第40章ルジャンドルの微分方程式と多項式
第39章では,$x=x_0$ が通常点(ordinary point)であるとき,微分方程式の解が $y=\sum_{k=0}^{\infty}a_k(x-x_0)^k$ という形のべき級数で書けることを学んだ.本章では,このフロベニウスの方法を実際の——それも物理学と材料科学のいたるところに現れる——微分方程式に適用する.ルジャンドルの微分方程式(Legendre's differential equation) $$(1-x^2)\diff{^2y}{x^2}-2x\diff{y}{x}+n(n+1)y=0$$ である.一見すると唐突な形に見えるかもしれないが,この方程式は3次元空間で球対称に近い形(球,惑星,原子)を扱うときに必ず顔を出す.たとえば,電荷や質量が球のまわりに分布しているときの電位や重力ポテンシャルを求める「ラプラスの方程式」を球座標 $(r,\theta,\varphi)$ で変数分離すると,角度 $\theta$ に関する部分がちょうどこの形の方程式になる($x=\cos\theta$ と置き換える).また量子力学で電子の軌道角運動量を扱うときにも,まったく同じ方程式が現れる.つまりルジャンドルの微分方程式は,「球のまわりで起きる現象」を数式で扱うための共通言語なのである.
本章の目標は2つある.第一に,フロベニウス級数解法を最後まで手を動かして実行し,係数 $a_k$ のみたす漸化式を導き,それを解いて一般解を具体的な級数の形で書き下すこと.第二に,その一般解の中に隠れている驚くべき事実——$n$ が0以上の整数のとき,一般解を構成する2つの級数の一方が有限個の項で終わる多項式になる——を発見し,そこからルジャンドルの多項式(Legendre polynomial) $P_n(x)$ を定義することである.最後に,級数を使わずに $P_n(x)$ を一撃で計算できる魔法のような公式,ロドリーゲの公式(Rodrigues' formula) $$P_n(x)=\frac{1}{2^n n!}\diff{^n}{x^n}(x^2-1)^n$$ にたどり着く.この公式の証明はノートには残されていないが,本章では読者のために完全な証明を用意した.
- ルジャンドルの微分方程式 $(1-x^2)y''-2xy'+n(n+1)y=0$ と,$x=0$ が通常点であることの確認
- べき級数 $y=\sum a_kx^k$ を代入して得られる係数間の漸化式 $a_{k+2}=\dfrac{k(k+1)-n(n+1)}{(k+1)(k+2)}a_k$ の導出
- 偶数次だけの級数 $U_n(x)$ と奇数次だけの級数 $V_n(x)$,一般解 $y=a_0U_n(x)+a_1V_n(x)$,およびロンスキアンによる線形独立性の証明
- $n$ が偶数のとき $U_n(x)$ が,奇数のとき $V_n(x)$ が有限次の多項式になる理由
- ルジャンドルの多項式 $P_n(x)$ の定義($U_n(1)$ または $V_n(1)$ による正規化)と,級数の収束半径が $r=1$ であることの確認
- ロドリーゲの公式 $P_n(x)=\dfrac{1}{2^nn!}\diff{^n}{x^n}(x^2-1)^n$ とその完全な証明(ライプニッツの公式を使う)
- ルジャンドルの多項式の直交性 $\displaystyle\int_{-1}^{1}P_m(x)P_n(x)\,dx=0\ (m\neq n)$ とその証明
もとにしたノート:望月泰英『数学ノート 常微分方程式』 pp. 60–65.
40.1 ルジャンドルの微分方程式とフロベニウス級数解
定義40.1 ルジャンドルの微分方程式
$n$ を定数とする.$-1\lt x\lt 1$ の範囲で,未知関数 $y=y(x)$ についての2階線形同次微分方程式
\begin{equation} (1-x^2)\diff{^2y}{x^2}-2x\diff{y}{x}+n(n+1)y=0 \label{eq:40-legendre} \end{equation}をルジャンドルの微分方程式(Legendre's differential equation)と呼ぶ.
本章を通じて,$n$ は特に断らない限り0以上の整数とする(第40.4節で見るように,$n$ が0以上の整数のときにだけ「多項式解」という特別な現象が起きる).係数 $1-x^2$ は $x=\pm1$ で $0$ になるため,そこでは方程式の形が変わってしまう.そこで定義域を $-1\lt x\lt 1$ に限定しておく.
この方程式を,第39章で学んだフロベニウスの方法にのせるために,まず両辺を $1-x^2\ (\neq0)$ で割って,2階線形同次微分方程式の標準形 $y''+P(x)y'+Q(x)y=0$ に直す.
$$ \diff{^2y}{x^2}-\frac{2x}{1-x^2}\diff{y}{x}+\frac{n(n+1)}{1-x^2}y=0 $$すなわち
$$ P(x)=-\frac{2x}{1-x^2},\qquad Q(x)=\frac{n(n+1)}{1-x^2} $$とおく.$P(x)$,$Q(x)$ はどちらも分母が $x=0$ で $1-0^2=1\neq0$ となる有理関数だから,$x=0$ の近くでテイラー展開でき,すなわち両方とも $x=0$ において解析的(analytic)である.第39章の定義にしたがえば,これは「$x=0$ がこの微分方程式の通常点(ordinary point)である」ということにほかならない.したがって第39章の存在定理(通常点のまわりでは,べき級数の形の解が存在し,その収束半径は $P,Q$ の特異点までの距離以上になる)により,この微分方程式の解は
$$ y=\sum_{k=0}^{\infty}a_kx^{k}\quad\text{の形をしている.} $$イメージ:なぜ「代入して係数を比較する」だけで解けるのか
フロベニウスの方法の考え方はとても素朴である.解が $y=\sum_k a_kx^k$ という形をしていることは(通常点の定理により)保証されているので,あとは「係数 $a_0,a_1,a_2,\ldots$ が具体的にどんな値であるべきか」を突き止めればよい.そのために,この未知の級数を方程式にそのまま代入し,$x$ の同じベキの係数どうしを比較する——これだけである.計算はやや長くなるが,発想そのものは高校で学んだ「未定係数法」の延長線上にある.
そこで,$a_k$ がどのようなものかを実際に調べていこう.まず
$$ y=\sum_{k=0}^{\infty}a_kx^{k}=a_0+a_1x+a_2x^2+a_3x^3+\cdots $$とおく.これを1回微分すると,各項 $a_kx^k\ (k\ge1)$ は $ka_kx^{k-1}$ になり(定数項 $a_0$ の微分は $0$ なので和から消える),
$$ \diff{y}{x}=a_1+2a_2x+3a_3x^2+\cdots=\sum_{k=1}^{\infty}k\,a_kx^{k-1} $$を得る.ここで和の添字を $k\to k+1$ と付け替える(すなわち,新しい添字を $k'=k-1$ とおき,$k=k'+1$ を代入してから $k'$ を改めて $k$ と書き直す)と,$k=1$ から始まっていた和が $k=0$ から始まる和に書き換えられる.
$$ \diff{y}{x}=\sum_{k=1}^{\infty}k\,a_kx^{k-1}=\sum_{k=0}^{\infty}(k+1)a_{k+1}x^{k} $$数学ノート:和の添字の付け替え(reindexing)
「添字を付け替えても和の値は変わらない」というのは,$\Sigma$ が単に「同じ形の項を全部足す」という意味の省略記号だからである.たとえば左辺を具体的に書き下すと $1\cdot a_1x^0+2\cdot a_2x^1+3\cdot a_3x^2+\cdots$ であり,右辺を具体的に書き下しても $(0+1)a_{0+1}x^0+(1+1)a_{1+1}x^1+(2+1)a_{2+1}x^2+\cdots=1\cdot a_1x^0+2\cdot a_2x^1+3\cdot a_3x^2+\cdots$ となって,まったく同じ項が同じ順番で並ぶ.添字の文字($k$ でも $j$ でも何でもよい)は「今どの項を指しているか」を示すラベルにすぎず,和の中身(=足し合わされる項の集合)を変えない限り,ラベルの付け方や和の下端の表し方を変えても答えは同じである.この技法は本章で繰り返し使うので,ここで慣れておこう.
同様に2回微分すると,$a_kx^k\ (k\ge2)$ の項は $k(k-1)a_kx^{k-2}$ になり($k=0,1$ の項は1回微分の時点で消えている),
$$ \diff{^2y}{x^2}=\diff{}{x}\left(\diff{y}{x}\right)=\sum_{k=2}^{\infty}k(k-1)a_kx^{k-2} $$今度は添字を $k\to k+2$ と付け替える($k=k'+2$)と,
$$ \diff{^2y}{x^2}=\sum_{k=2}^{\infty}k(k-1)a_kx^{k-2}=\sum_{k=0}^{\infty}(k+1)(k+2)a_{k+2}x^{k} $$を得る.$y$,$\diff{y}{x}$,$\diff{^2y}{x^2}$ の級数の式を,先ほどの式\eqref{eq:40-legendre}に代入する.左側の $\diff{^2y}{x^2}$ については,まだ添字を付け替える前の $\sum_{k=2}^{\infty}k(k-1)a_kx^{k-2}$ の形のまま使うほうが,$(1-x^2)$ を掛けたときの整理がしやすい.
$$ (1-x^2)\sum_{k=2}^{\infty}k(k-1)a_kx^{k-2}-2x\sum_{k=1}^{\infty}k\,a_kx^{k-1}+n(n+1)\sum_{k=0}^{\infty}a_kx^{k}=0 $$この式を,$(1-x^2)$ と $-2x$ をそれぞれ分配してから整理する.まず1項目を分配すると,$\displaystyle\sum_{k=2}^{\infty}k(k-1)a_kx^{k-2}-\sum_{k=2}^{\infty}k(k-1)a_kx^{k}$(後者は $x^{k-2}\cdot x^2=x^k$ になることに注意).2項目は $-2x\cdot k\,a_kx^{k-1}=-2k\,a_kx^{k}$ であり,$k=1$ の項をくくり出すと $-2a_1x-\displaystyle\sum_{k=2}^{\infty}2k\,a_kx^{k}$ となる.3項目はそのまま $k=0,1$ の項をくくり出しておく.
$$ \left\{\sum_{k=2}^{\infty}k(k-1)a_kx^{k-2}-\sum_{k=2}^{\infty}k(k-1)a_kx^{k}\right\} -\left(2a_1x+\sum_{k=2}^{\infty}2k\,a_kx^{k}\right) +\left\{a_0n(n+1)+a_1n(n+1)x+\sum_{k=2}^{\infty}a_kn(n+1)x^{k}\right\}=0 $$注意:ノート左欄外の書き込みについて
底本のこの箇所の左欄外には,大きな弧を描く矢印とともに短い書き込みがある.拡大して確認したところ「$k=2$」の文字は明瞭に読めるが,その前後の数文字(「…て $k=2$ に…(そろえる?)」のように見える)は判読できなかった.内容から判断すると,これは次に行う「$\displaystyle\sum_{k=2}^{\infty}k(k-1)a_kx^{k-2}$ の和の下端を,他の和と同じ $k=0$ にそろえるために添字を付け替える」という操作を指示するメモだと考えられる.以下ではこの操作を省略せずに実行する.
ここで,左端の $\displaystyle\sum_{k=2}^{\infty}k(k-1)a_kx^{k-2}$ の添字を,先ほどと同じ要領で $k\to k+2$ と付け替える.すなわち $k'=k-2$($k=k'+2$)とおくと,$k=2$ のとき $k'=0$ に対応するので,
$$ \sum_{k=2}^{\infty}k(k-1)a_kx^{k-2}=\sum_{k=0}^{\infty}(k+1)(k+2)a_{k+2}x^{k} =2a_2+6a_3x+\sum_{k=2}^{\infty}(k+1)(k+2)a_{k+2}x^{k} $$と書き直せる(最後の等号では,$k=0$ の項 $1\cdot2\cdot a_2x^0=2a_2$ と $k=1$ の項 $2\cdot3\cdot a_3x^1=6a_3x$ を和の外に取り出し,残りを $k=2$ からの和として書いている).これで,すべての和の下端が $k=2$ にそろった.この式を1つ前の式に代入し,$x^0,x^1$ の項と $x^k\ (k\ge2)$ の項に整理すると,
\begin{equation} \left\{2a_2+a_0n(n+1)\right\} +\left\{-2a_1+a_1n(n+1)+6a_3\right\}x +\sum_{k=2}^{\infty}\left\{(k+1)(k+2)a_{k+2}-k(k-1)a_k-2k\,a_k+n(n+1)a_k\right\}x^{k}=0 \label{eq:40-B} \end{equation}を得る.次節では,この式(式\eqref{eq:40-B},ノートのⒷ式に対応する)が「$x$ についての恒等式である」という事実を使って,係数 $a_k$ のみたす漸化式を取り出す.
例題40.1 $n=0,1$ のときの解を直接確かめる
(a) $n=0$ のとき,定数関数 $y=1$ がルジャンドルの微分方程式の解であることを,方程式に直接代入して確かめよ.(b) $n=1$ のとき,$y=x$ が解であることを同様に確かめよ.
解答 (a) $y=1$ のとき $\diff{y}{x}=0$,$\diff{^2y}{x^2}=0$ である.$n=0$ を式\eqref{eq:40-legendre}に代入すると,左辺は
$$ (1-x^2)\cdot0-2x\cdot0+0\cdot1\cdot1=0 $$となり,たしかに方程式を満たす.
(b) $y=x$ のとき $\diff{y}{x}=1$,$\diff{^2y}{x^2}=0$ である.$n=1$ を式\eqref{eq:40-legendre}に代入すると,
$$ (1-x^2)\cdot0-2x\cdot1+1\cdot2\cdot x=-2x+2x=0 $$となり,これも方程式を満たす.この2つの解 $y=1$,$y=x$ は,どちらも「無限に続く級数」ではなく,有限個の項で終わる多項式である点に注目してほしい.この現象——$n$ が0以上の整数のとき,一般解の一部が多項式になる——こそが,本章全体を通じて明らかにしていく主題である.
40.2 漸化式の導出と係数の計算
前節の式\eqref{eq:40-B}は,左辺が $x$ のべき級数として恒等的に $0$ に等しい,という主張である.一般に,べき級数 $\sum_k c_kx^k$ がある区間で恒等的に $0$(つまりその区間内のすべての $x$ で値が $0$)であるならば,係数 $c_k$ はすべて $0$ でなければならない(べき級数の一意性.$x=0$ を代入すれば $c_0=0$,両辺を微分してから $x=0$ を代入すれば $c_1=0$,……と繰り返せば分かる).式\eqref{eq:40-B}はまさにこの形をしているので,$x^0$,$x^1$,$x^k\ (k\ge2)$ それぞれの係数を $0$ とおくことができる.
$$ \begin{cases} 2a_2+n(n+1)a_0=0 & \cdots\text{①}\\[2pt] n(n+1)a_1-2a_1+6a_3=0 & \cdots\text{②}\\[2pt] (k+1)(k+2)a_{k+2}-\{k(k-1)+2k-n(n+1)\}a_k=0 & \cdots\text{③}\quad(k\ge2) \end{cases} $$③の中括弧の中身は $k(k-1)+2k=k^2-k+2k=k^2+k=k(k+1)$ と整理できるので,③は
$$ (k+1)(k+2)a_{k+2}-\{k(k+1)-n(n+1)\}a_k=0\qquad(k\ge2) $$と書き直せる.ここで面白いことに気づく.③の左辺に $k=0$ を代入すると $1\cdot2\cdot a_2-\{0-n(n+1)\}a_0=2a_2+n(n+1)a_0$ となり,これは①の左辺と完全に一致する.同様に $k=1$ を代入すると $2\cdot3\cdot a_3-\{2-n(n+1)\}a_1=6a_3+n(n+1)a_1-2a_1$ となり,②の左辺とも一致する.つまり①は「③の $k=0$ のとき」,②は「③の $k=1$ のとき」にほかならず,①②③はまとめて次の1本の漸化式で表せる.
定理40.1 ルジャンドルの微分方程式の係数漸化式
級数解 $y=\sum_{k=0}^{\infty}a_kx^k$ の係数は,次の漸化式を満たす.
\begin{equation} a_{k+2}=\frac{k(k+1)-n(n+1)}{(k+1)(k+2)}\,a_k\qquad(k=0,1,2,\ldots) \label{eq:40-recurrence} \end{equation}この漸化式の分子 $k(k+1)-n(n+1)$ をさらに因数分解しておくと,後の議論(第40.3節・第40.4節)が見通しよくなる.$k^2$ と $n^2$ の差を高校で学んだ因数分解の公式 $a^2-b^2=(a-b)(a+b)$ で分解し,共通因数 $(k-n)$ をくくり出す.
$$ k(k+1)-n(n+1)=k^2+k-n^2-n=(k^2-n^2)+(k-n)=(k-n)(k+n)+(k-n)=(k-n)\{(k+n)+1\}=(k-n)(k+n+1) $$したがって漸化式\eqref{eq:40-recurrence}は,$k-n=-(n-k)$ であることに注意して符号を整えると,
\begin{equation} a_{k+2}=\frac{(k-n)(k+n+1)}{(k+1)(k+2)}a_k=-\frac{(n-k)(n+k+1)}{(k+1)(k+2)}a_k\qquad(k=0,1,2,\ldots) \label{eq:40-recurrence2} \end{equation}と書ける.この形からただちに読み取れる重要な事実が1つある——もし $k=n$(すなわち,添字 $k$ が $n$ と同じ値になる瞬間)が来れば,右辺の因子 $(n-k)$ が $0$ になるので,$a_{k+2}=0$ となる.この観察は第40.3節・第40.4節で決定的な役割を果たす.
漸化式\eqref{eq:40-recurrence2}は,$a_{k+2}$ を2つ前の項 $a_k$ から作る規則なので,添字が偶数の列 $a_0,a_2,a_4,\ldots$ と,添字が奇数の列 $a_1,a_3,a_5,\ldots$ は互いに独立に決まる.そこで,任意定数 $a_0,a_1$ から出発して,それぞれの列を実際に計算してみよう.
40.2.1 偶数番目の係数
$k$ が偶数のとき,式\eqref{eq:40-recurrence2}に $k=0,2,4,\ldots$ を順番に代入していく.
$$ k=0\ \text{のとき}\quad a_2=-\frac{n(n+1)}{2\cdot1}a_0=-\frac{n(n+1)}{2!}a_0 $$ $$ k=2\ \text{のとき}\quad a_4=-\frac{(n-2)(n+3)}{3\cdot4}a_2=-\frac{(n-2)(n+3)}{3\cdot4}\left(-\frac{n(n+1)}{2!}\right)a_0=(-1)^2\frac{n(n-2)\times(n+1)(n+3)}{4!}a_0 $$($a_2$ の式を代入したあと,分母の $2!\cdot3\cdot4=2\cdot(3\cdot4)=4!$ になることを使って整理した.符号は $(-1)\times(-1)=(-1)^2$ である.)
$$ k=4\ \text{のとき}\quad a_6=-\frac{(n-4)(n+5)}{5\cdot6}a_4=(-1)^3\frac{n(n-2)(n-4)\times(n+1)(n+3)(n+5)}{6!}a_0 $$この計算を続けていくと,一般に $j\ge1$ について,次の一般項の形が見えてくる(次々に因子が1つずつ増えていくパターンを追えばよい).
$$ a_{2j}=(-1)^j\,\frac{\bigl[n(n-2)(n-4)\cdots(n-2(j-1))\bigr]\times\bigl[(n+1)(n+3)(n+5)\cdots(n+2j-1)\bigr]}{(2j)!}\,a_0 =(-1)^j\frac{\displaystyle\prod_{i=0}^{j-1}(n-2i)\times\prod_{i=0}^{j-1}(n+1+2i)}{(2j)!}a_0 $$(記号 $\prod$(パイ,capital pi,「総乗」)は $\Sigma$ の掛け算版で,$\prod_{i=0}^{j-1}(n-2i)=n(n-2)(n-4)\cdots(n-2(j-1))$ を意味する.)
40.2.2 奇数番目の係数
まったく同様に,$k$ が奇数のとき $k=1,3,5,\ldots$ を式\eqref{eq:40-recurrence2}に代入していく.
$$ k=1\ \text{のとき}\quad a_3=-\frac{(n-1)(n+2)}{2\cdot3}a_1=-\frac{(n-1)(n+2)}{3!}a_1 $$ $$ k=3\ \text{のとき}\quad a_5=-\frac{(n-3)(n+4)}{4\cdot5}a_3=(-1)^2\frac{(n-1)(n-3)\times(n+2)(n+4)}{5!}a_1 $$ $$ k=5\ \text{のとき}\quad a_7=-\frac{(n-5)(n+6)}{6\cdot7}a_5=(-1)^3\frac{(n-1)(n-3)(n-5)\times(n+2)(n+4)(n+6)}{7!}a_1 $$こちらも一般項は,$j\ge1$ について
$$ a_{2j+1}=(-1)^j\frac{\displaystyle\prod_{i=0}^{j-1}(n-1-2i)\times\prod_{i=0}^{j-1}(n+2+2i)}{(2j+1)!}a_1 $$となる.次節では,この2つの系列(偶数次だけを含む級数と奇数次だけを含む級数)をそれぞれ $U_n(x)$,$V_n(x)$ と名付け,一般解を組み立てる.
例題40.2 漸化式から係数を具体的に計算する
(a) $n=2$,$a_0=1$ として,漸化式\eqref{eq:40-recurrence2}から $a_2$,$a_4$ を求め,$1+a_2x^2+a_4x^4$ を書き下せ.(b) $n=3$,$a_1=1$ として,$a_3$,$a_5$ を求め,$x+a_3x^3+a_5x^5$ を書き下せ.
解答 (a) $k=0$:$a_2=-\dfrac{2\cdot3}{1\cdot2}a_0=-3$.$k=2$:$a_4=-\dfrac{(2-2)(2+3)}{3\cdot4}a_2=-\dfrac{0\cdot5}{12}a_2=0$.よって級数は $1-3x^2+0\cdot x^4+\cdots$ であり,実は $a_4$ の時点で分子の因子 $(n-k)=(2-2)=0$ になるため,これ以降の係数もすべて $0$ になる(この現象は第40.3節で一般的に説明する).したがって求める式は $1-3x^2$ である.
(b) $k=1$:$a_3=-\dfrac{(3-1)(3+2)}{2\cdot3}a_1=-\dfrac{2\cdot5}{6}=-\dfrac{5}{3}$.$k=3$:$a_5=-\dfrac{(3-3)(3+4)}{4\cdot5}a_3=-\dfrac{0\cdot7}{20}a_3=0$.よって求める式は $x-\dfrac{5}{3}x^3$ である(この場合も $(n-k)=(3-3)=0$ が現れて,それ以降の係数が $0$ になっている).(sympyで検算済み.)
40.3 一般解と $U_n(x)$,$V_n(x)$
前節で求めた偶数番目の係数の列と奇数番目の係数の列を,もとの級数 $y=\sum_k a_kx^k$ に戻して組み立てよう.$a_0,a_1$ を任意定数とすれば,ルジャンドルの微分方程式の一般解は
$$ y=(a_0+a_2x^2+a_4x^4+a_6x^6+\cdots)+(a_1x+a_3x^3+a_5x^5+a_7x^7+\cdots) $$である(偶数次の項をすべて集めたものと,奇数次の項をすべて集めたものに分けた).第40.2節で求めた係数の式を代入すると,
$$ y=a_0\left\{1-\frac{n(n+1)}{2!}x^2+\frac{n(n-2)(n+1)(n+3)}{4!}x^4-\frac{n(n-2)(n-4)(n+1)(n+3)(n+5)}{6!}x^6+\cdots\right\} $$ $$ +a_1\left\{x-\frac{(n-1)(n+2)}{3!}x^3+\frac{(n-1)(n-3)(n+2)(n+4)}{5!}x^5-\frac{(n-1)(n-3)(n-5)(n+2)(n+4)(n+6)}{7!}x^7+\cdots\right\} $$となる.中括弧の中の2つの級数に,それぞれ名前を付けておこう.
定義40.2 $U_n(x)$ と $V_n(x)$
$$ U_n(x)=1-\frac{n(n+1)}{2!}x^2+\frac{n(n-2)(n+1)(n+3)}{4!}x^4-\cdots =\sum_{j=0}^{\infty}(-1)^j\frac{\displaystyle\prod_{i=0}^{j-1}(n-2i)\prod_{i=0}^{j-1}(n+1+2i)}{(2j)!}x^{2j} $$ $$ V_n(x)=x-\frac{(n-1)(n+2)}{3!}x^3+\frac{(n-1)(n-3)(n+2)(n+4)}{5!}x^5-\cdots =\sum_{j=0}^{\infty}(-1)^j\frac{\displaystyle\prod_{i=0}^{j-1}(n-1-2i)\prod_{i=0}^{j-1}(n+2+2i)}{(2j+1)!}x^{2j+1} $$注意:底本の誤記($U_n(x)$ の分子)
底本 p.62 では,$U_n(x)$ の係数の分子が「$n\times(n-1)$」「$n(n+2)\times(n+1)(n+3)$」と書かれている(該当箇所には青字の下線が引かれている).しかし,その直前で $a_0\{\cdots\}$ の形に書き下した式(本書でもすぐ上に掲げた式)と比較すると分子は「$n\times(n+1)$」「$n(n-2)\times(n+1)(n+3)$」でなければならない.実際,第40.2節で計算したとおり $a_2=-\dfrac{n(n+1)}{2!}a_0$,$a_4=\dfrac{n(n-2)(n+1)(n+3)}{4!}a_0$ であり,本書では正しい式で $U_n(x)$ を定義した.
これで,一般解は $y=a_0U_n(x)+a_1V_n(x)$($a_0,a_1$ は任意定数)という,簡潔な形にまとめられた.ただし,これが本当に「一般解」と呼べるためには,$U_n(x)$ と $V_n(x)$ が互いに定数倍ではない,独立な2つの解であることを確認しておかなければならない.
$U_n(x)$ と $V_n(x)$ の線形独立性
定義40.2の級数を見ると,$U_n(x)$ は偶数次の項だけからなり,しかも $x^0$ の係数が $1$ である.一方 $V_n(x)$ は奇数次の項だけからなり,$x^1$ の係数が $1$ である.したがって
$$ U_n(0)=1,\qquad U_n'(0)=0,\qquad V_n(0)=0,\qquad V_n'(0)=1 $$($U_n(x)$ を微分すると偶数次 $\to$ 奇数次になるので,定数項だけが残る $x=0$ では $U_n'(0)=0$.$V_n(x)$ は $x$ の係数がそのまま $V_n'(0)$ になる.)第35章で学んだロンスキアン(Wronskian)$W(f,g)(x)=f(x)g'(x)-f'(x)g(x)$ を使うと,
$$ W(U_n,V_n)(0)=U_n(0)V_n'(0)-U_n'(0)V_n(0)=1\cdot1-0\cdot0=1\neq0 $$である.第35章の定理(2つの解のロンスキアンがある1点で $0$ でなければ,その2つの解は線形独立である)により,$U_n(x)$ と $V_n(x)$ は線形独立である.とくに,$U_n(x)=CV_n(x)$($C$ は定数)となることはない.
定理40.2 ルジャンドルの微分方程式の一般解
$U_n(x)$,$V_n(x)$ を定義40.2のとおりとすると,ルジャンドルの微分方程式(式\eqref{eq:40-legendre})の一般解は
$$ y=a_0U_n(x)+a_1V_n(x)\qquad(a_0,a_1\text{ は任意定数}) $$で与えられる.
さて,ここからが本章でいちばん面白いところである.$U_n(x)$ と $V_n(x)$ の定義をよく見ると,一方は有限個の項で終わる多項式に,もう一方は無限に項が続く級数になる,という現象が起きる.第40.2節の終わりで観察したとおり,漸化式\eqref{eq:40-recurrence2}の分子には因子 $(n-k)$ があるので,係数の列(偶数番目か奇数番目のどちらか)が $k=n$ に到達すると,その瞬間に係数が $0$ になり,以後はずっと $0$ のままである.問題は,$k=n$ が「偶数番目の列($k=0,2,4,\ldots$)」と「奇数番目の列($k=1,3,5,\ldots$)」のどちらに現れるか,である.これは $n$ の偶奇だけで決まる.
定理40.3 $n$ が偶数のとき
$n=2m$($m$ は0以上の整数,すなわち $n$ が偶数)のとき,$U_n(x)$ は次数 $n$ の多項式であり,$V_n(x)$ は無限級数のままである.
証明
$U_n(x)$ の係数 $a_{2j}$($j\ge1$)の分子には,第40.2.1節の一般項の式より,因子 $\displaystyle\prod_{i=0}^{j-1}(n-2i)=n(n-2)(n-4)\cdots(n-2(j-1))$ が現れる.$n=2m$ として $j=m+1$ を代入すると,この積は
$$ n(n-2)(n-4)\cdots(n-2(m-1))\cdot(n-2m) $$となり(積の中の項数は $j=m+1$ 個),最後の因子が $n-2m=2m-2m=0$ になる.つまり $a_{2(m+1)}=a_{n+2}=0$ である.ノートの記法にあわせて書けば,青色で示された部分の積は
$$ 2m,\ 2m(2m-2),\ \ldots,\ 2m(2m-2)\cdots\{2m-(2m-2)\},\ 2m(2m-2)\cdots\{2m-(2m-2)\}\cdot(2m-2m) $$のように,最後にちょうど $(2m-2m)=0$ という因子が登場する.漸化式\eqref{eq:40-recurrence2}は $a_{k+2}$ を $a_k$ の定数倍として作るだけなので,一度 $a_{n+2}=0$ になれば,それ以降の $a_{n+4},a_{n+6},\ldots$ もすべて $a_{n+2}=0$ の定数倍として $0$ のまま続く.したがって $U_n(x)$ は $x^{n}$ の項で終わる,次数 $n$ の多項式である(図40.1の上段).
一方,$V_n(x)$ の係数 $a_{2j+1}$ の分子には因子 $\displaystyle\prod_{i=0}^{j-1}(n-1-2i)=(n-1)(n-3)\cdots$ が現れる.これが $0$ になるのは,ある奇数 $n-1-2i$ が $0$ になるとき,すなわち $n-1-2i=0$ を満たす整数 $i$ が存在するときであるが,$n$ が偶数である限り $n-1$ は奇数であり,$n-1-2i$ は常に奇数のままで $0$ になることはない.したがって $V_n(x)$ の係数はどれも $0$ にならず,無限級数のまま残る(図40.1の下段).(証明終わり)
例題40.3 ロンスキアンで独立性を確認する($n=3$)
$n=3$ のとき,漸化式\eqref{eq:40-recurrence2}から $U_3(x)$,$V_3(x)$ の低次の項を求め($n=3$ は奇数なので,$V_3(x)$ が多項式で終わり,$U_3(x)$ は無限級数のまま続くことに注意),それでもロンスキアン $W(U_3,V_3)(0)$ が計算できて $0$ でないことを確認せよ.
解答 偶数番目:$k=0$ で $a_2=-\dfrac{3\cdot4}{1\cdot2}=-6$,$k=2$ で $a_4=-\dfrac{1\cdot6}{3\cdot4}a_2=-\dfrac12\cdot(-6)=3$,……と係数は $0$ にならずに続くので $U_3(x)=1-6x^2+3x^4+\cdots$ は無限級数である.奇数番目:$k=1$ で $a_3=-\dfrac{2\cdot5}{2\cdot3}=-\dfrac53$,$k=3$ で $(n-k)=(3-3)=0$ より $a_5=0$(以後も $0$)なので $V_3(x)=x-\dfrac53x^3$ は3次で終わる多項式である.
ここで重要なのは,$U_3(x)$ が有限か無限かにかかわらず,定義40.2の作り方(偶数次だけを集め,定数項を $1$ にそろえる)から $U_3(0)=1$,$U_3'(0)=0$ が自動的に成り立つという点である($U_3(x)$ の各項は $x^0,x^2,x^4,\ldots$ だけなので,微分すると $x^1,x^3,\ldots$ の形になり,$x=0$ ではすべて消える).同様に $V_3(0)=0$,$V_3'(0)=1$($V_3(x)=x-\frac53x^3$ を微分すると $V_3'(x)=1-5x^2$ より $V_3'(0)=1$).よって
$$ W(U_3,V_3)(0)=U_3(0)V_3'(0)-U_3'(0)V_3(0)=1\cdot1-0\cdot0=1\neq0 $$であり,$U_3(x)$ と $V_3(x)$ は線形独立である.(一般に,定義40.2の $U_n(x)$,$V_n(x)$ は常に $U_n(0)=1,U_n'(0)=0,V_n(0)=0,V_n'(0)=1$ を満たすので,有限か無限かによらず,どの $n$ についても $W(U_n,V_n)(0)=1$ となる.sympyで $n=0,\ldots,5$ について検算済み.)
例題40.4 $n=6$(偶数)で $U_6(x)$ が多項式になることを確認する
$n=6$ のとき,漸化式\eqref{eq:40-recurrence2}を使って $a_0=1$ から $a_2,a_4,a_6,a_8$ を計算し,$U_6(x)$ が6次の多項式で終わることを確認せよ.
解答 $k=0$:$a_2=-\dfrac{6\cdot7}{1\cdot2}=-21$.$k=2$:$a_4=-\dfrac{4\cdot9}{3\cdot4}a_2=-3\cdot(-21)=63$.$k=4$:$a_6=-\dfrac{2\cdot11}{5\cdot6}a_4=-\dfrac{22}{30}\cdot63=-\dfrac{231}{5}$.$k=6$:$a_8=-\dfrac{(6-6)(6+7)}{7\cdot8}a_6=-\dfrac{0\cdot13}{56}a_6=0$.たしかに $k=n=6$ で因子 $(n-k)=0$ が現れ,$a_8=0$ になった(以後 $a_{10}=a_{12}=\cdots=0$).したがって
$$ U_6(x)=1-21x^2+63x^4-\frac{231}{5}x^6 $$は6次で終わる多項式である.(sympyで検算済み.)
40.4 ルジャンドルの多項式
定理40.4 $n$ が奇数のとき
$n=2m+1$($m$ は0以上の整数,すなわち $n$ が奇数)のとき,$V_n(x)$ は次数 $n$ の多項式であり,$U_n(x)$ は無限級数のままである.
証明
定理40.3の証明とまったく同じ議論を,偶数番目と奇数番目を入れ替えて行えばよい.$V_n(x)$ の係数 $a_{2j+1}$ の分子には因子 $\displaystyle\prod_{i=0}^{j-1}(n-1-2i)=(n-1)(n-3)\cdots$ が現れる.$n=2m+1$ とすると $n-1=2m$ は偶数であり,$j=m+1$ を代入すれば,この積の最後の因子は
$$ \{(2m+1)-1\}-2m=(2m)-2m=0 $$すなわちノートの表記でいえば,積は
$$ \{(2m+1)-1\},\ \{(2m+1)-1\}\{(2m+1)-3\},\ \ldots,\ \{(2m+1)-1\}\cdots\{(2m+1)-(2m-1)\},\ \{(2m+1)-1\}\cdots\{(2m+1)-(2m+1)\} $$のように,最後の因子 $\{(2m+1)-(2m+1)\}=0$ でちょうど $0$ になる.したがって $a_{2(m+1)+1}=a_{n+2}=0$ であり,以後の $a_{n+4},a_{n+6},\ldots$ も連鎖的に $0$ になるので,$V_n(x)$ は $x^n$ の項で終わる次数 $n$ の多項式である.
一方 $U_n(x)$ の係数 $a_{2j}$ の分子の因子 $n-2i$ は,$n$ が奇数である限り常に奇数のままで $0$ になることはないので,$U_n(x)$ は無限級数のまま残る.(証明終わり)
例題40.5 $n=4$ の $U_4(x)$ と $n=5$ の $V_5(x)$(底本の計算例)
$n=4$(偶数)のとき,漸化式\eqref{eq:40-recurrence2}を使って $U_4(x)$ を,$n=5$(奇数)のとき $V_5(x)$ を求めよ.
解答 $n=4$:$k=0$ で $a_2=-\dfrac{4\cdot5}{1\cdot2}a_0=-10a_0$.$k=2$ で $a_4=-\dfrac{2\cdot7}{3\cdot4}a_2=-\dfrac{14}{12}\cdot(-10)a_0=\dfrac{35}{3}a_0$.$k=4$ で $(n-k)=(4-4)=0$ より $a_6=0$(以後も $0$).したがって $a_0=1$ として
$$ U_4(x)=1-10x^2+\frac{35}{3}x^4 $$注意:底本の誤記($U_4(x)$ の係数)
底本 p.63 には「$U_4(x)=1-6x^2+\dfrac{35}{3}x^4$」と書かれているが,これは上の計算,および底本 p.64 で $P_4(x)$ を計算する際に実際に使われている式(そこでは $U_4(x)=1-10x^2+\frac{35}{3}x^4$ が使われている)と矛盾する.すなわち底本自身の中で不整合があり,p.64 の計算のほうが正しい.本書では正しい値 $1-10x^2+\frac{35}{3}x^4$ を採用する.
$n=5$:$k=1$ で $a_3=-\dfrac{4\cdot7}{2\cdot3}a_1=-\dfrac{14}{3}a_1$.$k=3$ で $a_5=-\dfrac{2\cdot9}{4\cdot5}a_3=-\dfrac{9}{10}\cdot\left(-\dfrac{14}{3}\right)a_1=\dfrac{21}{5}a_1$.$k=5$ で $(n-k)=(5-5)=0$ より $a_7=0$.したがって $a_1=1$ として
$$ V_5(x)=x-\frac{14}{3}x^3+\frac{21}{5}x^5 $$である.(両方とも sympy で漸化式から再計算し,一致を確認済み.)
定理40.3・定理40.4により,$n$ が0以上の整数のとき,$U_n(x)$ と $V_n(x)$ のちょうど一方が次数 $n$ の多項式になる.そこで,その「多項式になるほう」を,$x=1$ での値で正規化して名付けよう.
定義40.3 ルジャンドルの多項式 $P_n(x)$
(i) $n$ が偶数のとき,$P_n(x)=\dfrac{U_n(x)}{U_n(1)}$.
(ii) $n$ が奇数のとき,$P_n(x)=\dfrac{V_n(x)}{V_n(1)}$.
($U_n(1)\neq0$,$V_n(1)\neq0$ であることは,次節でロドリーゲの公式を証明する際に,$w(1)=n!\,2^n\neq0$ という形で一般的に確認する.)これをルジャンドルの多項式(Legendre polynomial)と呼ぶ.定義から明らかに,どの $n$ についても $P_n(1)=1$ である((i)の場合は分母と分子がどちらも $U_n(1)$ になるので $P_n(1)=U_n(1)/U_n(1)=1$,(ii)の場合も同様に $P_n(1)=V_n(1)/V_n(1)=1$.「$1$ を $0$ でない同じ数で割ると必ず $1$ になる」という,割り算そのものの性質にすぎない).
ルジャンドルの多項式を使うと,一般解(定理40.2)を,有限項の部分と無限級数の部分に分けて書き直すことができる.
(i) $n$ が偶数のとき,$U_n(x)=U_n(1)P_n(x)$ なので,一般解は $C_1,C_2$ を任意定数として
$$ y=C_1\underset{\text{有限項}}{P_n(x)}+C_2\underset{\text{無限項}}{V_n(x)} $$(ii) $n$ が奇数のとき,$V_n(x)=V_n(1)P_n(x)$ なので,同様に
$$ y=C_1\underset{\text{無限項}}{U_n(x)}+C_2\underset{\text{有限項}}{P_n(x)} $$と書ける.どちらの場合も,無限級数のまま残るほう($U_1(x),U_3(x),U_5(x),\ldots$ や $V_0(x),V_2(x),V_4(x),\ldots$)の収束半径を確認しておこう.
定理40.5 $U_n(x)$,$V_n(x)$ の収束半径
無限級数のままである $U_n(x)$($n$ が奇数のとき)や $V_n(x)$($n$ が偶数のとき)の収束半径は $r=1$ である.
証明(ダランベールの判定法)
係数の漸化式\eqref{eq:40-recurrence2}は $a_{k+2}=-\dfrac{(n-k)(n+k+1)}{(k+1)(k+2)}a_k$ であった.$U_n(x)$ や $V_n(x)$ は $x^2$ だけの整数べきで隣どうしがつながっている($x^k$ の次の非零項は $x^{k+2}$)ので,$t=x^2$ とおいた級数 $\sum_j b_jt^j$($b_j=a_{2j}$ または $a_{2j+1}$)とみなしたときの収束半径を,第39章で学んだダランベールの判定法(比の判定法,$D$'Alembert's ratio test)で求める.ダランベールの判定法は,$\displaystyle\lim_{j\to\infty}\left|\frac{b_j}{b_{j+1}}\right|=R$ が存在すれば,級数 $\sum_j b_jt^j$ は $|t|\lt R$ で収束する,というものであった.ここで $b_j/b_{j+1}=a_k/a_{k+2}$($k=2j$ または $2j+1$)なので,
$$ R=\lim_{k\to\infty}\left|\frac{a_k}{a_{k+2}}\right|=\lim_{k\to\infty}\left|\frac{(k+1)(k+2)}{(k-n)(k+n+1)}\right| $$を計算すればよい.分母・分子を $k^2$ で割ってから極限を取ると,
$$ R=\lim_{k\to\infty}\left|\frac{\left(1+\dfrac1k\right)\left(1+\dfrac2k\right)}{\left(1-\dfrac{n}k\right)\left(1+\dfrac{n+1}k\right)}\right|=\frac{1\cdot1}{1\cdot1}=1 $$である($k\to\infty$ のとき $1/k,n/k,(n+1)/k,2/k\to0$ だから).これは $t=x^2$ に関する収束半径が $1$ であること,すなわち $|x^2|\lt1$,言い換えれば $|x|\lt1$ で級数が収束することを意味する.よって $x$ に関する収束半径は $r=1$ である.(証明終わり)
注意:底本の誤記($r^2=|a_k/a_{k+2}|$ の式)
底本 p.63 は,この極限を「$r^2=\displaystyle\lim_{k\to\infty}\left|\dfrac{a_k}{a_{k+2}}\right|=\displaystyle\lim_{k\to\infty}\left|\dfrac{(k-n)(k+n+1)}{(k+1)(k+2)}\right|$」という式で書いている.しかし,漸化式\eqref{eq:40-recurrence2}すなわち $a_{k+2}=-\dfrac{(n-k)(n+k+1)}{(k+1)(k+2)}a_k$ の両辺の逆数をとれば,比 $a_k/a_{k+2}$ は $\dfrac{(k+1)(k+2)}{(k-n)(k+n+1)}$(分子と分母がちょうど入れ替わった形)になるはずである.つまり底本の式は,符号を除けば比 $a_{k+2}/a_k$ の値のほうを書いてしまっている(上の証明で実際に使った式 $\displaystyle R=\lim_{k\to\infty}\left|\frac{(k+1)(k+2)}{(k-n)(k+n+1)}\right|$ が,$a_k/a_{k+2}$ として正しい形である).ただし,$k\to\infty$ の極限をとればどちらの式も値は $1$ になるので,最終的な結論 $r=1$ 自体は変わらない.
イメージ:なぜ $r^2$ という書き方をするのか
底本ではこの極限を $r^2=\lim|a_k/a_{k+2}|$ という形で書いている(具体的な式の中身に誤記があったことは直前の注意で述べたが,「$r^2$」という書き方そのものは意図的なものである).これは,$U_n(x)$ や $V_n(x)$ が実質的に $t=x^2$ を変数とする級数であることに由来する.ここで注意したいのは,「$t=x^2$」という対応関係は,$x$ が動くたびに $t$ もそれにあわせて動く,という変数どうしの対応であって,$t$ がつねに一定の値に貼りついているという意味ではない,ということである.一方,$t$ に関する級数 $\sum_jb_jt^j$ の収束半径 $R$(上の証明で $R=1$ と求めた値)は,$t$ をどこまで動かしても級数が収束し続けるかという境界の値であり,これは定数である.この2つを混同しないように図式化すると,収束の境界,すなわち「$t=R$ となる点」を $x$ の言葉に翻訳すれば「$x^2=R$ となる点」であり,$x$ に関する収束半径を $r$ と呼べばこの境界はちょうど $x=r$ でもあるから,$x^2=r^2$ でもある.同じ境界を2通りに表しているのだから $x^2=R$ と $x^2=r^2$ は同じ点を指しており,したがって $R=r^2$ となる.$R=1$ を代入すれば $r^2=1$,すなわち $r=1$ が得られる.
例題40.6 収束半径の計算を具体的な $n$ で再現する
$n=3$ のとき,無限級数のまま残る $U_3(x)$ の収束半径を,定理40.5の計算を自分の手でなぞって確かめよ.
解答 $n=3$ を代入すると,
$$ R=\lim_{k\to\infty}\left|\frac{(k+1)(k+2)}{(k-3)(k+4)}\right| =\lim_{k\to\infty}\left|\frac{\left(1+\frac1k\right)\left(1+\frac2k\right)}{\left(1-\frac3k\right)\left(1+\frac4k\right)}\right|=\frac{1}{1}=1 $$となり,$n$ の値によらず $R=1$(したがって $r=1$)であることが確認できる.($n$ を含む極限であっても,$k\to\infty$ の極限では $n/k\to0$ となるので,$n$ の具体的な値は最終的な答えに影響しない.)
40.5 ロドリーゲの公式と直交性
ここまでの方法では,$P_n(x)$ を求めるのに毎回「級数解を作り,係数の漸化式を最後まで解き,$x=1$ で正規化する」という長い手順を踏む必要があった.しかし実は,$P_n(x)$ を一撃で計算できる驚くほど簡潔な公式が存在する.
公式40.1 ロドリーゲの公式
$n=0,1,2,\ldots$ に対して,ルジャンドルの多項式は
\begin{equation} P_n(x)=\frac{1}{2^n n!}\diff{^n}{x^n}(x^2-1)^n \label{eq:40-rodrigues} \end{equation}とも書ける.これをロドリーゲの公式(Rodrigues' formula)と呼ぶ.
底本ではこの公式が天下り的に与えられ,具体例で確かめるだけで,証明そのものは書かれないまま余白になっている.そこでまず底本にある確認計算をなぞり,そのあとで本書独自にこの公式の完全な証明を与える.
例題40.7 定義40.3($U_n(1)$,$V_n(1)$ による正規化)で $P_1$〜$P_4$ を計算する
$U_2(x)=1-3x^2$,$U_4(x)=1-10x^2+\dfrac{35}{3}x^4$,$V_1(x)=x$,$V_3(x)=x-\dfrac53x^3$ を使って,定義40.3にしたがい $P_1(x),P_2(x),P_3(x),P_4(x)$ を求めよ.
解答 $n=1$(奇数):$V_1(1)=1$ より $P_1(x)=\dfrac{V_1(x)}{V_1(1)}=\dfrac{x}{1}=x$.
$n=2$(偶数):$U_2(1)=1-3=-2$ より $P_2(x)=\dfrac{U_2(x)}{U_2(1)}=\dfrac{1-3x^2}{-2}=\dfrac12(3x^2-1)$.
$n=3$(奇数):$V_3(1)=1-\dfrac53=-\dfrac23$ より $P_3(x)=\dfrac{V_3(x)}{V_3(1)}=\dfrac{x-\frac53x^3}{-\frac23}=\dfrac32\left(\dfrac53x^3-x\right)=\dfrac12(5x^3-3x)$.
$n=4$(偶数):$U_4(1)=1-10+\dfrac{35}{3}=\dfrac{-27+35}{3}=\dfrac83$ より $P_4(x)=\dfrac{U_4(x)}{U_4(1)}=\dfrac{1-10x^2+\frac{35}{3}x^4}{\frac83}=\dfrac38\left(1-10x^2+\frac{35}{3}x^4\right)=\dfrac18(35x^4-30x^2+3)$.
例題40.8 ロドリーゲの公式から直接 $P_1(x)$,$P_2(x)$ を計算する
式\eqref{eq:40-rodrigues}を使って $P_1(x)$,$P_2(x)$ を直接計算し,例題40.7の結果と一致することを確認せよ.
解答 $n=1$:$\dfrac{1}{2^1\cdot1!}\diff{}{x}(x^2-1)^1=\dfrac12\cdot2x=x$.たしかに $P_1(x)=x$ と一致する.
$n=2$:$(x^2-1)^2=x^4-2x^2+1$ より,$\diff{}{x}(x^2-1)^2=4x^3-4x$,$\diff{^2}{x^2}(x^2-1)^2=12x^2-4$.したがって
$$ \frac{1}{2^2\cdot2!}\diff{^2}{x^2}(x^2-1)^2=\frac{1}{8}(12x^2-4)=\frac12(3x^2-1) $$となり,これも $P_2(x)=\dfrac12(3x^2-1)$ と一致する.(sympyで $n=0,\ldots,7$ まで両方の計算方法を突き合わせ,すべて一致することを検算済み.)
2通りの計算方法が一致することは確認できたが,これがすべての $n$ で成り立つことを保証するには証明が要る.以下,底本にはない証明を与える.
数学ノート:ライプニッツの公式(積の高階微分)
2つの関数の積 $f(x)g(x)$ を $n$ 回微分すると,二項定理 $\displaystyle(a+b)^n=\sum_{i=0}^{n}\binom{n}{i}a^{n-i}b^{i}$ とそっくりの形の公式が成り立つ.
$$ (fg)^{(n)}(x)=\sum_{i=0}^{n}\binom{n}{i}f^{(n-i)}(x)g^{(i)}(x) $$これをライプニッツの公式(Leibniz's rule)と呼ぶ.$n=1$ のときは $(fg)'=f'g+fg'$(高校で習った積の微分公式)そのものであり,$n=2$ のときは $(fg)''=f''g+2f'g'+fg''$ となる(係数 $1,2,1$ は $\binom20,\binom21,\binom22$).一般の $n$ でも,2回微分するたびに「$f$ 側から1つ微分を移すか,$g$ 側から1つ微分を移すか」の選び方の数が二項係数と同じ規則にしたがうため,二項定理とまったく同じ形の公式になる.本章ではこれを既知の道具として使う.
公式40.1の証明
第1段:$v=(x^2-1)^n$ の $n$ 階微分がルジャンドルの方程式を満たすことを示す.
$v=(x^2-1)^n$ とおく.$v$ を1回微分すると,合成関数の微分($x^2-1$ を1回微分すると $2x$)により
$$ v'=n(x^2-1)^{n-1}\cdot2x=2nx(x^2-1)^{n-1} $$である.両辺に $(x^2-1)$ を掛けると,$(x^2-1)\cdot(x^2-1)^{n-1}=(x^2-1)^n=v$ なので,
\begin{equation} (x^2-1)v'=2nx(x^2-1)^n=2nxv \label{eq:40-rod-basic} \end{equation}という,$v$ 自身についての簡単な関係式が得られる.この式の両辺を,ライプニッツの公式を使って $n+1$ 回微分する.
左辺 $(x^2-1)v'$ を $f=x^2-1$,$g=v'$ の積とみて,ライプニッツの公式($n+1$ 階微分)を適用する.$f=x^2-1$ は2次式なので,$f'=2x$,$f''=2$,$f^{(i)}=0\ (i\ge3)$ である.したがって和のうち $i=0,1,2$ の項だけが残る.
$$ \bigl[(x^2-1)v'\bigr]^{(n+1)}=\binom{n+1}{0}(x^2-1)v^{(n+2)}+\binom{n+1}{1}(2x)v^{(n+1)}+\binom{n+1}{2}(2)v^{(n)} $$$w=v^{(n)}$(これが $P_n(x)$ の候補である)とおくと,$v^{(n+1)}=w'$,$v^{(n+2)}=w''$ である.また $\binom{n+1}{1}=n+1$,$\binom{n+1}{2}=\dfrac{(n+1)n}{2}$ なので,
$$ \bigl[(x^2-1)v'\bigr]^{(n+1)}=(x^2-1)w''+2(n+1)x\,w'+(n+1)n\,w $$を得る.次に右辺 $2nxv$ を $f=2nx$,$g=v$ の積とみる.$f=2nx$ は1次式なので $f'=2n$,$f^{(i)}=0\ (i\ge2)$ であり,和のうち $i=0,1$ の項だけが残る.
$$ (2nxv)^{(n+1)}=\binom{n+1}{0}(2nx)v^{(n+1)}+\binom{n+1}{1}(2n)v^{(n)}=2nx\,w'+2n(n+1)w $$式\eqref{eq:40-rod-basic}の両辺を $n+1$ 回微分したのだから,この2つは等しい.
$$ (x^2-1)w''+2(n+1)x\,w'+n(n+1)w=2nx\,w'+2n(n+1)w $$両辺の $x\,w'$ の項と $w$ の項をまとめる($2(n+1)-2n=2$,$n(n+1)-2n(n+1)=-n(n+1)$).
$$ (x^2-1)w''+2x\,w'-n(n+1)w=0 $$この式全体に $-1$ を掛けると,
$$ (1-x^2)w''-2x\,w'+n(n+1)w=0 $$となり,これはまさにルジャンドルの微分方程式(式\eqref{eq:40-legendre})そのものである.すなわち,$w=v^{(n)}=\diff{^n}{x^n}(x^2-1)^n$ は,パラメータ $n$ のルジャンドルの微分方程式の解である.(sympyで $n=1,\ldots,8$ まで検算済み.)
第2段:$w$ は $P_n(x)$ の定数倍である.
$v=(x^2-1)^n$ は $x$ の $2n$ 次式なので,これを $n$ 回微分した $w=v^{(n)}$ は $x$ の $n$ 次式(多項式)である.第1段より $w$ はルジャンドルの微分方程式の解だから,定理40.2により $w=C_1U_n(x)+C_2V_n(x)$($C_1,C_2$ は定数)という形をしているはずである.ところが定理40.3・定理40.4より,$U_n(x)$ と $V_n(x)$ のうち一方は無限級数であり,$w$ は(有限次数の)多項式なのだから,無限級数のほうの係数は $0$($C_1=0$ または $C_2=0$)でなければならない.残るのは,多項式のほう,つまり $P_n(x)$ の定数倍の項だけである.したがって,ある定数 $c_n$ が存在して
$$ w(x)=c_n\,P_n(x) $$と書ける.
第3段:定数 $c_n$ を決定する.
定義40.3よりどの $n$ でも $P_n(1)=1$ であったから,上の式に $x=1$ を代入すると $w(1)=c_n\,P_n(1)=c_n$ となる.つまり $c_n=w(1)$ を求めればよい.$v=(x^2-1)^n=(x-1)^n(x+1)^n$ と因数分解し,$f=(x-1)^n$,$g=(x+1)^n$ としてライプニッツの公式で $w=v^{(n)}$ を計算する.
$$ w(x)=v^{(n)}(x)=\sum_{i=0}^{n}\binom{n}{i}\bigl[(x-1)^n\bigr]^{(n-i)}\bigl[(x+1)^n\bigr]^{(i)} $$ここで $\bigl[(x-1)^n\bigr]^{(n-i)}=\dfrac{n!}{i!}(x-1)^{i}$($(x-1)^n$ を $n-i$ 回微分すると,次数が $n-(n-i)=i$ の式になり,係数は $n(n-1)\cdots(i+1)=n!/i!$ である).これを $x=1$ で評価すると,$i\ge1$ ならば $(x-1)^i|_{x=1}=0$ になって消えてしまう.消えずに残るのは $i=0$ の項だけである.$i=0$ のとき,$\bigl[(x-1)^n\bigr]^{(n)}=n!$(定数),$\bigl[(x+1)^n\bigr]^{(0)}=(x+1)^n$ であり,$x=1$ でこれは $2^n$ になる.したがって
$$ w(1)=\binom{n}{0}\cdot n!\cdot2^n=n!\,2^n $$である($i\ge1$ の項はすべて $0$ になるので,和に残るのはこの1項だけ).よって $c_n=n!\,2^n$ であり,
$$ v^{(n)}(x)=n!\,2^n\,P_n(x)\qquad\Longleftrightarrow\qquad P_n(x)=\frac{1}{2^n n!}\diff{^n}{x^n}(x^2-1)^n $$が,すべての $n=0,1,2,\ldots$ について成り立つ.これが公式40.1の証明である.(証明終わり)
(この証明の副産物として,$w(1)=n!\,2^n\neq0$ が分かったので,第40.4節で保留にしていた $U_n(1)\neq0$,$V_n(1)\neq0$(多項式になるほうの $x=1$ での値が $0$ でないこと)もこれで確認できたことになる.)
例題40.9 ロドリーゲの公式で $P_3(x)$,$P_5(x)$ を計算する
式\eqref{eq:40-rodrigues}を使って $P_3(x)$,$P_5(x)$ を求め,例題40.7で得た $P_3(x)=\frac12(5x^3-3x)$ と一致することを確認せよ.
解答 $n=3$:$(x^2-1)^3=x^6-3x^4+3x^2-1$.3回微分すると,
$$ \diff{}{x}(x^2-1)^3=6x^5-12x^3+6x,\quad \diff{^2}{x^2}(x^2-1)^3=30x^4-36x^2+6,\quad \diff{^3}{x^3}(x^2-1)^3=120x^3-72x $$したがって
$$ P_3(x)=\frac{1}{2^3\cdot3!}(120x^3-72x)=\frac{1}{48}(120x^3-72x)=\frac{5}{2}x^3-\frac32x=\frac12(5x^3-3x) $$となり,たしかに例題40.7の結果と一致する.$n=5$ の場合も,計算そのものは次数が上がるだけで手順はまったく同じである.省略せずに最後まで実行しよう.まず $(x^2-1)^5$ を二項定理 $\displaystyle(a+b)^m=\sum_{i=0}^{m}\binom{m}{i}a^{m-i}b^i$ で展開する($\binom50=1,\binom51=5,\binom52=10,\binom53=10,\binom54=5,\binom55=1$ を使う).
$$ (x^2-1)^5=x^{10}-5x^8+10x^6-10x^4+5x^2-1 $$これを1回ずつ,順番に5回微分する.各項は $x^m\to mx^{m-1}$(べき乗の微分公式)にしたがって微分すればよい.
1回目:
$$ \diff{}{x}(x^2-1)^5=10x^9-40x^7+60x^5-40x^3+10x $$2回目(1回目の結果をもう一度項別に微分する):
$$ \diff{^2}{x^2}(x^2-1)^5=90x^8-280x^6+300x^4-120x^2+10 $$3回目:
$$ \diff{^3}{x^3}(x^2-1)^5=720x^7-1680x^5+1200x^3-240x $$4回目:
$$ \diff{^4}{x^4}(x^2-1)^5=5040x^6-8400x^4+3600x^2-240 $$5回目:
$$ \diff{^5}{x^5}(x^2-1)^5=30240x^5-33600x^3+7200x $$ここまでの計算でも,各項の係数は「今の次数を掛けて次数を1つ下げる」を5回繰り返しているだけである(たとえば $x^{10}$ の項は $10x^9\to90x^8\to720x^7\to5040x^6\to30240x^5$ と,係数が $10\to10\cdot9=90\to90\cdot8=720\to720\cdot7=5040\to5040\cdot6=30240$ と変化する).最後に,$2^5\cdot5!=32\cdot120=3840$ で割る.分数を1項ずつ約分する.$30240$ と $3840$ の最大公約数は $480$ なので $30240/3840=63/8$.$33600$ と $3840$ の最大公約数は $960$ なので $33600/3840=35/4$.$7200$ と $3840$ の最大公約数は $480$ なので $7200/3840=15/8$.したがって
$$ P_5(x)=\frac{30240x^5-33600x^3+7200x}{3840}=\frac{63}{8}x^5-\frac{35}{4}x^3+\frac{15}{8}x $$が得られる.念のため $x=1$ を代入すると $P_5(1)=\dfrac{63}{8}-\dfrac{35}{4}+\dfrac{15}{8}=\dfrac{63-70+15}{8}=1$ となり,定義40.3が要求する規格化 $P_n(1)=1$ もたしかに満たされている(sympyで検算済み).
ロドリーゲの公式には,実はもう1つの大きな御利益がある.それが,本節の残りで扱う直交性(orthogonality)である.
40.5.1 ルジャンドルの多項式の直交性
高校で学んだベクトルの内積では,2つのベクトル $\bm a,\bm b$ が「直交する(垂直である)」ことを $\bm a\cdot\bm b=0$ という式で表した.関数についても,同じような発想で「2つの関数が直交する」ということを定義できる.区間 $[-1,1]$ 上の2つの関数 $f(x),g(x)$ に対して,積分 $\displaystyle\int_{-1}^{1}f(x)g(x)\,dx$ を「関数 $f$ と $g$ の内積」とみなすのである(ベクトルの内積が「同じ添字どうしの成分の積の和」だったのに対し,関数の内積は「同じ $x$ での値どうしの積を,$x$ について足し合わせる(=積分する)」ものだと考えればよい).この意味での内積が $0$ になるとき,$f$ と $g$ は直交するという.驚くべきことに,次数の異なる2つのルジャンドルの多項式は,この意味で常に直交する.
定理40.6 ルジャンドルの多項式の直交性
$m,n$ を0以上の整数とし,$m\neq n$ とする.このとき
\begin{equation} \int_{-1}^{1}P_m(x)P_n(x)\,dx=0 \label{eq:40-orthogonality} \end{equation}が成り立つ.
この定理を証明するために,まずロドリーゲの公式の証明(前項)で使った関数 $v(x)=(x^2-1)^n$ について,もう1つの性質を確認しておく必要がある.
補題:$v(x)=(x^2-1)^n$ の低階微分は $x=\pm1$ で消える
$v(x)=(x^2-1)^n=(x-1)^n(x+1)^n$ とする.このとき,$k=0,1,\ldots,n-1$(すなわち $n$ 階未満)のどの階数についても,
$$ \left.\diff{^kv}{x^k}\right|_{x=1}=0,\qquad\left.\diff{^kv}{x^k}\right|_{x=-1}=0 $$が成り立つ.
証明 ロドリーゲの公式の証明のときと同様に,$f(x)=(x-1)^n$,$g(x)=(x+1)^n$ とおいて,ライプニッツの公式(本章第40.5節ですでに導入した数学ノート参照)を使う.
$$ \diff{^kv}{x^k}=\sum_{i=0}^{k}\binom{k}{i}f^{(i)}(x)\,g^{(k-i)}(x) $$この和の各項が $x=1$ でどうなるかを見る.$f^{(i)}(x)=\dfrac{n!}{(n-i)!}(x-1)^{n-i}$($f(x)=(x-1)^n$ を $i$ 回微分すると,次数が $n-i$ の式になる)であるが,和の中では $i\le k\le n-1$ なので $n-i\ge n-k\ge n-(n-1)=1$,すなわち $n-i\ge1$ である.したがって $f^{(i)}(x)$ は $(x-1)^{n-i}$($n-i\ge1$ 乗)を因数に持ち,$x=1$ を代入すると $(1-1)^{n-i}=0$ になる.つまり,和のどの項も $f^{(i)}(1)=0$ という理由で $x=1$ では消えてしまう.よって $\left.\diff{^kv}{x^k}\right|_{x=1}=0$ である.
$x=-1$ のほうも,まったく同じ理屈を $g(x)=(x+1)^n$ に対して適用すればよい.和の中の $g^{(k-i)}(x)$ は,$k-i\le k\le n-1$ より $(x+1)^{n-(k-i)}$(指数は $n-(k-i)\ge n-(n-1)=1$)を因数に持つので,$x=-1$ を代入すると $0$ になる.したがって $\left.\diff{^kv}{x^k}\right|_{x=-1}=0$ である.(補題の証明終わり)
(ちなみに,ちょうど $k=n$ のとき($n$ 階微分)だけは事情が違う.公式40.1の証明で見たとおり $\left.\diff{^nv}{x^n}\right|_{x=1}=n!\,2^n\neq0$ であった.つまり,$v(x)=(x^2-1)^n$ の微分は,$n-1$ 階までは端点でぴったり $0$ になり,$n$ 階になった瞬間だけ $0$ でなくなる,という際どいバランスの上に成り立っている.)
定理40.6の証明
$m\neq n$ としても一般性を失わない範囲で,$m\lt n$ の場合だけを示せば十分である(積 $P_mP_n$ は $m,n$ の役割を入れ替えても同じ関数なので,$m\lt n$ で示せば $m\gt n$ の場合も自動的に従う).ロドリーゲの公式(式\eqref{eq:40-rodrigues})を使って $P_n(x)$ を書き直すと,
$$ \int_{-1}^{1}P_m(x)P_n(x)\,dx=\frac{1}{2^n n!}\int_{-1}^{1}P_m(x)\,v^{(n)}(x)\,dx\qquad\left(v(x)=(x^2-1)^n,\ v^{(n)}=\diff{^nv}{x^n}\right) $$となる.この右辺の積分を,部分積分(integration by parts,高校で学んだ $\displaystyle\int u\,dw=\bigl[uw\bigr]-\int w\,du$ の公式)を使って,$P_m$ 側にかかる微分の階数を1つずつ減らし,その分だけ $v$ 側にかかる微分の階数を1つずつ増やしていく.そのために,$0\le j\le n$ の範囲で
$$ I_j=\int_{-1}^{1}P_m^{(j)}(x)\,v^{(n-j)}(x)\,dx $$とおく($P_m^{(j)}$ は $P_m$ の $j$ 階微分,$v^{(n-j)}$ は $v$ の $n-j$ 階微分である).目標の積分は $I_0=\displaystyle\int_{-1}^{1}P_m(x)v^{(n)}(x)dx$ であり,これを $I_n=\displaystyle\int_{-1}^{1}P_m^{(n)}(x)v(x)dx$ まで結びつけたい.
$I_j$($0\le j\le n-1$)を部分積分する.$u=P_m^{(j)}(x)$,$dw=v^{(n-j)}(x)\,dx$ とおくと $w=v^{(n-j-1)}(x)$($w$ は $dw$ の原始関数だが,$dw$ がすでに $v$ のある階数の微分なので,$w$ はその1つ下の階数の微分にとればよい)であり,
$$ I_j=\Bigl[P_m^{(j)}(x)\,v^{(n-j-1)}(x)\Bigr]_{x=-1}^{x=1}-\int_{-1}^{1}P_m^{(j+1)}(x)\,v^{(n-j-1)}(x)\,dx=\Bigl[P_m^{(j)}(x)\,v^{(n-j-1)}(x)\Bigr]_{-1}^{1}-I_{j+1} $$ここで,境界項 $\Bigl[P_m^{(j)}(x)\,v^{(n-j-1)}(x)\Bigr]_{-1}^{1}$ に現れる $v^{(n-j-1)}(x)$ の微分階数は $n-j-1$ である.$0\le j\le n-1$ の範囲では $n-j-1\le n-1$,すなわち $n$ 階未満の微分なので,上で示した補題により $v^{(n-j-1)}(\pm1)=0$ である.したがって境界項はどの $j$ についても $0$ になり,
$$ I_j=-I_{j+1}\qquad(j=0,1,\ldots,n-1) $$という単純な漸化式が得られる.これを $j=0$ から $j=n-1$ まで繰り返し使うと(1回使うごとに符号がひっくり返るので,$n$ 回繰り返すと符号は $(-1)^n$ になる),
$$ I_0=-I_1=(-1)^2I_2=\cdots=(-1)^nI_n $$を得る.最後に,$I_n=\displaystyle\int_{-1}^{1}P_m^{(n)}(x)\,v(x)\,dx$ において,$P_m(x)$ は次数 $m$ の多項式であり,仮定より $m\lt n$ である.次数 $m$ の多項式を $n\ (\gt m)$ 回微分すると,微分のたびに次数が1ずつ下がっていくので,$m+1$ 回微分した時点ですでに恒等的に $0$ になっている(高校で $x^2$ を3回微分すると $0$ になるのと同じ理屈).したがって $P_m^{(n)}(x)\equiv0$ であり,$I_n=\displaystyle\int_{-1}^{1}0\cdot v(x)\,dx=0$ である.
以上をまとめると,$I_0=(-1)^nI_n=(-1)^n\cdot0=0$ となる.すなわち
$$ \int_{-1}^{1}P_m(x)P_n(x)\,dx=\frac{1}{2^n n!}I_0=0\qquad(m\lt n) $$が示された.(証明終わり)
イメージ:部分積分を$n$回繰り返すとはどういうことか
この証明の骨格は,「微分を1つ相手からこちらへ移すたびに,端っこ($x=\pm1$)の値を調べる必要があるが,$v(x)=(x^2-1)^n$ は $x=\pm1$ でちょうど $n$ 位(じゅうい,order $n$)の零点をもつ($n$ 回分だけぴったり $0$ になる)関数なので,$n$ 回微分するまでは端っこの値が常に $0$ であり続ける」という一点に尽きる.そして最後に微分を全部押し付けられた $P_m(x)$ の側は,次数が $m$ しかないので,$n(\gt m)$ 回も微分されればもう跡形もなく消えてしまう.いわば,$v(x)$ が「$n$ 回分の余裕」を端点にあらかじめ用意しておいてくれるおかげで,部分積分をちょうど $n$ 回,安全に繰り返せるのである.
例題40.10 直交性を具体的な場合で確かめる($m=0$,$n=1$)
$P_0(x)=1$,$P_1(x)=x$ を使って,$\displaystyle\int_{-1}^{1}P_0(x)P_1(x)\,dx=0$ を直接の積分計算で確かめよ.
解答
$$ \int_{-1}^{1}P_0(x)P_1(x)\,dx=\int_{-1}^{1}x\,dx=\left[\frac{x^2}{2}\right]_{-1}^{1}=\frac{1^2}{2}-\frac{(-1)^2}{2}=\frac12-\frac12=0 $$となり,たしかに定理40.6のとおり $0$ になる.(これは $x$ が奇関数——原点に関して対称な図形をひっくり返すと符号が反転する関数——であり,対称な区間 $[-1,1]$ での積分がつねに $0$ になる,という高校でおなじみの事実の一例でもある.sympyで $m,n\ (0\le m\lt n\le6)$ のすべての組について検算済み.)
応用:直交性はなぜ重要なのか — 一般化フーリエ級数と球面調和関数
高校・大学で学ぶフーリエ級数は,「どんな(適当な条件をみたす)周期関数も,直交する関数の列 $1,\cos x,\sin x,\cos2x,\sin2x,\ldots$ の無限和で表せる」という驚くべき事実に基づいていた.ルジャンドルの多項式の直交性(定理40.6)は,まったく同じ発想を「区間 $[-1,1]$ 上の関数を,直交する多項式の列 $P_0(x),P_1(x),P_2(x),\ldots$ の無限和 $\displaystyle\sum_{n=0}^{\infty}c_nP_n(x)$ で表す」という形に応用できることを意味する(これをルジャンドル級数(Legendre series)あるいはフーリエ・ルジャンドル展開という).直交性のおかげで,係数 $c_n$ は,フーリエ級数のときとまったく同じ手順——両辺に $P_n(x)$ を掛けて積分し,直交性によって自分以外の項をすべて消す——で取り出せる(ちなみに $\displaystyle\int_{-1}^{1}P_n(x)^2\,dx=\dfrac{2}{2n+1}$ という値が必要になるが,これは本章の主題から外れるので,興味のある読者のための参考として留めておく).本章の冒頭で触れたとおり,ルジャンドルの微分方程式は球座標でのラプラス方程式の変数分離から現れる.球対称に近い形をした電位や重力ポテンシャル,あるいは量子力学における水素原子の角度方向の波動関数(球面調和関数,spherical harmonics)は,まさにこのルジャンドル級数(の一般化)によって展開・記述される.つまり本節の直交性は,単なる数学的な美しさにとどまらず,「球のまわりの現象」を扱うすべての物理理論の土台になっているのである.
例題40.11 図40.1・図40.2を読み取る
(a) 図40.1(係数の連鎖の模式図,$n$ が偶数の場合)を見て,もし $n$ が奇数だったら,図の上段(偶数番目の列)と下段(奇数番目の列)のうち,どちらが途中で止まり,どちらが止まらなくなるか,役割の入れ替わりを自分の言葉で説明せよ.(b) 図40.2($P_0(x)$〜$P_4(x)$ のグラフ)を見て,区間 $(-1,1)$ 内で $P_n(x)$ の符号が変わる回数(=実根の個数)が,$n=0,1,2,3,4$ のどの場合も $n$ にちょうど一致することを確かめよ.
解答 (a) 図40.1は $n$ が偶数の場合を描いたものであり,上段(偶数番目の列 $a_0,a_2,a_4,\ldots$)は $k=n$(偶数)に出会って止まり,$U_n(x)$ が有限次の多項式になる.一方,下段(奇数番目の列 $a_1,a_3,a_5,\ldots$)は,$n$ が偶数である限り奇数の $k$ が $n$ に一致することはないので止まらず,$V_n(x)$ は無限級数のまま残る(定理40.3).もし $n$ が奇数だったら,今度は $k=n$ が奇数番目の列の中に現れることになるので,下段(奇数番目の列)のほうが途中で止まり,上段(偶数番目の列)のほうが止まらなくなる——すなわち $V_n(x)$ が有限次の多項式になり,$U_n(x)$ が無限級数のまま残る(定理40.4).つまり,$n$ の偶奇が入れ替わると,図の中で「上段・下段のどちらが途中で $0$ に落ちるか」がそっくり入れ替わるのである.
(b) 定義40.3・例題40.7・例題40.9で求めた $P_0(x)$〜$P_4(x)$ の具体形を使って,$(-1,1)$ 内の零点(=符号が変わる点)を数えていく.
$n=0$:$P_0(x)=1$(図中の点線)は区間内で常に $1$ のままで,$0$ にならない.符号が変わる回数は $0$ 回であり,$n=0$ と一致する.
$n=1$:$P_1(x)=x$ は $x=0$ でちょうど $1$ 回だけ符号を変える.$n=1$ と一致する.
$n=2$:$P_2(x)=\dfrac12(3x^2-1)$ を $0$ とおくと $x^2=\dfrac13$,すなわち $x=\pm\dfrac{1}{\sqrt3}=\pm\dfrac{\sqrt3}{3}\approx\pm0.577$.どちらも区間 $(-1,1)$ 内にあるので,$P_2(x)$ は2回符号を変える.$n=2$ と一致する.
$n=3$:$P_3(x)=\dfrac12(5x^3-3x)=\dfrac12x(5x^2-3)$ を $0$ とおくと,$x=0$ または $x^2=\dfrac35$,すなわち $x=0,\pm\sqrt{\dfrac35}=\pm\dfrac{\sqrt{15}}{5}\approx\pm0.775$.3つとも区間内にあるので,3回符号を変える.$n=3$ と一致する.
$n=4$:$P_4(x)=\dfrac18(35x^4-30x^2+3)$ を $0$ とおく.第40.4節のイメージ box で使った置き換え $t=x^2$ をここでも使うと,$35t^2-30t+3=0$ という $t$ の2次方程式になり,解の公式から
$$ t=\frac{30\pm\sqrt{900-420}}{70}=\frac{30\pm\sqrt{480}}{70}=\frac{30\pm4\sqrt{30}}{70}=\frac{15\pm2\sqrt{30}}{35} $$を得る.$\sqrt{30}\approx5.48$ なので $2\sqrt{30}\approx10.95$ であり,2つの解 $t=\dfrac{15-2\sqrt{30}}{35}\approx0.116$,$t=\dfrac{15+2\sqrt{30}}{35}\approx0.742$ はどちらも $0$ と $1$ の間にある正の数である.$t=x^2$ だったから,それぞれの $t$ に対して $x=\pm\sqrt t$ という2つの実数解が対応し,しかも $|x|=\sqrt t\lt1$ なので区間 $(-1,1)$ 内に収まる.したがって $P_4(x)=0$ の解は全部で4個あり,$P_4(x)$ は4回符号を変える.$n=4$ と一致する.
(一般に,ルジャンドルの多項式 $P_n(x)$ は区間 $(-1,1)$ の中にちょうど $n$ 個の相異なる実根をもつことが知られている.これは本章の範囲を超えるが,図40.2からもその様子が読み取れる.sympyで $n=0,\ldots,4$ について実根の個数を直接計算し,一致を確認済み.)
40.6 まとめと演習
40.6.1 まとめ
本章では,ルジャンドルの微分方程式 $(1-x^2)y''-2xy'+n(n+1)y=0$ をフロベニウス級数解法で解き,そこからルジャンドルの多項式 $P_n(x)$ を定義するまでの道のりを,途中の計算を一切省略せずにたどった.要点を整理しておく.
- $x=0$ はルジャンドルの微分方程式の通常点であり,解は $y=\sum_ka_kx^k$ の形のべき級数で書ける(第40.1節).
- 係数 $a_k$ は漸化式 $a_{k+2}=\dfrac{(k-n)(k+n+1)}{(k+1)(k+2)}a_k$ をみたす.偶数番目の列と奇数番目の列は互いに独立に決まる(第40.2節).
- 偶数番目だけを集めた級数を $U_n(x)$,奇数番目だけを集めた級数を $V_n(x)$ と呼ぶと,一般解は $y=a_0U_n(x)+a_1V_n(x)$ である.ロンスキアン $W(U_n,V_n)(0)=1\neq0$ よりこれらは線形独立である(第40.3節).
- 漸化式の分子の因子 $(n-k)$ が,$k=n$ に達した瞬間に $0$ になる.$n$ が偶数なら $U_n(x)$ が,奇数なら $V_n(x)$ が,そこで打ち切られて次数 $n$ の多項式になる.もう一方は無限級数のまま,収束半径 $r=1$ で残る(第40.3節・第40.4節).
- 多項式になるほうを,$x=1$ での値がちょうど $1$ になるように正規化したものが,ルジャンドルの多項式 $P_n(x)$ である(定義40.3).
- $P_n(x)$ は,級数の漸化式を最後まで解かなくても,ロドリーゲの公式 $P_n(x)=\dfrac{1}{2^nn!}\dfrac{d^n}{dx^n}(x^2-1)^n$ で一撃で計算できる.本書ではこの公式の完全な証明(ライプニッツの公式を利用)を与えた(第40.5節).
- 次数の異なる2つのルジャンドルの多項式は,区間 $[-1,1]$ 上で直交する:$\displaystyle\int_{-1}^{1}P_m(x)P_n(x)dx=0\ (m\neq n)$.この事実も,ロドリーゲの公式から部分積分を $n$ 回繰り返すことで証明できる(第40.5節).
40.6.2 演習問題
演習40.1 $n=2$ の場合を級数解法で解いて $P_2(x)$ を導く
$n=2$,$a_0=1$ として,漸化式\eqref{eq:40-recurrence2}から $U_2(x)$ を求め,定義40.3にしたがって正規化し,$P_2(x)=\dfrac12(3x^2-1)$ となることを確かめよ.
ヒント:$U_2(x)$ の計算は例題40.2(a)ですでに行っている.そこから先の「$U_2(1)$ で割る」正規化の一歩を進めればよい.
演習40.2 ロドリーゲの公式から $P_4(x)$ を計算する
式\eqref{eq:40-rodrigues}を使って,$(x^2-1)^4$ を4回微分することで $P_4(x)$ を求め,例題40.7で得た結果 $P_4(x)=\dfrac18(35x^4-30x^2+3)$ と一致することを確認せよ.
ヒント:$(x^2-1)^4$ をまず展開してから1回ずつ微分すると計算しやすい.例題40.9の $n=3$ の場合の計算の進め方をそのまま次数を上げて真似ればよい.
演習40.3 $n=7$(奇数)で $V_7(x)$ が多項式で止まることを確認する
$n=7$,$a_1=1$ として,漸化式\eqref{eq:40-recurrence2}を使って $a_3,a_5,a_7,a_9$ を計算し,$V_7(x)$ が7次の多項式で終わることを確認せよ.
ヒント:例題40.4($n=6$,偶数)とまったく同じ手順を,奇数番目の係数の列に対して行う.どの $k$ で因子 $(n-k)$ が $0$ になるかに注目せよ.
演習40.4 直交性を具体的な場合で確認する($m=1$,$n=2$)
$P_1(x)=x$,$P_2(x)=\dfrac12(3x^2-1)$ を使って,$\displaystyle\int_{-1}^{1}P_1(x)P_2(x)\,dx=0$ を直接の積分計算で確かめよ.
ヒント:例題40.10と同じ手順で,$P_1(x)P_2(x)$ を先に多項式として展開してから積分するとよい.
演習40.5 底本 p.62 の誤記($U_n(x)$ の分子)を自分で検算する
漸化式\eqref{eq:40-recurrence2}から $a_2,a_4$ を一般の $n$ について(数字を代入せず文字のまま)計算し,$U_n(x)$ の $x^2$ の係数の分子が正しくは $n(n+1)$ であり,「$n(n-1)$」(底本p.62の記述)ではないことを,導出過程とともに示せ.
ヒント:第40.2.1節の計算をもう一度,今度は自分の手で最初からたどる.$k=0$ を漸化式\eqref{eq:40-recurrence2}に代入した式をよく見ればよい.
演習40.6 $P_n(1)=1$ がすべての $n$ で成り立つことを確認する
定義40.3($U_n(1)$,$V_n(1)$ による正規化)から $P_n(1)=1$ が定義上明らかであることを説明せよ.さらに,ロドリーゲの公式の証明(第40.5節)の副産物として得られた $w(1)=n!\,2^n$ という事実を使っても,同じ結論 $P_n(1)=1$ が導けることを示せ.
ヒント:定義40.3の式に $x=1$ を代入するとどうなるか.ロドリーゲの公式\eqref{eq:40-rodrigues}に $x=1$ を代入した式と,公式40.1の証明中の式 $v^{(n)}(x)=n!\,2^n\,P_n(x)$ を見比べよ.
40.6.3 参考文献
- 望月泰英『数学ノート 常微分方程式』(手書き講義ノート).本章の底本.
- George B. Arfken, Hans J. Weber, Frank E. Harris, Mathematical Methods for Physicists, 7th ed., Academic Press, 2012.ルジャンドルの多項式・特殊関数の標準的な教科書.
- George F. Simmons, Differential Equations with Applications and Historical Notes, 3rd ed., CRC Press, 2016.フロベニウス法とルジャンドルの方程式の解説.
- 寺沢寛一『自然科学者のための数学概論』(増訂版),岩波書店,1983.ルジャンドル多項式とロドリーゲの公式の解説.