大学数学 — 目次 第VII部 ラプラス変換 / 第32章

第32章ガンマ関数・ベータ関数とラプラス変換

前章では,ラプラス変換 $\Lap[f(t)]=\displaystyle\int_0^\infty f(t)e^{-st}\,dt$ の基本公式をいくつも導いた.そのなかの公式 $\Lap[t^n]=\dfrac{n!}{s^{n+1}}$($n$ は0以上の整数)は,$t^2$ や $t^3$ のような整数乗のべき関数には使えるが,$n$ が整数でないとき,たとえば $\sqrt t=t^{1/2}$ のラプラス変換を求めたいときには,そのままでは使えない——そもそも「$\left(\frac12\right)!$」とは何なのかが定義されていないからである.この章では,階乗 $n!$ の定義域を整数から実数(さらには複素数)へと拡張するガンマ関数(gamma function)$\Gamma(\alpha)$ を導入し,$\Lap[t^\alpha]=\dfrac{\Gamma(\alpha+1)}{s^{\alpha+1}}$ という,任意の実数乗にまで通用する一般公式を手に入れる.前章の公式は,この一般公式で $\alpha$ を0以上の整数に限った特別な場合にすぎないことが分かるだろう.

合わせて,ガンマ関数と兄弟のような関係にあるベータ関数(beta function)$B(m,n)$,そして正規分布のグラフ(釣り鐘型の曲線)の面積や,材料中の拡散現象の記述に現れる誤差関数(error function)$\mathrm{erf}(x)$・余誤差関数(complementary error function)$\mathrm{erfc}(x)$も学ぶ.さらに,大きな $n$ に対して $n!$ を近似するスターリングの公式(Stirling's formula)——統計力学のエントロピー計算や組合せ論で多用される——も導く.底本のノートではこの精密な証明が途中で終わっているが,本書では第7章で証明したガウス積分の技法を使ってその続きを自分たちで追い,$n!\approx\sqrt{2\pi n}\,n^ne^{-n}$ という美しい公式に到達する.

この章で学ぶこと
  • 誤差関数 $\mathrm{erf}(x)=\dfrac{2}{\sqrt\pi}\displaystyle\int_0^xe^{-u^2}du$ と余誤差関数 $\mathrm{erfc}(x)=\dfrac{2}{\sqrt\pi}\displaystyle\int_x^\infty e^{-u^2}du$ の定義,$\mathrm{erf}(x)+\mathrm{erfc}(x)=1$,そして材料科学における拡散現象(浸炭・不純物ドーピングなど)への応用
  • ガンマ関数 $\Gamma(\alpha)=\displaystyle\int_0^\infty x^{\alpha-1}e^{-x}dx$ の定義と,$\Gamma(1)=1$,$\Gamma(1/2)=\sqrt\pi$,$\Gamma(\alpha+1)=\alpha\Gamma(\alpha)$,$\Gamma(n+1)=n!$ という4つの基本性質とその証明
  • ガンマ関数がラプラス変換に現れる理由:$\Lap[t^\alpha]=\dfrac{\Gamma(\alpha+1)}{s^{\alpha+1}}$($\alpha\gt-1$)という一般公式と,前章の $\Lap[t^n]=n!/s^{n+1}$ との関係
  • スターリングの公式:簡易版 $n!\approx n^ne^{-n}$ の導出(区分求積法)と,精密版 $n!\approx\sqrt{2\pi n}\,n^ne^{-n}$ の導出(ラプラスの方法,ガウス積分の応用)
  • ベータ関数 $B(m,n)=\displaystyle\int_0^1x^{m-1}(1-x)^{n-1}dx$ の定義,対称性 $B(m,n)=B(n,m)$,およびガンマ関数との関係 $B(m,n)=\dfrac{\Gamma(m)\Gamma(n)}{\Gamma(m+n)}$ の証明
前提:第31章(ラプラス変換の定義と基本公式:$\Lap[t^n]=n!/s^{n+1}$ などの基本公式),第5章(広義積分,§5.4),第7章(ヤコビアンと重積分の変数変換 §7.3,ガウス積分の証明 §7.5:$\displaystyle\int_{-\infty}^{\infty}e^{-x^2}dx=\sqrt\pi$),第4章(テイラーの定理:関数の2次近似).
もとにしたノート:望月泰英『数学ノート ラプラス変換』 pp. 15–18.

32.1 誤差関数と余誤差関数

本章は,ノートの表題「特殊関数」にしたがって,まず広義積分(積分区間が無限に伸びる定積分.第5章§5.4)から作られる2つの関数——誤差関数(error function)$\mathrm{erf}(x)$ と余誤差関数(complementary error function)$\mathrm{erfc}(x)$——を導入する.どちらも,第7章§7.5で証明したガウス積分(Gaussian integral)を土台にしている.実は第7章では,この積分を証明する場面で「$e^{-x^2}$ の原始関数は初等関数では表せず,誤差関数という特別な関数として定義するしかない」と一言だけ触れていた.本節はその「特別な関数」の正体を正面から定義する節である.

32.1.1 誤差関数の定義

第7章の定理7.1(ガウス積分)は,次の値を与えるものであった.

\begin{equation} \int_{-\infty}^{\infty} e^{-x^2}\,dx = \sqrt\pi \label{eq:32-gauss-full} \end{equation}

ここで,被積分関数 $e^{-x^2}$ に注目しよう.$x$ を $-x$ に置き換えても $(-x)^2=x^2$ なので $e^{-(-x)^2}=e^{-x^2}$,つまりこの関数は偶関数($f(-x)=f(x)$ をみたす関数)である.偶関数のグラフは $y$ 軸に関して左右対称だから,$x\lt0$ の部分がつくる面積と,$x\gt0$ の部分がつくる面積は,ちょうど半分ずつに等しく分かれる(図32.1).したがって,式 \eqref{eq:32-gauss-full} の面積 $\sqrt\pi$ を左右に等分すると,

\begin{equation} \int_0^{\infty} e^{-x^2}\,dx = \frac{\sqrt\pi}{2} \label{eq:32-gauss-half} \end{equation}

を得る.この式 \eqref{eq:32-gauss-half} が,これから定義する誤差関数の係数 $2/\sqrt\pi$ の由来である.

関数e^{-x^2}のグラフ.x=0を中心に左右対称な釣鐘型の曲線で,x=0でちょうど最大値1をとり,xが±3に近づくにつれて0へ近づく.x軸と曲線に挟まれた領域が,x=0を境に左半分と右半分の2色に塗り分けられており,どちらの面積も等しくsqrt(pi)/2であることを示す.
図32.1 偶関数 $e^{-x^2}$ のグラフ.全体の面積 $\sqrt\pi$(式 \eqref{eq:32-gauss-full})は $x=0$ を境に左右対称なので,それぞれの面積はちょうど半分の $\sqrt\pi/2$(式 \eqref{eq:32-gauss-half})になる.

定義32.1 誤差関数(error function)

次の広義積分によって定義される関数を誤差関数とよび,$\mathrm{erf}(x)$ と書く.

\begin{equation} \mathrm{erf}(x) = \frac{2}{\sqrt\pi}\int_0^x e^{-u^2}\,du \label{eq:32-erf-def} \end{equation}

なぜ係数に $2/\sqrt\pi$ をつけるのか

係数がついていない単なる $\displaystyle\int_0^x e^{-u^2}du$ でも「$0$ から $x$ までの面積」という意味では十分に自然な関数である.しかし,このままでは $x\to\infty$ の極限値が式 \eqref{eq:32-gauss-half} より $\sqrt\pi/2$ という半端な値になってしまう.そこで,全体を $\sqrt\pi/2$ の逆数(の2倍,符号を合わせるために $2/\sqrt\pi$)倍しておけば,

$$ \lim_{x\to\infty}\mathrm{erf}(x) = \frac{2}{\sqrt\pi}\int_0^{\infty}e^{-u^2}\,du = \frac{2}{\sqrt\pi}\cdot\frac{\sqrt\pi}{2} = 1 $$

となり,$x\to\infty$ できれいに $1$ に近づく,規格化(normalization:全体の量を基準の $1$ に揃えておくこと)された関数になる.物理・統計でしばしば「確率は合計すると $1$」「エネルギー分布の総和は $1$」のように基準を $1$ に取っておくと式が扱いやすくなるのと同じ発想である.

32.1.2 余誤差関数と erf(x)+erfc(x)=1

定義32.2 余誤差関数(complementary error function)

次の広義積分によって定義される関数を余誤差関数とよび,$\mathrm{erfc}(x)$ と書く.係数 $2/\sqrt\pi$ をつける理由は定義32.1と同じである.

\begin{equation} \mathrm{erfc}(x) = \frac{2}{\sqrt\pi}\int_x^{\infty} e^{-u^2}\,du \label{eq:32-erfc-def} \end{equation}
誤差関数erf(x)は左下から右上へ単調に増加するS字曲線で,xが負の方向に大きくなると-1に,正の方向に大きくなると1に近づく.余誤差関数erfc(x)は左上から右下へ単調に減少するS字曲線で,xが負の方向に大きくなると2に,正の方向に大きくなると0に近づく.x=0でerf(0)=0,erfc(0)=1.
図32.2 誤差関数 $\mathrm{erf}(x)$(増加,$-1\to1$)と余誤差関数 $\mathrm{erfc}(x)$(減少,$2\to0$)のグラフ.どちらも $x=0$ で対称的な値($\mathrm{erf}(0)=0$,$\mathrm{erfc}(0)=1$)をとる.

公式32.1 $\mathrm{erf}(x)+\mathrm{erfc}(x)=1$(すべての実数 $x$ について)

証明

$e^{-u^2}$ を $u=0$ から $u=\infty$ まで積分する区間を,途中の点 $u=x$ で「$0$ から $x$ まで」と「$x$ から $\infty$ まで」の2つに分割する(積分区間の分割:区間をどこで区切っても定積分の和は変わらない).

$$ \int_0^{\infty} e^{-u^2}\,du = \int_0^{x} e^{-u^2}\,du + \int_x^{\infty} e^{-u^2}\,du $$

左辺は式 \eqref{eq:32-gauss-half} より $\sqrt\pi/2$ である.両辺に $2/\sqrt\pi$ をかけると,右辺の第1項は定義32.1の $\mathrm{erf}(x)$ の積分そのもの,第2項は定義32.2の $\mathrm{erfc}(x)$ の積分そのものになるから,

$$ \frac{2}{\sqrt\pi}\cdot\frac{\sqrt\pi}{2} = \frac{2}{\sqrt\pi}\int_0^x e^{-u^2}\,du + \frac{2}{\sqrt\pi}\int_x^{\infty} e^{-u^2}\,du $$ \begin{equation} \therefore\quad \mathrm{erf}(x)+\mathrm{erfc}(x) = 1 \label{eq:32-erf-erfc-sum} \end{equation}

(証明終わり)

例題32.1 基本値の確認と,浸炭処理における濃度分布への応用

(a) 定義32.2から直接 $\mathrm{erfc}(0)=1$ であることを示せ.(b) 鉄鋼材料の表面に炭素を拡散させる浸炭処理(carburizing)では,表面からの深さ $x$,処理時間 $t$ における炭素濃度が,拡散係数 $D$ と表面濃度 $C_s$ を用いて $C(x,t)=C_s\,\mathrm{erfc}\!\left(\dfrac{x}{2\sqrt{Dt}}\right)$ という余誤差関数の形で近似されることが材料科学で知られている(この式自体の導出は,偏微分方程式である拡散方程式を解く必要があり,本シリーズの後の巻の範囲になる.ここでは結果の式を認めて使う).深さが $x=2\sqrt{Dt}$ の点(拡散が「1目盛り」進んだ点,という意味の基準点)での濃度比 $C(x,t)/C_s$ を求めよ.

解答 (a) 定義32.2に $x=0$ を代入すると,

$$ \mathrm{erfc}(0) = \frac2{\sqrt\pi}\int_0^{\infty}e^{-u^2}\,du = \frac2{\sqrt\pi}\cdot\frac{\sqrt\pi}2 = 1 $$

(式 \eqref{eq:32-gauss-half} を使った.)これは公式32.1で $x=0$ とし,$\mathrm{erf}(0)=\frac2{\sqrt\pi}\int_0^0e^{-u^2}du=\frac2{\sqrt\pi}\cdot0=0$(積分区間の幅が $0$ だから積分値も $0$)と合わせて $\mathrm{erf}(0)+\mathrm{erfc}(0)=0+1=1$ となることとも矛盾しない.

(b) $x=2\sqrt{Dt}$ を代入すると,$\dfrac{x}{2\sqrt{Dt}}=\dfrac{2\sqrt{Dt}}{2\sqrt{Dt}}=1$ なので,濃度比は

$$ \frac{C(x,t)}{C_s} = \mathrm{erfc}(1) $$

である.$\mathrm{erfc}(1)=1-\mathrm{erf}(1)$(公式32.1)であり,$\mathrm{erf}(1)$ は初等関数で表せないので数値積分(Pythonのscipy.special.erfで検算)で求めると $\mathrm{erf}(1)\approx0.842701$,したがって

$$ \mathrm{erfc}(1) \approx 1-0.842701 = 0.157299 $$

である.つまり,$x=2\sqrt{Dt}$ の深さでは,表面濃度 $C_s$ のおよそ $15.7\%$ にまで炭素濃度が下がっていることになる.同じ形の式は,半導体のドーピング(不純物拡散)や,熱処理における温度分布の近似にも現れる——「境界(表面)で一定の値を保ちながら,内部に向かって時間とともに拡散していく」という現象は,どれも同じ拡散方程式にしたがうため,解の形(余誤差関数)まで共通になるのである.なお,$\mathrm{erf}(x)$ は統計学での正規分布(normal distribution)の裾の確率とも関係が深く,標準正規分布にしたがう確率変数 $Z$ が区間 $[-a,a]$ に入る確率は $P(-a\le Z\le a)=\mathrm{erf}(a/\sqrt2)$ という形で書けることが知られている.

32.2 ガンマ関数の定義と基本性質

第31章の公式31.3では,$n$ が $0$ 以上の整数のときに限って $\Lap[t^n]=\dfrac{n!}{s^{n+1}}$ が成り立つことを見た.では,$\Lap[\sqrt t\,]=\Lap[t^{1/2}]$ のように,指数が整数でない場合はどうなるのか.この式をそのまま使おうとすると「$\left(\frac12\right)!$」という,意味の定まっていない記号が出てきてしまう.そこで本節では,階乗 $n!=n(n-1)(n-2)\cdots2\cdot1$ を,整数でない実数の引数にまで拡張するガンマ関数(gamma function)$\Gamma(\alpha)$ を導入する.

32.2.1 ガンマ関数の定義 — 階乗の一般化として

定義32.3 ガンマ関数(gamma function)

実数 $\alpha\gt0$ に対して,次の広義積分によって定義される関数をガンマ関数とよび,$\Gamma(\alpha)$ と書く.

\begin{equation} \Gamma(\alpha) = \int_0^{\infty} x^{\alpha-1}e^{-x}\,dx \label{eq:32-gamma-def} \end{equation}

注意:この積分はいつ収束するか

広義積分 \eqref{eq:32-gamma-def} には,実は2か所「危ない」点がある.1つは積分区間の上端が $\infty$ であること——ただし指数関数 $e^{-x}$ はどんな整数乗のべき関数 $x^{k}$ よりも真に速く $0$ に近づく($x\to\infty$ のとき $x^k e^{-x}\to0$)ので,$x$ が大きいところでは問題なく積分できる.もう1つは,$\alpha\lt1$ のとき被積分関数 $x^{\alpha-1}$ が $x\to0$ で発散すること——しかし $\alpha\gt0$ でありさえすれば,この発散は「積分できる程度に緩やかな」発散なので($\int_0^1 x^{\alpha-1}dx=\left[\frac{x^\alpha}{\alpha}\right]_0^1=\frac1\alpha$ が有限の値になることから分かる),広義積分全体はきちんと収束する.したがって定義32.3は,$\alpha\gt0$ である限りいつでも意味をもつ.

例題32.2 $\Gamma(2)$ を定義から計算する

定義32.3にしたがって,$\Gamma(2)$ を直接計算せよ.

解答 定義32.3に $\alpha=2$ を代入すると,$\Gamma(2)=\displaystyle\int_0^{\infty}x^{2-1}e^{-x}\,dx=\int_0^{\infty}xe^{-x}\,dx$ である.部分積分($u=x,\ dv=e^{-x}dx$ とおくと $du=dx,\ v=-e^{-x}$)を使うと,

$$ \int xe^{-x}\,dx = -xe^{-x}+\int e^{-x}\,dx = -xe^{-x}-e^{-x} = -(x+1)e^{-x} $$

上端 $x\to c\to\infty$ では,注意ボックスで確認したとおり $(c+1)e^{-c}\to0$ である.下端 $x=0$ では $-(0+1)e^0=-1$.したがって,

$$ \Gamma(2) = \Big[-(x+1)e^{-x}\Big]_0^{\infty} = \lim_{c\to\infty}\big(-(c+1)e^{-c}\big)-(-1) = 0+1 = 1 $$

である(sympyで検算済み).$\Gamma(2)=1=1!$ となっており,のちほど§32.2.3で示す一般公式 $\Gamma(n+1)=n!$($n=1$ の場合)にちょうど一致する.この「階乗と一致する」パターンが,$\Gamma$ が「階乗の一般化」とよばれるゆえんである.

ガンマ関数Gamma(x)のグラフ.xが0に近づくと正の無限大へ発散し,x=1とx=2でともに値1をとり,その間のx≈1.46で最小値≈0.886をとる.x=3,4ではそれぞれ値2,6をとり,xが増加するにつれて急激に増加する滑らかな凸曲線.
図32.3 ガンマ関数 $\Gamma(x)$($x\gt0$)のグラフ.$x=1,2$ でともに値 $1$,$x\approx1.4616$ で最小値 $\approx0.8856$ をとり,$x=3,4$ ではそれぞれ $2,6$($=2!,3!$)になる.$x\to0^+$ では正の無限大に発散する.

32.2.2 基本性質(I)(II):$\Gamma(1)=1$,$\Gamma(1/2)=\sqrt\pi$

公式32.2 $\Gamma(1)=1$

証明

定義32.3に $\alpha=1$ を代入すると,$x^{1-1}=x^0=1$ なので,

$$ \Gamma(1) = \int_0^{\infty} x^{1-1}e^{-x}\,dx = \int_0^{\infty}e^{-x}\,dx = \lim_{c\to\infty}\Big[-e^{-x}\Big]_0^{c} = \lim_{c\to\infty}\big(-e^{-c}+1\big) = 1 $$

($c\to\infty$ で $e^{-c}\to0$ なので極限は $1$.)(証明終わり)

公式32.3 $\Gamma\!\left(\dfrac12\right)=\sqrt\pi$

証明

定義32.3に $\alpha=\frac12$ を代入すると,

$$ \Gamma\left(\frac12\right) = \int_0^{\infty}x^{\frac12-1}e^{-x}\,dx = \int_0^{\infty}x^{-\frac12}e^{-x}\,dx $$

ここで置換積分 $x=t^2$($t\ge0$)を行う.$x=t^2$ を $t$ で微分すると(べき関数の微分公式),$\dfrac{dx}{dt}=2t$,すなわち $dx=2t\,dt$ である.積分区間は,$x=0$ のとき $t=0$,$x\to\infty$ のとき $t\to\infty$ とそのまま対応する.また $x^{-1/2}=(t^2)^{-1/2}=t^{-1}=\dfrac1t$ となるから,

$$ \Gamma\left(\frac12\right) = \int_0^{\infty} \frac1t\,e^{-t^2}\cdot2t\,dt $$

$\dfrac1t\cdot2t=2$($t\ne0$ の範囲でちょうど約分できる)なので,

$$ \Gamma\left(\frac12\right) = \int_0^{\infty}2e^{-t^2}\,dt = 2\int_0^{\infty}e^{-t^2}\,dt $$

最後に,式 \eqref{eq:32-gauss-half}($\int_0^\infty e^{-t^2}dt=\sqrt\pi/2$,変数の記号が $x$ から $t$ に変わっただけ)を代入すると,

\begin{equation} \Gamma\left(\frac12\right) = 2\cdot\frac{\sqrt\pi}2 = \sqrt\pi \label{eq:32-gamma-half} \end{equation}

(証明終わり)

32.2.3 基本性質(III)(IV):漸化式 $\Gamma(\alpha+1)=\alpha\Gamma(\alpha)$ と $\Gamma(n+1)=n!$

公式32.4 $\Gamma(\alpha+1)=\alpha\,\Gamma(\alpha)$($\alpha\gt0$)

証明

定義32.3に $\alpha+1$ を代入すると,

$$ \Gamma(\alpha+1) = \int_0^{\infty}x^{(\alpha+1)-1}e^{-x}\,dx = \int_0^{\infty}x^{\alpha}\,e^{-x}\,dx $$

部分積分($u=x^{\alpha},\ dv=e^{-x}dx$ とおくと $du=\alpha x^{\alpha-1}dx,\ v=-e^{-x}$)を使うと,

$$ \int x^{\alpha}e^{-x}\,dx = x^{\alpha}\cdot(-e^{-x}) - \int \alpha x^{\alpha-1}\cdot(-e^{-x})\,dx = -x^{\alpha}e^{-x} + \alpha\int x^{\alpha-1}e^{-x}\,dx $$

これを広義積分として $0$ から $\infty$ まで(上端は $c\to\infty$ の極限として)評価すると,

$$ \int_0^{\infty} x^{\alpha}e^{-x}\,dx = \Big[-x^{\alpha}e^{-x}\Big]_0^{\infty} + \alpha\int_0^{\infty} x^{\alpha-1}e^{-x}\,dx $$

境界の項を調べる.下端 $x=0$ では,$\alpha\gt0$ のとき $-0^{\alpha}\cdot e^0=-0\cdot1=0$.上端 $x\to\infty$ では,注意ボックスで確認したとおり指数関数はどんなべき関数よりも速く $0$ に近づくので,

$$ \lim_{x\to\infty}\left(-\frac{x^{\alpha}}{e^{x}}\right) = -0 = 0 $$

したがって境界の項はまるごと $0$ になり,残るのは第2項だけである.第2項の積分は,定義32.3にそのまま $\Gamma(\alpha)$ の形をしているから,

\begin{equation} \Gamma(\alpha+1) = 0 + \alpha\int_0^{\infty}x^{\alpha-1}e^{-x}\,dx = \alpha\,\Gamma(\alpha) \label{eq:32-gamma-recur} \end{equation}

(証明終わり)

公式32.5 $\Gamma(n+1)=n!$($n=0,1,2,\ldots$)

証明

公式32.4(漸化式)を $\alpha=n,n-1,n-2,\ldots,1$ の順に繰り返し使うと,

$$ \Gamma(n+1)=n\,\Gamma(n),\quad \Gamma(n)=(n-1)\,\Gamma(n-1),\quad \ldots,\quad \Gamma(2)=1\cdot\Gamma(1) $$

という $n$ 本の等式が得られる.これらをすべて代入して1本につなげると,

$$ \Gamma(n+1) = n\cdot(n-1)\cdot(n-2)\cdots2\cdot\Gamma(1) $$

ここに公式32.2($\Gamma(1)=1$)を代入すると,

\begin{equation} \Gamma(n+1) = n\cdot(n-1)\cdot(n-2)\cdots2\cdot1 = n! \label{eq:32-gamma-fact} \end{equation}

(証明終わり)

例題32.3 $\Gamma(5/2)$ を漸化式から計算する

公式32.4($\Gamma(\alpha+1)=\alpha\Gamma(\alpha)$)と公式32.3($\Gamma(1/2)=\sqrt\pi$)を使って,$\Gamma(5/2)$ を求めよ.

解答 $\dfrac52=\dfrac32+1$ なので,公式32.4に $\alpha=\dfrac32$ を代入すると $\Gamma\!\left(\dfrac52\right)=\dfrac32\,\Gamma\!\left(\dfrac32\right)$.さらに $\dfrac32=\dfrac12+1$ なので,公式32.4に $\alpha=\dfrac12$ を代入すると $\Gamma\!\left(\dfrac32\right)=\dfrac12\,\Gamma\!\left(\dfrac12\right)=\dfrac12\sqrt\pi$(公式32.3を使った).この2つをつなげると,

$$ \Gamma\left(\frac52\right) = \frac32\cdot\frac12\sqrt\pi = \frac34\sqrt\pi $$

である(数値では $\Gamma(5/2)\approx1.329340$,sympyで検算済み).整数でない引数でも,漸化式を $\Gamma(1/2)=\sqrt\pi$ に届くまで下げていけば,必ず「有理数 $\times\sqrt\pi$」の形に書けることが分かる.

例題32.4 指数型積分をガンマ関数で計算する:$\displaystyle\int_0^{\infty}x^3e^{-2x}\,dx$

ガンマ関数を利用して,$\displaystyle\int_0^{\infty}x^3e^{-2x}\,dx$ を求めよ.

解答 定義32.3は $e^{-x}$(指数の係数が $1$)の形をしているので,まず置換積分 $u=2x$($du=2\,dx$,つまり $dx=\dfrac{du}2$)で指数の係数を $1$ にそろえる.$x=\dfrac u2$ なので $x^3=\dfrac{u^3}8$ であり,積分区間は $x=0\to u=0$,$x\to\infty\to u\to\infty$ とそのまま対応する.

$$ \int_0^{\infty}x^3e^{-2x}\,dx = \int_0^{\infty}\frac{u^3}{8}\,e^{-u}\cdot\frac{du}{2} = \frac1{16}\int_0^{\infty}u^{3}e^{-u}\,du = \frac1{16}\,\Gamma(4) $$

(最後の積分は,定義32.3で $\alpha-1=3$ すなわち $\alpha=4$ とした形そのものである.)公式32.5より $\Gamma(4)=3!=6$ なので,

$$ \int_0^{\infty}x^3e^{-2x}\,dx = \frac{6}{16} = \frac38 $$

である(sympyで直接積分した結果 $3/8$ と一致,検算済み).この計算は一般化でき,$n$ を $0$ 以上の整数,$a\gt0$ として同じ置換 $u=ax$ を行うと,

\begin{equation} \int_0^{\infty}x^ne^{-ax}\,dx = \frac{\Gamma(n+1)}{a^{n+1}} = \frac{n!}{a^{n+1}} \label{eq:32-power-exp-integral} \end{equation}

という便利な公式が得られる.次の§32.2.4では,この公式とほとんど同じ計算が,まさにラプラス変換そのものであることを見る.

32.2.4 ガンマ関数とラプラス変換の橋渡し

式 \eqref{eq:32-power-exp-integral} をよく見ると,第31章の定義31.1(ラプラス変換 $\Lap[f(t)]=\int_0^\infty f(t)e^{-st}dt$)とほとんど同じ形をしていることに気づく.実際,$f(t)=t^n$ の代わりに,指数が整数でなくてもよい一般の $t^{\alpha}$($\alpha\gt-1$)を考えれば,まったく同じ計算がそのまま使える.

定理32.1 べき関数のラプラス変換のガンマ関数による一般化

$\alpha\gt-1$,$s\gt0$ のとき,

\begin{equation} \Lap[t^{\alpha}] = \frac{\Gamma(\alpha+1)}{s^{\alpha+1}} \label{eq:32-laplace-bridge} \end{equation}

が成り立つ.

証明

定義31.1に $f(t)=t^{\alpha}$ を代入し,置換積分 $x=st$($s\gt0$ は定数なので $dx=s\,dt$,$t=x/s$)を行う.積分区間は $t=0\to x=0$,$t\to\infty\to x\to\infty$ とそのまま対応する.

$$ \Lap[t^{\alpha}] = \int_0^{\infty}t^{\alpha}e^{-st}\,dt = \int_0^{\infty}\left(\frac xs\right)^{\alpha}e^{-x}\,\frac{dx}{s} = \frac1{s^{\alpha+1}}\int_0^{\infty}x^{\alpha}e^{-x}\,dx $$

最後の積分は定義32.3そのもの($\alpha-1$ の代わりに $\alpha$,すなわち定義32.3で引数を $\alpha+1$ としたもの)だから $\Gamma(\alpha+1)$ に等しく,

$$ \Lap[t^{\alpha}] = \frac{\Gamma(\alpha+1)}{s^{\alpha+1}} $$

(証明終わり)

イメージ:この章のタイトルの意味

定理32.1で,特に $\alpha=n$($0$ 以上の整数)とすると,公式32.5($\Gamma(n+1)=n!$)よりただちに

$$ \Lap[t^n] = \frac{\Gamma(n+1)}{s^{n+1}} = \frac{n!}{s^{n+1}} $$

となり,第31章の公式31.3にぴったり戻る.つまり,第31章の公式は,定理32.1という一般公式の「$\alpha$ が整数の場合」にすぎなかったのである.ガンマ関数のおかげで,$\alpha$ が整数でなくても——たとえば $\alpha=1/2$ でも——同じ1本の公式でラプラス変換が計算できるようになった.これが本章の題名に「とラプラス変換」と入っている理由である.

例題32.5 $\Lap[\sqrt t\,]$ をガンマ関数を用いて求める

定理32.1を用いて,$\Lap[\sqrt t\,]=\Lap[t^{1/2}]$ を求めよ.

解答 $\alpha=\dfrac12$ として定理32.1に代入すると,

$$ \Lap\!\left[t^{1/2}\right] = \frac{\Gamma\!\left(\frac12+1\right)}{s^{\frac12+1}} = \frac{\Gamma\!\left(\frac32\right)}{s^{3/2}} $$

$\Gamma\!\left(\dfrac32\right)$ は公式32.4に $\alpha=\dfrac12$ を代入すれば求まる:$\Gamma\!\left(\dfrac32\right)=\dfrac12\,\Gamma\!\left(\dfrac12\right)=\dfrac12\sqrt\pi$(公式32.3).したがって,

$$ \Lap\!\left[\sqrt t\,\right] = \frac{\frac12\sqrt\pi}{s^{3/2}} = \frac{\sqrt\pi}{2\,s^{3/2}} $$

である(sympyのlaplace_transformで直接検算し一致を確認済み).冒頭で「$\left(\frac12\right)!$ とは何か分からないので $\Lap[\sqrt t\,]$ が求められない」と述べた問題が,ガンマ関数によってきちんと解決したことになる.

32.3 スターリングの公式

$n$ が大きくなると,$n!$ は驚くほどの速さで大きくなる(たとえば $20!\approx2.43\times10^{18}$).そのため,統計力学のエントロピー計算や組合せ論では,$n!$ そのものを扱う代わりに,$n$ が大きいときの近似式が欲しくなる場面が非常に多い.この近似式をスターリングの公式(Stirling's formula)とよぶ.ノートでは,まず大まかな「簡易版」を区分求積法で導き,つづいて精密な「精密版」の導出を試みるが,証明はある式変形の途中で終わっている.本節では,簡易版まではノートにしたがって完全に再現し,精密版は,ノートで止まっているところから,第4章のテイラーの定理と第7章のガウス積分の技法を使って,自分たちで証明を最後まで追いきる.

32.3.1 簡易版の導出(区分求積法)

$n!=1\cdot2\cdot3\cdots n$ の両辺の自然対数をとると,対数の性質 $\ln(ab)=\ln a+\ln b$ により,積が和に変わる.

$$ \ln n! = \ln(1\cdot2\cdot3\cdots n) = \ln1+\ln2+\cdots+\ln n = \sum_{k=1}^{n}\ln k $$

この和 $\displaystyle\sum_{k=1}^n\ln k$ を,積分 $\displaystyle\int_1^n\ln x\,dx$ で近似する.これは高校数学で学んだ区分求積法($\Sigma$ と $\displaystyle\int$ の関係:関数を細かい長方形で近似し,長方形の幅を細かくする極限として積分をとらえる考え方)の応用である.ここでは長方形の幅を $1$ に固定したまま($n\to\infty$ にはせず),$\ln k$ を区間 $[k-1,k]$ 上の高さ一定の長方形の面積とみなす(図32.4).

横軸xに1から7までの目盛りを取り,縦軸yに原点から上へln2,ln3,ln4,ln5,ln6,ln7の目盛りを取り,原点から増加していく滑らかな曲線y=ln xを描く.区間[1,2],[2,3],...,[6,7]ごとに,右端点での関数値を高さとする幅1の階段状の長方形が曲線の下に敷き詰められ,各長方形の右上の角がちょうど曲線上に乗っている.これは和Σln kを積分∫ln x dxで近似する様子を表す.
図32.4 右端点による長方形近似(幅 $1$)で $\displaystyle\sum_{k=2}^{n}\ln k$ を表す($n=7$ の場合,長方形の高さはそれぞれ $\ln2,\ln3,\ldots,\ln7$).$\ln x$ は単調増加なので,各長方形は曲線の下から少しはみ出しており,この和は積分 $\int_1^n\ln x\,dx$ を上から近似している.

積分 $\displaystyle\int_1^n\ln x\,dx$ の値は,不定積分の公式 $\displaystyle\int\ln x\,dx=x\ln x-x+C$(第5章で学んだ,部分積分による公式)を使うと,

$$ \int_1^{n}\ln x\,dx = \Big[x\ln x-x\Big]_1^{n} = (n\ln n-n)-(1\cdot\ln1-1) $$

ここで $\ln1=0$ なので,右辺のかっこの中は $(0-1)=-1$.したがって,

$$ \int_1^{n}\ln x\,dx = n\ln n-n-(-1) = n\ln n-n+1 $$

この積分で和を近似すると(図32.4のとおり,右端点近似は真の積分よりわずかに大きいが,その差は $n$ が大きくなっても $n\ln n$ 全体に比べて無視できるほど小さいことが知られている),

$$ \sum_{k=1}^{n}\ln k \fallingdotseq \int_1^{n}\ln x\,dx = n\ln n-n+1 $$

$n\gg0$($n$ が十分大きい)のときは,末尾の定数 $+1$ は $n\ln n$ や $n$ に比べて無視できるほど小さいので,落としてしまってよい.

$$ \sum_{k=1}^{n}\ln k \fallingdotseq n\ln n-n $$

数学ノート:$n\ln n-n$ を1つの対数にまとめる

$n\ln n-n$ を,あとで指数関数の肩から下ろしやすいように,1つの対数の形にまとめておく.$n=n\ln e$($\ln e=1$ だから)であることを使うと,

$$ n\ln n-n = n\ln n-n\ln e = \ln n^n-\ln e^n = \ln\frac{n^n}{e^n} = \ln\!\left(n^ne^{-n}\right) $$

(1つ目の等号は対数の定数倍公式 $k\ln a=\ln a^k$ を2回使った.2つ目の等号は対数の引き算公式 $\ln a-\ln b=\ln\frac ab$.3つ目の等号は $\frac1{e^n}=e^{-n}$.)

この書き換えを代入すると,

$$ \ln n! \fallingdotseq \ln\!\left(n^ne^{-n}\right) $$

両辺の対数をはずす(対数関数 $\ln$ は単調増加なので,$\ln A=\ln B$ ならば $A=B$)と,次の近似式を得る.

公式32.6 スターリングの公式(簡易版)

\begin{equation} n! \fallingdotseq n^ne^{-n} \qquad(n\gg0) \label{eq:32-stirling-simple} \end{equation}

ただし,この簡易版は桁数のオーダーだけを正しくとらえた近似であり,実際の値との比は $n$ が大きくなっても $1$ に近づかない(次の例題32.6・図32.5で数値的に確認する).より精密な近似を得るには,区分求積法で落としてしまった細部を,もっと丁寧に扱う必要がある.それが次の精密版である.

32.3.2 精密版の導出(ラプラスの方法)

ノートでは,精密版 $n!\fallingdotseq\sqrt{2\pi n}\,n^ne^{-n}$ の証明が次の式を書いたところで終わっている(p.17).

$$ n! = \Gamma(n+1) = \int_0^{\infty}x^ne^{-x}\,dx = \int_0^{\infty}e^{\ln x^n}\cdot e^{-x}\,dx = \int_0^{\infty}e^{n\ln x-x}\,dx $$

(最初の等号は公式32.5,2番目は定義32.3,3番目は $x^n=e^{\ln x^n}$(対数と指数は互いに逆演算なのでこう書き直せる),4番目は指数法則 $e^{a}\cdot e^{b}=e^{a+b}$ を左から右へ使った.)ここから先は書かれていないが,この積分の指数部分 $g(x)=n\ln x-x$ に注目すると,続きを自分たちで追うことができる.これはラプラスの方法(Laplace's method,鞍点法(saddle-point method)ともいう)とよばれる,指数の中身が鋭い山になっている積分を近似するときの標準的な手法である.

第1段階:山の頂上をさがす. $g(x)=n\ln x-x$ を $x$ で微分すると $g'(x)=\dfrac nx-1$.これが $0$ になるのは $x=n$ のときで,$g''(x)=-\dfrac n{x^2}\lt0$($x\gt0$ で常に負)だから,$x=n$ は $g$ の最大点である.最大値は $g(n)=n\ln n-n$——これはちょうど簡易版で登場した式そのものである.

第2段階:頂上のまわりでテイラー展開する. 最大点 $x=n$ を中心に,$x=n+y$($y$ は $0$ に近い変数)とおいて $g(x)$ を書き直す.

$$ g(n+y) = n\ln(n+y)-(n+y) = n\left[\ln n+\ln\!\left(1+\frac yn\right)\right]-n-y = n\ln n+n\ln\!\left(1+\frac yn\right)-n-y $$

($\ln(n+y)=\ln\!\left[n\left(1+\frac yn\right)\right]=\ln n+\ln\!\left(1+\frac yn\right)$ と対数の積の公式を使った.)ここで,第4章のテイラーの定理により,$\varepsilon$ が $0$ に近いとき $\ln(1+\varepsilon)\approx\varepsilon-\dfrac{\varepsilon^2}2$(2次の項までのテイラー展開)が成り立つ.$\varepsilon=\dfrac yn$ を代入すると,

$$ n\ln\!\left(1+\frac yn\right) \approx n\left(\frac yn-\frac{y^2}{2n^2}\right) = y-\frac{y^2}{2n} $$

これを代入すると,

$$ g(n+y) \approx n\ln n+\left(y-\frac{y^2}{2n}\right)-n-y = (n\ln n-n)-\frac{y^2}{2n} = g(n)-\frac{y^2}{2n} $$

つまり,最大点 $x=n$ のまわりでは,$g(x)$ は頂上 $g(n)$ から,$y=x-n$ の2乗に比例して下がっていく——ちょうど山の頂上を放物線で近似したのと同じ形($y^2$ の係数が負)になっている.

第3段階:指数関数にもどしてガウス積分にする. 積分変数を $x$ から $y=x-n$ に変える($dx=dy$,$x=0\to y=-n$,$x\to\infty\to y\to\infty$).

$$ n! = \int_{-n}^{\infty}e^{g(n+y)}\,dy \approx \int_{-n}^{\infty}e^{g(n)-\frac{y^2}{2n}}\,dy = e^{g(n)}\int_{-n}^{\infty}e^{-\frac{y^2}{2n}}\,dy $$

$n$ が大きいとき,被積分関数 $e^{-y^2/(2n)}$ は $y=-n$ よりずっと手前($|y|$ が $\sqrt n$ 程度より大きいところ)ですでに事実上 $0$ になっている.したがって,積分の下端を $y=-n$ から $y=-\infty$ に広げても,値はほとんど変わらない(この部分は直感的な説明にとどめる——きちんとした評価には大学の解析学で習う手法が必要になる).

$$ \int_{-n}^{\infty}e^{-\frac{y^2}{2n}}\,dy \approx \int_{-\infty}^{\infty}e^{-\frac{y^2}{2n}}\,dy $$

この積分は,第7章のガウス積分 $\int_{-\infty}^{\infty}e^{-x^2}dx=\sqrt\pi$ の仲間である.置換積分 $y=\sqrt{2n}\,w$($dy=\sqrt{2n}\,dw$)を行うと,$\dfrac{y^2}{2n}=\dfrac{2n\,w^2}{2n}=w^2$ となるので,

$$ \int_{-\infty}^{\infty}e^{-\frac{y^2}{2n}}\,dy = \int_{-\infty}^{\infty}e^{-w^2}\sqrt{2n}\,dw = \sqrt{2n}\int_{-\infty}^{\infty}e^{-w^2}\,dw = \sqrt{2n}\cdot\sqrt\pi = \sqrt{2\pi n} $$

最後に,$e^{g(n)}=e^{n\ln n-n}=e^{\ln n^n}\cdot e^{-n}=n^ne^{-n}$(第1段階の結果を指数の書き換えでもとに戻した)を代入すると,

$$ n! \approx n^ne^{-n}\cdot\sqrt{2\pi n} $$

公式32.7 スターリングの公式(精密版)

\begin{equation} n! \fallingdotseq \sqrt{2\pi n}\,n^ne^{-n} \qquad(n\gg0) \label{eq:32-stirling-precise} \end{equation}

注意:この導出は「厳密な証明」ではない

上の3段階の議論は,$\ln(1+\varepsilon)$ を2次まで打ち切ったこと,積分区間を $-n$ から $-\infty$ に広げてよいとしたことなど,直感的な近似をいくつも積み重ねている.本当に厳密な証明(近似の誤差が $n\to\infty$ で確かに無視できることを不等式で評価する)には,大学の解析学でさらに専門的な道具が必要になる.しかし,結論として得られた公式32.7が正しい近似であることは,次の例題32.6で数値的に確かめられる——そしてその精度は,簡易版(公式32.6)とは比べものにならないほど良い.

例題32.6 $n=10$ で簡易版・精密版・真の値を比較する

$n=10$ のとき,スターリングの公式(簡易版・精密版)による近似値と,真の値 $10!=3628800$ を比較し,それぞれの相対誤差を求めよ.

解答 簡易版(公式32.6)は $n^ne^{-n}=10^{10}e^{-10}\approx453999.3$.真の値 $3628800$ との相対誤差は,

$$ \frac{|3628800-453999.3|}{3628800}\approx87.5\% $$

と非常に大きい.一方,精密版(公式32.7)は $\sqrt{2\pi\cdot10}\times453999.3\approx7.9266\times453999.3\approx3598696$.真の値との相対誤差は,

$$ \frac{|3628800-3598696|}{3628800}\approx0.83\% $$

であり,簡易版よりも2桁近く小さい(Pythonで検算済み).図32.5は,$n=1$ から $30$ までの相対誤差を,簡易版と精密版の両方についてプロットしたものである.簡易版の相対誤差は $n$ を大きくしても $100\%$ に近づいていく一方($1-\frac1{\sqrt{2\pi n}}\to1$),精密版の相対誤差は $n$ とともに単調に $0$ へ近づいていく.これが,係数 $\sqrt{2\pi n}$ の有無による違いである.

横軸をnとし,縦軸を相対誤差(%)としたグラフ.簡易版の相対誤差を表す曲線はn=1で約63%からn=30で約93%まで単調に増加していく.精密版の相対誤差を表す曲線はn=1で約8%から急速に減少し,n=30では1%を下回るまで単調に減少していく.2本の曲線は交差せず,精密版の方が終始下にある.
図32.5 スターリングの公式の相対誤差(%)を $n=1$ から $30$ までプロットしたもの.簡易版(赤)の誤差は $n$ とともに増加して $100\%$ に近づいていくのに対し,精密版(青)の誤差は単調に減少して $0$ に近づく.

32.4 ベータ関数

ガンマ関数と兄弟のような関係にあるもう1つの特殊関数が,ベータ関数(beta function)である.ノートでは定義だけが書かれ,「(11) ベータ関数の性質」という見出しの直後で終わっている(本文はノートに記載がなく,ページの残りは白紙のままノートが終わっている).本節では,定義をノートのまま示したあと,教科書として自然に補うべき2つの基本性質——対称性とガンマ関数との関係——を,自分たちの手で導く.

32.4.1 ベータ関数の定義

定義32.4 ベータ関数(beta function)

$m\gt0,\ n\gt0$ に対して,次の定積分によって定義される関数をベータ関数とよび,$B(m,n)$ と書く.

\begin{equation} B(m,n) = \int_0^1 x^{m-1}(1-x)^{n-1}\,dx \label{eq:32-beta-def} \end{equation}

この積分は,被積分関数が $m\lt1$ や $n\lt1$ のとき端点 $x=0$ や $x=1$ で発散するが,ガンマ関数のときと同じ理由(発散の程度が緩やかであること)で,$m\gt0,n\gt0$ である限り広義積分として収束する.

区間[0,1]における被積分関数x^(m-1)(1-x)^(n-1)のグラフを,(m,n)の組を変えて2つのパネルに分けて描いた図.左パネル(a)は(0.5,0.5)で,両端x=0とx=1で発散するU字型の曲線.右パネル(b)は残り3本:(2,2)は中央で山型の対称な曲線,(4,2)は右寄りに山があり左が低い非対称な曲線,(2,5)は左寄りに山がある非対称な曲線.
図32.6 ベータ関数の被積分関数 $x^{m-1}(1-x)^{n-1}$ を,いくつかの $(m,n)$ について $[0,1]$ 上に描いたもの.$m=n$(対称,$(2,2)$)のときは山が中央に,$m\ne n$ のときは山が左右どちらかに偏り,$m,n\lt1$($(0.5,0.5)$)のときは両端で発散する.

32.4.2 対称性 $B(m,n)=B(n,m)$

定理32.2 ベータ関数の対称性

\begin{equation} B(m,n) = B(n,m) \label{eq:32-beta-symmetric} \end{equation}

直感:なぜ対称になりそうか

定義32.4の被積分関数 $x^{m-1}(1-x)^{n-1}$ で,$x$ の役割と $(1-x)$ の役割をそっくり入れ替えると,指数 $m$ と $n$ が入れ替わった形になる.そして積分区間 $[0,1]$ 自身も,$x\mapsto1-x$ という「両端を入れ替える」変換によって自分自身にちょうど重なる($x=0$ と $x=1$ が入れ替わるだけで,区間としては同じ $[0,1]$ に戻る).この2つの対称性から,$B(m,n)=B(n,m)$ が成り立ちそうだと予想できる.厳密な証明は,本章末の演習32.5とする(ヒント:置換積分 $x=1-u$ を実行すればよい).

32.4.3 ガンマ関数との関係 $B(m,n)=\dfrac{\Gamma(m)\Gamma(n)}{\Gamma(m+n)}$

定理32.3 ベータ関数とガンマ関数の関係

\begin{equation} B(m,n) = \frac{\Gamma(m)\,\Gamma(n)}{\Gamma(m+n)} \label{eq:32-beta-gamma} \end{equation}

証明

$\Gamma(m)$ と $\Gamma(n)$ の積を,定義32.3にしたがって2つの独立な積分の積として書く(積分変数の記号を $x,y$ と分けておく).

$$ \Gamma(m)\,\Gamma(n) = \left(\int_0^{\infty}x^{m-1}e^{-x}\,dx\right)\left(\int_0^{\infty}y^{n-1}e^{-y}\,dy\right) = \int_0^{\infty}\!\!\int_0^{\infty} x^{m-1}y^{n-1}e^{-(x+y)}\,dx\,dy $$

(2つの独立な1変数積分の積は,第7章のガウス積分の証明で使ったのと同じ考え方で,1つの2重積分にまとめられる.)ここで,新しい変数 $t,s$ を,「$x,y$ の和」と「その中で $x$ が占める割合」として導入する.

$$ x = ts,\qquad y = t(1-s) \qquad(t\gt0,\ 0\lt s\lt1) $$

(このとき $x+y=ts+t(1-s)=t$,$x/(x+y)=s$ となっている.)この変換のヤコビアンを,第7章の定義7.2にしたがって計算する.

$$ \pdiff{x}{t}=s,\quad \pdiff{x}{s}=t,\quad \pdiff{y}{t}=1-s,\quad \pdiff{y}{s}=-t $$ $$ |J| = \left|\begin{vmatrix} s & t \\ 1-s & -t\end{vmatrix}\right| = \big|s\cdot(-t)-t\cdot(1-s)\big| = \big|-st-t+st\big| = |-t| = t $$

($t\gt0$ なので絶対値ははずせる.)したがって $dx\,dy=t\,dt\,ds$ である.また,$x^{m-1}y^{n-1}=(ts)^{m-1}\big(t(1-s)\big)^{n-1}=t^{m-1}t^{n-1}s^{m-1}(1-s)^{n-1}=t^{m+n-2}s^{m-1}(1-s)^{n-1}$ であり,$e^{-(x+y)}=e^{-t}$ である.これらを代入すると,

$$ \Gamma(m)\Gamma(n) = \int_0^{\infty}\!\!\int_0^{1} t^{m+n-2}s^{m-1}(1-s)^{n-1}e^{-t}\cdot t\,ds\,dt = \int_0^{\infty}\!\!\int_0^{1} t^{m+n-1}e^{-t}\,s^{m-1}(1-s)^{n-1}\,ds\,dt $$

被積分関数が「$t$ だけの部分」と「$s$ だけの部分」の積になっているので,2重積分は2つの1変数積分の積に分解できる(さきほどとは逆向きの変形).

$$ \Gamma(m)\Gamma(n) = \left(\int_0^{\infty}t^{m+n-1}e^{-t}\,dt\right)\left(\int_0^{1}s^{m-1}(1-s)^{n-1}\,ds\right) $$

右辺の第1因子は定義32.3で $\alpha=m+n$ としたもの,すなわち $\Gamma(m+n)$.第2因子は定義32.4そのもの,すなわち $B(m,n)$.したがって,

$$ \Gamma(m)\Gamma(n) = \Gamma(m+n)\,B(m,n) $$

両辺を $\Gamma(m+n)$($m,n\gt0$ なので $0$ にならない)で割ると,

$$ B(m,n) = \frac{\Gamma(m)\Gamma(n)}{\Gamma(m+n)} $$

(証明終わり)

例題32.7 $B(2,3)$ を2通りの方法で計算する

$B(2,3)$ を,(a) 定義32.4の積分から直接,(b) 定理32.3(ガンマ関数との関係)から,それぞれ計算し,一致することを確認せよ.

解答 (a) 定義32.4に $m=2,n=3$ を代入すると,$B(2,3)=\displaystyle\int_0^1x(1-x)^2\,dx$.$(1-x)^2=1-2x+x^2$ を展開して,

$$ x(1-x)^2 = x(1-2x+x^2) = x-2x^2+x^3 $$ $$ B(2,3) = \int_0^1(x-2x^2+x^3)\,dx = \left[\frac{x^2}2-\frac{2x^3}3+\frac{x^4}4\right]_0^1 = \frac12-\frac23+\frac14 $$

通分(分母を$12$にそろえる)すると $\dfrac6{12}-\dfrac8{12}+\dfrac3{12}=\dfrac1{12}$.よって $B(2,3)=\dfrac1{12}$.

(b) 定理32.3より,$B(2,3)=\dfrac{\Gamma(2)\Gamma(3)}{\Gamma(5)}$.公式32.5($\Gamma(n+1)=n!$)より $\Gamma(2)=1!=1$,$\Gamma(3)=2!=2$,$\Gamma(5)=4!=24$ なので,

$$ B(2,3) = \frac{1\times2}{24} = \frac2{24}=\frac1{12} $$

(a)と(b)はぴったり一致する(sympyでも検算済み).積分を直接計算する(a)より,階乗の掛け算だけで済む(b)の方が圧倒的に速いことが分かる——これが定理32.3の実用上の価値である.

例題32.8 $B(1/2,1/2)=\pi$ — 誤差関数・ガウス積分との再会

$B\!\left(\frac12,\frac12\right)$ を,(a) 定理32.3(ガンマ関数との関係),(b) 定義32.4の積分に三角関数の置換 $x=\sin^2\theta$ を使う方法,の2通りで求めよ.

解答 (a) 定理32.3と公式32.3($\Gamma(1/2)=\sqrt\pi$),公式32.2($\Gamma(1)=1$)より,

$$ B\left(\frac12,\frac12\right) = \frac{\Gamma\!\left(\frac12\right)\Gamma\!\left(\frac12\right)}{\Gamma(1)} = \frac{\sqrt\pi\cdot\sqrt\pi}{1} = \frac{(\sqrt\pi)^2}{1} = \pi $$

(b) 定義32.4に $m=n=\frac12$ を代入すると,$B\!\left(\frac12,\frac12\right)=\displaystyle\int_0^1\frac{dx}{\sqrt{x(1-x)}}$($x^{-1/2}(1-x)^{-1/2}=\frac1{\sqrt{x(1-x)}}$ より).置換 $x=\sin^2\theta$($0\le\theta\le\frac\pi2$)を使うと,$dx=2\sin\theta\cos\theta\,d\theta$(合成関数の微分),$1-x=1-\sin^2\theta=\cos^2\theta$(三角関数の相互関係)なので $\sqrt{x(1-x)}=\sqrt{\sin^2\theta\cos^2\theta}=\sin\theta\cos\theta$($0\le\theta\le\frac\pi2$ でともに $0$ 以上だから絶対値ははずせる).積分区間は $x=0\to\theta=0$,$x=1\to\theta=\frac\pi2$.したがって,

$$ \int_0^1\frac{dx}{\sqrt{x(1-x)}} = \int_0^{\pi/2}\frac{2\sin\theta\cos\theta}{\sin\theta\cos\theta}\,d\theta = \int_0^{\pi/2}2\,d\theta = 2\cdot\frac\pi2 = \pi $$

(a)と(b)は一致し,どちらも $\pi$ になる(sympyでも直接積分して検算済み).誤差関数(§32.1)もガンマ関数(§32.2)もベータ関数(本節)も,もとをたどればすべて同じガウス積分 $\int e^{-x^2}dx=\sqrt\pi$ に行き着く——この章で学んだ特殊関数たちが,1本の糸でつながっていることが見えてくる一例である.

32.5 まとめと演習

32.5.1 まとめ

$$ \Gamma(n+1)=n!\ ,\qquad n!\fallingdotseq\sqrt{2\pi n}\,n^ne^{-n}\ ,\qquad B(m,n)=\int_0^1x^{m-1}(1-x)^{n-1}dx=\frac{\Gamma(m)\Gamma(n)}{\Gamma(m+n)} $$

32.5.2 演習問題

演習32.1 $\Gamma(7/2)$ を求めよ.

公式32.4($\Gamma(\alpha+1)=\alpha\Gamma(\alpha)$)を繰り返し使い,$\Gamma(1/2)=\sqrt\pi$(公式32.3)まで下げよ.

ヒント:$\dfrac72=\dfrac52+1=\left(\dfrac32+1\right)+1=\left(\left(\dfrac12+1\right)+1\right)+1$ のように,$\dfrac12$ に届くまで $1$ ずつ下げていく.例題32.3($\Gamma(5/2)$)と同じ手順を,あと1段階多く繰り返せばよい.

演習32.2 $\mathrm{erf}(x)+\mathrm{erfc}(x)=1$ を,本文とは異なる方法(微分)で示せ.

公式32.1は本文で積分区間の分割によって証明したが,ここでは $\dfrac d{dx}\big[\mathrm{erf}(x)+\mathrm{erfc}(x)\big]$ を計算する方法で同じ結論を導け.

ヒント:微分積分学の基本定理(第5章)を使うと,$\dfrac d{dx}\displaystyle\int_0^xe^{-u^2}du=e^{-x^2}$ であり,同じ定理を上端が定数・下端が変数の積分 $\displaystyle\int_x^{\infty}e^{-u^2}du$ にも(符号に注意して)適用できる.導関数が恒等的に $0$ になる関数は定数関数である(第2章で学んだ平均値の定理,定理2.2の系)ことを使い,最後に $x=0$ を代入して定数を決定せよ(例題32.1(a)の結果 $\mathrm{erfc}(0)=1$ と $\mathrm{erf}(0)=0$ が使える).

演習32.3 $\Lap[t^3]$ をガンマ関数の公式から計算し,第31章の結果と比較せよ.

定理32.1($\Lap[t^{\alpha}]=\Gamma(\alpha+1)/s^{\alpha+1}$)を用いて $\Lap[t^3]$ を計算し,第31章の公式31.3($\Lap[t^n]=n!/s^{n+1}$)で $n=3$ とした結果と一致することを確認せよ.

ヒント:$\alpha=3$(整数)を代入し,公式32.5($\Gamma(n+1)=n!$)で $\Gamma(4)$ を階乗に直せばよい.

演習32.4 $n=5$ でスターリングの簡易版・精密版の相対誤差を求めよ.

$n=5$ のとき,スターリングの公式の簡易版(公式32.6)・精密版(公式32.7)それぞれの近似値を求め,真の値 $5!=120$ との相対誤差(%)を計算せよ.

ヒント:例題32.6($n=10$ の場合)とまったく同じ手順を,$n=5$ について繰り返せばよい.$e^{-5}\approx0.0067379$ を使ってよい.

演習32.5 $B(m,n)=B(n,m)$(定理32.2)を証明せよ.

§32.4.2で直感的に予想した対称性 $B(m,n)=B(n,m)$ を,置換積分 $x=1-u$ を使って厳密に証明せよ.

ヒント:定義32.4の積分に $x=1-u$($dx=-du$)を代入し,積分区間の端点がどう入れ替わるかに注意する.§32.4.3の定理32.3の証明中で行った,積分の上端・下端の入れ替えと符号反転が打ち消し合う議論(あるいは第28章の演習28.3で偶関数について行った議論)と同じ考え方が使える.

演習32.6 $B(1,n)$ を定義から直接計算せよ.

定義32.4に $m=1$ を代入し,$B(1,n)$ を直接積分によって求めよ.さらに,その結果が定理32.3($B(m,n)=\Gamma(m)\Gamma(n)/\Gamma(m+n)$)から計算した値と一致することも確認せよ.

ヒント:$x^{1-1}=x^0=1$ なので,被積分関数は $(1-x)^{n-1}$ だけになる.$\Gamma(1)=1$(公式32.2)と $\Gamma(n+1)=n!$(公式32.5)を使う.

32.5.3 参考文献

  1. 望月泰英『数学ノート ラプラス変換』(手書き講義ノート).本章の底本.
  2. 高木貞治『解析概論』改訂第3版,岩波書店,1961年.
  3. E. T. Whittaker and G. N. Watson, A Course of Modern Analysis, 4th ed., Cambridge University Press, 1927.
  4. M. Abramowitz and I. A. Stegun (eds.), Handbook of Mathematical Functions, Dover Publications, 1965.

関連シミュレーター:Taylor 展開(§32.3.2の精密版スターリング公式の導出で使ったテイラー展開の直感をつかむのに役立つ).