高校数学 — 目次 高校数学 / 第7章

第7章ベクトル

速度・力・変位——高校物理に出てくる量の多くは,「大きさ」だけでなく「向き」も持っている.このような量を数学的に扱う道具がベクトル(vector)である.これまでの数学では,1つの数(スカラー,scalar)だけを扱ってきた.ベクトルはそこに「向き」という新しい情報を付け加える.たったこれだけの拡張だが,その効果は大きい.例えば直線の方程式は中学以来 $y=ax+b$ の形で書いてきたが,ベクトルを使うと $\vec{OP}=\vec{OA}+t\vec{d}$ という,向きと位置がそのまま見える形で書ける.平面図形の性質(三角形の重心,平行四辺形の対角線,2直線の交点など)も,座標を使わずに,矢印の足し算・引き算・実数倍だけで証明できるようになる.

本章では,まずベクトルの基本演算(相等・加法・減法・実数倍)を矢印の図で導入し,次にそれを成分(座標のような数の組)で表す方法を学ぶ.続いて,2つのベクトルの「かけ算」にあたる内積(inner product)を導入し,それを使って直線・平面・球面の方程式をベクトルの言葉で書き直す.最後に,共線・共点・共面という図形的な性質をベクトルの式だけで判定する方法を学ぶ.ここで学ぶ「線形独立な2つ(または3つ)のベクトルで,任意のベクトルがただ1通りに表せる」という考え方は,大学で学ぶ線形代数の基底(basis)や次元(dimension)という概念の直接の原型であり,物理学における力の合成・分解や,材料科学における結晶格子の基本ベクトルにもそのままつながっていく.

この章で学ぶこと
  • ベクトルの相等・加法・減法・実数倍と,それらが満たす交換法則・結合法則・分配法則
  • ベクトルの平行条件,単位ベクトル,線形独立(一次独立)という考え方と,任意のベクトルをただ1通りに分解できるという基本定理
  • ベクトルの成分表示(平面・空間)と,内分点・外分点の位置ベクトルの公式
  • 内積の定義 $\vec a\cdot\vec b=|\vec a||\vec b|\cos\theta$ と,その性質・成分表示・垂直条件
  • 直線のベクトル方程式,法線ベクトルを用いた直線・平面の方程式,球面の方程式
  • 共線条件・共点条件・共面条件と,内積を使った三角形の面積の公式
前提:中学数学の図形(三角形の合同・相似,平行線の性質)と,第4章:図形と方程式で学んだ座標平面の基本.三角比(第3章)も内積の定義で使う.
もとにしたノート:望月泰英『数学ノート 高校数学』 pp. 23–31.

7.1 ベクトルの演算——相等・加法・減法・実数倍

「東へ3km歩く」と「北へ3km歩く」は,歩いた距離(大きさ)はどちらも3kmで同じだが,歩いた方向はまったく違う.この「大きさ」と「向き」の両方を持つ量をベクトル(vector)といい,$\vec a,\ \vec b$ のように文字の上に矢印を付けて表す.図では,向きを矢印の向きで,大きさを矢印の長さで表す.ベクトル $\vec a$ の大きさは $|\vec a|$ と書く.これに対して,向きを持たず大きさだけで決まる量(長さ・質量・温度など)をスカラー(scalar,実数のこと)という.

矢印の始点を$A$,終点を$B$とするベクトルを $\vec{AB}$ と書くこともある.このとき $\vec{AB}$ の大きさ $|\vec{AB}|$ は,2点$A,B$間の距離に等しい.重要なのは,ベクトルは大きさと向きだけで決まり,矢印をどこから描き始めても構わないという点である.同じ大きさ・同じ向きを持つ矢印は,出発点がどこであっても同じ1つのベクトルを表す.

定義7.1 ベクトルの相等

2つのベクトル $\vec a$ と $\vec b$ の「向き」と「大きさ」がともに等しいとき,$\vec a$ と $\vec b$ は等しいといい,$\vec a=\vec b$ と表す.

ベクトルの相等 a b
図7.1 向きと大きさが等しい2つのベクトル $\vec a$,$\vec b$.出発点の位置は違っても,同じ向き・同じ大きさなら同じベクトルである.

7.1.1 ベクトルの加法

2つのベクトル $\vec a,\vec b$ の和 $\vec a+\vec b$ は,次のように作る(三角形の法則).$\vec a=\vec{OA}$ となるように矢印を描き,続けてその終点$A$から $\vec b$ と同じ向き・大きさの矢印 $\vec{AB}$ を描く.このとき,出発点$O$から終点$B$へ向かう矢印 $\vec{OB}$ が和 $\vec a+\vec b$ である.

ベクトルの加法(三角形の法則) O a A b B a+b
図7.2 ベクトルの加法(三角形の法則).$\vec{OA}=\vec a$,$\vec{AB}=\vec b$ のとき,$\vec{OB}=\vec a+\vec b$ である.

定理7.1 ベクトルの加法の性質

ベクトルの加法について,次の法則が成り立つ.

(Ⅰ) 交換法則  $\vec a+\vec b=\vec b+\vec a$

(Ⅱ) 結合法則  $(\vec a+\vec b)+\vec c=\vec a+(\vec b+\vec c)$

イメージ:なぜ交換法則が成り立つのか

三角形の法則で $\vec a+\vec b$ と $\vec b+\vec a$ をそれぞれ描くと,どちらも同じ平行四辺形の対角線になる.$O$ から $\vec a$ で$A$へ,$A$から$\vec b$で$B$へ進む経路($\vec a+\vec b$)と,$O$から$\vec b$で$A'$へ,$A'$から$\vec a$で$B$へ進む経路($\vec b+\vec a$)は,どちらも同じ点$O$から同じ点$B$へ到達する.出発点と終点が一致すれば同じベクトルになる(定義7.1)から,$\vec a+\vec b=\vec b+\vec a$ である.結合法則も同様に,3本の矢印を順につないだときの「出発点から終点まで」が,途中でどうグループ分けしても変わらないことからわかる.

7.1.2 零ベクトルと逆ベクトル

始点と終点が一致する(動かない)ベクトルを考えると都合がよい.これを零ベクトルという.

定義7.2 零ベクトルと逆ベクトル

大きさが$0$のベクトルを零ベクトル(zero vector)といい,$\vec 0$ と表す.零ベクトルは向きを考えない.また,あるベクトル $\vec a$ に対して,$\vec a$ と大きさが等しく向きが反対のベクトルを $\vec a$ の逆ベクトル(inverse vector)といい,$-\vec a$ と表す.

定理7.2 零ベクトル・逆ベクトルの性質

(Ⅰ) $\vec a+(-\vec a)=\vec 0$

(Ⅱ) $\vec a+\vec 0=\vec a$

(Ⅰ)は,三角形の法則で $\vec a=\vec{OA}$,続けて$-\vec a=\vec{AO}$($A$から$O$へ戻る矢印)をつなぐと,出発点と終点がともに$O$になる,すなわち大きさ$0$のベクトルになることからわかる.(Ⅱ)は,動かない矢印 $\vec 0$ を付け加えても始点・終点は変わらないことからわかる.

逆ベクトルを使うと,ベクトルの減法(引き算)を,加法の言葉だけで定義できる:$\vec a-\vec b:=\vec a+(-\vec b)$.図でいえば,$\vec a=\vec{OA}$,$\vec b=\vec{OB}$ と同じ始点$O$から描いたとき,$\vec a-\vec b=\vec{BA}$($B$から$A$へ向かう矢印)になる.実際,三角形の法則を$B$を経由する形で読むと,$\vec{OB}+\vec{BA}=\vec{OA}$,すなわち $\vec b+\vec{BA}=\vec a$ となり,両辺から $\vec b$ の逆ベクトルを加えれば $\vec{BA}=\vec a-\vec b$ が得られる.

7.1.3 ベクトルの実数倍

ベクトル $\vec a$ を$k$倍する($k$は実数)とは,$k\gt0$ なら $\vec a$ と同じ向きで大きさを$k$倍にしたベクトル,$k\lt0$ なら $\vec a$ と反対の向きで大きさを$|k|$倍にしたベクトル,$k=0$ なら零ベクトル $\vec 0$ を表すと約束する.これを $k\vec a$ と書く.

定理7.3 ベクトルの実数倍の性質

$k,l$を実数とするとき,次の3つの法則が成り立つ.

(Ⅰ) 結合法則  $k(l\vec a)=(kl)\vec a$

(Ⅱ) 分配法則  $(k+l)\vec a=k\vec a+l\vec a$

(Ⅲ) 分配法則  $k(\vec a+\vec b)=k\vec a+k\vec b$

(Ⅰ)は「$\vec a$を$l$倍してからさらに$k$倍する」ことと「$\vec a$を最初から$kl$倍する」ことが,向き・大きさのどちらで見ても一致することからわかる.(Ⅱ)(Ⅲ)は,向きが同じ場合には長さの分配法則 $(k+l)|\vec a|=k|\vec a|+l|\vec a|$ そのものであり,向きが反転する場合も符号を追えば同様に確かめられる.

応用:力の合成とベクトル

物理で2つの力 $\vec F_1,\vec F_2$ が同時にはたらくとき,合力は加法そのままの $\vec F_1+\vec F_2$ で求められる(力の平行四辺形の法則は,ここで学んだ三角形の法則を裏返しただけである).また,ある力を$k$倍にする(同じ向きで強さだけ変える)操作は,実数倍 $k\vec F$ に対応する.高校物理の「力の分解」は,7.2節で学ぶベクトルの分解(1つの力を2方向の成分に分ける操作)にほかならない.

例題7.1 ベクトルの相等と平行四辺形

四角形$ABCD$において,$\vec{AB}=\vec{DC}$ が成り立つとき,この四角形は平行四辺形であることを示せ.

解答 点$O$を基準にとり,$A,B,C,D$の位置ベクトルをそれぞれ $\vec{OA},\vec{OB},\vec{OC},\vec{OD}$ とする.仮定 $\vec{AB}=\vec{DC}$ を位置ベクトルで書き直すと,

$$ \vec{OB}-\vec{OA}=\vec{OC}-\vec{OD} $$

($\vec{AB}=\vec{OB}-\vec{OA}$,$\vec{DC}=\vec{OC}-\vec{OD}$ は,7.1.2節で確認した減法の性質そのものである).これを$\vec{OC}$について整理すると,

$$ \vec{OC}=\vec{OD}+\vec{OB}-\vec{OA} $$

を得る.ここで,四角形の残りの対辺 $\vec{BC}$ と $\vec{AD}$ を比べる.

$$ \vec{BC}=\vec{OC}-\vec{OB}=(\vec{OD}+\vec{OB}-\vec{OA})-\vec{OB}=\vec{OD}-\vec{OA}=\vec{AD} $$

(1つ目の等号は減法の定義,2つ目の等号は上で求めた$\vec{OC}$を代入,3つ目の等号は$+\vec{OB}-\vec{OB}$が消えることによる).したがって $\vec{BC}=\vec{AD}$,すなわちもう一方の対辺も向き・大きさの等しいベクトルになっている.2組の対辺がそれぞれ平行かつ等しい($\vec{AB}=\vec{DC}$ と $\vec{AD}=\vec{BC}$)ので,四角形$ABCD$は平行四辺形である.

7.2 平行条件・単位ベクトルと線形独立

7.2.1 ベクトルの平行条件

定義7.3 ベクトルの平行

$\vec 0$でない2つのベクトル $\vec a,\vec b$ の向きが同じであるか,または反対であるとき,$\vec a$ と $\vec b$ は平行(parallel)であるといい,$\vec a\parallel\vec b$ と表す.

平行なベクトル(同じ向き・反対向き) a 1.6a(同じ向き) −a(反対向き)
図7.3 ベクトル $\vec a$ と平行なベクトルの例.同じ向きに $k\gt0$ 倍したもの(中段)も,反対向きの $-\vec a$(下段)も,すべて $\vec a$ と平行である.

ベクトルの実数倍の定義(7.1.3節)から,ただちに次の必要十分条件が得られる.$k\gt0$ なら $k\vec a$ は $\vec a$ と同じ向きで平行,$k\lt0$ なら反対向きで平行になるからである.

定理7.4 ベクトルの平行条件

$\vec a\ne\vec 0$,$\vec b\ne\vec 0$ のとき,

$$ \vec a\parallel\vec b \iff \vec a=k\vec b\ \text{となる実数}\ k\ \text{がある.} $$

7.2.2 単位ベクトル

定義7.4 単位ベクトル

大きさが$1$であるベクトルを単位ベクトル(unit vector)という.

任意のベクトル $\vec a\ (\ne\vec 0)$ と平行で大きさが$1$である単位ベクトルは,$\pm\dfrac{\vec a}{|\vec a|}$ である.実際,$\dfrac{\vec a}{|\vec a|}$ は $\vec a$ を実数 $\dfrac1{|\vec a|}\ (\gt0)$ 倍したベクトルだから,$\vec a$ と同じ向きで,大きさは $|\vec a|\times\dfrac1{|\vec a|}=1$ になる.符号を反転させた $-\dfrac{\vec a}{|\vec a|}$ は,向きだけが反対の,もう1つの単位ベクトルである.

7.2.3 ベクトルの分解と線形独立

平面上で,向きの違う2本の矢印があれば,どんな矢印も「その2本を何倍かして足し合わせる」ことで作れる——これが本節の主定理である.まず,「向きが違う」という条件を正確に述べる言葉を用意する.

定義7.5 ベクトルの一次独立(線形独立)

(Ⅰ) 平面において,2つのベクトル $\vec a,\vec b$ が,ともに $\vec 0$ でなく,かつ平行でないとき,$\vec a,\vec b$ は一次独立(線形独立,linearly independent)であるという.

(Ⅱ) 空間において,3つのベクトル $\vec a,\vec b,\vec c$ が,ともに $\vec 0$ でなく,かつ同じ平面上にないとき,$\vec a,\vec b,\vec c$ は一次独立であるという.

イメージ:なぜ「線形独立」と呼ぶのか

「一次独立」という名前は,「どの1本も,残りのベクトルの実数倍の組み合わせ(一次結合)だけでは作れない」という意味である.平面の場合,$\vec a$ と $\vec b$ が平行だと,$\vec b=k\vec a$ と書けてしまい,$\vec b$ は$\vec a$の「言い換え」にすぎず,2本合わせても表せる方向は1本分の直線上に限られる.平行でなければ,$\vec a$ 方向と$\vec b$ 方向は互いに他方の実数倍では届かない「独立」な2方向になり,平面全体を覆うことができる.この「独立な方向の組」という考え方は,大学の線形代数で基底(basis)と呼ばれる概念にそのまま発展する.

定理7.5 平面・空間ベクトルの基本定理(分解の一意性)

(Ⅰ) 平面において,$\vec a,\vec b$ が一次独立であるとする.このとき,任意のベクトル $\vec p$ は,次の形にただ1通りに表すことができる.

$$ \vec p=s\vec a+t\vec b \qquad(\text{ただし}\ s,t\ \text{は実数}) $$

(Ⅱ) 空間において,$\vec a,\vec b,\vec c$ が一次独立であるとする.このとき,任意のベクトル $\vec p$ は,次の形にただ1通りに表すことができる.

$$ \vec p=s\vec a+t\vec b+u\vec c \qquad(\text{ただし}\ s,t,u\ \text{は実数}) $$
ベクトルの分解 p=sa+tb a b sa tb p=sa+tb O
図7.4 一次独立な2つのベクトル $\vec a,\vec b$ による分解.$\vec p$ は,$s\vec a$ と $t\vec b$ を2辺とする平行四辺形の対角線として,ただ1通りに表される.

イメージ:分解がただ1通りしかないのはなぜか

もし $\vec p=s\vec a+t\vec b=s'\vec a+t'\vec b$ という2通りの表し方があったとすると,$(s-s')\vec a=(t'-t)\vec b$ となる.もし $s\ne s'$ なら,両辺を$(s-s')$で割って $\vec a=\dfrac{t'-t}{s-s'}\vec b$ となり,$\vec a$ と $\vec b$ が平行であることになってしまう.これは$\vec a,\vec b$が一次独立である(平行でない)という仮定に反する.したがって $s=s'$ でなければならず,このとき $(t'-t)\vec b=\vec 0$ で $\vec b\ne\vec 0$ だから $t=t'$ となる.こうして,表し方は1通りしかないことがわかる.空間の場合($\vec a,\vec b,\vec c$)も,同じ平面上にないという仮定を使って同様に示せる.

例題7.2 一次独立性を用いた平行の判定

$\vec a,\vec b$ を一次独立なベクトルとする.$\vec{OP}=2\vec a+3\vec b$,$\vec{OQ}=4\vec a+6\vec b$ であるとき,3点$O,P,Q$は一直線上にあることを示せ.

解答 $\vec{OQ}$ を $\vec{OP}$ を使って表せないか調べる.

$$ \vec{OQ}=4\vec a+6\vec b=2(2\vec a+3\vec b)=2\,\vec{OP} $$

(係数を比べると,$4=2\times2$,$6=2\times3$ となっており,$\vec{OQ}$の係数の組$(4,6)$が$\vec{OP}$の係数の組$(2,3)$のちょうど2倍になっていることに気づけば,このくくり出しは自然に見つかる.$\vec a,\vec b$ が一次独立であることから,$2\vec a+3\vec b$ という表し方は$\vec{OP}$ただ1つに対応し,このくくり出しは定理7.5により一意に決まる).よって $\vec{OQ}=2\vec{OP}$ である.これは $\vec{OQ}$ が $\vec{OP}$ の実数倍になっていることを意味するから,定理7.4より $\vec{OQ}\parallel\vec{OP}$ である.$\vec{OP}$ と $\vec{OQ}$ はともに点$O$を始点とする平行なベクトルだから,$O,P,Q$は一直線上にある.

7.3 ベクトルの成分表示と内分点・外分点

7.3.1 ベクトルの成分(平面)

座標平面上の原点を$O$とし,ベクトル $\vec a$ に対して $\vec a=\vec{OA}$ となるように点$A$をとり,$A(x_1,y_1)$ とする.ここで,$x$軸上の点$E(1,0)$,$y$軸上の点$F(0,1)$をとり,$\vec{OE}=\vec e_x$,$\vec{OF}=\vec e_y$ とする.$\vec e_x,\vec e_y$ はどちらも大きさ$1$のベクトル(単位ベクトル)であり,かつ平行ではないから,7.2.3節の定理7.5(一次独立なベクトルによる分解)が使える基底になっている.

ベクトルの成分(平面) x y ex ey A(x1,y1) O E F X Y
図7.5 ベクトルの成分(平面).点$A$から$x$軸・$y$軸へそれぞれ垂線$AX,AY$を下ろすと,$\vec{OA}=\vec{OX}+\vec{OY}=x_1\vec e_x+y_1\vec e_y$ となる.

点$A$から$x$軸,$y$軸にそれぞれ垂線$AX,AY$を下ろすと,三角形の法則(7.1.1節)から $\vec{OA}=\vec{OX}+\vec{OY}$ が成り立つ.ここで,$X$は$x$軸上で$O$から$x_1$($X$の座標)だけ離れた点だから $\vec{OX}=x_1\vec e_x$ であり,同様に $\vec{OY}=y_1\vec e_y$ である.したがって,

$$ \vec{OA}=x_1\vec e_x+y_1\vec e_y $$

の形にただ1通りに表すことができる(一次独立な$\vec e_x,\vec e_y$による分解の一意性は,まさに定理7.5そのものである).

定義7.6 ベクトルの成分

(Ⅰ) 平面の場合:上のように $\vec{OA}=x_1\vec e_x+y_1\vec e_y$ と表すとき,実数の組$(x_1,y_1)$を$\vec{OA}$の成分(component)といい,$\vec{OA}=(x_1,y_1)$ と表す.$x_1$を$x$成分,$y_1$を$y$成分という.$\vec e_x,\vec e_y$を座標軸に関する基本ベクトル(standard basis vector)という.

(Ⅱ) 空間の場合:空間でも同様に,原点を$O$,点$A(x_1,y_1,z_1)$とし,$x$軸,$y$軸,$z$軸の基本ベクトルを$\vec e_x,\vec e_y,\vec e_z$とすると,

$$ \vec{OA}=x_1\vec e_x+y_1\vec e_y+z_1\vec e_z=(x_1,y_1,z_1) $$

と表すことができる.

注意:成分表示は座標ではない

成分表示$(x_1,y_1)$は,見た目は点の座標$(x_1,y_1)$と同じ記号だが,座標そのものではない.ベクトルは「向きと大きさ」だけで決まり,どこを始点にしてもよいからである.ただし,始点が原点$O$のときに限り,終点の座標とベクトルの成分がたまたま同じ数の組になる.例えば $\vec{AB}$(始点が原点でない)の成分は,$B$の座標そのものではなく,$\vec{AB}=\vec{OB}-\vec{OA}$(後出の公式7.2)によって計算しなければならない.

7.3.2 内分点・外分点の位置ベクトル

点$A,B$の位置ベクトルをそれぞれ $\vec a=\vec{OA}$,$\vec b=\vec{OB}$ とする(原点$O$を基準に,点の位置をベクトルで表したものを位置ベクトル(position vector)という).線分$AB$を$m:n$に内分する点を$P$とすると,$\vec{AP}=\dfrac{m}{m+n}\vec{AB}$ が成り立つ(これは中学以来の内分点の考え方を,そのままベクトルの言葉に置き換えただけである).したがって,

$$ \vec{OP}=\vec{OA}+\vec{AP}=\vec a+\frac{m}{m+n}(\vec b-\vec a)=\frac{(m+n)\vec a-m\vec a+m\vec b}{m+n}=\frac{n\vec a+m\vec b}{m+n} $$

(最後の変形は,分子を$(m+n)\vec a-m\vec a+m\vec b=(m+n-m)\vec a+m\vec b=n\vec a+m\vec b$ とまとめ直しただけである).外分点についても同様に,$\vec{AP}=\dfrac{m}{m-n}\vec{AB}$($m\ne n$)から出発して整理すると,

$$ \vec{OP}=\vec a+\frac{m}{m-n}(\vec b-\vec a)=\frac{(m-n)\vec a-m\vec a+m\vec b}{m-n}=\frac{-n\vec a+m\vec b}{m-n} $$

が得られる.

公式7.1 内分点・外分点の位置ベクトル

線分$AB$を$m:n$に内分する点の位置ベクトルは $\dfrac{n\vec a+m\vec b}{m+n}$

線分$AB$を$m:n$に外分する点の位置ベクトルは $\dfrac{-n\vec a+m\vec b}{m-n}\quad(m\ne n)$

内分点と外分点 A P(内分) B P'(外分) m n m n
図7.6 線分$AB$を$m:n$に内分する点$P$と,外分する点$P'$($m\gt n$の場合,$P'$は$B$のさらに外側にできる).

7.3.3 成分によるベクトル演算

ベクトルが成分で与えられているときは,加法・実数倍を成分ごとの計算に置き換えられる.$\vec a=(a_1,a_2)$,$\vec b=(b_1,b_2)$ とするとき,次の式が成り立つ.

公式7.2 成分によるベクトル演算

平面の場合,$\vec a=(a_1,a_2)$,$\vec b=(b_1,b_2)$ とするとき,

(Ⅰ) $\vec a+\vec b=(a_1+b_1,\ a_2+b_2)$

(Ⅱ) $k\vec a=(ka_1,ka_2)$ (ただし,$k$は実数)

空間において,$\vec c=(c_1,c_2,c_3)$,$\vec d=(d_1,d_2,d_3)$ とするとき,

(Ⅲ) $\vec c+\vec d=(c_1+d_1,\ c_2+d_2,\ c_3+d_3)$

(Ⅳ) $k\vec c=(kc_1,kc_2,kc_3)$ (ただし,$k$は実数)

これらは,$\vec a=a_1\vec e_x+a_2\vec e_y$,$\vec b=b_1\vec e_x+b_2\vec e_y$ を代入し,定理7.1・定理7.3の分配法則を使って整理すれば,そのまま出てくる(例えば $\vec a+\vec b=(a_1\vec e_x+a_2\vec e_y)+(b_1\vec e_x+b_2\vec e_y)=(a_1+b_1)\vec e_x+(a_2+b_2)\vec e_y$).また,$2$点$A(x_1,y_1),B(x_2,y_2)$を結ぶベクトルは,$\vec{AB}=\vec{OB}-\vec{OA}=(x_2-x_1,\ y_2-y_1)$ であり,その大きさは三平方の定理から $|\vec{AB}|=\sqrt{(x_2-x_1)^2+(y_2-y_1)^2}$ となる(これは第4章で学んだ2点間の距離の公式そのものである).

例題7.3 成分表示と内分点・外分点

$2$点 $A(2,-1)$,$B(5,3)$ について,(a) $\vec{AB}$ の成分と大きさ,(b) 線分$AB$を$2:1$に内分する点,(c) 線分$AB$を$2:1$に外分する点を求めよ.

解答 (a) 公式7.2の考え方から,

$$ \vec{AB}=(5-2,\ 3-(-1))=(3,4),\qquad |\vec{AB}|=\sqrt{3^2+4^2}=\sqrt{25}=5 $$

(b) 公式7.1で$m=2,n=1$とすると,内分点の位置ベクトルは $\dfrac{1\cdot\vec a+2\cdot\vec b}{3}$ である.成分で計算すると,

$$ \frac{(2,-1)+2(5,3)}{3}=\frac{(2+10,\ -1+6)}{3}=\frac{(12,5)}{3}=\left(4,\ \frac53\right) $$

($2(5,3)=(10,6)$ は公式7.2(Ⅱ)による実数倍,分子の和は公式7.2(Ⅰ)による加法である).よって内分点は $\left(4,\dfrac53\right)$.

(c) 公式7.1で外分($m=2,n=1$)は $\dfrac{-1\cdot\vec a+2\cdot\vec b}{2-1}=-\vec a+2\vec b$ である.

$$ -(2,-1)+2(5,3)=(-2,1)+(10,6)=(8,7) $$

よって外分点は $(8,7)$.

7.4 ベクトルの内積

7.4.1 内積の定義

ベクトルの加法・実数倍は,答えがまたベクトルになる演算だった.ここでは,2つのベクトルから1つの実数(スカラー)を作る新しい演算を導入する.物理で「した仕事」を求めるとき,力$\vec F$と変位$\vec s$が同じ向きなら仕事は$|\vec F||\vec s|$だが,ずれた向きにはたらく力は,変位方向に射影した分だけしか仕事をしない.この「向きのずれを$\cos$で割り引く」という考え方を,ベクトル一般に対する演算として定式化したものが内積である.

定義7.7 ベクトルの内積

2つのベクトル $\vec a,\vec b$ は$\vec 0$でないとする.$\vec a$と$\vec b$の成す角を$\theta$とする($0^\circ\le\theta\le180^\circ$).このとき,$\vec a$と$\vec b$の内積(inner product,スカラー積とも呼ぶ)を

$$ \vec a\cdot\vec b=|\vec a||\vec b|\cos\theta $$

と定義する.($\vec a$または$\vec b$が$\vec 0$のときは,$\vec a\cdot\vec b=0$と約束する.)

内積の図(正射影) O a b θ |b|cosθ
図7.7 内積の図形的な意味.$|\vec b|\cos\theta$ は,$\vec b$ を $\vec a$ の方向に正射影した長さ($\theta$が鈍角なら負の値)であり,内積 $\vec a\cdot\vec b=|\vec a|\times(\vec b\text{の}\vec a\text{方向への正射影の長さ})$ と読み直せる.

7.4.2 ベクトルの垂直と内積

$\theta=90^\circ$のとき,$\cos90^\circ=0$だから内積は$0$になる.逆に,$\vec a,\vec b$がともに$\vec 0$でなければ,$|\vec a||\vec b|\ne0$なので,内積が$0$になるのは$\cos\theta=0$,すなわち$\theta=90^\circ$のときに限る.

定理7.6 ベクトルの垂直と内積

$\vec a\ne\vec 0$,$\vec b\ne\vec 0$ のとき,

$$ \vec a\cdot\vec b=0 \iff \vec a\perp\vec b $$

7.4.3 内積の成分表示

内積の定義には角$\theta$が入っていて,成分だけからは直接計算しにくい.そこで,第3章で学んだ余弦定理を使って,内積を成分だけの式に書き直そう.$\vec a=(a_1,a_2)$,$\vec b=(b_1,b_2)$ とし,$O(0,0)$を始点として$\vec{OA}=\vec a$,$\vec{OB}=\vec b$ となる点$A(a_1,a_2)$,$B(b_1,b_2)$をとる.三角形$OAB$に余弦定理を適用すると,

$$ |AB|^2=|OA|^2+|OB|^2-2|OA||OB|\cos\theta=|\vec a|^2+|\vec b|^2-2\,\vec a\cdot\vec b $$

(最後の等号は,定義7.7 $\vec a\cdot\vec b=|\vec a||\vec b|\cos\theta$ をそのまま代入しただけである).一方,$|AB|^2$は2点間の距離の公式(7.3.3節)から成分でも計算できる.

$$ |AB|^2=(a_1-b_1)^2+(a_2-b_2)^2=a_1^2-2a_1b_1+b_1^2+a_2^2-2a_2b_2+b_2^2=|\vec a|^2+|\vec b|^2-2(a_1b_1+a_2b_2) $$

($|\vec a|^2=a_1^2+a_2^2$,$|\vec b|^2=b_1^2+b_2^2$ を使ってまとめ直した).2通りに計算した$|AB|^2$を比べると,$|\vec a|^2+|\vec b|^2-2\,\vec a\cdot\vec b=|\vec a|^2+|\vec b|^2-2(a_1b_1+a_2b_2)$ となり,両辺から$|\vec a|^2+|\vec b|^2$を引いて$-2$で割れば,次の公式が得られる.

公式7.3 内積の成分表示

(Ⅰ) 平面の場合:$\vec a=(a_1,a_2)$,$\vec b=(b_1,b_2)$ のとき, $\vec a\cdot\vec b=a_1b_1+a_2b_2$

(Ⅱ) 空間の場合:$\vec a=(a_1,a_2,a_3)$,$\vec b=(b_1,b_2,b_3)$ のとき, $\vec a\cdot\vec b=a_1b_1+a_2b_2+a_3b_3$

7.4.4 内積の性質

定理7.7 ベクトルの内積の性質

ベクトルの内積について,次の法則が成り立つ.ただし,$\vec a\ne\vec 0$,$\vec b\ne\vec 0$,$\vec c\ne\vec 0$ とする(定義7.7の約束「$\vec 0$を含む内積は$0$」により,実際にはこれらのベクトルのいずれかが$\vec 0$のときも成り立つ).

(Ⅰ) $\vec a\cdot\vec b=\vec b\cdot\vec a$

(Ⅱ) $(\vec a+\vec b)\cdot\vec c=\vec a\cdot\vec c+\vec b\cdot\vec c$

(Ⅲ) $(k\vec a)\cdot\vec b=\vec a\cdot(k\vec b)=k(\vec a\cdot\vec b)$

(Ⅳ) $\vec a\cdot\vec a=|\vec a|^2$  ($\because$ 成す角$\theta=0^\circ$ で $\cos\theta=1$)

証明の方針:成分をおいて計算する

(Ⅰ)〜(Ⅲ)は,定義から直接角度を使って証明するより,公式7.3でベクトルの成分をおいて計算するほうが見通しがよい.平面の場合で確かめる.$\vec a=(a_1,a_2)$,$\vec b=(b_1,b_2)$,$\vec c=(c_1,c_2)$ とする.

(Ⅰ) $\vec a\cdot\vec b=a_1b_1+a_2b_2=b_1a_1+b_2a_2=\vec b\cdot\vec a$(実数の積の交換法則 $a_1b_1=b_1a_1$ などを使っただけ).

(Ⅱ) $\vec a+\vec b=(a_1+b_1,a_2+b_2)$(公式7.2)なので,

$$ (\vec a+\vec b)\cdot\vec c=(a_1+b_1)c_1+(a_2+b_2)c_2=(a_1c_1+a_2c_2)+(b_1c_1+b_2c_2)=\vec a\cdot\vec c+\vec b\cdot\vec c $$

(実数の分配法則で展開してから,$\vec a\cdot\vec c$の形と$\vec b\cdot\vec c$の形にまとめ直した).

(Ⅲ) $k\vec a=(ka_1,ka_2)$ なので,$(k\vec a)\cdot\vec b=ka_1b_1+ka_2b_2=k(a_1b_1+a_2b_2)=k(\vec a\cdot\vec b)$.$\vec a\cdot(k\vec b)$も同様に計算すれば同じ式になる.

(Ⅳ)は定義7.7に$\vec b=\vec a$,$\theta=0^\circ$を代入すればよい($\vec a$と$\vec a$自身の成す角は$0^\circ$であり,$\cos0^\circ=1$だから $\vec a\cdot\vec a=|\vec a||\vec a|\cdot1=|\vec a|^2$).空間の場合も,成分が1つ増えるだけで同じ計算で示せる.

(証明終わり)

例題7.4 内積となす角

$\vec a=(1,\sqrt3)$,$\vec b=(\sqrt3,1)$ とする.$\vec a\cdot\vec b$,$|\vec a|$,$|\vec b|$を求め,$\vec a$と$\vec b$の成す角$\theta$を求めよ.

解答 公式7.3(Ⅰ)より,

$$ \vec a\cdot\vec b=1\cdot\sqrt3+\sqrt3\cdot1=2\sqrt3 $$

大きさは,定理7.7(Ⅳ)($|\vec a|^2=\vec a\cdot\vec a$)を使って,

$$ |\vec a|=\sqrt{1^2+(\sqrt3)^2}=\sqrt{1+3}=\sqrt4=2,\qquad |\vec b|=\sqrt{(\sqrt3)^2+1^2}=\sqrt{3+1}=2 $$

定義7.7 $\vec a\cdot\vec b=|\vec a||\vec b|\cos\theta$ を$\cos\theta$について解くと,

$$ \cos\theta=\frac{\vec a\cdot\vec b}{|\vec a||\vec b|}=\frac{2\sqrt3}{2\times2}=\frac{\sqrt3}{2} $$

$0^\circ\le\theta\le180^\circ$の範囲で$\cos\theta=\dfrac{\sqrt3}{2}$を満たすのは$\theta=30^\circ$である.

7.5 直線のベクトル方程式と法線ベクトル(平面図形)

7.5.1 直線のベクトル方程式

これまで,直線の方程式は $y=ax+b$ という形で表してきた.ここでは,ベクトルを使って直線を表す方法を学ぶ.

イメージ:ベクトルは「点」である

原点$O$を基準に考えると,平面上の点$P$と,位置ベクトル$\vec{OP}$は1対1に対応する.つまり,「点$P$が動く」ことと「ベクトル$\vec{OP}$が変化する」ことは,同じ現象の2つの言い方にすぎない.この視点に立つと,「点の集まりとしての直線」を,「ベクトルが満たす方程式」として書き直せる.

あるベクトル $\vec a=(\alpha,\beta)$($\vec 0$でない)があるとする.また,$t$をすべての実数とし,動く点$(x,y)$を表すベクトルを $t\vec a=(t\alpha,t\beta)=(x,y)$ とおく.

原点を通る直線のベクトル方程式 x y a=(α,β) O ta(tを動かす) α β
図7.8 原点を通り,方向ベクトル $\vec a=(\alpha,\beta)$ に平行な直線.$t$をすべての実数として動かすと,点$(x,y)=t\vec a$ はこの直線全体を掃く.直線上の小さな直角三角形は,底辺$\alpha$・高さ$\beta$の内訳(傾き$\beta/\alpha$の由来)を表す.

成分で比べると,

$$ \begin{cases} x=\alpha t \\ y=\beta t \end{cases} $$

である.$\alpha\ne0$なら第1式から$t=\dfrac{x}{\alpha}$なので,これを第2式に代入して,

$$ y=\beta\cdot\frac{x}{\alpha}=\frac{\beta}{\alpha}x $$

となる.これは原点を通り,傾き$\dfrac{\beta}{\alpha}$の直線の方程式($y=ax+b$の$b=0$の場合)にほかならない.つまり,$(x,y)=t\vec a$ は直線のベクトル方程式である.

次に,原点を通るとは限らない一般の直線を考える.点$A(\alpha,\beta)$,点$P(p,q)$とし,点$P$を通り$\vec a=\vec{PA}=(\alpha,\beta)$に平行な直線を考える.

点Pを通る直線のベクトル方程式 OP a=PA=(α,β) O P(p,q) α β
図7.9 点$P(p,q)$を通り,方向ベクトル$\vec a=\vec{PA}=(\alpha,\beta)$に平行な直線.動く点を$\vec{OP}+t\vec a$とすると,$t$を実数全体で動かしたときにこの直線全体を掃く.直線上の小さな直角三角形は,底辺$\alpha$・高さ$\beta$の内訳を表す.

動く点を$(x,y)$とすると,三角形の法則(7.1.1節)から,

$$ (x,y)=\vec{OP}+t\vec{PA}=(p+t\alpha,\ q+t\beta) $$

すなわち,

$$ \begin{cases} x=\alpha t+p \\ y=\beta t+q \end{cases} $$

となる.第1式から$t=\dfrac{x-p}{\alpha}$($\alpha\ne0$)なので,これを第2式$y=\beta t+q$に代入すると,

$$ y=\beta\cdot\frac{x-p}{\alpha}+q,\qquad\text{すなわち}\qquad y-q=\frac{\beta}{\alpha}(x-p) $$

となり,確かに傾きが$\dfrac{\beta}{\alpha}$で点$P(p,q)$を通る直線になっている(これは中学以来おなじみの「点$(p,q)$を通り傾き$m$の直線」$y-q=m(x-p)$の公式と一致する).

公式7.4 直線のベクトル方程式

(Ⅰ) 原点を通り,方向ベクトル$\vec a\ (\ne\vec 0)$に平行な直線: $(x,y)=t\vec a$ ($t$は実数全体を動く)

(Ⅱ) 点$P(p,q)$を通り,方向ベクトル$\vec a=(\alpha,\beta)$に平行な直線: $(x,y)=\vec{OP}+t\vec a$

7.5.2 直線と法線ベクトル

直線に垂直なベクトルを使っても,直線の方程式を作ることができる.

定義7.8 法線ベクトル

直線$\ell$の方向ベクトル($\ell$上の異なる2点を結んでできるベクトル)に垂直な,$\vec 0$でないベクトルを,直線$\ell$の法線ベクトル(normal vector)という.(第4章の定義4.3で先取りして使った用語を,ここで改めて,本章で学んだ「垂直」=「内積が$0$」(定理7.6)という道具を使って正式に定義し直す.)

定点を$A(x_1,y_1)$,動点を$P(x,y)$とおく.$\vec{AP}$に垂直なベクトルを$\vec n=(a,b)$とおく.点$P$はある直線上を動く点とし,点$A$はその直線上にあるとする.

直線と法線ベクトル(平面) O A(x1,y1) P(x,y) n=(a,b)
図7.10 原点$O$と,直線上の点$A,P$,直線に垂直な法線ベクトル$\vec n=(a,b)$.$\vec{OA},\vec{OP}$(灰色)は,本文の式$\vec n\cdot(\vec{OP}-\vec{OA})=0$に対応する.直線上のどこから測っても,$\vec n$は直線に垂直である.

すると,定理7.6(垂直と内積)より $\vec n\cdot\vec{AP}=0$,すなわち $\vec n\cdot(\vec{OP}-\vec{OA})=0$ となり,成分で書くと

$$ a(x-x_1)+b(y-y_1)=0 $$

となる.この求めた直線の方程式が,点$A$と$P$がのっている直線である.

公式7.5 法線ベクトルによる直線の方程式

点$(x_1,y_1)$を通り,$\vec n=(a,b)$が法線ベクトルである直線の方程式は,

$$ a(x-x_1)+b(y-y_1)=0 $$

例題7.5 法線ベクトルから直線の方程式を求める

点$(1,2)$を通り,法線ベクトルが$\vec n=(3,-4)$である直線の方程式を求めよ.

解答 公式7.5に$x_1=1,y_1=2,a=3,b=-4$を代入すると,

$$ 3(x-1)-4(y-2)=0 $$

括弧を展開して整理すると($3(x-1)=3x-3$,$-4(y-2)=-4y+8$,これらを足して定数項$-3+8=5$にまとめる),

$$ 3x-3-4y+8=0 \quad\Longrightarrow\quad 3x-4y+5=0 $$

が求める直線の方程式である.

7.6 空間における平面・直線・球面の方程式

ここからは空間(3次元)のベクトルを扱う.成分は$(X,Y,Z)$のように丸括弧で表す(もとのノートでは角括弧$[X,Y,Z]$も使われているが,本書では平面のときと表記をそろえるため丸括弧に統一する).

7.6.1 平面と法線ベクトル

空間では,直線ではなく平面に垂直なベクトルを考える.ある平面上での定点を$A(x_1,y_1,z_1)$,動点を$P(x,y,z)$とおく.$\vec{AP}$に垂直なベクトルを$\vec n=(a,b,c)$とおく.点$P$はある平面上を動く点とする.

平面と法線ベクトル(空間) A(x1,y1,z1) P(x,y,z) n=(a,b,c)
図7.11 空間内の平面と,それに垂直な法線ベクトル$\vec n=(a,b,c)$.薄い赤の矢印は平面内のベクトル$\vec{AP}$を表す.平面は斜めから見た平行四辺形として描いている(実際には端のない無限に広がった面である).

すると,平面のときとまったく同じ議論により,$\vec n\cdot\vec{AP}=0$,すなわち$\vec n\cdot(\vec{OP}-\vec{OA})=0$となり,

$$ a(x-x_1)+b(y-y_1)+c(z-z_1)=0 $$

となる.

公式7.6 平面の方程式(法線ベクトル,空間)

点$(x_1,y_1,z_1)$を通り,$\vec n=(a,b,c)$が法線ベクトルである平面の方程式は,

$$ a(x-x_1)+b(y-y_1)+c(z-z_1)=0 $$

注意:$ax+by+cz+d=0$は空間での平面の方程式

公式7.6を展開して定数項をまとめると,$ax+by+cz+(-ax_1-by_1-cz_1)=0$の形になる.一般に,$x,y,z$の1次式 $ax+by+cz+d=0$($a,b,c$のうち少なくとも1つは$0$でない)は,空間内の平面を表す.平面上では直線が$ax+by+c=0$という1次式(第4章)で表せたのに対応して,空間では平面が1次式で表される——次元が1つ上がるごとに,変数が1つ増えるだけで同じ形の式になっている点に注目してほしい.

7.6.2 空間における直線の方程式

座標空間において,点$A(x_0,y_0,z_0)$を通り,方向ベクトル$\vec d=(X,Y,Z)$の直線のベクトル方程式は,動く点を表すベクトル$\vec P=(x,y,z)$を用いて,

$$ \vec P=\vec{OA}+t\vec d \qquad(\text{ただし,}\vec P=\vec{OP}\text{,}t\text{はパラメータ}) $$

と書ける($\vec d=(X,Y,Z)$は直線に平行なベクトルである).成分で書くと,

$$ \vec P=(Xt+x_0,\ Yt+y_0,\ Zt+z_0)=(x,y,z) $$

すなわち,

$$ \begin{cases} Xt+x_0=x \\ Yt+y_0=y \\ Zt+z_0=z \end{cases} $$

である.$X,Y,Z$がいずれも$0$でないとき,それぞれの式を$t=\cdots$の形に解くと,

$$ t=\frac{x-x_0}{X}=\frac{y-y_0}{Y}=\frac{z-z_0}{Z} $$

(3つの式がどれも同じ$t$を表しているので,右辺どうしを等号でつなげる).

公式7.7 空間における直線の方程式

点$(x_0,y_0,z_0)$を通り,方向ベクトル$\vec d=(X,Y,Z)$($X,Y,Z\ne0$)に平行な直線の方程式は,

$$ \frac{x-x_0}{X}=\frac{y-y_0}{Y}=\frac{z-z_0}{Z} $$

7.6.3 球面の方程式

座標空間において,点$A(x_0,y_0,z_0)$を中心とし,半径$r\ (\gt0)$の球面の方程式を求めよう.動く点を表すベクトル$\vec P$を用いると,球面は「中心$A$からの距離がつねに$r$である点の集まり」だから,

$$ |\vec P-\vec{OA}|=r $$

と表せる.ここで,$\vec P=(x,y,z)$とおくと,$\vec P-\vec{OA}=(x-x_0,\ y-y_0,\ z-z_0)$である.両辺を2乗すると(絶対値を含む方程式は,2乗すれば根号が消えて扱いやすくなる),

$$ |\vec P-\vec{OA}|^2=r^2 $$

となり,左辺をベクトルの大きさの成分表示(定理7.7(Ⅳ)と公式7.3を空間に拡張したもの)で書き直せば,

$$ (x-x_0)^2+(y-y_0)^2+(z-z_0)^2=r^2 $$

となる.

公式7.8 球面の方程式

点$(x_0,y_0,z_0)$を中心とし,半径$r$の球面の方程式は,

$$ (x-x_0)^2+(y-y_0)^2+(z-z_0)^2=r^2 $$

例題7.6 空間の直線・平面・球面の方程式

(a) 点$A(1,0,-2)$を通り,方向ベクトル$\vec d=(2,-1,3)$に平行な直線の方程式を求めよ.
(b) 点$(2,-1,3)$を通り,法線ベクトル$\vec n=(1,2,-2)$である平面の方程式を求めよ.
(c) 中心$(1,-2,3)$,半径$5$の球面の方程式を求めよ.

解答 (a) 公式7.7に$(x_0,y_0,z_0)=(1,0,-2)$,$(X,Y,Z)=(2,-1,3)$を代入して,

$$ \frac{x-1}{2}=\frac{y-0}{-1}=\frac{z-(-2)}{3},\qquad\text{すなわち}\qquad \frac{x-1}{2}=\frac{y}{-1}=\frac{z+2}{3} $$

(b) 公式7.6に$(x_1,y_1,z_1)=(2,-1,3)$,$(a,b,c)=(1,2,-2)$を代入すると,

$$ 1\cdot(x-2)+2\cdot(y-(-1))+(-2)\cdot(z-3)=0 $$

括弧を展開して整理する($x-2$,$2(y+1)=2y+2$,$-2(z-3)=-2z+6$を足し合わせ,定数項$-2+2+6=6$にまとめる)と,

$$ x-2+2y+2-2z+6=0 \quad\Longrightarrow\quad x+2y-2z+6=0 $$

(c) 公式7.8に中心$(x_0,y_0,z_0)=(1,-2,3)$,$r=5$を代入して,

$$ (x-1)^2+(y+2)^2+(z-3)^2=25 $$

7.7 共線・共点・共面条件と三角形の面積

7.7.1 直線のベクトル方程式(2点を通る形)

これまで学んだ直線のベクトル方程式を,定点と方向ベクトルの形,および異なる2点を通る形として改めてまとめる.

定理7.8 直線のベクトル方程式

① 定点$A$を通り,$\vec d\ (\ne\vec 0)$に平行な直線は,

$$ \vec{OP}=\vec{OA}+t\vec d $$

と表せる.

② 異なる2点$A,B$を通る直線は,

$$ \vec{OP}=(1-t)\vec{OA}+t\vec{OB} \quad\text{または}\quad \vec{OP}=s\vec{OA}+t\vec{OB}\ (s+t=1) $$

と表せる.ただし,$\vec{OP}$は動くベクトルである.

②は,①で方向ベクトルとして$\vec d=\vec{AB}=\vec{OB}-\vec{OA}$を採用すれば,$\vec{OP}=\vec{OA}+t(\vec{OB}-\vec{OA})=(1-t)\vec{OA}+t\vec{OB}$ となって得られる($s=1-t$とおけば$s+t=1$の形になる).なぜ$s+t=1$という条件が付くのか,図で確認しよう.

イメージ:なぜ$s+t=1$なのか

$\vec{OP}=s\vec{OA}+t\vec{OB}\ (s+t=1)$とする.$s=1,t=0$のとき$P=A$,$s=0,t=1$のとき$P=B$である.では,$s+t=2$になったらどうなるか——その答えを図で見る.

直線上の点とs,tの関係(s+t=1) O A (s=1,t=0) B (s=0,t=1) P' (s=-1,t=2)
図7.12 $\vec{OP}=s\vec{OA}+t\vec{OB}\ (s+t=1)$.$s,t$の値を変えると,$P$は直線$AB$上の点をすべて表す($s,t$が負になる部分も含めて,$A,B$の外側まで届く).
s+t=2のときに何が起こるか O A A'(2倍) B B'(2倍) (ベクトルの長さが2倍に!)
図7.13 原点$O$から$A,B$へ向かうベクトル$\vec{OA},\vec{OB}$をそれぞれ$2$倍に伸ばすと,先端は$A'(=2\vec{OA})$,$B'(=2\vec{OB})$になる.$A,B$を結ぶ直線(実線)と$A',B'$を結ぶ直線(破線)は同じ直線にはならず,平行にずれた別の直線になる.これは,「$s+t=1$」という制約なしに単に$s+t=2$というだけでは,点が一般には直線$AB$上に留まらないことを示す一例である.

7.7.2 共線・共点・共面条件

定理7.9 共線・共点・共面条件

① 共線条件:点$P$が直線$AB$上にある

$$ \iff \vec{AP}=k\vec{AB}\ \text{となる実数}\ k\ \text{が存在する} $$ $$ \iff \vec{OP}=(1-t)\vec{OA}+t\vec{OB}\ \text{となる実数}\ t\ \text{がある.} $$

② 共点条件:3点$P,Q,R$が一致する.

$$ \iff \vec{OP}=\vec{OQ}=\vec{OR} $$

③ 共面条件:ベクトル$\vec{OA},\vec{OB},\vec{OC}$が一次独立であるとき,点$P$が平面$ABC$上にある.

$$ \iff \vec{OP}=s\vec{OA}+t\vec{OB}+u\vec{OC},\ s+t+u=1\ \text{をみたす実数}\ s,t,u\ \text{が存在する.} $$

①の1つ目の同値は定理7.4(平行条件)と定義そのものであり,2つ目の同値は定理7.8②で$k=t$とおけば得られる.③は,定理7.8②の「2点を通る直線は$s+t=1$」という考え方を,3点$A,B,C$が張る平面に1次元分拡張したものである(平面上の点は,一次独立な2つのベクトルの1次結合でただ1通りに表せた——定理7.5——のと同じ理由で,空間内の平面上の点も,一次独立な$\vec{OA},\vec{OB},\vec{OC}$の1次結合のうち「係数の和が1」であるものとして特徴づけられる).

7.7.3 三角形の面積

三角形$OAB$の面積を,内積を使って求めよう.なす角を$\theta$とすると,高校数学ですでに知っている面積公式は

$$ S=\frac12\cdot|\vec{OA}|\cdot|\vec{OB}|\cdot\sin\theta $$

である.ここで,$0^\circ\le\theta\le180^\circ$より$\sin\theta\ge0$であるから,$\sin\theta=\sqrt{1-\cos^2\theta}$と書ける($\sin^2\theta+\cos^2\theta=1$を$\sin\theta$について解き,符号は$\sin\theta\ge0$から正の根を選ぶ).したがって,

$$ S=\frac12\cdot|\vec{OA}|\cdot|\vec{OB}|\cdot\sqrt{1-\cos^2\theta}=\frac12\sqrt{|\vec{OA}|^2\cdot|\vec{OB}|^2\cdot(1-\cos^2\theta)}=\frac12\sqrt{|\vec{OA}|^2|\vec{OB}|^2-\big(|\vec{OA}||\vec{OB}|\cos\theta\big)^2} $$

(根号の前の$|\vec{OA}||\vec{OB}|$を根号の中に入れるため2乗して掛けた).最後に,定義7.7 $\vec{OA}\cdot\vec{OB}=|\vec{OA}||\vec{OB}|\cos\theta$ を使って,根号の中の$\big(|\vec{OA}||\vec{OB}|\cos\theta\big)^2$を内積の式に置き換えると,

$$ S=\frac12\sqrt{|\vec{OA}|^2|\vec{OB}|^2-(\vec{OA}\cdot\vec{OB})^2} $$

が得られる.

公式7.9 三角形の面積

$\triangle OAB$の面積$S$は,

$$ S=\frac12\sqrt{|\vec{OA}|^2|\vec{OB}|^2-(\vec{OA}\cdot\vec{OB})^2} $$
三角形OABの面積 O A B θ
図7.14 三角形$OAB$と,2辺$\vec{OA},\vec{OB}$のなす角$\theta$.

数学ノート:成分だけで面積を求めるショートカット

$\vec{OA}=(x_1,y_1)$,$\vec{OB}=(x_2,y_2)$と成分表示すると,公式7.9の根号の中身は,公式7.3(内積の成分表示)を使って次のように書き換えられる.

$$ |\vec{OA}|^2|\vec{OB}|^2-(\vec{OA}\cdot\vec{OB})^2=(x_1^2+y_1^2)(x_2^2+y_2^2)-(x_1x_2+y_1y_2)^2=(x_1y_2-x_2y_1)^2 $$

(右辺を展開すると$x_1^2x_2^2+x_1^2y_2^2+y_1^2x_2^2+y_1^2y_2^2-x_1^2x_2^2-2x_1x_2y_1y_2-y_1^2y_2^2=x_1^2y_2^2-2x_1x_2y_1y_2+y_1^2x_2^2=(x_1y_2-x_2y_1)^2$となって左辺と一致することが確かめられる).したがって,

$$ S=\frac12|x_1y_2-x_2y_1| $$

という,成分だけからただちに計算できる公式が得られる.この$x_1y_2-x_2y_1$という組み合わせは,大学の線形代数で$2\times2$行列式(determinant)と呼ばれる量そのものであり,将来ベクトル解析で学ぶ外積(cross product)の平面版にあたる.

例題7.7 共線性の確認と三角形の面積

(a) $A(1,4)$,$B(6,-1)$とする.$\vec{OP}=\dfrac25\vec{OA}+\dfrac35\vec{OB}$で定まる点$P$は,直線$AB$上にあることを確かめよ.
(b) $\vec{OA}=(4,3)$,$\vec{OB}=(1,5)$のとき,公式7.9と,数学ノートのショートカットの2通りの方法で$\triangle OAB$の面積を求め,一致することを確認せよ.

解答 (a) $s=\dfrac25,t=\dfrac35$とすると$s+t=1$なので,定理7.8②(またはただちに定理7.9①)より,$P$は直線$AB$上にある.実際に成分で確かめると,

$$ \vec{OP}=\frac25(1,4)+\frac35(6,-1)=\left(\frac25+\frac{18}5,\ \frac85-\frac35\right)=\left(\frac{20}5,\frac55\right)=(4,1) $$

である.$\vec{AB}=(6-1,-1-4)=(5,-5)$,$\vec{AP}=(4-1,1-4)=(3,-3)$であり,$\vec{AP}=\dfrac35(5,-5)=\dfrac35\vec{AB}$($3=\frac35\times5$,$-3=\frac35\times(-5)$)となっているから,定理7.9①より確かに$P$は直線$AB$上にある.

(b) 公式7.9で計算すると,$|\vec{OA}|^2=4^2+3^2=25$,$|\vec{OB}|^2=1^2+5^2=26$,$\vec{OA}\cdot\vec{OB}=4\times1+3\times5=19$(公式7.3)だから,

$$ S=\frac12\sqrt{25\times26-19^2}=\frac12\sqrt{650-361}=\frac12\sqrt{289}=\frac12\times17=\frac{17}2 $$

数学ノートのショートカット $S=\dfrac12|x_1y_2-x_2y_1|$ では,

$$ S=\frac12|4\times5-1\times3|=\frac12|20-3|=\frac{17}2 $$

となり,どちらの方法でも$S=\dfrac{17}2$と一致する.

7.8 まとめと演習

7.8.1 まとめ

\begin{equation} \vec p=s\vec a+t\vec b,\qquad \vec a\cdot\vec b=|\vec a||\vec b|\cos\theta=a_1b_1+a_2b_2,\qquad S=\frac12|x_1y_2-x_2y_1| \label{eq:7-key} \end{equation}

7.8.2 演習問題

演習7.1 重心の位置ベクトル

三角形$ABC$において,辺$BC$の中点を$M$とする.中線$AM$を$2:1$に内分する点を$G$(三角形の重心)とするとき,任意の点$O$を基準にとって,

$$ \vec{OG}=\frac{\vec{OA}+\vec{OB}+\vec{OC}}{3} $$

が成り立つことを示せ.

ヒント:まず公式7.1(内分点の位置ベクトル)を使って$M$の位置ベクトルを$\vec{OB},\vec{OC}$で表し,次に同じ公式を$A,M$を結ぶ線分に使う.

演習7.2 一次独立性と係数の一致

$\vec a,\vec b$を一次独立なベクトルとする.$(2x-1)\vec a+(y+2)\vec b=3\vec a-\vec b$が成り立つとき,実数$x,y$の値を求めよ.

ヒント:定理7.5(分解の一意性)より,$\vec a$の係数どうし,$\vec b$の係数どうしがそれぞれ等しくなければならない.

演習7.3 成分・内分点・外分点

$2$点$A(-1,3)$,$B(4,-2)$について,(a) $\vec{AB}$の成分と大きさ,(b) 線分$AB$を$3:2$に内分する点,(c) 線分$AB$を$3:2$に外分する点を求めよ.

ヒント:公式7.1に$m=3,n=2$を代入する.外分では$m-n=1$になることに注意.

演習7.4 内積と垂直条件

$\vec a=(2,k)$,$\vec b=(3,-4)$とする.$\vec a\perp\vec b$となるような実数$k$の値を求め,そのときの$|\vec a|$も求めよ.

ヒント:定理7.6(垂直と内積)と公式7.3を組み合わせる.

演習7.5 法線ベクトルから直線の方程式

$2$点$A(1,2)$,$B(4,6)$を通る直線の方程式を,「方向ベクトルに垂直なベクトルを法線ベクトルとする」方法(公式7.5)で求めよ.

ヒント:まず方向ベクトル$\vec{AB}$を求め,$(p,q)$に垂直なベクトルの1つが$(q,-p)$であることを使う.

演習7.6 空間の直線・平面・球面

点$A(2,-3,1)$を通り,方向ベクトル$\vec d=(1,2,-2)$に平行な直線の方程式,同じ点$A$を通り法線ベクトルが$\vec d$である平面の方程式,中心$(0,1,-2)$半径$3$の球面の方程式を,それぞれ求めよ.

ヒント:公式7.7・公式7.6・公式7.8をそのまま当てはめる.

7.8.3 参考文献

  1. 望月泰英『数学ノート 高校数学』(手書き講義ノート).本章の底本.
  2. チャート研究所 編『チャート式 基礎からの数学C』数研出版.