大学数学 — 目次 第VI部 フーリエ級数と変換 / 第28章

第28章フーリエ級数の定義と計算例

前章(第27章)では,三角関数の列 $1,\ \cos x,\ \sin x,\ \cos2x,\ \sin2x,\ldots$ が区間 $[-\pi,\pi]$ 上で「関数の内積」$\langle f,g\rangle=\int_{-\pi}^{\pi}f(x)g(x)\,dx$ に関して互いに直交していること,そして区分的に連続・区分的に滑らかな関数という,ここから先に必要になる関数のクラスを学んだ.ちょうど高校数学で,平面ベクトルを互いに直交する基底 $\bm e_1,\bm e_2$ の一次結合 $\bm v=c_1\bm e_1+c_2\bm e_2$ として書き表し,係数 $c_i=\bm v\cdot\bm e_i$ を内積で取り出せたのと同じ発想が,関数の世界でも使える.周期関数を,互いに直交する三角関数の「一次結合」として書き表し,その係数を内積(=積分)で取り出す——これが本章の主役,フーリエ級数(Fourier series)である.

本章ではまず,周期 $2\pi$ の区分的に滑らかな周期関数に対してフーリエ級数の係数公式を導き(28.1節),次にその結果を一般の周期 $2L$ の関数へ拡張する(28.2節).続いて,偶関数・奇関数の場合に公式が簡単になること(フーリエ余弦・正弦級数),そしてオイラーの公式を使うと級数全体を複素指数関数だけで美しく書き直せること(複素フーリエ級数)をみる(28.3節).最後に,底本にある3つの具体的な計算例——矩形波,三角波,鋸歯状波——を通して,公式を実際に手を動かして使えるようになることを目指す(28.4節).矩形波の例では,フーリエ級数の思わぬ応用として,円周率 $\pi$ を無限級数で表すライプニッツの公式 $1-\frac13+\frac15-\frac17+\cdots=\frac{\pi}{4}$ が姿を現す.なお,「フーリエ級数が実際に元の関数 $f(x)$ に収束するのはどんなときか」という肝心の問いには本章ではまだ深入りせず,次の第29章(フーリエ級数の収束理論)で厳密に扱う.

この章で学ぶこと
  • 周期 $2\pi$ の区分的に滑らかな周期関数のフーリエ級数展開 $f(x)=\sum_{k=0}^{\infty}(a_k\cos kx+b_k\sin kx)$ と,直交性を使ったフーリエ係数 $a_0,a_k,b_k$ の導出
  • 一般の周期 $2L$ への拡張:変数変換 $t=\frac{\pi}{L}x$ による係数公式の書き換え
  • 偶関数のフーリエ余弦級数・奇関数のフーリエ正弦級数
  • オイラーの公式を用いた複素フーリエ級数 $f(x)=\sum_{k=-\infty}^{\infty}C_ke^{i\frac{k\pi}{L}x}$ と,実係数との関係 $C_k=\frac{a_k-ib_k}{2}$
  • 具体例:矩形波のフーリエ正弦級数とライプニッツの公式,三角波のフーリエ余弦級数,鋸歯状波の実・複素二通りの計算
前提:第27章(三角関数の直交性と関数の内積:内積 $\langle f,g\rangle$,ノルム $\norm{f}$,区分的に連続・区分的に滑らかな関数の定義).第23章(初等複素関数:オイラーの公式 $e^{i\theta}=\cos\theta+i\sin\theta$).高校数学(総目次)の三角関数の加法定理・積和公式,定積分,偶関数・奇関数の性質,部分積分.
もとにしたノート:望月泰英『数学ノート フーリエ級数と変換』 pp. 6–14.

28.1 周期2πのフーリエ級数

第27章の結論をもう一度思い出そう.関数の内積を $\langle f,g\rangle=\int_{-\pi}^{\pi}f(x)g(x)\,dx$ と定めると,三角関数の列

$$ 1,\ \cos x,\ \sin x,\ \cos2x,\ \sin2x,\ \ldots,\ \cos kx,\ \sin kx,\ \ldots $$

は区間 $[-\pi,\pi]$ 上で互いに直交していた.平面ベクトルの世界で,直交基底 $\bm e_1,\bm e_2$ を使って任意のベクトル $\bm v$ を $\bm v=c_1\bm e_1+c_2\bm e_2$ と分解し,係数を内積 $c_i=\bm v\cdot\bm e_i$(正確には $\bm e_i$ が単位ベクトルのとき)で取り出したのと同じように,「区分的に滑らかな周期関数 $f(x)$ を,この直交する三角関数たちの無限個の一次結合として書き,係数を内積(積分)で取り出す」ことができるはずだ,というのが本節の目標である.

定理28.1 周期2πのフーリエ級数展開

$-\pi \lt x\le\pi$ で定義された周期 $2\pi$ の区分的に滑らかな周期関数 $f(x)$ は,不連続点を除けば,次のように表せる.

\begin{equation} f(x)=\sum_{k=0}^{\infty}\bigl(a_k\cos kx+b_k\sin kx\bigr) \label{eq:28-fourier2pi} \end{equation}

①の右辺を $f(x)$ のフーリエ級数(Fourier series),またはフーリエ級数展開とよぶ.また $a_k,b_k$ をフーリエ係数(Fourier coefficients)といい,次の式で計算できる.

\begin{equation} a_0=\frac{1}{2\pi}\int_{-\pi}^{\pi}f(x)\,dx,\qquad a_k=\frac1\pi\int_{-\pi}^{\pi}f(x)\cos kx\,dx\ \ (k=1,2,\ldots) \label{eq:28-ak2pi} \end{equation} \begin{equation} b_k=\frac1\pi\int_{-\pi}^{\pi}f(x)\sin kx\,dx\ \ (k=0,1,2,\ldots) \label{eq:28-bk2pi} \end{equation}

($b_0=\frac1\pi\int f(x)\sin0\,dx=0$ なので,$b_0\sin0x=0$ は級数に何も寄与しない.級数の $k=0$ の項は実質 $a_0$ だけである.)

①の右辺を実際に書き下すと,

$$ f(x)=a_0+a_1\cos x+a_2\cos2x+\cdots+a_k\cos kx+\cdots+b_1\sin x+b_2\sin2x+\cdots+b_k\sin kx+\cdots $$

となる.この無限個の未知数 $a_0,a_1,b_1,a_2,b_2,\ldots$ を,直交性を使って1つずつ「釣り上げる」のが以下の導出である.

思い出そう:第27章の直交関係式($m,n$ は $0$ 以上の整数,$k$ は $k\ge1$ の整数)

$$ \int_{-\pi}^{\pi}\cos kx\,dx=0,\qquad \int_{-\pi}^{\pi}\sin kx\,dx=0 $$ $$ \int_{-\pi}^{\pi}\sin mx\cos nx\,dx=0\quad(0\ \text{以上の任意の整数}\ m,n) $$ $$ \int_{-\pi}^{\pi}\cos mx\cos nx\,dx= \begin{cases}\pi & (m=n\ne0)\\ 2\pi & (m=n=0)\\ 0 & (m\ne n)\end{cases}, \qquad \int_{-\pi}^{\pi}\sin mx\sin nx\,dx= \begin{cases}\pi & (m=n\ne0)\\ 0 & (m=n=0)\\ 0 & (m\ne n)\end{cases} $$

$m,n$ が正の整数の場合は第27章の公式27.4・公式27.5で証明済みである($m=n=0$ の場合は,$\cos0x=1$,$\sin0x=0$ を直接代入すれば,$\int_{-\pi}^{\pi}\cos0x\cos0x\,dx=\int_{-\pi}^{\pi}1\,dx=2\pi$,$\int_{-\pi}^{\pi}\sin0x\sin0x\,dx=\int_{-\pi}^{\pi}0\,dx=0$ とすぐに確かめられる).以下ではこれらの公式に何度も頼るので,手元にいつでも呼び出せるようにしておこう.

導出 [i] $a_0$ について

①の両辺を,$x=-\pi$ から $x=\pi$ まで積分する(両辺に $1=\cos0x$ を掛けて積分すると考えてもよい).級数と積分の順序は交換できるものとして,項別に積分すると,

$$ \int_{-\pi}^{\pi}f(x)\,dx=\int_{-\pi}^{\pi}a_0\,dx+\int_{-\pi}^{\pi}a_1\cos x\,dx+\cdots+\int_{-\pi}^{\pi}a_k\cos kx\,dx+\cdots+\int_{-\pi}^{\pi}b_1\sin x\,dx+\cdots+\int_{-\pi}^{\pi}b_k\sin kx\,dx+\cdots $$

右辺の $a_0\,dx$ の項以外は,すべて「思い出そう」の1番目の公式 $\int_{-\pi}^{\pi}\cos kx\,dx=0$,$\int_{-\pi}^{\pi}\sin kx\,dx=0\ (k=1,2,\ldots)$ によってちょうど $0$ になり,消えてしまう.生き残るのは $a_0$ の項だけで,

$$ \int_{-\pi}^{\pi}f(x)\,dx=a_0\int_{-\pi}^{\pi}1\,dx=a_0\bigl[x\bigr]_{-\pi}^{\pi}=2\pi a_0 $$

($a_0$ は $x$ によらない定数なので積分の外に出せる).したがって

$$ a_0=\frac{1}{2\pi}\int_{-\pi}^{\pi}f(x)\,dx $$

を得る.これはちょうど $f(x)$ の区間 $[-\pi,\pi]$ 上での平均値(積分の平均値)になっている——三角関数の「デコボコ」を全部積分で均してしまえば,残るのは定数項 $a_0$ の寄与だけだ,という直感とも合う.

導出 [ii] $a_k$ について($k=1,2,\ldots$)

今度は①の両辺に $\cos kx$($k$ を1つ固定する)を掛けてから,$-\pi$ から $\pi$ まで積分する.

$$ \int_{-\pi}^{\pi}f(x)\cos kx\,dx=\int_{-\pi}^{\pi}a_0\cos kx\,dx+\sum_{j=1}^{\infty}\int_{-\pi}^{\pi}a_j\cos jx\cos kx\,dx+\sum_{j=1}^{\infty}\int_{-\pi}^{\pi}b_j\sin jx\cos kx\,dx $$

右辺を1項ずつ調べる.

つまり無限個の項のうち,$j=k$ に対応する $a_k\cos kx\cos kx=a_k\cos^2kx$ の項だけが生き残り,他はすべて消える.よって

$$ \int_{-\pi}^{\pi}f(x)\cos kx\,dx=a_k\int_{-\pi}^{\pi}\cos^2kx\,dx=a_k\cdot\pi $$

ゆえに

$$ a_k=\frac1\pi\int_{-\pi}^{\pi}f(x)\cos kx\,dx\qquad(k=1,2,\ldots) $$

を得る.「両辺に $\cos kx$ を掛けて積分する」という操作は,直交性のおかげで「$\cos kx$ という方向成分だけを取り出す」フィルターとして働いている——これはベクトルの内積 $\bm v\cdot\bm e_k$ が $\bm v$ の $\bm e_k$ 方向の成分だけを取り出すのと,数学的に全く同じ仕組みである.

導出 [iii] $b_k$ について($k=1,2,\ldots$)

同様に,①の両辺に $\sin kx$ を掛けて $-\pi$ から $\pi$ まで積分する.

$$ \int_{-\pi}^{\pi}f(x)\sin kx\,dx=\int_{-\pi}^{\pi}a_0\sin kx\,dx+\sum_{j=1}^{\infty}\int_{-\pi}^{\pi}a_j\cos jx\sin kx\,dx+\sum_{j=1}^{\infty}\int_{-\pi}^{\pi}b_j\sin jx\sin kx\,dx $$

[ii]と全く同じ理由で,$a_0\sin kx$ の項と $a_j\cos jx\sin kx$ の項(すべての $j$)は $0$ になる.$b_j\sin jx\sin kx$ の項は,「思い出そう」の4番目の公式より $j\ne k$ で $0$,$j=k$ のときだけ $\pi$ が残る.よって

$$ \int_{-\pi}^{\pi}f(x)\sin kx\,dx=b_k\int_{-\pi}^{\pi}\sin^2kx\,dx=b_k\pi $$ $$ \therefore\ b_k=\frac1\pi\int_{-\pi}^{\pi}f(x)\sin kx\,dx\qquad(k=1,2,\ldots) $$

以上で定理28.1のすべての係数公式が導けた.

注意:$a_0$ の特別な係数 $\frac{1}{2\pi}$ に戸惑わないために

定理28.1では,$a_0$ だけが他の $a_k\ (k\ge1)$ と違う係数 $\frac{1}{2\pi}$ を持ち,かつ級数①には $a_0\cos0x=a_0$ がそのまま(割り算なしで)現れる.一方,多くの教科書(そして実は本章28.4節で扱う底本自身の計算例でも)は,「$a_0$ も $a_k$ と同じ公式 $\frac1\pi\int f(x)\cos kx\,dx$ で計算し,級数には $\dfrac{a_0}{2}$ の形で入れる」という書き方を採用する.すなわち,$c_0:=\frac1\pi\int_{-\pi}^{\pi}f(x)\,dx$($a_k$ と同じ形の公式に $k=0$ を代入したもの)とおけば,$c_0=2a_0$ であり,

$$ f(x)=a_0+\sum_{k=1}^{\infty}(a_k\cos kx+b_k\sin kx)=\frac{c_0}{2}+\sum_{k=1}^{\infty}(a_k\cos kx+b_k\sin kx) $$

という同じ関数の,同じ級数の,2通りの書き方になっている.どちらも数学的には同一で,優劣はない.本書では定理としては定理28.1の形($a_0$ に $\frac1{2\pi}$ を最初から含める)を採用するが,28.4節の計算例では底本の記法にならって $\dfrac{a_0}{2}+\sum_{k=1}^\infty(\cdots)$ の形($a_0$ は $a_k$ と同じ公式で計算)を使う.どちらの流儀の教科書に出会っても慌てないよう,この対応関係を覚えておこう.

f(x)=xを周期2πで拡張したのこぎり波のグラフ
図28.1 $f(x)=x\ (-\pi \lt x\le\pi)$ を周期2πで拡張したのこぎり波.白丸は除外される端点,黒丸は含まれる端点を表す.

例題28.1 $f(x)=x$(周期2π)のフーリエ級数

$f(x)=x\ (-\pi \lt x\le\pi)$ を周期 $2\pi$ で拡張した関数(図28.1)のフーリエ級数を求めよ.

解答 定理28.1の公式を使う.まず $a_0$ から.$f(x)=x$ は奇関数($f(-x)=-f(x)$)なので,対称区間 $[-\pi,\pi]$ 上の積分は

$$ a_0=\frac{1}{2\pi}\int_{-\pi}^{\pi}x\,dx=0 $$

(奇関数を左右対称な区間で積分すると,$x \gt 0$ の部分と $x \lt 0$ の部分がちょうど打ち消し合って $0$ になる).次に $a_k$($k\ge1$)を求める.$x\cos kx$ も奇関数(奇関数×偶関数=奇関数)だから,同じ理由で

$$ a_k=\frac1\pi\int_{-\pi}^{\pi}x\cos kx\,dx=0 $$

最後に $b_k$.$x\sin kx$ は偶関数(奇関数×奇関数=偶関数)なので,$\int_{-\pi}^{\pi}=2\int_{0}^{\pi}$ が使える.部分積分($u=x,\ dv=\sin kx\,dx$ とおくと $du=dx,\ v=-\frac1k\cos kx$)により,

$$ \int_0^{\pi}x\sin kx\,dx=\Bigl[-\frac{x}{k}\cos kx\Bigr]_0^{\pi}+\frac1k\int_0^{\pi}\cos kx\,dx=-\frac{\pi}{k}\cos k\pi+\frac1k\Bigl[\frac1k\sin kx\Bigr]_0^{\pi}=-\frac{\pi(-1)^k}{k}+0 $$

($\cos k\pi=(-1)^k$,$\sin k\pi=0$($k$ は整数)を使った).したがって

$$ b_k=\frac1\pi\cdot2\times\left(-\frac{\pi(-1)^k}{k}\right)=\frac{2(-1)^{k+1}}{k} $$

以上より,フーリエ級数は

$$ f(x)=\sum_{k=1}^{\infty}\frac{2(-1)^{k+1}}{k}\sin kx=2\sin x-\sin2x+\frac23\sin3x-\frac12\sin4x+\cdots $$

である(sympyで検算:$a_0=a_k=0$,$b_k=2(-1)^{k+1}/k$ を $k=1,\ldots,5$ で確認済み).$a_0=a_k=0$ となったのは,$f(x)=x$ が奇関数だからである——一般に,奇関数のフーリエ級数には $\cos$ の項が一切現れない.この事実は28.3節で一般的に証明する.

28.2 一般の周期2Lのフーリエ級数

定理28.1は周期がちょうど $2\pi$ の関数にしか使えない.しかし実際に現れる周期関数の周期は $2\pi$ とは限らない——たとえば工学でよく使う交流電源の周期は $1/50$ 秒や $1/60$ 秒である.そこで,周期 $2L$($L$ は正の実数)の一般の場合に公式を拡張しよう.

定理28.2 周期2Lのフーリエ級数展開

$-L \lt x\le L$ で定義された周期 $2L$ の区分的に滑らかな周期関数 $f(x)$ は,不連続点を除けば,次のようにフーリエ級数で表せる.

\begin{equation} f(x)=\sum_{k=0}^{\infty}\left(a_k\cos\frac{k\pi}{L}x+b_k\sin\frac{k\pi}{L}x\right) \label{eq:28-fourier2L} \end{equation}

ただし

$$ a_0=\frac{1}{2L}\int_{-L}^{L}f(x)\,dx,\qquad a_k=\frac1L\int_{-L}^{L}f(x)\cos\frac{k\pi}{L}x\,dx,\qquad b_k=\frac1L\int_{-L}^{L}f(x)\sin\frac{k\pi}{L}x\,dx\qquad(k\in\N) $$

導出:定理28.1から定理28.2へ(変数変換)

周期 $2\pi$ の区分的に滑らかな周期関数 $F(t)\ (-\pi \lt t\le\pi)$ を考える.定理28.1より,

$$ F(t)=\sum_{k=0}^{\infty}(a_k\cos kt+b_k\sin kt) $$

ここで,$t=\dfrac{\pi}{L}x$ という変数変換をする.$t$ が $-\pi$ から $\pi$ まで動くとき,$x=\dfrac{L}{\pi}t$ はちょうど $-L$ から $L$ まで動く($t$ と $x$ は比例するので,対応する範囲もそのまま比例して広がる).そこで $f(x):=F\!\left(\frac{\pi}{L}x\right)$ とおけば,$f(x)$ は $-L \lt x\le L$ で定義された周期 $2L$ の関数であり,

$$ f(x)=F\!\left(\frac{\pi}{L}x\right)=\sum_{k=0}^{\infty}\left(a_k\cos\frac{k\pi}{L}x+b_k\sin\frac{k\pi}{L}x\right) $$

となって,級数の形(式\eqref{eq:28-fourier2L})が得られる.次に,係数 $a_k,b_k$ が $f$ 自身の積分でどう書けるかを確かめよう.定理28.1の係数公式($k\ge1$ の場合)に $F(t)$ を代入すると,

$$ a_k=\frac1\pi\int_{-\pi}^{\pi}F(t)\cos kt\,dt $$

である.ここで置換積分 $t=\dfrac{\pi}{L}x$ を行う.$dt=\dfrac{\pi}{L}dx$ であり($t$ を $x$ で微分すればこの係数が出る),積分区間は $t:-\pi\to\pi$ が $x:-L\to L$ に対応するから,

$$ a_k=\frac1\pi\int_{-L}^{L}F\!\left(\frac{\pi}{L}x\right)\cos\!\left(k\cdot\frac{\pi}{L}x\right)\cdot\frac{\pi}{L}\,dx =\frac1\pi\cdot\frac{\pi}{L}\int_{-L}^{L}f(x)\cos\frac{k\pi}{L}x\,dx =\frac1L\int_{-L}^{L}f(x)\cos\frac{k\pi}{L}x\,dx $$

($\dfrac1\pi\cdot\dfrac{\pi}{L}=\dfrac1L$ で $\pi$ が消えることに注意).$a_0,b_k$ についても全く同様の置換積分で,定理28.2の公式が得られる.

f(x)=xを周期4で拡張したのこぎり波のグラフ
図28.2 $f(x)=x\ (-2 \lt x\le2)$ を周期4($L=2$)で拡張したのこぎり波.

例題28.2 $f(x)=x$(周期4)のフーリエ級数

$f(x)=x\ (-2 \lt x\le2)$ を周期4($L=2$,図28.2)で拡張した関数のフーリエ級数を求めよ.

解答 定理28.2の公式($L=2$)を使う.$f(x)=x$ は例題28.1と同じく奇関数だから,$a_0=0$,$a_k=0\ (k\ge1)$ は全く同じ理由(奇関数の対称区間積分)で成り立つ.$b_k$ は,$x\sin\frac{k\pi}{2}x$ が偶関数であることを使い,部分積分($u=x,\ dv=\sin\frac{k\pi}{2}x\,dx$,$v=-\frac{2}{k\pi}\cos\frac{k\pi}{2}x$)で計算する.

$$ b_k=\frac12\int_{-2}^{2}x\sin\frac{k\pi}{2}x\,dx=\int_0^2 x\sin\frac{k\pi}{2}x\,dx =\left[-\frac{2x}{k\pi}\cos\frac{k\pi}{2}x\right]_0^2+\frac{2}{k\pi}\int_0^2\cos\frac{k\pi}{2}x\,dx $$

右辺第2項は $\left[\frac{4}{k^2\pi^2}\sin\frac{k\pi}{2}x\right]_0^2=\frac{4}{k^2\pi^2}\sin k\pi=0$($k$ は整数なので $\sin k\pi=0$).第1項は $x=2$ で $-\frac{4}{k\pi}\cos k\pi=-\frac{4(-1)^k}{k\pi}$,$x=0$ で $0$ だから,

$$ b_k=-\frac{4(-1)^k}{k\pi}=\frac{4(-1)^{k+1}}{k\pi} $$

ゆえに

$$ f(x)=\sum_{k=1}^{\infty}\frac{4(-1)^{k+1}}{k\pi}\sin\frac{k\pi}{2}x $$

である(sympyで検算:$a_0=a_k=0$,$b_k=4(-1)^{k+1}/(\pi k)$ を $k=1,\ldots,4$ で確認済み).一般に,同じ形 $f(x)=x\ (-L \lt x\le L)$ に対しては $b_k=\dfrac{2L(-1)^{k+1}}{k\pi}$ となることが同様の計算からわかる($L=\pi$ を代入すれば,ちょうど例題28.1の $b_k=2(-1)^{k+1}/k$ に戻ることを確かめてみよう).

28.3 フーリエ余弦・正弦級数と複素フーリエ級数

例題28.1・例題28.2では,$f(x)=x$(奇関数)に対して $a_0=a_k=0$ となり,$\sin$ の項だけが残った.これは偶然ではない.一般に,$f(x)$ が偶関数・奇関数であるとき,フーリエ級数は次のように簡単になる.

定理28.3 フーリエ余弦級数とフーリエ正弦級数

$f(x)$ を周期 $2L$ の区分的に滑らかな周期関数とする.

(I) $f(x)$ が偶関数のとき,$f(x)$ は $\cos$ の項だけからなるフーリエ余弦級数(Fourier cosine series)で表せる.

$$ f(x)=\sum_{k=0}^{\infty}a_k\cos\frac{k\pi}{L}x $$

(II) $f(x)$ が奇関数のとき,$f(x)$ は $\sin$ の項だけからなるフーリエ正弦級数(Fourier sine series)で表せる.

$$ f(x)=\sum_{k=0}^{\infty}b_k\sin\frac{k\pi}{L}x $$

((I)と同じく,形式的には $k=0$ から和をとる.ただし $\sin0=0$ より $b_0\sin0x=0$ なので,実際にはこの項は何も寄与せず,$k=1$ から和をとったのと結果は変わらない.)

イメージ:なぜ偶関数だと $\cos$ だけになるのか

$b_k=\frac1L\int_{-L}^{L}f(x)\sin\frac{k\pi}{L}x\,dx$ の被積分関数を見ると,$f(x)$ は偶関数,$\sin\frac{k\pi}{L}x$ は奇関数だから,積 $f(x)\sin\frac{k\pi}{L}x$ は「偶関数×奇関数=奇関数」になる.奇関数を左右対称な区間 $[-L,L]$ で積分すると,$x \gt 0$ の部分と $x \lt 0$ の部分がぴったり打ち消し合って,積分全体が $0$ になる.だから $b_k=0$ がすべての $k$ で成り立ち,$\sin$ の項は最初から係数ゼロで消えている.奇関数のときも同じ理屈を $a_k$ に当てはめれば,$a_k=0$ が導ける.この一般的な証明は演習28.3で自分の手で書き下してみよう.

次に,オイラーの公式を使って,実数の $\cos,\sin$ ではなく複素指数関数 $e^{i\theta}$ だけでフーリエ級数を書き直すことを考える.第23章で学んだように,複素指数関数は

$$ e^{i\theta}=\cos\theta+i\sin\theta $$

で定義され($i$ は虚数単位,$i^2=-1$),これをオイラーの公式(Euler's formula)とよぶのだった.$\theta\to-\theta$ を代入すると,$\cos(-\theta)=\cos\theta$,$\sin(-\theta)=-\sin\theta$ より $e^{-i\theta}=\cos\theta-i\sin\theta$ も成り立つ.この2つの式を辺々足す・引くことで,逆に $\cos\theta,\sin\theta$ を $e^{\pm i\theta}$ で表せる.

$$ \cos\theta=\frac{e^{i\theta}+e^{-i\theta}}{2},\qquad\qquad \sin\theta=\frac{e^{i\theta}-e^{-i\theta}}{2i} $$

この2つの式に $\theta=\frac{k\pi}{L}x$ を代入すれば,フーリエ級数の $\cos\frac{k\pi}{L}x,\ \sin\frac{k\pi}{L}x$ を複素指数関数で書き換えられる.

定理28.4 周期2Lの複素フーリエ級数

$-L \lt x\le L$ で定義された周期 $2L$ の区分的に滑らかな周期関数 $f(x)$ は,不連続点を除けば,次のように複素フーリエ級数(complex Fourier series)で表せる.

$$ f(x)=\sum_{k=-\infty}^{\infty}C_ke^{i\frac{k\pi}{L}x} \qquad\text{ただし}\qquad C_k=\frac{1}{2L}\int_{-L}^{L}f(x)\,e^{-i\frac{k\pi}{L}x}\,dx\quad(k\in\Z) $$

導出:実フーリエ級数から複素フーリエ級数へ

定理28.2の級数 $f(x)=\sum_{k=0}^{\infty}\left(a_k\cos\frac{k\pi}{L}x+b_k\sin\frac{k\pi}{L}x\right)$ に,上で用意したオイラーの公式による書き換えを代入する.

$$ f(x)=\sum_{k=0}^{\infty}\left\{\frac{a_k}{2}\left(e^{i\frac{k\pi}{L}x}+e^{-i\frac{k\pi}{L}x}\right)+\frac{b_k}{2i}\left(e^{i\frac{k\pi}{L}x}-e^{-i\frac{k\pi}{L}x}\right)\right\} $$

$e^{i\frac{k\pi}{L}x}$ の係数と $e^{-i\frac{k\pi}{L}x}$ の係数をそれぞれまとめる($\frac{1}{2i}=-\frac{i}{2}$ に注意して,$\frac{b_k}{2i}=-\frac{ib_k}{2}$ と直してから整理する).

$$ f(x)=\sum_{k=0}^{\infty}\left(\frac{a_k-ib_k}{2}\,e^{i\frac{k\pi}{L}x}+\frac{a_k+ib_k}{2}\,e^{-i\frac{k\pi}{L}x}\right) $$

この和の $k=0$ の項だけ,先に別扱いにしておこう.$e^{i0}=e^{-i0}=1$ だから,$k=0$ の項は $\dfrac{a_0}{2}\cdot1+\dfrac{a_0}{2}\cdot1=a_0$($b_0=0$ を使った)となり,もとの級数の定数項 $a_0$ にちょうど戻る.そこで $C_0:=a_0$ とおく.残る $k\ge1$ の項については,$C_k:=\dfrac{a_k-ib_k}{2}$,$C_{-k}:=\dfrac{a_k+ib_k}{2}$($k\ge1$)とおく.すると

$$ f(x)=C_0+\sum_{k=1}^{\infty}C_ke^{i\frac{k\pi}{L}x}+\sum_{k=1}^{\infty}C_{-k}e^{-i\frac{k\pi}{L}x} $$

第3項の和は,添字を $k\to-k$ と付け替えれば $\displaystyle\sum_{k=-\infty}^{-1}C_ke^{i\frac{k\pi}{L}x}$ に等しい.したがって

$$ f(x)=C_0+\sum_{k=1}^{\infty}C_ke^{i\frac{k\pi}{L}x}+\sum_{k=-\infty}^{-1}C_ke^{i\frac{k\pi}{L}x}=\sum_{k=-\infty}^{\infty}C_ke^{i\frac{k\pi}{L}x} $$

($k=0$,$k\ge1$,$k\le-1$ の3つの範囲はちょうど重なりなく整数全体を尽くすので,どの $k$ も二重に数える心配はない).これで級数の形が示せた.最後に $C_k$ を積分で表す式を確かめる.$k\ge1$ のとき $C_k=\frac{a_k-ib_k}{2}$ に定理28.2の $a_k,b_k$ の公式を代入すると,

$$ C_k=\frac12\left(\frac1L\int_{-L}^{L}f(x)\cos\frac{k\pi}{L}x\,dx-i\cdot\frac1L\int_{-L}^{L}f(x)\sin\frac{k\pi}{L}x\,dx\right)=\frac{1}{2L}\int_{-L}^{L}f(x)\left(\cos\frac{k\pi}{L}x-i\sin\frac{k\pi}{L}x\right)dx $$

括弧の中はオイラーの公式より $e^{-i\frac{k\pi}{L}x}$ に他ならないから,$C_k=\frac{1}{2L}\int_{-L}^{L}f(x)e^{-i\frac{k\pi}{L}x}dx$ を得る.$k\le-1$ のとき,$C_k=C_{-(-k)}=\frac{a_{-k}+ib_{-k}}{2}$ に同じ公式を代入しても($\cos,\sin$ の偶奇性 $\cos(-\theta)=\cos\theta,\ \sin(-\theta)=-\sin\theta$ を使って)全く同じ形の式になることが確かめられる(各自確認してみよう).こうして,$k$ の符号によらず統一的に $C_k=\frac{1}{2L}\int_{-L}^{L}f(x)e^{-i\frac{k\pi}{L}x}dx$ と書けることが分かった.

数学ノート:複素フーリエ係数と実フーリエ係数の対応

上の導出から,次の変換公式が得られる($k\ge1$).

$$ C_k=\frac{a_k-ib_k}{2},\qquad C_{-k}=\frac{a_k+ib_k}{2},\qquad\text{逆に}\qquad a_k=C_k+C_{-k},\qquad b_k=i(C_k-C_{-k}) $$

また,$f(x)$ が実数値関数であれば $C_{-k}=\overline{C_k}$(複素共役)が成り立つ.これは $C_k$ の定義式で $f(x)$ が実数であることと $\overline{e^{-i\theta}}=e^{i\theta}$ を使えば確認できる.複素フーリエ級数は,実フーリエ級数に比べて式の形が対称で美しく,かつ和と積分の計算(特に部分積分)が指数関数だけで完結するので機械的に進めやすいという利点がある.一方,$k$ が正と負の両方にわたる「両側和」に慣れが必要な点には注意しよう.

f(x)=x^2を周期2πで拡張した波形のグラフ
図28.3 $f(x)=x^2\ (-\pi \lt x\le\pi)$ を周期2πで拡張した偶関数の波形.先端がとがった連続な山型が並ぶ.

例題28.3 $f(x)=x^2$(周期2π)のフーリエ余弦級数

$f(x)=x^2\ (-\pi \lt x\le\pi)$ を周期 $2\pi$ で拡張した関数(図28.3)のフーリエ級数を求めよ.

解答 $f(x)=x^2$ は偶関数($f(-x)=(-x)^2=x^2=f(x)$)だから,定理28.3(I)よりフーリエ余弦級数になり,$b_k=0$ である.$a_0$ は

$$ a_0=\frac{1}{2\pi}\int_{-\pi}^{\pi}x^2\,dx=\frac{1}{2\pi}\left[\frac{x^3}{3}\right]_{-\pi}^{\pi}=\frac{1}{2\pi}\cdot\frac{2\pi^3}{3}=\frac{\pi^2}{3} $$

$a_k\ (k\ge1)$ は,被積分関数 $x^2\cos kx$ が偶関数なので $\int_{-\pi}^\pi=2\int_0^\pi$ とし,部分積分を2回繰り返して求める.$u=x^2,\ dv=\cos kx\,dx$ とすると $du=2x\,dx,\ v=\frac1k\sin kx$ より,

$$ \int_0^{\pi}x^2\cos kx\,dx=\left[\frac{x^2}{k}\sin kx\right]_0^{\pi}-\frac2k\int_0^{\pi}x\sin kx\,dx $$

第1項は $\sin k\pi=0$ よりゼロ.第2項の $\int_0^\pi x\sin kx\,dx$ は,例題28.1の計算(の途中式)と全く同じ形で,$-\frac{\pi(-1)^k}{k}$ である.したがって

$$ \int_0^{\pi}x^2\cos kx\,dx=0-\frac2k\left(-\frac{\pi(-1)^k}{k}\right)=\frac{2\pi(-1)^k}{k^2} $$ $$ a_k=\frac1\pi\cdot2\times\frac{2\pi(-1)^k}{k^2}=\frac{4(-1)^k}{k^2} $$

ゆえに

$$ f(x)=\frac{\pi^2}{3}+\sum_{k=1}^{\infty}\frac{4(-1)^k}{k^2}\cos kx=\frac{\pi^2}{3}-4\cos x+\cos2x-\frac49\cos3x+\cdots $$

である(sympyで検算:$a_0=\pi^2/3$,$a_k=4(-1)^k/k^2$ を $k=1,\ldots,4$ で確認済み).なお,この式に $x=\pi$($f(\pi)=\pi^2$)を形式的に代入すると $\cos k\pi=(-1)^k$ より $\pi^2=\frac{\pi^2}{3}+\sum_{k=1}^\infty\frac{4}{k^2}$,すなわち $\sum_{k=1}^\infty\frac1{k^2}=\frac{\pi^2}{6}$ という有名な「バーゼル問題(Basel problem)」の答えが導かれる——ただし,境界の不連続点でもないのに級数を代入してよい根拠(各点収束の理論)は次章で学ぶので,ここでは面白い副産物として紹介するにとどめる.

例題28.4 $f(x)=x$(周期2π)の複素フーリエ級数

例題28.1の $f(x)=x\ (-\pi \lt x\le\pi)$(周期2π)の複素フーリエ係数 $C_k$ を直接求め,例題28.1の結果 $a_k=0,\ b_k=2(-1)^{k+1}/k$ と整合することを確認せよ.

解答 定理28.4($L=\pi$)より,$k\ne0$ のとき

$$ C_k=\frac{1}{2\pi}\int_{-\pi}^{\pi}x\,e^{-ikx}\,dx $$

部分積分($u=x,\ dv=e^{-ikx}dx$,$v=-\frac{1}{ik}e^{-ikx}=\frac{i}{k}e^{-ikx}$)により,

$$ \int_{-\pi}^{\pi}x\,e^{-ikx}\,dx=\left[\frac{ix}{k}e^{-ikx}\right]_{-\pi}^{\pi}-\frac{i}{k}\int_{-\pi}^{\pi}e^{-ikx}\,dx $$

右辺第2項は,$k$ が0でない整数のとき $\int_{-\pi}^{\pi}e^{-ikx}dx=\left[\frac{i}{k}e^{-ikx}\right]_{-\pi}^{\pi}=\frac{i}{k}\bigl(e^{-ik\pi}-e^{ik\pi}\bigr)=\frac{i}{k}\bigl((-1)^k-(-1)^k\bigr)=0$ となって消える($e^{\pm ik\pi}=\cos k\pi\pm i\sin k\pi=(-1)^k$ を使った).第1項は,

$$ \left[\frac{ix}{k}e^{-ikx}\right]_{-\pi}^{\pi}=\frac{i\pi}{k}e^{-ik\pi}-\frac{i(-\pi)}{k}e^{ik\pi}=\frac{i\pi}{k}(-1)^k+\frac{i\pi}{k}(-1)^k=\frac{2i\pi(-1)^k}{k} $$

したがって

$$ C_k=\frac{1}{2\pi}\cdot\frac{2i\pi(-1)^k}{k}=\frac{i(-1)^k}{k}\qquad(k\ne0) $$

また $C_0=a_0=0$(例題28.1で求めた値)である.(sympyで検算:$C_k=i(-1)^k/k$ を $k=\pm1,\pm2,\pm3$ で確認済み.)これが例題28.1の $a_k,b_k$ と対応することを見よう.「数学ノート」ボックスの公式より,

$$ C_k=\frac{a_k-ib_k}{2}=\frac{0-i\cdot\frac{2(-1)^{k+1}}{k}}{2}=\frac{-i(-1)^{k+1}}{k}=\frac{i(-1)^k}{k} $$

となり,直接計算した $C_k$ と完全に一致する.同じ関数の同じフーリエ級数を,実の形($\cos,\sin$)で見るか複素の形($e^{ikx}$)で見るかの違いにすぎないことが,具体的な数値で確認できた.

28.4 フーリエ級数の計算例

ここからは,底本にある3つの具体的な計算例——矩形波,三角波,鋸歯状波——を扱う.いずれも $a_0$ を $a_k$ と同じ公式 $\frac1\pi\int f(x)\cos kx\,dx$(一般周期なら $\frac1L\int f(x)\cos\frac{k\pi}{L}x\,dx$)で計算し,級数には $\dfrac{a_0}{2}$ の形で入れる——28.1節の「注意」ボックスで説明した,もう一方の書き方を使う.これは底本の記法そのものであり,多くの教科書でも標準的に使われる書き方である.

例題28.5 矩形波のフーリエ正弦級数(底本の例題No.1)

$f(x)=\begin{cases}-\dfrac{\pi}{4} & (-\pi \lt x\le0)\\[4pt]\dfrac{\pi}{4} & (0 \lt x\le\pi)\end{cases}$(周期2π,図28.4)のとき,$f(x)$ をフーリエ級数展開せよ.

解答 $f(x)=\dfrac{a_0}{2}+\displaystyle\sum_{k=1}^{\infty}(a_k\cos kx+b_k\sin kx)$ とおく.

[i] $a_k\ (k=0,1,2,\ldots)$ について.

$$ a_k=\frac1\pi\int_{-\pi}^{\pi}f(x)\cos kx\,dx=\frac1\pi\int_0^{\pi}\frac{\pi}{4}\cos kx\,dx+\frac1\pi\int_{-\pi}^0\left(-\frac{\pi}{4}\right)\cos kx\,dx $$

($k=0$ のときも $\cos0x=1$ として同じ式が使える).積分を実行すると,

$$ =\frac14\left[\frac1k\sin kx\right]_0^{\pi}-\frac14\left[\frac1k\sin kx\right]_{-\pi}^0=\frac14\cdot\frac1k(\sin k\pi-0)-\frac14\cdot\frac1k(0-\sin(-k\pi))=0 $$

($\sin k\pi=0,\ \sin(-k\pi)=0$ を使った.$k=0$ のときは両辺とも初めから $0$).よって $a_k=0$($k=0,1,2,\ldots$ すべて).

[ii] $b_k\ (k=1,2,3,\ldots)$ について.

$$ b_k=\frac1\pi\int_{-\pi}^{\pi}f(x)\sin kx\,dx=\frac1\pi\int_0^{\pi}\frac{\pi}{4}\sin kx\,dx+\frac1\pi\int_{-\pi}^0\left(-\frac{\pi}{4}\right)\sin kx\,dx $$ $$ =\frac14\left[-\frac1k\cos kx\right]_0^{\pi}-\frac14\left[-\frac1k\cos kx\right]_{-\pi}^0 $$

第1項は $-\frac1{4k}(\cos k\pi-\cos0)=-\frac1{4k}\bigl((-1)^k-1\bigr)=\frac{1-(-1)^k}{4k}$.第2項は $-\frac1{4k}(\cos0-\cos(-k\pi))=-\frac1{4k}\bigl(1-(-1)^k\bigr)=-\frac{1-(-1)^k}{4k}$.引き算だから符号に注意すると,

$$ b_k=\frac{1-(-1)^k}{4k}-\left(-\frac{1-(-1)^k}{4k}\right)=\frac{1-(-1)^k}{2k} $$

[i],[ii]より,

$$ f(x)=\sum_{k=1}^{\infty}\frac{1-(-1)^k}{2k}\sin kx $$

である(sympyで検算:$a_k=0$,$b_k=(1-(-1)^k)/(2k)$ を $k=1,\ldots,5$ で確認済み).

考察(円周率とのつながり) 係数 $\dfrac{1-(-1)^k}{2k}$ は,$k$ が偶数のとき $1-(-1)^k=0$ となって消え,$k$ が奇数のときだけ $\dfrac{1-(-1)}{2k}=\dfrac1k$ が残る.したがって

$$ f(x)=\sin x+\frac13\sin3x+\frac15\sin5x+\cdots $$

である.ここで,$x=\dfrac{\pi}{2}$ を代入しよう.グラフ(図28.4)から明らかに $f\!\left(\frac{\pi}{2}\right)=\frac{\pi}{4}$ である.一方,$\sin\frac{\pi}{2}=\sin\frac{5\pi}{2}=\sin\frac{9\pi}{2}=\cdots=1$,$\sin\frac{3\pi}{2}=\sin\frac{7\pi}{2}=\cdots=-1$ だから,

$$ \frac{\pi}{4}=f\!\left(\frac\pi2\right)=1-\frac13+\frac15-\frac17+\cdots=\sum_{k=1}^{\infty}\frac{(-1)^{k-1}}{2k-1} $$

というライプニッツの公式(Leibniz formula)——円周率 $\pi$ を無限級数で表す,驚くほど単純な式——が導ける.フーリエ級数は「波を分解する道具」であるだけでなく,思いがけない場所で $\pi$ の姿を見せてくれる.

ただし,この級数は収束がとても遅い.部分和 $S_N=\sum_{k=1}^{N}\frac{(-1)^{k-1}}{2k-1}$ を数値的に計算すると,

表28.1 ライプニッツ級数の部分和 $S_N$ と $\pi/4$ との誤差
$N$10100100010000
$S_N$0.7604600.7828980.7851480.785373
誤差$-2.5\times10^{-2}$$-2.5\times10^{-3}$$-2.5\times10^{-4}$$-2.5\times10^{-5}$

($\pi/4=0.785398\ldots$).項数を10倍にするごとに誤差がほぼ10分の1になる——つまり誤差は項数にほぼ反比例して減っていく,非常にゆっくりとした収束である.この現象と,級数がジャンプ不連続点の近くでどう振る舞うか(ギブス現象)は,演習28.4で数値的に確かめる.

矩形波(値±π/4,周期2π)のグラフ
図28.4 矩形波 $f(x)=-\pi/4\ (-\pi \lt x\le0),\ \pi/4\ (0 \lt x\le\pi)$.$x=\pi/2$(本文中の点)での値が $\pi/4$であることに注意.

数学ノート:$\int x\cos kx\,dx$ と $\int x\sin kx\,dx$ の公式(部分積分1回分)

これから扱う例題28.6・例題28.7では,$x\cos kx$ や $x\sin kx$ の不定積分をくり返し使う.先に部分積分を1回行った結果を公式としてまとめておこう.$u=x,\ dv=\cos kx\,dx$($du=dx,\ v=\frac1k\sin kx$)とおいて部分積分すると,

$$ \int x\cos kx\,dx=x\cdot\frac1k\sin kx-\int\frac1k\sin kx\,dx=\frac1kx\sin kx+\frac1{k^2}\cos kx $$

同様に,$u=x,\ dv=\sin kx\,dx$($v=-\frac1k\cos kx$)とおくと,

$$ \int x\sin kx\,dx=-x\cdot\frac1k\cos kx+\int\frac1k\cos kx\,dx=-\frac1kx\cos kx+\frac1{k^2}\sin kx $$

(積分定数は省略した.)$\cos kx,\sin kx$ の代わりに $\cos ax,\sin ax$($a\ne0$ は実数の定数)としても全く同じ計算が通用し,$\int x\cos ax\,dx=\frac1ax\sin ax+\frac1{a^2}\cos ax$,$\int x\sin ax\,dx=-\frac1ax\cos ax+\frac1{a^2}\sin ax$ となる——例題28.7では $a=\frac{k\pi}{4}$ の場合にこの一般形を使う.

例題28.6 三角波のフーリエ余弦級数(底本の例題No.2)

$f(x)=\begin{cases}-x & (-\pi \lt x\le0)\\ x & (0 \lt x\le\pi)\end{cases}$(すなわち $f(x)=|x|$,周期2π,図28.5)のとき,$f(x)$ をフーリエ級数展開せよ.

解答 $f(x)=\dfrac{a_0}{2}+\displaystyle\sum_{k=1}^{\infty}(a_k\cos kx+b_k\sin kx)$ とおく.

[i] $a_k\ (k=1,2,\ldots)$ について.上の「数学ノート」の不定積分公式 $\int x\cos kx\,dx=\frac1kx\sin kx+\frac1{k^2}\cos kx$ を使う.

$$ a_k=\frac1\pi\int_{-\pi}^{\pi}f(x)\cos kx\,dx=\frac1\pi\left(\int_0^{\pi}x\cos kx\,dx-\int_{-\pi}^0 x\cos kx\,dx\right) $$ $$ =\frac1\pi\left[\frac1kx\sin kx+\frac1{k^2}\cos kx\right]_0^{\pi}-\frac1\pi\left[\frac1kx\sin kx+\frac1{k^2}\cos kx\right]_{-\pi}^0 $$

各角括弧の中の $\frac1kx\sin kx$ の項は,上端・下端のどちらでも $\sin k\pi=\sin0=0$ となって消える($x=0,\pm\pi$ でつねに $\sin kx=0$).残るのは $\frac1{k^2}\cos kx$ の項だけで,

$$ =\frac1\pi\left\{\frac{(-1)^k}{k^2}-\frac1{k^2}\right\}-\frac1\pi\left\{\frac1{k^2}-\frac{(-1)^k}{k^2}\right\}=\frac{2\bigl\{(-1)^k-1\bigr\}}{\pi k^2}\qquad(k=1,2,\ldots) $$

$a_0$ は $a_k$ の公式に $k=0$($\cos0x=1$)を代入して,

$$ a_0=\frac1\pi\int_{-\pi}^{\pi}f(x)\,dx=\frac1\pi\left(\int_0^{\pi}x\,dx+\int_{-\pi}^0(-x)\,dx\right)=\frac1\pi\left(\frac{\pi^2}{2}+\frac{\pi^2}{2}\right)=\pi $$

[ii] $b_k\ (k=1,2,\ldots)$ について.$f(x)=|x|$ は偶関数だから,定理28.3(I)よりそもそも $b_k=0$ になるはずである.実際に計算しても確かめられる.不定積分公式 $\int x\sin kx\,dx=-\frac1kx\cos kx+\frac1{k^2}\sin kx$ を使うと,

$$ b_k=\frac1\pi\left(\int_0^{\pi}x\sin kx\,dx-\int_{-\pi}^0 x\sin kx\,dx\right)=\frac1\pi\left[-\frac{x}{k}\cos kx+\frac1{k^2}\sin kx\right]_0^{\pi}-\frac1\pi\left[-\frac{x}{k}\cos kx+\frac1{k^2}\sin kx\right]_{-\pi}^0 $$

両方の角括弧内の $\frac1{k^2}\sin kx$ の項は,$x=0,\pm\pi$ で $\sin kx=0$ になるのでいずれも消える.残る $-\frac{x}k\cos kx$ の項を評価すると,第1項は $-\frac{\pi}{k}(-1)^k-0=-\frac{\pi(-1)^k}{k}$,第2項は $0-\left(-\frac{-\pi}{k}\cos(-k\pi)\right)=0-\frac{\pi(-1)^k}{k}\cdot(-1)$ となり,整理すると

$$ b_k=\frac1\pi\left(-\frac{\pi(-1)^k}{k}\right)-\frac1\pi\left(-\frac{\pi(-1)^k}{k}\right)=0 $$

となって,やはり $b_k=0$ が確かめられる.[i],[ii]より,

$$ f(x)=\frac{\pi}{2}+\sum_{k=1}^{\infty}\frac{2\bigl\{(-1)^k-1\bigr\}}{\pi k^2}\cos kx=\frac{\pi}{2}-\frac{4}{\pi}\cos x-\frac{4}{9\pi}\cos3x-\frac{4}{25\pi}\cos5x-\cdots $$

である(偶数番目の $k$ では $(-1)^k-1=0$ となって係数が消えることに注意).(sympyで検算:$a_0=\pi$,$a_k=2\{(-1)^k-1\}/(\pi k^2)$,$b_k=0$ を $k=1,\ldots,5$ で確認済み.)

数学ノート:$f(x)$ が偶関数であることをあらかじめ見抜く

実際に $b_k=0$ を計算で確かめる前から,「$f(x)=|x|$ は偶関数だから,定理28.3(I)より最初から $b_k=0$ とわかっている」と見抜けると計算量を大きく減らせる.関数の対称性(偶奇性)は,計算を始める前に必ずチェックする習慣をつけよう.

三角波|x|(周期2π)のグラフ
図28.5 三角波 $f(x)=|x|\ (-\pi \lt x\le\pi)$ を周期2πで拡張したグラフ.

例題28.7 鋸歯状波(底本の例題No.3,実・複素二通りの計算)

$f(x)=\dfrac{x}{2}\ (-4 \lt x \lt 4)$(周期8,$L=4$,図28.6)のとき,$f(x)$ をフーリエ級数展開せよ.

解答(実フーリエ級数) $f(x)=x/2$ は奇関数だから,定理28.3(II)よりフーリエ正弦級数になる($a_k=0$).

$$ f(x)=\sum_{k=1}^{\infty}b_k\sin\frac{k\pi}{4}x\qquad\text{とおく.} $$

不定積分公式 $\int x\sin\frac{k\pi}{4}x\,dx=-\frac{4}{k\pi}x\cos\frac{k\pi}{4}x+\left(\frac{4}{k\pi}\right)^2\sin\frac{k\pi}{4}x$($\int x\sin ax\,dx=-\frac{x}{a}\cos ax+\frac1{a^2}\sin ax$ に $a=\frac{k\pi}{4}$ を代入したもの)を使うと,

$$ b_k=\frac14\int_{-4}^{4}f(x)\sin\frac{k\pi}{4}x\,dx=\frac18\int_{-4}^{4}x\sin\frac{k\pi}{4}x\,dx=\frac18\left[-\frac{4}{k\pi}x\cos\frac{k\pi}{4}x+\left(\frac{4}{k\pi}\right)^2\sin\frac{k\pi}{4}x\right]_{-4}^{4} $$

$x=\pm4$ では $\frac{k\pi}{4}x=\pm k\pi$ より $\sin(\pm k\pi)=0$ なので第2項は上端・下端とも消える.第1項を評価すると,$x=4$ で $-\frac{4}{k\pi}\cdot4\cos k\pi=-\frac{16}{k\pi}(-1)^k$,$x=-4$ で $-\frac{4}{k\pi}\cdot(-4)\cos(-k\pi)=\frac{16}{k\pi}(-1)^k$.引き算すると,

$$ b_k=\frac18\left(-\frac{16(-1)^k}{k\pi}-\frac{16(-1)^k}{k\pi}\right)=\frac18\cdot\left(-\frac{32(-1)^k}{k\pi}\right)=-\frac{4(-1)^k}{k\pi}=\frac{4(-1)^{k+1}}{k\pi} $$

ゆえに

$$ f(x)=\sum_{k=1}^{\infty}\frac{4(-1)^{k+1}}{k\pi}\sin\frac{k\pi}{4}x $$

である(sympyで検算:$b_k=4(-1)^{k+1}/(\pi k)$ を $k=1,\ldots,4$ で確認済み).

解答(複素フーリエ級数) 同じ関数を,定理28.4($L=4$)を使って複素フーリエ級数でも求めてみる.$f(x)=\sum_{k=-\infty}^{\infty}C_ke^{i\frac{k\pi}{4}x}$ とおくと,

$$ C_k=\frac{1}{2\cdot4}\int_{-4}^{4}f(x)\,e^{-i\frac{k\pi}{4}x}\,dx=\frac18\int_{-4}^{4}\frac{x}{2}\,e^{-i\frac{k\pi}{4}x}\,dx=\frac1{16}\int_{-4}^{4}x\,e^{-i\frac{k\pi}{4}x}\,dx $$

($f(x)=x/2$ を代入し,$\frac18\times\frac12=\frac1{16}$ として $x/2$ の $\frac12$ を係数に吸収した).

部分積分($u=x,\ dv=e^{-i\frac{k\pi}{4}x}dx$,$v=\frac{4}{ik\pi}\cdot(-1)e^{-i\frac{k\pi}{4}x}=i\frac{4}{k\pi}e^{-i\frac{k\pi}{4}x}$)により,

$$ \int x\,e^{-i\frac{k\pi}{4}x}\,dx=i\frac{4}{k\pi}x\,e^{-i\frac{k\pi}{4}x}-\int i\frac{4}{k\pi}e^{-i\frac{k\pi}{4}x}\,dx=i\frac{4}{k\pi}x\,e^{-i\frac{k\pi}{4}x}+\left(\frac{4}{k\pi}\right)^2 e^{-i\frac{k\pi}{4}x} $$

(最後の積分で,もう一度同じ置き換えを使うと符号が反転して $+\left(\frac4{k\pi}\right)^2e^{-i\frac{k\pi}4x}$ になる).よって

$$ C_k=\frac1{16}\int_{-4}^{4}x\,e^{-i\frac{k\pi}{4}x}\,dx=\frac{1}{16}\left[i\frac{4}{k\pi}x\,e^{-i\frac{k\pi}{4}x}+\left(\frac{4}{k\pi}\right)^2e^{-i\frac{k\pi}{4}x}\right]_{-4}^{4} $$

$\left(\frac4{k\pi}\right)^2e^{-i\frac{k\pi}4x}$ の項は,$x=4$ で $\left(\frac4{k\pi}\right)^2e^{-ik\pi}=\left(\frac4{k\pi}\right)^2(-1)^k$,$x=-4$ でも同じ値 $\left(\frac4{k\pi}\right)^2(-1)^k$($e^{ik\pi}=(-1)^k$ も同じ)になるので,引き算するとちょうど消える.残るのは $i\frac4{k\pi}xe^{-i\frac{k\pi}4x}$ の項だけで,

$$ C_k=\frac1{16}\left(i\frac{16}{k\pi}(-1)^k-\left(-i\frac{16}{k\pi}(-1)^k\right)\right)=\frac1{16}\cdot i\frac{32}{k\pi}(-1)^k=\frac{2i(-1)^k}{k\pi} $$

($x=4$:$i\frac4{k\pi}\cdot4\cdot(-1)^k=i\frac{16}{k\pi}(-1)^k$,$x=-4$:$i\frac4{k\pi}\cdot(-4)\cdot(-1)^k=-i\frac{16}{k\pi}(-1)^k$,差は $2i\frac{16}{k\pi}(-1)^k$.これを $1/16$ 倍すれば上の式になる).(sympyで検算:$C_k=2i(-1)^k/(\pi k)$ を $k=\pm1,\pm2,\pm3$ で確認済み.)

これが実フーリエ級数の結果と一致するか確認しよう.「数学ノート」ボックスの公式より,$a_k=C_k+C_{-k}$,$b_k=i(C_k-C_{-k})$ である.$C_{-k}=\frac{2i(-1)^{-k}}{-k\pi}=-\frac{2i(-1)^k}{k\pi}$($(-1)^{-k}=(-1)^k$)だから,

$$ a_k=\frac{2i(-1)^k}{k\pi}-\frac{2i(-1)^k}{k\pi}=0,\qquad b_k=i\left(\frac{2i(-1)^k}{k\pi}-\left(-\frac{2i(-1)^k}{k\pi}\right)\right)=i\cdot\frac{4i(-1)^k}{k\pi}=-\frac{4(-1)^k}{k\pi}=\frac{4(-1)^{k+1}}{k\pi} $$

となり,実フーリエ級数の結果 $a_k=0,\ b_k=4(-1)^{k+1}/(k\pi)$ と完全に一致する.実の計算でも複素の計算でも,同じ答えにたどり着くことが確認できた.

鋸歯状波 f(x)=x/2(周期8)のグラフ
図28.6 鋸歯状波 $f(x)=x/2\ (-4 \lt x \lt 4)$ を周期8で拡張したグラフ.両端は白丸(除外)で,$x=\pm4,\pm12,\ldots$ で不連続に飛ぶ.

28.5 まとめと演習

28.5.1 まとめ

$$ f(x)=\sum_{k=0}^{\infty}\left(a_k\cos\frac{k\pi}{L}x+b_k\sin\frac{k\pi}{L}x\right)=\sum_{k=-\infty}^{\infty}C_ke^{i\frac{k\pi}{L}x}, \qquad a_k,b_k=\frac1L\int_{-L}^{L}f(x)\binom{\cos}{\sin}\frac{k\pi}{L}x\,dx,\quad C_k=\frac{1}{2L}\int_{-L}^{L}f(x)e^{-i\frac{k\pi}{L}x}dx $$

本章では,フーリエ級数の「作り方」(係数の求め方)と「使い方」(具体的な関数への適用)を学んだ.しかし,まだ重要な問いに答えていない——$f(x)$ のフーリエ級数は,本当に $f(x)$ 自身に収束するのか.例題28.5の矩形波のように不連続点がある関数では,その点で級数はどんな値に収束するのか.次の第29章では,リーマン・ルベーグの補助定理とFourierの定理を使って,この収束の問題に厳密に答える.

28.5.2 演習問題

演習28.1 複素フーリエ級数の計算

$f(x)=e^x\ (-\pi \lt x\le\pi)$ を周期2πで拡張した関数の複素フーリエ級数を求めよ.

ヒント:定理28.4($L=\pi$)の公式に直接代入し,$\int e^{(1-ik)x}dx$ の形の積分を計算する.$e^{\pm ik\pi}=(-1)^k$ を使う.最後は分母の実数化($1+ik$ を掛けて $1-ik$ を払う)をすると綺麗な形になる.

演習28.2 周期2Lのフーリエ余弦級数

$f(x)=|x|\ (-3 \lt x\le3)$ を周期6($L=3$)で拡張した関数のフーリエ余弦級数を求めよ.

ヒント:$f$ が偶関数であることに注目すれば,定理28.3(I)より最初から $b_k=0$ とわかる.$a_0,a_k$ は定理28.2の公式に例題28.6と同様の部分積分を適用する.

演習28.3 偶関数のフーリエ級数に余弦項しか現れないことの証明

$f(x)$ を周期 $2L$ の偶関数($f(-x)=f(x)$)とするとき,$b_k=\frac1L\int_{-L}^{L}f(x)\sin\frac{k\pi}{L}x\,dx=0$(すべての $k$)となることを,積分を $[-L,0]$ と $[0,L]$ に分けて,前半に $x\to-x$ の置換をほどこすことで直接証明せよ.

ヒント:28.3節の「イメージ」ボックスでは「奇関数だから対称区間の積分が0になる」と直感的に述べた.ここではその直感を,実際に積分を2つに割って置換積分することで,計算のレベルできちんと示す.

演習28.4 矩形波のフーリエ級数の数値実験(ギブス現象)

例題28.5の矩形波のフーリエ正弦級数の部分和 $S_N(x)=\sum_{k=1}^{N}\frac{1-(-1)^k}{2k}\sin kx$ を,Pythonで $N=5,20,100$ について計算し,(a) 連続点 $x=\pi/2$ での値が $\pi/4$ に近づく様子,(b) 不連続点 $x=0$ の近くで,$N$ を大きくしても消えない「行き過ぎ」(オーバーシュート)が起きる様子を数値的に確かめよ.

ヒント:(b)の現象はギブス現象(Gibbs phenomenon)とよばれる.オーバーシュートの大きさは $N\to\infty$ でも $0$ に近づかず,ジャンプの大きさの約9%(比にして約1.179倍)に留まることが知られている.

演習28.5 複素係数から実係数への逆算(鋸歯状波で確認)

例題28.7で求めた鋸歯状波の複素フーリエ係数 $C_k=\dfrac{2i(-1)^k}{k\pi}\ (k\ne0)$ から,公式 $a_k=C_k+C_{-k}$,$b_k=i(C_k-C_{-k})$ を使って実フーリエ係数 $a_k,b_k$ を自分で計算し直し,例題28.7本文の実フーリエ級数の結果 $a_k=0,\ b_k=\frac{4(-1)^{k+1}}{k\pi}$ と一致することを確認せよ.

ヒント:本文中ではこの逆算をすでに一度行っているが,$(-1)^{-k}=(-1)^k$ に注意しながら,自分の手で計算をなぞり直してみること.

演習28.6 奇関数拡張によるフーリエ正弦級数

$f(x)=x(\pi-x)\ (0 \lt x \lt \pi)$ を,区間 $(-\pi,0)$ では $f(x)=-f(-x)$ となるように奇関数として周期 $2\pi$ に拡張し,フーリエ正弦級数展開せよ.

ヒント:奇関数拡張なので $a_k=0$ であり,$b_k=\frac2\pi\int_0^{\pi}x(\pi-x)\sin kx\,dx$ を部分積分を2回使って計算すればよい(例題28.3の2回部分積分の計算パターンが参考になる).

28.5.3 参考文献

  1. 望月泰英『数学ノート フーリエ級数と変換』(手書き講義ノート).本章の底本.
  2. 大石進一『フーリエ解析』岩波書店,1989年.
  3. 金谷健一『これならわかる応用数学教室』共立出版,2003年.

関連シミュレーター:フーリエ級数シミュレーター(矩形波・三角波・鋸歯状波などの部分和を自分で動かして,ギブス現象や係数の減衰の様子を確認できる).