第8章2次曲線 — 放物線・楕円・双曲線
中学校以来,私たちは$y=ax^2$という2次関数のグラフとしての放物線に親しんできた.しかしこの章で学ぶ放物線は,それとは違う顔を持つ.「1点(焦点)と1本の直線(準線)から等距離にある点の集まり」——この定義から出発すると,見慣れた$y=ax^2$のグラフがちゃんと出てくるだけでなく,同じ発想を少し変えるだけで,楕円(distance の和が一定)や双曲線(distance の差が一定)という,一見まったく違う形の曲線までもが,統一的に理解できるようになる.
これらの曲線は数学の中だけの存在ではない.太陽のまわりを回る惑星の軌道は楕円であり(ケプラーの第一法則),パラボラアンテナや車のヘッドライトの反射鏡は放物線の性質を使い,双曲線は船や航空機の位置を決める航法(複数の地点からの距離の差が一定という原理)に使われている.この章では,放物線・楕円・双曲線のそれぞれを座標を使って定義から導出し,最後に離心率という1つの数でこの3つ(と円)をひとつながりに眺める視点まで到達する.
- 放物線の定義(焦点$F$と準線$\ell$から等距離)と,標準形$y^2=4px$($x$軸が軸)・$x^2=4py$($y$軸が軸)の導出
- 楕円の定義(2焦点からの距離の和が一定)と,標準形$\dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2}=1$の導出,焦点の公式$c=\sqrt{a^2-b^2}$
- 双曲線の定義(2焦点からの距離の差が一定)と,標準形$\dfrac{x^2}{a^2}-\dfrac{y^2}{b^2}=1$の導出,焦点の公式$c=\sqrt{a^2+b^2}$
- (発展)双曲線の漸近線$y=\pm\dfrac{b}{a}x$と,極限の考え方の一端
- (発展)離心率$e=\dfrac{c}{a}$:$e=0$は円,$0\lt e\lt1$は楕円,$e=1$は放物線,$e\gt1$は双曲線という統一的理解
もとにしたノート:望月泰英『数学ノート 高校数学』 pp. 33–35.
8.1 放物線
中学校で学んだ放物線は,$y=ax^2$($a\neq0$)という2次関数のグラフとしてのものだった.ここでは,放物線を「ある1点(焦点)とある1本の直線(準線)から等距離にある点の集まり」として定義し直す.遠回りに見えるかもしれないが,この定義は放物線だけでなく,このあと学ぶ楕円・双曲線とも自然につながる「距離」による統一的な捉え方を与えてくれる.
定義8.1 放物線
平面上で,定点$F$と,$F$を通らない定直線$\ell$からの距離が等しい点$P$の軌跡を放物線(parabola)という.点$F$を焦点(focus),直線$\ell$を準線(directrix)という.
「距離が等しい」という条件だけから,見慣れた$y=ax^2$のグラフがどう出てくるのか,座標を使って確かめよう.まずは,焦点が$x$軸上にある場合(放物線の軸が$x$軸と一致する場合)を考える.
8.1.1 x軸を軸とする放物線
導出:標準形$y^2=4px$
$p\neq0$とする.点$F(p,0)$を焦点とし,直線$\ell:x=-p$を準線とする放物線の方程式を求めよう.曲線上の点を$P(x,y)$とし,$P$から準線$\ell$に下ろした垂線の足を$H$とする.準線が$x=-p$という縦の直線なので,$P(x,y)$から$\ell$までの距離は$y$座標を変えずに考えればよく,$H(-p,y)$,$PH=|x-(-p)|=|x+p|$である.
定義8.1より,$P$が放物線上にあるためには$PH=PF$が成り立てばよい.2点間の距離の公式から$PF=\sqrt{(x-p)^2+y^2}$なので,
$$ \sqrt{(x-p)^2+y^2} = |x+p| $$という方程式が得られる.左辺は根号,右辺は絶対値を含んでいて扱いにくいので,両辺を2乗する.両辺とも0以上の値(距離と絶対値だから)なので,2乗しても同値な式が得られる($A,B\ge0$のとき$A=B\iff A^2=B^2$).$|x+p|^2=(x+p)^2$であることにも注意すると,
$$ (x-p)^2+y^2=(x+p)^2 $$となる.左辺の$(x-p)^2=x^2-2px+p^2$,右辺の$(x+p)^2=x^2+2px+p^2$であり,どちらにも$x^2$と$p^2$が共通に含まれている.そこで両辺から$x^2+p^2$を引いて消すと,
$$ -2px+y^2=2px \quad\Longrightarrow\quad y^2=2px+2px=4px $$($-2px$を右辺に移項すると$+2px$になり,もとの$+2px$と合わせて$4px$になる,という計算である).よって
$$ \begin{equation} y^2=4px \label{eq:8-parabola-x} \end{equation} $$が,焦点$F(p,0)$,準線$x=-p$を持つ放物線の方程式である.
Terminology:放物線の標準形
式\eqref{eq:8-parabola-x}のような$y^2=4px$や,次項で導く$x^2=4py$の形を,放物線の標準形という.
イメージ:$p$の符号と放物線の開く向き
図8.1は$p$が正の場合を描いたものであり,このとき放物線は焦点のある右側($x\gt0$の向き)に開く.もし$p$が負なら,式\eqref{eq:8-parabola-x}で$y^2=4px\ge0$が成り立つためには$x\le0$でなければならず,放物線は左側に開く.いずれの場合も,準線$x=-p$は焦点$F(p,0)$と原点をはさんで反対側にあり,原点(放物線の頂点)はちょうど焦点と準線の中点になっている.
応用:パラボラアンテナと反射鏡
放物線には「軸に平行に入ってきた光や電波は,反射してすべて焦点に集まる」という性質がある(逆に,焦点から出た光は反射してすべて軸に平行に進む).この性質は,衛星放送用のパラボラアンテナ(電波を焦点の受信部に集める),懐中電灯や自動車のヘッドライトの反射鏡(光源を焦点に置き,平行光線として照射する),太陽光を1点に集める集光炉など,身の回りの多くの道具に使われている.
8.1.2 y軸を軸とする放物線
同じ考え方を,今度は焦点が$y$軸上にある場合に適用しよう.$p\neq0$とし,点$F(0,p)$を焦点,直線$\ell:y=-p$を準線とする.
導出:標準形$x^2=4py$
曲線上の点$P(x,y)$から準線$\ell:y=-p$までの距離は,$x$座標を変えずに考えればよいから,$H(x,-p)$,$PH=|y-(-p)|=|y+p|$である.一方$PF=\sqrt{x^2+(y-p)^2}$だから,$PH=PF$より
$$ |y+p| = \sqrt{x^2+(y-p)^2} $$両辺を2乗すると(先ほどと同じ理由で同値変形である),
$$ (y+p)^2 = x^2+(y-p)^2 $$となる.左辺$(y+p)^2=y^2+2py+p^2$,右辺の$(y-p)^2=y^2-2py+p^2$であり,$y^2,p^2$が共通なので,両辺から$y^2+p^2$を引いて整理すると,
$$ 2py=x^2-2py \quad\Longrightarrow\quad x^2=2py+2py=4py $$すなわち
$$ \begin{equation} x^2=4py \label{eq:8-parabola-y} \end{equation} $$が得られる.
イメージ:おなじみの$y=ax^2$との関係
式\eqref{eq:8-parabola-y}を$p\neq0$で割って$y=\dfrac{1}{4p}x^2$の形に直すと,中学以来おなじみの2次関数のグラフ$y=ax^2$と完全に一致する($a=\dfrac{1}{4p}$,すなわち$p=\dfrac{1}{4a}$).例えば$y=x^2$($a=1$)なら$p=\dfrac14$であり,焦点は$\left(0,\dfrac14\right)$,準線は$y=-\dfrac14$である.中学で「ただのグラフ」として描いていた放物線には,実は頂点からわずか$\dfrac14$だけ離れた場所に,隠れた焦点が存在していたことになる.
例題8.1 焦点と準線から放物線の方程式を求める
焦点が$(2,0)$,準線が$x=-2$である放物線の方程式を求めよ.
解答 焦点$(p,0)=(2,0)$より$p=2$.式\eqref{eq:8-parabola-x}の$y^2=4px$に代入して,
$$ y^2=4\times2\times x=8x $$である.(検算:準線は$x=-p=-2$となり,たしかに問題文の条件と一致する.)
例題8.2 放物線の方程式から焦点と準線を求める
放物線$x^2=-12y$の焦点の座標と準線の方程式を求めよ.
解答 式\eqref{eq:8-parabola-y}の$x^2=4py$と見比べると,$4p=-12$より$p=-3$である.$p$が負なので,8.1.1節の「イメージ:$p$の符号と放物線の開く向き」で確かめた考え方と同様に($x^2=4py$でも$p$の符号で上下の開く向きが決まる),この放物線は下($y\lt0$の向き)に開く.焦点は$F(0,p)=(0,-3)$,準線は$y=-p=3$である.
8.2 楕円
放物線は「1点と1直線」から等距離という条件で定義された.次に考える楕円(ellipse)は,かわりに「2定点」からの距離の和が一定という条件で定義される.身近な例では,太陽を1つの焦点とする惑星の軌道が楕円である.
8.2.1 楕円の定義
定義8.2 楕円
平面上で,2定点$F,F'$からの距離の和が一定である点$P$の軌跡を楕円(ellipse)という.点$F,F'$を焦点(focus,複数形 foci)という.
2定点(焦点)$F,F'$からの距離の和を$2a$($a\gt0$)とする,すなわち$F'P+FP=2a$であるとしよう.$P,F,F'$の3点が三角形をなす(一直線上にない)とき,三角形の2辺の和は残りの1辺より大きいという性質(三角不等式)から$F'P+FP\gt FF'$である.$F,F'$間の距離を$2c$($c\ge0$)とおくと,これは
$$ 2a\gt FF'=|2c| $$を意味する($P$が線分$FF'$上に来る極端な場合を除く).よって$a\gt c\gt0$としてよい.($c=0$,すなわち$F=F'$の場合は焦点が1点に重なり,楕円は円になる.これについては8.2.3節で改めて触れる.)
Terminology:長軸・短軸・中心
楕円と,2焦点を通る対称軸との交点を$A,A'$とし,線分$AA'$を長軸(major axis)という.長軸と垂直な,もう一方の対称軸との交点を$B,B'$とし,線分$BB'$を短軸(minor axis)という.長軸と短軸の交点を楕円の中心(center)という.
8.2.2 標準形の導出
導出:標準形$\dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2}=1$(前半)
座標軸を,中心が原点,長軸が$x$軸に重なるように取る.焦点を$F(c,0),F'(-c,0)$とし,2定点からの距離の和が$2a$である点$P(x,y)$の軌跡を求めよう.定義8.2より,
$$ \sqrt{(x+c)^2+y^2}+\sqrt{(x-c)^2+y^2}=2a $$根号が2つあると扱いにくいので,まず一方を移項して
$$ \sqrt{(x+c)^2+y^2} = 2a-\sqrt{(x-c)^2+y^2} $$とし,両辺を2乗して根号を1つずつ消していく.左辺は$(x+c)^2+y^2$,右辺は$(A-B)^2=A^2-2AB+B^2$の形に展開して,
$$ (x+c)^2+y^2 = 4a^2-4a\sqrt{(x-c)^2+y^2}+(x-c)^2+y^2 $$となる.両辺の$y^2$は消える.また$(x+c)^2-(x-c)^2=4cx$(展開すればすぐわかる:$(x^2+2cx+c^2)-(x^2-2cx+c^2)=4cx$)を使って整理すると,
$$ 4cx+4a\sqrt{(x-c)^2+y^2} = 4a^2 $$(もとの式の右辺にあった$-4a\sqrt{\cdots}$を左辺に移項し,$(x-c)^2+y^2$は両辺で相殺した).両辺を$4$で割って,根号の項だけを左辺に残す形に整理すると,
$$ a\sqrt{(x-c)^2+y^2} = a^2-cx $$となる.もう一度両辺を2乗して残る根号を消すと,
$$ a^2\{(x-c)^2+y^2\} = a^4-2a^2cx+c^2x^2 $$左辺を展開すると$a^2x^2-2a^2cx+a^2c^2+a^2y^2$である.両辺に共通する$-2a^2cx$を消して整理すると,
$$ \therefore\ (a^2-c^2)x^2+a^2y^2=(a^2-c^2)a^2 $$が得られる.
注意:$c=\sqrt{a^2-b^2}$(楕円の焦点の座標の求め方)
先ほど$a\gt c\gt0$を確認したので$a^2-c^2\gt0$であり,$\sqrt{a^2-c^2}$は正の実数として意味を持つ.そこで$b=\sqrt{a^2-c^2}$($b^2=a^2-c^2$)とおく.この式を$c$について解けば
$$ \begin{equation} c=\sqrt{a^2-b^2} \label{eq:8-ellipse-focus} \end{equation} $$となる.つまり,長軸・短軸の長さから決まる$a,b$さえわかれば,焦点は$F(\sqrt{a^2-b^2},0)$として求まる.
導出:標準形$\dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2}=1$(後半:$b$を代入して仕上げる)
$b^2=a^2-c^2$を先ほどの式に代入すると$b^2x^2+a^2y^2=a^2b^2$となる.両辺を$a^2b^2$($\neq0$)で割ると,
$$ \begin{equation} \frac{x^2}{a^2}+\frac{y^2}{b^2}=1 \label{eq:8-ellipse-std} \end{equation} $$これが楕円の標準形である.長軸の長さは$AA'=2a$,短軸の長さは$BB'=2b$である.
例題8.3 長軸・短軸の長さから楕円の方程式を求める
長軸の長さが$10$,短軸の長さが$6$である楕円の標準形の方程式と,焦点の座標を求めよ.
解答 長軸の長さ$2a=10$より$a=5$.短軸の長さ$2b=6$より$b=3$.式\eqref{eq:8-ellipse-std}より標準形は
$$ \frac{x^2}{25}+\frac{y^2}{9}=1 $$である.焦点は式\eqref{eq:8-ellipse-focus}より$c=\sqrt{a^2-b^2}=\sqrt{25-9}=\sqrt{16}=4$なので,$(\pm4,0)$である.
例題8.4 楕円の定義から距離の和を求める
楕円$\dfrac{x^2}{25}+\dfrac{y^2}{9}=1$上の点$P$から,2つの焦点$F,F'$までの距離の和$PF+PF'$を求めよ.
解答 標準形$\dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2}=1$と見比べると$a^2=25$,すなわち$a=5$である.定義8.2(および導出の出発点の式)より,楕円上の任意の点$P$について$PF+PF'=2a$がつねに成り立つから,
$$ PF+PF'=2a=2\times5=10 $$である.$P$の具体的な座標を求める必要はなく,定義に戻るだけで答えが出ることに注目してほしい.
応用:ケプラーの第一法則
天文学者ケプラー(Kepler)は,惑星は太陽を1つの焦点とする楕円軌道を描いて公転することを発見した(ケプラーの第一法則,1609年).太陽系の惑星の軌道は離心率が0にかなり近く(8.2.3節),円に近い楕円だが,彗星の軌道の中には離心率が1に近い,細長くつぶれた楕円を描くものもある.
8.2.3 発展:離心率
楕円の「つぶれ具合」を表す量として,離心率(eccentricity)$e=\dfrac{c}{a}$を定義する.$0\lt c\lt a$だったから,楕円の離心率は$0\lt e\lt1$の範囲にある.$e$が$0$に近いほど円に近い形に,$1$に近いほど細長くつぶれた形になる($c=0$,$e=0$の極限は文字通り円である).
離心率を使うと,焦点$F(c,0)$から楕円上の点$P(x,y)$までの距離は,きれいな1次式で書けることが知られている.標準形\eqref{eq:8-ellipse-std}より$y^2=b^2\left(1-\dfrac{x^2}{a^2}\right)$なので,
$$ PF^2=(x-c)^2+y^2=(x-c)^2+b^2-\frac{b^2}{a^2}x^2 $$ここに$b^2=a^2-c^2$を代入すると,
$$ PF^2=(x-c)^2+(a^2-c^2)-\frac{a^2-c^2}{a^2}x^2 $$となる.右辺を展開しよう.$(x-c)^2=x^2-2cx+c^2$であり,最後の項は$-\dfrac{a^2-c^2}{a^2}x^2=-x^2+\dfrac{c^2}{a^2}x^2$と分けて書けるから,
$$ PF^2=\underbrace{x^2-2cx+c^2}_{(x-c)^2}+a^2-c^2\underbrace{-x^2+\frac{c^2}{a^2}x^2}_{-\frac{a^2-c^2}{a^2}x^2} $$で,$x^2$と$-x^2$が打ち消し合い,$+c^2$と$-c^2$も打ち消し合うので,残るのは
$$ PF^2=\frac{c^2}{a^2}x^2-2cx+a^2 $$だけである.最後にこれを完全平方の形に整理する.$e=\dfrac{c}{a}$とおくと$\dfrac{c^2}{a^2}x^2=(ex)^2$,$2cx=2a\cdot\dfrac{c}{a}x=2a\cdot ex$と書けるので,
$$ PF^2=(ex)^2-2a(ex)+a^2=(a-ex)^2 $$という完全平方の形になる($(a-ex)^2=a^2-2a\cdot ex+(ex)^2$を展開すればちょうど同じ3項になっていることが確かめられる).$-a\le x\le a$の範囲では$a-ex\ge a-e\cdot a=a(1-e)\gt0$($e\lt1$だから)なので,根号を外して
$$ PF=a-ex $$が得られる.さらに,直線$x=\dfrac{a}{e}\left(=\dfrac{a^2}{c}\right)$(これも準線と呼ばれる)までの距離を$d=\dfrac{a}{e}-x$とすると,
$$ \frac{PF}{d}=\frac{a-ex}{\frac{a}{e}-x}=\frac{e(a-ex)}{a-ex}=e $$という一定の比になる(分母・分子に$e$を掛けて約分した).つまり,楕円上の点は「焦点までの距離」と「準線までの距離」の比がつねに$e$である点の集まりとしても特徴づけられる.放物線の定義8.1($PF=PH$,つまり比が$1$)は,この関係で$e=1$とした特別な場合になっている.楕円は$e\lt1$,このあと学ぶ双曲線は$e\gt1$の場合に対応する——離心率$e$は,2次曲線をひとつながりに理解するための統一的な物差しである(8.3.4節で図とともにまとめる).
例題8.5 離心率と$PF=a-ex$を使って焦点までの距離を求める
楕円$\dfrac{x^2}{25}+\dfrac{y^2}{16}=1$の離心率$e$を求めよ.また,この楕円上で$x=3$となる点$P$について,焦点$F(c,0)$($c\gt0$)までの距離$PF$を求めよ.
解答 標準形と見比べて$a^2=25,b^2=16$,すなわち$a=5,b=4$.式\eqref{eq:8-ellipse-focus}より$c=\sqrt{a^2-b^2}=\sqrt{25-16}=\sqrt9=3$なので,離心率は
$$ e=\frac{c}{a}=\frac{3}{5}=0.6 $$である.先ほど本節で導いた$PF=a-ex$に$a=5,e=0.6,x=3$を代入すると,
$$ PF=a-ex=5-0.6\times3=5-1.8=3.2 $$(検算:$x=3$のとき$y^2=b^2\left(1-\dfrac{x^2}{a^2}\right)=16\left(1-\dfrac{9}{25}\right)=16\times\dfrac{16}{25}=\dfrac{256}{25}$より$y=\dfrac{16}{5}=3.2$.一方$c=3$なので$F(3,0)$と$P(3,3.2)$は$x$座標が一致し,$PF=|y|=3.2$.たしかに$PF=a-ex$の結果と一致する.)
8.3 双曲線
楕円が「距離の和が一定」で定義されたのに対し,双曲線(hyperbola)は「距離の差」が一定という,符号だけが反転した条件で定義される.この符号の違いだけから,楕円とはまったく違う——原点から限りなく離れていく2本の枝を持つ——曲線が現れる.
8.3.1 双曲線の定義
定義8.3 双曲線
平面上で,2定点$F,F'$からの距離の差が一定である点$P$の軌跡を双曲線(hyperbola)という.点$F,F'$を焦点という.
2定点$F(c,0),F'(-c,0)$を焦点とし,この2点からの距離の差を$2a$とする双曲線を求める.「差」には向きがあるので,$P$が$F$に近い側の枝にあるか$F'$に近い側の枝にあるかに応じて$PF-PF'=\pm2a$(複号)となる.また,三角不等式より三角形の2辺の差は残りの1辺より小さいから$|PF-PF'|\lt FF'$,つまり$2a\lt2c$,すなわち$c\gt a\gt0$である(この不等号の向きが,楕円の$a\gt c$と逆になっている点に注意しよう).
応用:距離の差で位置を決める航法
双曲線の定義(2点からの距離の差が一定)は,そのまま実用的な位置決定の原理になる.2つの固定された送信局から同時に発信された電波を受信し,その到達時刻の差(=距離の差に比例する)を測れば,受信点は「2つの送信局を焦点とするある双曲線上」にあると分かる.3局以上を組み合わせて複数の双曲線の交点を求めることで自分の位置を特定する航法(LORAN・双曲線航法)が,20世紀の船舶・航空機の航法として実際に使われた.
8.3.2 標準形の導出
導出:標準形$\dfrac{x^2}{a^2}-\dfrac{y^2}{b^2}=1$(前半)
定義より$\sqrt{(x-c)^2+y^2}-\sqrt{(x+c)^2+y^2}=\pm2a$である.楕円のときと同様に,まず一方の根号を移項してから2乗し,根号を1つずつ消していく.$+2a$の場合,$\sqrt{(x-c)^2+y^2}=2a+\sqrt{(x+c)^2+y^2}$を2乗すると,
$$ (x-c)^2+y^2 = 4a^2+4a\sqrt{(x+c)^2+y^2}+(x+c)^2+y^2 $$両辺の$y^2$は消え,$(x-c)^2-(x+c)^2=-4cx$(楕円のときの$(x+c)^2-(x-c)^2=4cx$の符号が反転しただけ)を使うと,
$$ -4cx-4a^2 = 4a\sqrt{(x+c)^2+y^2} $$両辺を$4$で割ると$-cx-a^2=a\sqrt{(x+c)^2+y^2}$,すなわち$a\sqrt{(x+c)^2+y^2}=-(a^2+cx)$となる.右辺が負になる場合もありうるが(左辺の$a\sqrt{\cdots}$は$0$以上なので,実際にはその範囲で$a^2+cx\le0$となっている),このあとどうせもう一度2乗するので符号は問題にならない.(もとにしたノートは$-2a$の分岐($PF-PF'=-2a$)から出発しており,この行に対応する式は符号が逆の$a\sqrt{(x+c)^2+y^2}=a^2+cx$になっている.最終的に得られる標準形の方程式はどちらの分岐から出発しても同じになる(このあと確認する)ので,この1行だけを見比べると符号が逆に見えても計算間違いではない.)2乗すると,
$$ a^2\{(x+c)^2+y^2\} = (a^2+cx)^2 $$左辺を展開すると$a^2x^2+2a^2cx+a^2c^2+a^2y^2$,右辺を展開すると$a^4+2a^2cx+c^2x^2$である.両辺に共通する$2a^2cx$を消して整理すると,
$$ \therefore\ (c^2-a^2)x^2-a^2y^2=(c^2-a^2)a^2 $$が得られる($-2a$の場合から出発しても,$\sqrt{(x+c)^2+y^2}=2a+\sqrt{(x-c)^2+y^2}$として同じ計算を繰り返せば,$x,c$の符号がちょうど反転するだけで同じ方程式に行き着く.つまりどちらの枝でも,双曲線の方程式は共通の1本になる).
注意:$c=\sqrt{a^2+b^2}$(双曲線の焦点の座標の求め方)
$c\gt a\gt0$より$c^2-a^2\gt0$なので,$b=\sqrt{c^2-a^2}$($b^2=c^2-a^2$)とおける.これを$c$について解くと
$$ \begin{equation} c=\sqrt{a^2+b^2} \label{eq:8-hyperbola-focus} \end{equation} $$となる(楕円の式\eqref{eq:8-ellipse-focus}の根号の中の符号がプラスに変わっただけである).
導出:標準形$\dfrac{x^2}{a^2}-\dfrac{y^2}{b^2}=1$(後半:$b$を代入して仕上げる)
$b^2=c^2-a^2$を先ほどの式に代入すると$b^2x^2-a^2y^2=a^2b^2$となり,両辺を$a^2b^2$($\neq0$)で割ると,
$$ \begin{equation} \frac{x^2}{a^2}-\frac{y^2}{b^2}=1 \label{eq:8-hyperbola-std} \end{equation} $$が双曲線の標準形である.
例題8.6 双曲線の焦点を求める
双曲線$\dfrac{x^2}{16}-\dfrac{y^2}{9}=1$の焦点の座標を求めよ.
解答 標準形と見比べて$a^2=16,b^2=9$,すなわち$a=4,b=3$.式\eqref{eq:8-hyperbola-focus}より$c=\sqrt{a^2+b^2}=\sqrt{16+9}=\sqrt{25}=5$.よって焦点は$(\pm5,0)$である.
8.3.3 発展:漸近線
ノートには明記されていないが,双曲線には楕円にはない際立った特徴——漸近線(asymptote,曲線が限りなく近づいていく直線)——がある.標準形\eqref{eq:8-hyperbola-std}を$y$について解くと,
$$ \frac{y^2}{b^2}=\frac{x^2}{a^2}-1 \quad\Longrightarrow\quad y=\pm b\sqrt{\frac{x^2}{a^2}-1}=\pm\frac{b}{a}x\sqrt{1-\frac{a^2}{x^2}} $$(最後の変形は$x\gt0$の枝で$\sqrt{\dfrac{x^2}{a^2}-1}=\dfrac{x}{a}\sqrt{1-\dfrac{a^2}{x^2}}$と書き直したものである).ここで$x\to\infty$とすると,$\dfrac{a^2}{x^2}\to0$なので$\sqrt{1-\dfrac{a^2}{x^2}}\to1$となり,
$$ \begin{equation} y\ \longrightarrow\ \pm\frac{b}{a}x\qquad(x\to\infty) \label{eq:8-hyperbola-asymptote} \end{equation} $$に近づいていく.つまり,2本の直線$y=\dfrac{b}{a}x$と$y=-\dfrac{b}{a}x$は,双曲線が原点から遠く離れるにつれて限りなく近づいていく「案内線」になっている.これが漸近線である.(極限$\lim$の考え方は,この先の大学数学で微分積分学の土台として本格的に学ぶ.)
例題8.7 双曲線の漸近線を求める
双曲線$\dfrac{x^2}{16}-\dfrac{y^2}{9}=1$の漸近線の方程式を求めよ.また,この双曲線のおおまかな概形を述べよ.
解答 $a=4,b=3$(例題8.6と同じ)なので,式\eqref{eq:8-hyperbola-asymptote}より漸近線は
$$ y=\pm\frac{3}{4}x $$である.頂点は$(\pm4,0)$(標準形で$y=0$とおくと$x=\pm a=\pm4$),焦点は例題8.6より$(\pm5,0)$である.双曲線はこの2つの頂点からそれぞれ左右に開き,$x\to\pm\infty$で2本の漸近線$y=\pm\dfrac34x$に限りなく近づく,原点に関して対称な2本の枝からなる(図8.4).
8.3.4 発展:離心率で統一的に理解する
楕円のときと同じ計算を双曲線でも行おう.焦点$F(c,0)$に近い側の枝($x\ge a$)上の点$P(x,y)$について,標準形\eqref{eq:8-hyperbola-std}より$y^2=b^2\left(\dfrac{x^2}{a^2}-1\right)$なので,
$$ PF^2=(x-c)^2+y^2=(x-c)^2+\frac{b^2}{a^2}x^2-b^2 $$ここに$b^2=c^2-a^2$を代入すると,
$$ PF^2=(x-c)^2+\frac{c^2-a^2}{a^2}x^2-(c^2-a^2) $$楕円のときと同様に右辺を展開する.$(x-c)^2=x^2-2cx+c^2$,$\dfrac{c^2-a^2}{a^2}x^2=\dfrac{c^2}{a^2}x^2-x^2$だから,$x^2$と$-x^2$が打ち消し合い,$c^2$と$-c^2$も打ち消し合って,
$$ PF^2=\frac{c^2}{a^2}x^2-2cx+a^2 $$が残る(楕円のときの式$\dfrac{c^2}{a^2}x^2-2cx+a^2$と,符号もふくめてまったく同じ形になっていることに注意).$e=\dfrac{c}{a}$とおけば$\dfrac{c^2}{a^2}x^2=(ex)^2$,$2cx=2a(ex)$なので,
$$ PF^2=(ex)^2-2a(ex)+a^2=(ex-a)^2 $$という完全平方の形になる.楕円のときは$(a-ex)^2$,ここでは$(ex-a)^2$と,2乗される中身の符号が反転しているだけで,2乗すれば同じ式になる($(a-ex)^2=(ex-a)^2$).根号を外すときにはじめて符号の違いが表に出る:この枝では$x\ge a$かつ$e=\dfrac{c}{a}\gt1$だから,
$$ ex-a\ge ea-a=a(e-1)\gt0 $$($x\ge a$の両辺に正の数$e$を掛けて$ex\ge ea$,さらに$e\gt1$だから$a(e-1)\gt0$).よって$ex-a$は正なので,そのまま根号を外して
$$ PF=ex-a\qquad\left(e=\frac{c}{a}\right) $$が成り立つ(楕円の$PF=a-ex$と,2乗する前の中身の符号が反転している).$c\gt a\gt0$だったから,双曲線の離心率は$e=\dfrac{c}{a}\gt1$である.楕円のときとまったく同じ形の準線$x=\dfrac{a}{e}$を使うと,距離の比はここでも
$$ \frac{PF}{d}=\frac{ex-a}{x-\frac{a}{e}}=e $$で一定になる.まとめると,焦点・準線からの距離の比$e=PF/d$は次のようになる.
- $e=0$:円($c=0$の極限)
- $0\lt e\lt1$:楕円
- $e=1$:放物線(定義8.1そのもの,$PF=PH$)
- $e\gt1$:双曲線
離心率$e$の値だけで,4種類の曲線がひとつながりに整理できることが分かる(図8.5).これらはすべて,円錐を平面で切ったときの断面として現れることから円錐曲線(conic section)とも呼ばれる.切る角度を変えていくと,円から楕円,放物線,双曲線へと連続的に移り変わる様子を思い浮かべると,この統一的な見方がいっそう腑に落ちるはずである.
例題8.8 離心率と$PF=ex-a$を使って焦点までの距離を求める
双曲線$\dfrac{x^2}{16}-\dfrac{y^2}{9}=1$の離心率$e$を求めよ.また,焦点$F(c,0)$($c\gt0$)に近い側の枝上で$x=5$となる点$P$について,距離$PF$を求めよ.
解答 標準形と見比べて$a^2=16,b^2=9$,すなわち$a=4,b=3$.式\eqref{eq:8-hyperbola-focus}より$c=\sqrt{a^2+b^2}=\sqrt{16+9}=\sqrt{25}=5$なので,離心率は
$$ e=\frac{c}{a}=\frac{5}{4}=1.25 $$である($e\gt1$なので確かに双曲線の離心率になっている).$PF=ex-a$に$e=1.25,x=5,a=4$を代入すると,
$$ PF=ex-a=1.25\times5-4=6.25-4=2.25 $$(検算:$x=5$のとき$y^2=b^2\left(\dfrac{x^2}{a^2}-1\right)=9\left(\dfrac{25}{16}-1\right)=9\times\dfrac{9}{16}=\dfrac{81}{16}$より$y=\dfrac{9}{4}=2.25$.一方$c=5$なので$F(5,0)$と$P(5,2.25)$は$x$座標が一致し,$PF=|y|=2.25$.たしかに$PF=ex-a$の結果と一致する.)
8.4 まとめと演習
8.4.1 まとめ
- 放物線:定点$F$(焦点)と定直線$\ell$(準線)から等距離にある点の軌跡.標準形$y^2=4px$($x$軸が軸,焦点$F(p,0)$,準線$x=-p$)または$x^2=4py$($y$軸が軸,焦点$F(0,p)$,準線$y=-p$).
- 楕円:2定点$F,F'$(焦点)からの距離の和が一定($=2a$)である点の軌跡.標準形$\dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2}=1$($a\gt b\gt0$),焦点は$(\pm c,0)$,$c=\sqrt{a^2-b^2}$.長軸の長さ$2a$,短軸の長さ$2b$.
- 双曲線:2定点$F,F'$(焦点)からの距離の差が一定($=\pm2a$)である点の軌跡.標準形$\dfrac{x^2}{a^2}-\dfrac{y^2}{b^2}=1$,焦点は$(\pm c,0)$,$c=\sqrt{a^2+b^2}$,漸近線$y=\pm\dfrac{b}{a}x$.
- 楕円・双曲線の導出は,どちらも「根号を1つ移項してから2乗し,これを繰り返して根号を完全に消す」という同じ手順で進む.「距離の和」か「距離の差」かという定義の違いだけが,最終的な符号($+y^2$か$-y^2$か)の違いとなって現れる.
- 離心率$e=\dfrac{c}{a}$(焦点と準線からの距離の比)を使うと,$e=0$:円,$0\lt e\lt1$:楕円,$e=1$:放物線,$e\gt1$:双曲線という具合に,4種類の曲線を統一的に理解できる.
8.4.2 演習問題
演習8.1 放物線の方程式を求める
頂点が原点,焦点が$(0,3)$である放物線の方程式を求めよ.また,準線の方程式も求めよ.
ヒント:焦点が$y$軸上にあるので,本文8.1.2節の$x^2=4py$の形になる.
演習8.2 楕円の基本量を求める
楕円$\dfrac{x^2}{16}+\dfrac{y^2}{7}=1$の焦点の座標,長軸・短軸の長さを求めよ.
ヒント:標準形と見比べて$a,b$を求め,式\eqref{eq:8-ellipse-focus}を使う.
演習8.3 双曲線の定義から距離の差を求める
双曲線$\dfrac{x^2}{9}-\dfrac{y^2}{16}=1$上の点$P$から,2つの焦点までの距離の差$|PF-PF'|$を求めよ.
ヒント:例題8.4と同じ発想.座標を求めなくても,定義に戻れば答えが出る.
演習8.4 楕円の標準形の導出を自分の手で再現する
2定点$F(c,0),F'(-c,0)$からの距離の和が$2a$($a\gt c\gt0$)である点$P(x,y)$の軌跡が,$b=\sqrt{a^2-c^2}$として$\dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2}=1$になることを,本文8.2.2節の手順にならって,途中式を省略せずに自分で計算せよ.
ヒント:根号を1つ移項$\to$2乗$\to$整理$\to$もう一度根号だけの式に整理$\to$2乗,という2段階の手順である.
演習8.5 符号の違いの由来を説明する
楕円の標準形の分母の符号は$+,+$($\dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2}=1$)であるのに対し,双曲線では$+,-$($\dfrac{x^2}{a^2}-\dfrac{y^2}{b^2}=1$)になる.この符号の違いが,2つの導出のどこから生じているかを説明せよ.
ヒント:「距離の和」と「距離の差」という定義の違いが,$(x+c)^2-(x-c)^2$の符号にどう影響するかをたどる.
演習8.6 放物線と直線の交点
放物線$y^2=4px$($p\neq0$)と直線$y=x$の交点の座標を,$p$を用いて求めよ.
ヒント:$y=x$を$y^2=4px$に代入し,$x$についての方程式を解く.
8.4.3 参考文献
- 望月泰英『数学ノート 高校数学』(手書き講義ノート).本章の底本.
- R. Courant and H. Robbins (revised by I. Stewart), What Is Mathematics? An Elementary Approach to Ideas and Methods, 2nd ed., Oxford University Press, 1996.