$\alpha=n$($n=0,1,2,\dots$)とおく.このとき,$\Gamma(n+k+1)=(n+k)!$($n+k$ が0以上の整数だから,定理41.1の系)なので,定義41.2の級数は
$$ J_n(x)=\sum_{k=0}^{\infty}\frac{(-1)^k}{k!\,\Gamma(n+k+1)}\left(\frac{x}{2}\right)^{2k+n} =\sum_{k=0}^{\infty}\frac{(-1)^k}{k!\,(n+k)!}\left(\frac{x}{2}\right)^{2k+n} \tag{41.14}\label{eq:41-jn-series} $$と,階乗だけで書ける形になる.一方,$J_{-n}(x)$ のほうは,定義41.2に $\alpha=-n$ を代入すると
$$ J_{-n}(x)=\sum_{k=0}^{\infty}\frac{(-1)^k}{k!\,\Gamma(-n+k+1)}\left(\frac{x}{2}\right)^{2k-n} $$となるが,ここで注意が必要である.$k=0,1,\dots,n-1$ のときは $-n+k+1\le0$ となり,$\Gamma(-n+k+1)$ は $0$ 以下の整数でのガンマ関数——つまり定義していない値——になってしまう.素朴には「$(-n+k)!$ の中身が負の整数では意味をなさない」と考えて,これらの項をすべて $0$ とみなす(この点は $k\ge n$ からだけ和をとればよい,という形で処理する).
イメージ:なぜ「負の階乗」の項は消えてしまうのか
もう少し正確に言うと,ガンマ関数の逆数 $1/\Gamma(z)$ は,$z=0,-1,-2,\dots$($0$ 以下の整数)でちょうど値が $0$ になる($\Gamma(z)$ 自身がそこで無限大に発散するため,その逆数は $0$ に「つぶれる」)という事実が背景にある.この事実の証明には複素関数論の知識が必要なのでここでは立ち入らないが,直感的には「階乗を負の整数まで無理に拡張しようとすると,値が無限に大きくなってしまうので,その逆数は $0$ として扱うのが自然だ」という理解でよい.本書では,$k\lt n$ の項は $1/\Gamma(-n+k+1)=0$ という理由で消える,と考えて先に進む.
したがって和は実質的に $k=n$ から始まり,
$$ J_{-n}(x)=\sum_{k=n}^{\infty}\frac{(-1)^k}{k!\,(-n+k)!}\left(\frac{x}{2}\right)^{2k-n} \tag{41.15}\label{eq:41-jminusn-series} $$($k\ge n$ なら $-n+k\ge0$ なので,$(-n+k)!$ は普通の階乗として意味をもつ).ここで和の添字を $k=n+\ell$($\ell=0,1,2,\dots$)と付け替える——これは41.1.2節で使ったのと同じ「添字の付け替え」のテクニックである.$k=n+\ell$ を代入すると,$k!=(n+\ell)!$,$-n+k=\ell$(だから $(-n+k)!=\ell!$),$2k-n=2(n+\ell)-n=n+2\ell$ となるので,
$$ J_{-n}(x)=\sum_{\ell=0}^{\infty}\frac{(-1)^{n+\ell}}{(n+\ell)!\,\ell!}\left(\frac{x}{2}\right)^{n+2\ell} $$を得る.和をとる文字 $\ell$ は「数える文字」にすぎないので,改めて $k$ と書き直すと,
$$ J_{-n}(x)=\sum_{k=0}^{\infty}\frac{(-1)^{n+k}}{(n+k)!\,k!}\left(\frac{x}{2}\right)^{2k+n} $$ここで $(-1)^{n+k}=(-1)^n(-1)^k$(指数法則)であり,$(-1)^n$ は $k$ に依存しないので和の外に出せる.すると
$$ J_{-n}(x)=(-1)^n\sum_{k=0}^{\infty}\frac{(-1)^k}{(n+k)!\,k!}\left(\frac{x}{2}\right)^{2k+n}=(-1)^nJ_n(x) \tag{41.16}\label{eq:41-jminusn-equals} $$となる(和の中身が式\eqref{eq:41-jn-series}の $J_n(x)$ の級数とまったく同じであることに注意).すなわち
が成り立つ.$J_{-n}(x)$ が $J_n(x)$ の実数倍($\pm1$倍)として表されてしまったので,$J_n(x)$ と $J_{-n}(x)$ は線形従属である.したがって,$\alpha$ が整数のときは $J_n(x)$ と $J_{-n}(x)$ を組み合わせても一般解にはならず,定理41.2の (II) で述べたように,$J_n(x)$ とは独立な別の解 $Y_n(x)$ が必要になる.
例題41.4 $n=2$ で線形従属性を直接確かめる
$J_2(x)$ の級数の最初の2項を求めよ.また,式\eqref{eq:41-jminusn-series}($n=2$)から $J_{-2}(x)$ を直接計算し,$J_{-2}(x)=J_2(x)$($(-1)^2=1$ の場合)となることを確認せよ.
解答 式\eqref{eq:41-jn-series}に $n=2$ を代入すると,
$$ J_2(x)=\sum_{k=0}^{\infty}\frac{(-1)^k}{k!\,(k+2)!}\left(\frac{x}{2}\right)^{2k+2} $$であり,最初の2項($k=0,1$)は,
$$ k=0:\ \frac{1}{0!\,2!}\left(\frac x2\right)^2=\frac{x^2}{8},\qquad k=1:\ \frac{-1}{1!\,3!}\left(\frac x2\right)^4=-\frac{x^4}{96} $$である.一方,式\eqref{eq:41-jminusn-series}に $n=2$ を代入すると,
$$ J_{-2}(x)=\sum_{k=2}^{\infty}\frac{(-1)^k}{k!\,(k-2)!}\left(\frac{x}{2}\right)^{2k-2} $$となる.$k=2$ の項は $\dfrac{1}{2!\,0!}\left(\dfrac x2\right)^2=\dfrac{x^2}8$,$k=3$ の項は $\dfrac{-1}{3!\,1!}\left(\dfrac x2\right)^4=-\dfrac{x^4}{96}$ であり,$J_2(x)$ の最初の2項とぴったり一致している.一般項でも,式\eqref{eq:41-jminusn-equals}に $n=2$ を代入した $J_{-2}(x)=(-1)^2J_2(x)=J_2(x)$ が成り立つことを,級数の項ごとの計算(8項目まで)でsympyにより確認した.
41.3.5 第2種ベッセル関数の構成 — 階数低下法
整数次 $n$ のとき,$J_n(x)$ と独立なもう1つの基本解を,階数低下法(reduction of order:1つの解 $J_n(x)$ がすでにわかっているとき,$y=U(x)J_n(x)$ の形(未知関数 $U(x)$ を掛けたもの)を仮定して代入し,$U(x)$ についての(より簡単な)微分方程式に帰着させる方法)で構成する.
注意:底本の文字づかいについて
底本のノート(p.69)では,独立変数を一貫して $\alpha$ と書いている($y=U(\alpha)J_n(\alpha)$ など).しかしこれは41.1〜41.3節で「次数」を表すのに使ってきた文字 $\alpha$ と紛らわしい.そこで教科書では,独立変数を本章でずっと使ってきた $x$ に統一し,次数は(すでに整数だとわかっているので)$n$ のまま書く.また,微分の回数を表す文字が底本では $N,n,k$ のあいだで揺れているが(後述41.5節も同様),これも文字を統一して書き直す.
$y=U(x)J_n(x)$ とおいて,$x$ で1階・2階微分すると(積の微分公式),
$$ \frac{dy}{dx}=U'J_n+UJ_n',\qquad \frac{d^2y}{dx^2}=U''J_n+2U'J_n'+UJ_n'' $$である.これらをベッセルの微分方程式\eqref{eq:41-bessel-ode}(次数 $n$)に代入すると,
$$ x^2\bigl(U''J_n+2U'J_n'+UJ_n''\bigr)+x\bigl(U'J_n+UJ_n'\bigr)+(x^2-n^2)UJ_n=0 $$を,$U,U',U''$ について整理し直す.
$$ \underbrace{\Bigl\{x^2J_n''+xJ_n'+(x^2-n^2)J_n\Bigr\}}_{=\,0\ (\because J_n\text{はベッセルの微分方程式の解})}U +x^2J_nU''+\bigl(2x^2J_n'+xJ_n\bigr)U'=0 $$下線部の中括弧は,$J_n(x)$ がベッセルの微分方程式\eqref{eq:41-bessel-ode}の解そのものだから恒等的に $0$ である(これが階数低下法の核心:もとの方程式の解を使っているおかげで,$U$ の係数がまるごと消える).したがって,残った部分だけの方程式
$$ x^2J_nU''+\bigl(2x^2J_n'+xJ_n\bigr)U'=0 $$が得られる.これは $U$ そのものを含まず,$U'$ と $U''$(=$U'$ の導関数)だけの方程式なので,$v=U'$ とおくと,$U''=v'$ を使って
$$ x^2J_nv'+\bigl(2x^2J_n'+xJ_n\bigr)v=0 $$という,$v$ についての1階線形微分方程式になる.両辺を $x^2J_nv$($\neq0$ と仮定)で割ると,
$$ \frac{v'}{v}=-\left(\frac{2J_n'}{J_n}+\frac1x\right) $$となり,これは変数分離形(両辺を $v$ の式と $x$ の式に完全に分離できる形)の微分方程式である.両辺を $x$ で積分すると,
$$ \int\frac{1}{v}\,dv=-\int\left(\frac{2J_n'}{J_n}+\frac1x\right)dx $$左辺は $\ln|v|+(\text{定数})$.右辺の第1項 $-2\displaystyle\int\dfrac{J_n'}{J_n}dx=-2\ln|J_n|$(置換積分 $u=J_n$ とすると $\int\frac{u'}{u}dx=\ln|u|$,という高校既習の積分公式の応用),第2項 $-\displaystyle\int\dfrac1x\,dx=-\ln|x|$ である.したがって積分定数を $\ln C_1'$($C_1'\gt0$)とまとめて書くと,
$$ \ln|v|=-2\ln|J_n|-\ln|x|+\ln C_1'=\ln\frac{C_1'}{|x|J_n^2} $$(最後の等号は,対数の性質 $\ln A-\ln B=\ln(A/B)$ と $a\ln A=\ln A^a$ を使って右辺をひとまとめの対数にした).両辺の指数をとると $|v|=\dfrac{C_1'}{|x|J_n^2}$ となり,絶対値をはずすと(符号は定数 $C_1=\pm C_1'$ に押し込めて)
$$ v=\frac{C_1}{xJ_n(x)^2} $$を得る.$v=U'$ だったから,$U(x)$ はこれをもう一度 $x$ で積分すればよい.
$$ U(x)=\int\frac{C_1}{xJ_n(x)^2}\,dx+C_2 $$$U(x)$ は「$J_n(x)$ と独立なもう1つの解」を作るための道具にすぎないので,いちばん簡単になるように $C_1=1,\ C_2=0$ ととってよい($C_1,C_2$ の他の値を選んでも,できあがる解は,これから作る $Y_n(x)$ の定数倍と $J_n(x)$ の定数倍を足したものになるだけで,本質的に新しい情報は増えない).こうして
$$ U(x)=\int\frac{dx}{xJ_n(x)^2} $$となり,$J_n(x)$ と線形独立な,ベッセルの微分方程式のもう1つの解が
定義41.3 第2種ベッセル関数(Bessel function of the second kind)
$$ Y_n(x)\overset{\text{def}}{=}J_n(x)\int\frac{dx}{xJ_n(x)^2} \tag{41.17}\label{eq:41-Y-formula} $$として得られる.$Y_n(x)$ は,$n$ 次ベッセルの微分方程式の,$J_n(x)$ とは独立な基本解である.
注意:これは「標準的な」第2種ベッセル関数(ノイマン関数)そのものではない
専門書で「第2種ベッセル関数」(あるいはノイマン関数,Neumann function)とよばれるものは,慣習的に決められた特定の定数倍・特定の1次結合($J_n(x)$ の対数微分,logarithmic derivative:$f$ に対する $\dfrac{f'}{f}=(\ln f)'$ のこと,に関する極限を含む,やや込み入った定義)として標準化されている.式\eqref{eq:41-Y-formula}の $Y_n(x)$ は,階数低下法によって「ここまでの計算だけから」作れる,$J_n(x)$ と独立な解の一例であり,本書ではこれをそのまま $Y_n(x)$ とよぶ.標準的なノイマン関数とは定数倍・$J_n(x)$ の定数倍の違いがあるが,「$J_n(x)$ と独立な2つ目の基本解」としての役割はまったく同じである.
以上により,定理41.2 (II) で述べた,整数次のときの一般解
$$ y=C_1J_n(x)+C_2Y_n(x) $$が,具体的な構成(式\eqref{eq:41-Y-formula})とともに確認できた.こうして,非負整数次数でも実数の任意の次数でも,ベッセルの微分方程式の一般解がすべて手に入ったことになる.
応用:ベッセルの微分方程式はどこに現れるか
ベッセルの微分方程式は,円柱座標(cylindrical coordinates,$r,\theta,z$)でラプラス方程式 $\nabla^2u=0$ や波動方程式・熱伝導方程式を変数分離すると,動径方向($r$ 方向)の常微分方程式として必ず現れる.具体例を挙げると,(1) 太鼓の膜(円板)の振動:円板の固有振動数と振動パターンは $J_n(x)$ の零点で決まる,(2) 円柱状の棒や配管の中の熱伝導:温度分布の動径方向の形が $J_0(x)$ で書ける,(3) 光ファイバーを伝わる電磁波のモード:ファイバーの断面内の電場分布が $J_n(x)$ で表される,など.材料科学の分野でも,円柱対称な試料(ワイヤー,繊維,円柱状の結晶)の振動・熱伝導・電磁気的性質を調べるときに,ベッセル関数は避けて通れない道具である.次章(第42章・第43章)で偏微分方程式の変数分離法を学んだあと,これらの具体例に立ち戻ることができる.
41.4 ラゲールの微分方程式とラゲールの多項式
本章の後半では,量子力学における水素原子のシュレーディンガー方程式の動径部分に現れるラゲールの微分方程式(Laguerre's differential equation)を扱う.ベッセルの微分方程式とは違って,この方程式はパラメータ $m$ が非負整数のとき,第40章のルジャンドルの方程式と同じように多項式解をもつ.
41.4.1 ラゲールの微分方程式とフロベニウス級数解法
非負整数のパラメータ $m$($m=0,1,2,\dots$)を固定して,次の2階線形微分方程式を考える.
$$ x\frac{d^2y}{dx^2}+(1-x)\frac{dy}{dx}+my=0 \tag{41.18}\label{eq:41-laguerre-ode} $$これをラゲールの微分方程式という.19世紀のフランスの数学者ラゲール(Edmond Laguerre)にちなむ.最高階の微分の係数($x$)で両辺を割ると,
$$ \frac{d^2y}{dx^2}+\frac{1-x}{x}\frac{dy}{dx}+\frac{m}{x}y=0 $$となる.$P(x)=\dfrac{1-x}{x}$,$Q(x)=\dfrac{m}{x}$ とおくと,
$$ xP(x)=1-x,\qquad x^2Q(x)=mx $$であり,どちらも $x$ の多項式(1次式)なので,$x=0$ で明らかにテイラー展開できる(=解析的である).したがって,41.1.1節・第39章の議論とまったく同じ理由で,$x=0$ はラゲールの微分方程式の確定特異点であり,フロベニウス級数の形の解
$$ y=\sum_{k=0}^{\infty}a_kx^{k+\lambda}\qquad(a_0\neq0) $$を少なくとも1つもつ.
この級数を項別に微分すると,
$$ \frac{dy}{dx}=\sum_{k=0}^{\infty}a_k(k+\lambda)x^{k+\lambda-1},\qquad \frac{d^2y}{dx^2}=\sum_{k=0}^{\infty}a_k(k+\lambda)(k+\lambda-1)x^{k+\lambda-2} $$である.これらを式\eqref{eq:41-laguerre-ode}に代入する.$x\cdot y''$ は指数が $x^{k+\lambda-2}$ から $x^{k+\lambda-1}$ に上がり,$(1-x)y'=y'-xy'$ は $y'$ の項(指数 $x^{k+\lambda-1}$)と,$-xy'$ の項(指数が $1$ 上がって $x^{k+\lambda}$)に分かれ,$my$ はそのまま指数 $x^{k+\lambda}$ である.まとめて書くと,
$$ \sum_{k=0}^{\infty}a_k(k+\lambda)(k+\lambda-1)x^{k+\lambda-1} +\sum_{k=0}^{\infty}a_k(k+\lambda)x^{k+\lambda-1} -\sum_{k=0}^{\infty}a_k(k+\lambda)x^{k+\lambda} +m\sum_{k=0}^{\infty}a_kx^{k+\lambda}=0 $$この4つの級数のうち,最初の2つは指数が $x^{k+\lambda-1}$($k=0,1,2,\dots$,すなわち $x^{\lambda-1},x^{\lambda},x^{\lambda+1},\dots$)であり,あとの2つは指数が $x^{k+\lambda}$($k=0,1,2,\dots$,すなわち $x^{\lambda},x^{\lambda+1},\dots$)である.すべてを「$x^{k+\lambda-1}$」の形にそろえるため,あとの2つの和で添字を $k\to k+1$ と付け替える($k=0,1,2,\dots$ が $x^{k+\lambda}$ のとき,付け替えた新しい添字を使うと $x^{(k+1)+\lambda-1}=x^{k+\lambda}$ となって指数が一致し,係数は $a_k\to a_{k-1}$ とずれる——41.1.2節・41.3.4節で使った添字の付け替えと同じ手順である).具体的には,
$$ -\sum_{k=0}^{\infty}a_k(k+\lambda)x^{k+\lambda}=-\sum_{k=1}^{\infty}a_{k-1}(k-1+\lambda)x^{k+\lambda-1},\qquad m\sum_{k=0}^{\infty}a_kx^{k+\lambda}=m\sum_{k=1}^{\infty}a_{k-1}x^{k+\lambda-1} $$となる(どちらも $k\ge1$ からのスタートに変わったことに注意).そこで,最初の2つの和の $k=0$ の項(これは付け替え後の和には対応する項がない,最低次の項)を分離して書くと,
$$ \lambda(\lambda-1)a_0x^{\lambda-1}+\lambda a_0x^{\lambda-1} +\sum_{k=1}^{\infty}\Bigl[a_k(k+\lambda)(k+\lambda-1)+a_k(k+\lambda)-a_{k-1}(k-1+\lambda)+ma_{k-1}\Bigr]x^{k+\lambda-1}=0 $$最低次の項をまとめると,$\lambda(\lambda-1)a_0+\lambda a_0=\lambda\{(\lambda-1)+1\}a_0=\lambda^2a_0$($\lambda$ をくくり出した).また $k\ge1$ の中括弧の中も,$a_k$ を含む部分 $a_k(k+\lambda)(k+\lambda-1)+a_k(k+\lambda)=a_k(k+\lambda)\{(k+\lambda-1)+1\}=a_k(k+\lambda)^2$(同じくくり出し)となり,$a_{k-1}$ を含む部分は $-a_{k-1}(k-1+\lambda)+ma_{k-1}=a_{k-1}\{m-(k-1+\lambda)\}$ である.したがって,
$$ \lambda^2a_0x^{\lambda-1}+\sum_{k=1}^{\infty}\Bigl[(k+\lambda)^2a_k+\{m-(k-1+\lambda)\}a_{k-1}\Bigr]x^{k+\lambda-1}=0 $$を得る.ここで和の添字を $k\to k+1$ ともう一度ずらして($k=1,2,\dots$ を $k=0,1,\dots$ に,$a_k\to a_{k+1}$,$a_{k-1}\to a_k$ に読み替える),底本と同じ形にそろえると,
$$ \lambda^2a_0x^{\lambda-1}+\sum_{k=0}^{\infty}\Bigl\{(k+\lambda+1)^2a_{k+1}-(k+\lambda-m)a_k\Bigr\}x^{k+\lambda}=0 \tag{41.19}\label{eq:41-laguerre-two-sums} $$($m-(k+\lambda)=-(k+\lambda-m)$ と符号を整えた).これがすべての $x$ について成り立つ恒等式だから,各べきの係数がそれぞれ $0$ でなければならない.すなわち,
を得る.
41.4.2 決定方程式(重解)と係数の漸化式
$a_0\neq0$(フロベニウス級数の前提)だから,式\eqref{eq:41-laguerre-recurrence}の最初の式より $\lambda^2=0$,すなわち
$$ \lambda=0\quad(\text{重解}) $$注意:ベッセルの場合との違い — 決定方程式が重解をもつ
41.1.3節で見たベッセルの微分方程式の決定方程式 $\lambda^2-\alpha^2=0$ は,$\alpha\neq0$ のとき異なる2つの根 $\lambda=\pm\alpha$ をもっていた.ところがラゲールの微分方程式の決定方程式 $\lambda^2=0$ は,$\lambda=0$ という同じ根を2回もつ(重解).このように決定方程式が重解をもつ場合,フロベニウスの理論の一般論(第39章)によれば,$\lambda=0$ に対応する級数解はもちろん1つ手に入るが,それと独立なもう1つの基本解は,一般には $y_2=y_1\ln x+\displaystyle\sum_{k=1}^\infty b_kx^k$ のように対数 $\ln x$ を含む形になることが知られている(決定方程式の2根が一致する場合に特有の現象である).本節でこのあと構成する解 $L_m(x)$(有限項で止まる多項式)は,この重解のフロベニウス理論から出てくる一方の基本解にすぎない.対数を含むもう一方の基本解の具体的な構成は本書の範囲を超えるので立ち入らないが,底本のノートの余白にも「なぜ基本解が1個しかたまらないのか」という著者自身の書き込みが残っており(41.5節末で改めて触れる),この現象——決定方程式の重解が対数解を要求すること——を著者が意識していたことがうかがえる.
$\lambda=0$ を式\eqref{eq:41-laguerre-recurrence}の漸化式に代入すると,
$$ (k+1)^2a_{k+1}=(k-m)a_k,\qquad\text{すなわち}\qquad a_{k+1}=-\frac{m-k}{(k+1)^2}a_k\qquad(k=0,1,2,\dots) \tag{41.21}\label{eq:41-laguerre-recurrence-lambda0} $$という,$a_k$ から $a_{k+1}$ を作る漸化式($\lambda=0$ の場合はベッセルのときと違って偶数番目・奇数番目に分かれず,すべての係数が1本の漸化式でつながっている)を得る.これを $k=0,1,2,\dots$ と実際にたどってみよう.
$$ a_1=-\frac{m-0}{1^2}a_0=-ma_0 $$ $$ a_2=-\frac{m-1}{2^2}a_1=-\frac{m-1}{4}\times(-ma_0)=\frac{m(m-1)}{2^2}a_0 $$ $$ a_3=-\frac{m-2}{3^2}a_2=-\frac{m-2}{9}\times\frac{m(m-1)}{4}a_0=-\frac{m(m-1)(m-2)}{1^2\cdot2^2\cdot3^2}a_0 $$(分母が $1^2\cdot2^2\cdot3^2=(3!)^2$ の形にそろっていくことに注意).この計算を $n$ 段くり返すと,一般に
$$ a_n=(-1)^n\frac{m(m-1)(m-2)\cdots(m-n+1)}{(n!)^2}a_0 $$となる.ここで $n\le m$($n,m$ がどちらも非負整数)のときは,分子の $m(m-1)\cdots(m-n+1)$ を $\dfrac{m!}{(m-n)!}$($m$ から $n$ 個の連続する整数の積は,$m!$ から下の $(m-n)!$ を割ったものに等しい——高校の順列の考え方そのものである)と書き直せるので,
$$ a_n=(-1)^n\frac{m!}{(n!)^2(m-n)!}a_0\qquad(0\le n\le m) \tag{41.22}\label{eq:41-laguerre-an} $$という閉じた形の一般項が得られる.さらに重要なのは,$n=m$ まで来ると,漸化式\eqref{eq:41-laguerre-recurrence-lambda0}の右辺の分子 $m-k$ が,$k=m$ でちょうど $0$ になることである.すなわち,
$$ a_{m+1}=-\frac{m-m}{(m+1)^2}a_m=0 $$であり,一度 $0$ になった係数は,漸化式によって次々に $0$ を引き継ぐ($a_{m+1}=0\Rightarrow a_{m+2}=-\frac{m-(m+1)}{(m+2)^2}a_{m+1}=0\Rightarrow\cdots$).よって
$$ a_{m+1}=a_{m+2}=a_{m+3}=\cdots=0 $$となり,級数は $m$ 次の項でぴったり止まって多項式になる.これは第40章でルジャンドルの多項式が生まれた仕組み——漸化式の分子の因子が,パラメータが非負整数のときにちょうど $0$ になって級数を打ち切る——とまったく同じ現象である.
41.4.3 ラゲールの多項式の定義
以上より,ラゲールの微分方程式の($\lambda=0$ に対応する)解は,
$$ y=\sum_{k=0}^{m}(-1)^k\frac{m!}{(k!)^2(m-k)!}a_0x^k =a_0\left\{1-mx+\frac{m(m-1)}{(2!)^2}x^2-\frac{m(m-1)(m-2)}{(3!)^2}x^3+\cdots+\frac{(-1)^m}{m!}x^m\right\} $$という,$m$ 次の多項式である.係数 $a_0$ は基本解の定数倍を決めるだけなので,$a_0=1$ ととって正式に名前を付ける.
定義41.4 ラゲールの多項式(Laguerre polynomial)
$m$ を非負整数($m=0,1,2,\dots$)とするとき,
$$ L_m(x)\overset{\text{def}}{=}\sum_{k=0}^{m}\frac{(-1)^km!}{(k!)^2(m-k)!}x^k \tag{41.23}\label{eq:41-Lm-def} $$をラゲールの多項式という.$L_m(x)$ は,ラゲールの微分方程式\eqref{eq:41-laguerre-ode}の $m$ 次の多項式解である.
ラゲールの微分方程式は線形同次方程式だから,$L_m(x)$ の定数倍もまた解である.そこで,$L_m(x)$ を $m!$ 倍した多項式
$$ \widehat L_m(x)\overset{\text{def}}{=}m!\,L_m(x)=\sum_{k=0}^{m}\frac{(-1)^k(m!)^2}{(k!)^2(m-k)!}x^k \tag{41.24}\label{eq:41-Lm-scaled} $$を「ラゲールの多項式」とよぶ流儀もある(式\eqref{eq:41-Lm-def}の $L_m(x)$ は $L_m(0)=1$ となる規格化であるのに対し,$\widehat L_m(x)$ は $\widehat L_m(0)=m!$ となる規格化である——どちらも「ラゲールの微分方程式の多項式解」という点では同じだが,定数倍の選び方が違うだけである).本書では,定義41.4の $L_m(x)$ を主定義として使うが,41.5節でロドリーグの公式を扱うときに,この $\widehat L_m(x)$ の記法が必要になる.
例題41.5 漸化式から $L_3(x)$ を求め,定義式と照合する
漸化式\eqref{eq:41-laguerre-recurrence-lambda0}を使って($a_0=1$ として)$m=3$ のときの $a_1,a_2,a_3$ を求め,$L_3(x)$ を定義41.4の式\eqref{eq:41-Lm-def}から直接計算した結果と一致することを確かめよ.
解答 $m=3,\ a_0=1$ として漸化式 $a_{k+1}=-\dfrac{3-k}{(k+1)^2}a_k$ を順に使う.
$$ a_1=-\frac{3-0}{1^2}a_0=-3,\qquad a_2=-\frac{3-1}{2^2}a_1=-\frac{2}{4}\times(-3)=\frac32,\qquad a_3=-\frac{3-2}{3^2}a_2=-\frac19\times\frac32=-\frac16 $$($a_4=-\frac{3-3}{4^2}a_3=0$ となり,たしかにここで止まる).よって
$$ L_3(x)=1-3x+\frac32x^2-\frac16x^3 $$である.一方,定義41.4の式\eqref{eq:41-Lm-def}に $m=3$ を直接代入すると,
$$ L_3(x)=\sum_{k=0}^{3}\frac{(-1)^k\cdot3!}{(k!)^2(3-k)!}x^k =\frac{6}{1\cdot6}-\frac{6}{1\cdot2}x+\frac{6}{4\cdot1}x^2-\frac{6}{36\cdot1}x^3 =1-3x+\frac32x^2-\frac16x^3 $$となり,一致する(sympyで,漸化式による計算と定義式による計算,さらに標準ライブラリの sympy.laguerre(3,x) の3通りがすべて一致することを確認済み).
応用:ラゲールの多項式と水素原子の動径波動関数
ラゲールの多項式(正確には41.5節で扱う随伴ラゲール多項式)は,量子力学における水素原子のシュレーディンガー方程式を球座標で変数分離したときの,動径部分(原子核からの距離 $r$ だけに依存する部分)の解に現れる.水素原子の主量子数 $n$,方位量子数 $\ell$ の状態の動径波動関数 $R_{n\ell}(r)$ は,随伴ラゲール多項式 $L_{n-\ell-1}^{2\ell+1}(2r/na_0)$($a_0$:ボーア半径)に,指数関数的な減衰因子 $e^{-r/na_0}$ と $r$ のべき乗をかけた形で書ける.材料科学科の学生にとっては,原子軌道($1s,2s,2p,\dots$)の形を決める数式の正体が,本節で完全な証明つきで手に入れたラゲールの多項式そのものであることを知っておく価値がある.
41.5 随伴ラゲール微分方程式(発展)
本節は底本のノートで「発展」的に扱われている内容である.ラゲールの微分方程式\eqref{eq:41-laguerre-ode}の解 $y=L_m(x)$ を,何回か微分して得られる関数が満たす微分方程式(随伴ラゲール微分方程式,associated Laguerre differential equation)を導き,その解として随伴ラゲール多項式を定義する.すでに41.4.2節の注意で触れたとおり,水素原子の動径波動関数の正体はこの随伴ラゲール多項式である.
41.5.1 随伴ラゲール微分方程式の導出 — ライプニッツの公式と数学的帰納法
ラゲールの微分方程式\eqref{eq:41-laguerre-ode}の解を $y=y(x)$ とし,これを $x$ で $N$ 回($N=1,2,3,\dots$)微分した関数を
$$ Y(x)\overset{\text{def}}{=}\frac{d^Ny}{dx^N} $$とおく.この $Y(x)$ がどんな微分方程式を満たすかを調べよう.まず $N=1$(1回微分)の場合を,底本のノートにしたがって直接計算する.ラゲールの微分方程式 $xy''+(1-x)y'+my=0$ の両辺を $x$ で1回微分すると,積の微分公式 $(fg)'=f'g+fg'$ を各項に使って,
$$ \frac{d}{dx}\bigl[xy''\bigr]=y''+xy''',\qquad \frac{d}{dx}\bigl[(1-x)y'\bigr]=-y'+(1-x)y'',\qquad \frac{d}{dx}\bigl[my\bigr]=my' $$となる(最初の項は $f=x,g=y''$ として $f'g+fg'=y''+xy'''$,2番目の項は $f=1-x,g=y'$ として $f'g+fg'=-y'+(1-x)y''$).これらを足し合わせると,
$$ y''+xy'''-y'+(1-x)y''+my'=0 $$となる.$y'''$ の項と $y''$ の項をそれぞれまとめると($y''$ の項は $y''+(1-x)y''=(2-x)y''$,$y'$ の項は $-y'+my'=(m-1)y'$),
$$ xy'''+(2-x)y''+(m-1)y'=0 $$すなわち,$Y=y'=dy/dx$($N=1$ の場合の $Y$)とおくと,
$$ xY''+(2-x)Y'+(m-1)Y=0 $$という方程式になる.これは,もとのラゲールの微分方程式 $xy''+(1-x)y'+my=0$ の $y$ を $Y$ に,係数の $1$ を $2$ に,$m$ を $m-1$ に置き換えたものになっている——つまり「$1$ 回微分するごとに,方程式の形は変わらず,係数だけがずれていく」という規則性が見える.
イメージ:$N$ 回微分するとどうなるか(数学的帰納法によるくり返し)
$N=1$ の結果から $N=2$ の結果を作るには,$xY''+(2-x)Y'+(m-1)Y=0$($Y=y'$ が満たす方程式)を,もう一度同じ手順で微分すればよい.この方程式はもとのラゲールの微分方程式と同じ形(係数が $1\to2$,$m\to m-1$ にずれただけ)をしているので,同じ計算をくり返すと,今度は係数が $2\to3$,$m-1\to m-2$ にずれる.これを $N$ 回くり返す,というのが数学的帰納法(高校既習:$N=1$ で成り立つことを示し,$N=k$ で成り立つと仮定して $N=k+1$ でも成り立つことを示す,という証明法)の考え方である.底本のノートの余白にも「数学的帰納法で証明できる」という書き込みが残っている.
この帰納法による議論を,1回ずつではなく一気に実行する道具が,第4章で学んだライプニッツの公式(Leibniz's formula:積 $fg$ の $N$ 階導関数 $(fg)^{(N)}=\displaystyle\sum_{j=0}^{N}\binom{N}{j}f^{(N-j)}g^{(j)}$.とくに $f$ が $x$ の1次式($f=x$ や $f=1-x$)のときは,$f'''=0$ なので和が2項だけで止まり,$(xg)^{(N)}=xg^{(N)}+Ng^{(N-1)}$,$\bigl((1-x)g\bigr)^{(N)}=(1-x)g^{(N)}-Ng^{(N-1)}$ という簡単な形になる)である.これを使うと,ラゲールの微分方程式 $xy''+(1-x)y'+my=0$ の両辺を一気に $N$ 回微分できる.
定理41.3の証明:ライプニッツの公式による一般の $N$ の場合
$f=x$,$g=y''$ として $(xy'')^{(N)}=xy^{(N+2)}+Ny^{(N+1)}$($f'=1,f''=0$ なので,ライプニッツの和は $j=0,1$ の2項だけが残り,$\binom{N}{0}x\cdot y^{(N+2)}+\binom N1\cdot1\cdot y^{(N+1)}=xy^{(N+2)}+Ny^{(N+1)}$).同様に $f=1-x$,$g=y'$ として $\bigl((1-x)y'\bigr)^{(N)}=(1-x)y^{(N+1)}-Ny^{(N)}$($f'=-1$ なので,$\binom N1\times(-1)\times y^{(N)}=-Ny^{(N)}$ の符号に注意).最後に $(my)^{(N)}=my^{(N)}$(定数倍は微分と可換).これらをラゲールの微分方程式 $xy''+(1-x)y'+my=0$ の両辺に適用して足し合わせると,
$$ xy^{(N+2)}+Ny^{(N+1)}+(1-x)y^{(N+1)}-Ny^{(N)}+my^{(N)}=0 $$$y^{(N+1)}$ の項をまとめると $Ny^{(N+1)}+(1-x)y^{(N+1)}=(N+1-x)y^{(N+1)}$,$y^{(N)}$ の項をまとめると $-Ny^{(N)}+my^{(N)}=(m-N)y^{(N)}$ となるので,
$$ xy^{(N+2)}+(N+1-x)y^{(N+1)}+(m-N)y^{(N)}=0 $$を得る.$Y=y^{(N)}=d^Ny/dx^N$ とおけば $y^{(N+1)}=Y'$,$y^{(N+2)}=Y''$ だから,
$$ xY''+(N+1-x)Y'+(m-N)Y=0 $$となる.(証明終わり.$N=1$ を代入すると,直前で個別に確認した $xY''+(2-x)Y'+(m-1)Y=0$ にちょうど一致する.)
定理41.3 随伴ラゲール微分方程式
$y$ をラゲールの微分方程式\eqref{eq:41-laguerre-ode}の解とし,$N$ を正の整数とする.$Y=\dfrac{d^Ny}{dx^N}$ は,次の微分方程式(随伴ラゲール微分方程式)を満たす.
$$ xY''+(N+1-x)Y'+(m-N)Y=0 \tag{41.25}\label{eq:41-adjoint-ode} $$疑問(底本のノートの余白より):なぜ基本解が1個しかたまらないのか
底本のノート(p.71)には,随伴ラゲール微分方程式を導いた直後に,著者自身の書き込みとして「なぜ基本解が1個しかたまらない!!」という一文が残されている.これは,41.4.2節の注意ですでに触れた疑問——ラゲールの微分方程式の決定方程式 $\lambda^2=0$ が重解 $\lambda=0$ をもつため,フロベニウスの理論の一般論では,$\lambda=0$ に対応する多項式解 $L_m(x)$ とは別に,対数 $\ln x$ を含む「もう1つの基本解」が存在するはずなのに,本節のここまでの議論(フロベニウス級数を直接代入する方法)では,その対数を含む解がまったく姿を現さない——という疑問に対応している.結論を先に言うと,対数を含む解は存在するのだが,フロベニウス級数 $y=\sum a_kx^k$($x^\lambda$ の指数部分を $\lambda=0$ で固定した,ふつうのべき級数)をそのまま代入するやり方では原理的に見つけられない.対数解を実際に構成するには,$\lambda$ を変数のまま残して $\partial/\partial\lambda$ の微分をとる,という第39章の範囲を超える技巧が必要になる.本書では,この対数を含む解の具体的な構成には立ち入らないが,「なぜ出てこなかったのか」の理由(決定方程式が重解であること)だけは,読者が納得できる形で示しておいた.
41.5.2 ロドリーグの公式と随伴ラゲール多項式
定理41.3によれば,ラゲールの微分方程式の解 $y_0=a_0L_m(x)$($a_0$:任意定数)を $N$ 回微分した $Y=d^Ny_0/dx^N$ は,随伴ラゲール微分方程式\eqref{eq:41-adjoint-ode}の解になる.したがって,随伴ラゲール微分方程式の解を具体的に手に入れるには,$L_m(x)$ を実際に $N$ 回微分すればよい.そのために,$L_m(x)$ を直接 $N$ 回微分するのではなく,$L_m(x)$ を1回の微分操作($m$ 階微分)だけで書き表す,次の公式を使うと計算が一気に見通しよくなる.
公式41.1 ロドリーグの公式(ラゲールの多項式)
$m$ を非負整数とする.41.4.3節の $m!$ 倍版 $\widehat L_m(x)=m!L_m(x)$(式\eqref{eq:41-Lm-scaled})は,
$$ \widehat L_m(x)=e^x\frac{d^m}{dx^m}\bigl(x^me^{-x}\bigr) \tag{41.26}\label{eq:41-rodrigues} $$という,$m$ 階微分だけで書ける形に表せる.
注意:どちらの $L_m$ を使うべきか
公式41.1のロドリーグの公式が実際に一致するのは,定義41.4の $L_m(x)$($L_m(0)=1$ の規格化)そのものではなく,41.4.3節で触れた $m!$ 倍版 $\widehat L_m(x)=m!L_m(x)$($\widehat L_m(0)=m!$ の規格化)のほうである(たとえば $m=2$ のとき,右辺を実際に計算すると $x^2-4x+2$ になるが,これは $L_2(x)=\frac12x^2-2x+1$ の 2倍である).本書では式\eqref{eq:41-rodrigues}のとおり $\widehat L_m(x)$ の公式として書き,$L_m(x)=\widehat L_m(x)/m!$ という関係で定義41.4の $L_m(x)$ と結びつける.ただし,このあと $y=a_0L_m^N(x)$ の形で随伴微分方程式の解を書くとき,$a_0$ は任意定数なので,$L_m(x)$ と $\widehat L_m(x)$ のどちらを基準にしても——定数倍の違いを $a_0$ が吸収してくれるので——最終的に得られる解の集合(一般解)はまったく同じになる.
公式41.1の証明(ライプニッツの公式で直接確かめる)
右辺を計算する.$x^me^{-x}$ を $m$ 回微分するのに,ふたたびライプニッツの公式 $(fg)^{(m)}=\displaystyle\sum_{k=0}^{m}\binom mk f^{(k)}g^{(m-k)}$ を,$f=x^m$,$g=e^{-x}$ として使う.$f^{(k)}=x^m$ を $k$ 回微分したものだから,$f^{(k)}=\dfrac{m!}{(m-k)!}x^{m-k}$($k\le m$;$k\gt m$ なら $f^{(k)}=0$)であり,$g^{(m-k)}=(-1)^{m-k}e^{-x}$($e^{-x}$ を1回微分するたびに符号が反転する)である.したがって,
$$ \frac{d^m}{dx^m}\bigl(x^me^{-x}\bigr)=\sum_{k=0}^{m}\binom mk\cdot\frac{m!}{(m-k)!}x^{m-k}\cdot(-1)^{m-k}e^{-x} $$ここで $\binom mk=\dfrac{m!}{k!(m-k)!}$(高校既習の二項係数)を代入し,$e^x$ を左辺の外の $e^x$ と掛け合わせて $e^{-x}\cdot e^x=1$ を作ると,
$$ e^x\frac{d^m}{dx^m}\bigl(x^me^{-x}\bigr)=\sum_{k=0}^{m}\frac{m!}{k!(m-k)!}\cdot\frac{m!}{(m-k)!}\cdot(-1)^{m-k}x^{m-k} =\sum_{k=0}^{m}\frac{(-1)^{m-k}(m!)^2}{k!\,\bigl((m-k)!\bigr)^2}x^{m-k} $$ここで和の添字を $j=m-k$($k=0,\dots,m$ のとき $j=m,\dots,0$)と付け替える(41.1節以来くり返し使ってきた添字の付け替えである).$k=m-j$ なので,$k!=(m-j)!$,$(m-k)!=j!$,$(-1)^{m-k}=(-1)^j$ となり,
$$ e^x\frac{d^m}{dx^m}\bigl(x^me^{-x}\bigr)=\sum_{j=0}^{m}\frac{(-1)^j(m!)^2}{(m-j)!\,(j!)^2}x^{j} $$を得る.添字 $j$ を改めて $k$ と書けば,これは式\eqref{eq:41-Lm-scaled}の $\widehat L_m(x)=\displaystyle\sum_{k=0}^{m}\dfrac{(-1)^k(m!)^2}{(k!)^2(m-k)!}x^k$ とまったく同じ式である.(証明終わり.$m=0,1,2,3,4$ でsympyにより両辺を直接展開して一致することも検算済み.)
定理41.3で,随伴ラゲール微分方程式の解が $Y=d^Ny_0/dx^N$($y_0=a_0L_m(x)$)の形で書けることがわかっている.ここで,任意定数 $a_0$ を改めて選び直し(41.4.3節の $L_m(x)$ と $\widehat L_m(x)=m!L_m(x)$ は定数倍の違いしかないので,$a_0$ をどちらに合わせて選んでも一般解の集合は変わらない),公式41.1の $\widehat L_m(x)$ を $N$ 回微分したものとして,随伴ラゲール多項式を定義する.
定義41.5 随伴ラゲール多項式(associated Laguerre polynomial)
$0\le N\le m$ を満たす整数 $N$ に対して,
$$ L_m^N(x)\overset{\text{def}}{=}\frac{d^N\widehat L_m(x)}{dx^N} $$を随伴ラゲール多項式という.随伴ラゲール微分方程式\eqref{eq:41-adjoint-ode}の解は,任意定数 $a_0$ を用いて $y=a_0L_m^N(x)$ と書ける.
この $L_m^N(x)$ を,式\eqref{eq:41-Lm-scaled}の $\widehat L_m(x)=\displaystyle\sum_{k=0}^{m}\dfrac{(-1)^k(m!)^2}{(k!)^2(m-k)!}x^k$ から直接計算しよう.べき関数の微分公式 $(x^k)^{(N)}=\dfrac{k!}{(k-N)!}x^{k-N}$($k\ge N$;$k\lt N$ なら $N$ 回微分すればその項は消えて $0$ になる)を各項に使うと,
$$ L_m^N(x)=\frac{d^N}{dx^N}\sum_{k=0}^{m}\frac{(-1)^k(m!)^2}{(k!)^2(m-k)!}x^k =\sum_{k=N}^{m}\frac{(-1)^k(m!)^2}{(k!)^2(m-k)!}\cdot\frac{k!}{(k-N)!}x^{k-N} $$(和の下端が $k=0$ から $k=N$ に変わったのは,$k\lt N$ の項が $N$ 回微分でちょうど $0$ になって消えるからである).$k!$ が1つ約分できるので,
$$ L_m^N(x)=\sum_{k=N}^{m}\frac{(-1)^k(m!)^2}{k!\,(m-k)!\,(k-N)!}x^{k-N} \tag{41.27}\label{eq:41-LmN-def} $$という級数(実際には有限和なので多項式)が得られる.これが,底本のノート(p.72)に書かれている随伴ラゲール多項式の式そのものである.
例題41.6 随伴ラゲール多項式 $L_1^1(x)$ を求める
定義41.5にしたがって $L_1^1(x)$($m=1,N=1$)を求めよ.
解答 $\widehat L_1(x)=1!\times L_1(x)=1-x$($L_1(x)=1-x$ は式\eqref{eq:41-Lm-def}に $m=1$ を代入すればすぐ求まる:$L_1(x)=\frac{(-1)^0\cdot1!}{(0!)^2\cdot1!}x^0+\frac{(-1)^1\cdot1!}{(1!)^2\cdot0!}x^1=1-x$).したがって,
$$ L_1^1(x)=\frac{d}{dx}\widehat L_1(x)=\frac{d}{dx}(1-x)=-1 $$である.式\eqref{eq:41-LmN-def}($m=1,N=1$)から直接計算しても,和は $k=1$ の1項だけで,
$$ L_1^1(x)=\frac{(-1)^1(1!)^2}{1!\cdot0!\cdot0!}x^0=-1 $$となり,一致する(sympyで検算済み).
応用:随伴ラゲール多項式と原子軌道の形
41.4.2節末の応用でも触れたように,随伴ラゲール多項式 $L_m^N(x)$ は,水素原子の動径波動関数 $R_{n\ell}(r)\propto e^{-r/na_0}\left(\dfrac{2r}{na_0}\right)^{\ell}L_{n-\ell-1}^{2\ell+1}\!\left(\dfrac{2r}{na_0}\right)$ に直接現れる($n$:主量子数,$\ell$:方位量子数,$a_0$:ボーア半径).$N=2\ell+1$ 回微分するという操作は,波動関数の「原子核近くでの形」(角運動量 $\ell$ による遠心力障壁の効果)を調整する役割を果たしている.材料科学における結合性・反結合性軌道の形,あるいはSTO(スレーター型軌道)・GTO(ガウス型軌道)といった量子化学計算の基底関数も,この動径部分の振る舞いを近似する試みにほかならない.
41.6 まとめと演習
41.6.1 まとめ
本章では,ベッセルの微分方程式とラゲールの微分方程式という,工学・物理学・材料科学に頻出する2つの2階線形微分方程式を,第39章のフロベニウスの理論を使って途中の計算を一切省略せずに解いた.要点を整理しておく.
- ベッセルの微分方程式 $x^2y''+xy'+(x^2-\alpha^2)y=0$ の $x=0$ は確定特異点であり,決定方程式は $\lambda^2-\alpha^2=0$,すなわち $\lambda=\pm\alpha$ という異なる2根をもつ(41.1節).偶数番目の係数だけが残り,奇数番目はすべて $0$ になる($a_1=0$ とする理由も含めて証明した).
- 階乗を実数・複素数に拡張するガンマ関数 $\Gamma(\alpha)=\int_0^\infty x^{\alpha-1}e^{-x}dx$ を導入し,漸化式 $\Gamma(\alpha+1)=\alpha\Gamma(\alpha)$($\Gamma(n+1)=n!$)を部分積分で証明した(41.2節).これを使って,係数 $a_{2n}$ の一般項をガンマ関数だけで簡潔に書ける形にした.
- こうして得られた級数を第1種ベッセル関数 $J_\alpha(x)=\displaystyle\sum_{k=0}^{\infty}\dfrac{(-1)^k}{k!\,\Gamma(\alpha+k+1)}\left(\dfrac x2\right)^{2k+\alpha}$ と定義した.比の判定法により,この級数はどんな実数 $\alpha$ に対しても収束半径 $\infty$(=すべての実数 $x$ で収束)である(41.2節・41.3節).
- 次数 $\alpha$ が整数でないとき,$J_\alpha(x)$ と $J_{-\alpha}(x)$ は線形独立であり,一般解は $y=C_1J_\alpha(x)+C_2J_{-\alpha}(x)$ である.次数が整数 $n$ のときは,$J_{-n}(x)=(-1)^nJ_n(x)$(線形従属)となってしまうため,階数低下法によって $J_n(x)$ と独立なもう1つの解 $Y_n(x)=J_n(x)\displaystyle\int\dfrac{dx}{xJ_n(x)^2}$(第2種ベッセル関数)を構成し,一般解 $y=C_1J_n(x)+C_2Y_n(x)$ を得た(41.3節).
- ラゲールの微分方程式 $xy''+(1-x)y'+my=0$ の $x=0$ も確定特異点であるが,決定方程式 $\lambda^2=0$ は重解 $\lambda=0$ をもつ(ベッセルの場合との違い).係数の漸化式の分子 $(m-k)$ が $k=m$ でちょうど $0$ になるため,$m$ が非負整数のとき級数は $m$ 次で止まってラゲールの多項式 $L_m(x)=\displaystyle\sum_{k=0}^{m}\dfrac{(-1)^km!}{(k!)^2(m-k)!}x^k$ になる(41.4節).
- ラゲールの微分方程式を $N$ 回微分すると,随伴ラゲール微分方程式 $xY''+(N+1-x)Y'+(m-N)Y=0$($Y=d^Ny/dx^N$)が得られる(ライプニッツの公式と数学的帰納法で証明).ロドリーグの公式 $\widehat L_m(x)=e^x\dfrac{d^m}{dx^m}(x^me^{-x})=m!\,L_m(x)$ を使うと,随伴ラゲール多項式 $L_m^N(x)=\dfrac{d^N\widehat L_m(x)}{dx^N}$ を明示的な級数として書き下せる(41.5節).
- ベッセルの微分方程式は円柱座標での波動・熱伝導・電磁波の問題に,ラゲールの多項式(および随伴ラゲール多項式)は水素原子の動径波動関数に,それぞれ現れる——どちらも「特殊関数」とよばれる理由は,日常の初等関数(多項式・三角関数・指数関数)だけでは書けない,けれども物理現象を記述するのに不可欠な関数だからである.
41.6.2 演習問題
演習41.1 $\alpha=3$ のときの係数 $a_2,a_4$
$\alpha=3$ のとき,ベッセルの微分方程式の $\lambda=\alpha=3$ の側の係数 $a_2,a_4$ を,漸化式\eqref{eq:41-bessel-recurrence}から $a_0$ を用いて求めよ.さらに式\eqref{eq:41-a2n-elementary}の一般公式 $a_{2n}=\dfrac{(-1)^n}{n!\,2^{2n}(\alpha+1)(\alpha+2)\cdots(\alpha+n)}a_0$ に $\alpha=3$ を代入した結果と一致することを確かめよ.
ヒント:例題41.1($\alpha=2$ の場合)とまったく同じ手順を,数字だけ $\alpha=3$ に変えて実行すればよい.
演習41.2 $\Gamma(9/2)$ を $\Gamma(1/2)=\sqrt\pi$ から求める
定理41.1の漸化式 $\Gamma(z+1)=z\Gamma(z)$ をくり返し使って,$\Gamma(9/2)=\dfrac{105}{16}\sqrt\pi$ となることを示せ.
ヒント:例題41.3の中で $\Gamma(3/2),\Gamma(5/2),\Gamma(7/2)$ を計算した手順を,もう2段階先まで進めればよい.
演習41.3 $n=3$(奇数)で線形従属性を確認する
$J_3(x)$ の級数(式\eqref{eq:41-jn-series},$n=3$)の最初の2項を求めよ.さらに,式\eqref{eq:41-jminusn-equals}を使って $J_{-3}(x)=-J_3(x)$ となることを説明せよ.
ヒント:例題41.4($n=2$,偶数の場合)とまったく同じ手順を,奇数の $n=3$ について行う.$(-1)^n$ の符号が $n=2$ のときと変わる点に注意せよ.
演習41.4 次数が負でも収束半径は $\infty$ であることの確認
$\alpha=-\dfrac13$ のとき,式\eqref{eq:41-convergence-radius}の $(n+1)(\alpha+n+1)$ を $n=5,10,50$ について計算し,$n\to\infty$ で発散する(=収束半径が $\infty$ である)ことを数値で確認せよ.
ヒント:41.3.2節の式\eqref{eq:41-convergence-radius}に,$\alpha$ の具体的な値と $n$ の具体的な値を代入するだけでよい.$\alpha$ が負であっても議論に影響しないことを確かめるのが目的である.
演習41.5 ラゲールの多項式 $L_4(x)$ を求める
漸化式\eqref{eq:41-laguerre-recurrence-lambda0}を使って($a_0=1$ として)$L_4(x)$ を求めよ.さらに,ロドリーグの公式(公式41.1)から $\widehat L_4(x)=e^x\dfrac{d^4}{dx^4}(x^4e^{-x})$ を計算し,$\widehat L_4(x)=4!\,L_4(x)$ となることを確認せよ.
ヒント:例題41.5($m=3$ の場合)とまったく同じ手順を,$m=4$ について1段階多く実行する.
演習41.6 随伴ラゲール多項式 $L_2^1(x)$ を求める
定義41.5にしたがって $L_2^1(x)$($m=2,N=1$)を求めよ.式\eqref{eq:41-LmN-def}の級数表示から直接計算した結果とも一致することを確かめよ.
ヒント:例題41.6($L_1^1(x)$)とまったく同じ手順を,$m=2$ について行う.まず $\widehat L_2(x)$(例題41.5の考え方,あるいは公式41.1)を求めてから1回微分すればよい.
41.6.3 参考文献
- 望月泰英『数学ノート 常微分方程式』(手書き講義ノート).本章の底本.
- George B. Arfken, Hans J. Weber, Frank E. Harris, Mathematical Methods for Physicists, 7th ed., Academic Press, 2012.ベッセル関数・ガンマ関数・ラゲールの多項式の標準的な教科書.
- George F. Simmons, Differential Equations with Applications and Historical Notes, 3rd ed., CRC Press, 2016.フロベニウス法・ベッセルの方程式・ラゲールの方程式の解説.
- 寺沢寛一『自然科学者のための数学概論』(増訂版),岩波書店,1983.ベッセル関数・ラゲール多項式とロドリーグの公式の解説.