超伝導の自由エネルギーと自発的対称性の破れ ― Ginzburg–Landau 理論・BCS 理論・Higgs モードと南部–Goldstone モード・「虚数振動数を有するフォノン」との対応
― 辻直人「非平衡超伝導の物理」(物性若手夏の学校テキスト,第 2・3 章)の読解と,対になるシミュレーター(superconductivity-simulator.html)の解説・導出・文献調査
超伝導体は,電子が Cooper 対を作って凝縮し,対の「波動関数」である複素数の秩序パラメーター ψ = |ψ|eiθ が有限になった状態です.
|ψ|² は対の密度で,位相 θ には特別な意味があります:ハミルトニアンは θ をいっせいに回す変換 ψ → eiαψ(U(1) 変換,電荷保存に対応するゲージ変換)で不変なのに,超伝導状態はひとつの θ を選んでしまう ― これが自発的対称性の破れです.
この解説は,講義テキストの第 2 章(Ginzburg–Landau 理論)と第 3 章(BCS 理論と時間依存 BCS 理論)の式を一つずつ追いながら,(i) 自由エネルギーの「メキシコ帽」が温度とともに椀になって対称性の破れた状態が不安定化する様子,(ii) 帽子の上の二つの振動 ― 振幅の Higgs モードと位相の南部–Goldstone モード,(iii) 位相モードが電磁場に吸われる Anderson–Higgs 機構(Meissner 効果),(iv) BCS 平均場の転移温度,を導出し,
さらに (v) 南部陽一郎の「自発的対称性の破れ」が超伝導理論から生まれた経緯,(vi) 同じ自由エネルギーが格子のソフトモード・DFT の「虚数振動数を有するフォノン」として現れること,(vii) フォノンにも Higgs/Goldstone モードがあるかという文献調査,をまとめます.
この解説の道筋
§1 秩序パラメーターと U(1) 対称性.
§2 GL 自由エネルギー:メキシコ帽,a = a₀(T − Tc),London 方程式と Meissner 効果,ξ・λ・κ・Hc.
§3 実測値(Tc, Hc, λ)から a, b を決める:12 元素の表,一様なベクトルポテンシャルの効果.
§4 時間依存 GL:Higgs モード・南部–Goldstone モード・Anderson–Higgs 機構・分散関係 ω² = (2Δ)² + vF²q²/3.
§5 非線形応答と 3 次高調波.
§6 BCS 平均場:ギャップ方程式,Tc,McMillan 式,Gor'kov の対応.
§7 Anderson の擬スピンと Higgs 振動(クエンチ・駆動).
§8 南部と自発的対称性の破れの歴史.
§9 自発的対称性の破れ ≡ 虚数振動数を有するフォノン.
§10 文献調査:フォノンの Higgs/Goldstone モード.
§11 実装ノート.§12 文献.
- 秩序パラメーターと U(1) 対称性
- Ginzburg–Landau の自由エネルギー
- 実測値から係数を決める・元素の表
- 時間依存 GL と集団励起
- 非線形応答と 3 次高調波
- BCS 平均場と転移温度
- Anderson の擬スピンと Higgs 振動
- 南部と自発的対称性の破れ
- 自発的対称性の破れ ≡ 虚数振動数を有するフォノン
- 文献調査:フォノンの Higgs/Goldstone モード
- 実装ノート
- 参考文献
1. 秩序パラメーターと U(1) 対称性
Landau の相転移理論では,相転移は「秩序パラメーター」が 0 から有限の値になることで記述されます.超伝導の秩序パラメーターは Cooper 対の凝縮を表す複素数の場 ψ(r) で,
BCS 理論の言葉ではギャップ関数 Δ = (V/N)Σk⟨c−k↓ck↑⟩ に比例します(§6).電子を 2 個消す演算子の期待値なので,電子数を固定した状態では 0 になるはずのものが有限になる ― これは「電子数の不定性」を許すこと,
すなわち電荷保存に対応する U(1) 対称性 c → eiαc(ψ → e2iαψ)を状態が破っていることを意味します.講義の言葉では,自由エネルギーが「ψ → eiθψ の U(1) 変換と,ψ ↔ ψ† の粒子・正孔変換で不変」であることが GL 理論の出発点です.
自由エネルギーは対称でも,最小の状態は対称ではない(ひとつの位相を選ぶ).これが自発的対称性の破れで,以下で見るように,破れた状態のまわりには必ず二種類の揺らぎ ― 対称性を回復する方向(位相)と,秩序の大きさを変える方向(振幅)― が現れます.
2. Ginzburg–Landau の自由エネルギー ― メキシコ帽が椀になる
2.1 自由エネルギー汎関数(講義の式 (1))
秩序パラメーターが小さい Tc 近傍では,自由エネルギー密度を |ψ|² の冪と勾配で展開できます.電磁場と結合した GL の自由エネルギー密度は(講義は ħ = 1;ここでは ħ を残します)
(1)
m* と e* は「有効質量」「有効電荷」で,Gor'kov の微視的導出(§6.3)から Cooper 対の m* = 2m,e* = 2e です.
第 3 項は運動エネルギーで,ゲージ変換 A → A + ∇χ,ψ → eie*χ/ħψ で不変になるように書かれています.最後の項は磁場のエネルギーです(講義では省略).
(2)
一様(∇ψ = 0)で磁場のないとき f = a|ψ|² + (b/2)|ψ|⁴ です.b > 0 は必要(そうでないと |ψ| → ∞ で発散)で,a の符号が相を決めます:a > 0 なら最小は ψ = 0(常伝導),a < 0 なら
(3)
a < 0 のとき,最小は ψ = 0 ではなく,複素平面で半径 √(−a/b) の円全体です.|ψ| を水平の距離,f を高さにとると「メキシコ帽」:中心が盛り上がり,縁が窪んでいる.
縁のどの点(どの位相 θ)も同じエネルギーなので,系はそのうちの一つを選ぶ ― U(1) 対称性の自発的破れです.
Landau は a が Tc で符号を変えると仮定し,最も簡単に a = a₀(T − Tc) とおきます(Gor'kov の導出で a₀ = N(0)/Tc,§6.3).
温度を上げると |a| が減って縁の半径が縮み,帽子が平らになって,T = Tc で中心の曲率が 0,T > Tc で椀になります.「U(1) 対称性の破れた状態が温度とともに不安定化する」とは,帽子の縁が中心に向かって縮んで消えることです.
▶ シミュレーター①:メキシコ帽と温度
2.2 GL 方程式と超伝導電流
ψ* と A で (1) を変分すると,GL 方程式と電流密度が出ます(講義の式 (3)).
(4)
2.3 London 方程式と Meissner 効果
|ψ| が一様(|ψ|² = ns)で位相も一定なら,(4) の電流は第 2 項だけになります(講義の式 (4)–(5)):
(5)
電流がベクトルポテンシャルに比例する ― これが London 方程式で,Maxwell 方程式 ∇×B = μ₀j と組み合わせると磁場が表面から侵入長 λ で指数関数的に減衰する Meissner 効果が出ます.
Cooper 対の m* = 2m,e* = 2e,ns = n/2(対の密度)を入れると λ = √(m/μ₀ne²):元素金属で 10–50 nm です.
講義はこれを光学伝導度で言い換えます:σ(ω) = D[δ(ω) + i/(π(ω + i0))] の Drude 重み D = πe*²ns/m* が有限で,dc 極限で虚部が発散する(完全導電性)ことと Meissner 効果は同じ式 (5) の帰結です.
2.4 コヒーレンス長・侵入長・κ・臨界磁場
(4) を Tc 近傍で線形化すると,ψ の空間変化のスケールが決まります.
(6)
ξ は秩序パラメーターが変化できる最短の長さ(帽子の縁に沿った勾配項の硬さ),λ は磁場の侵入長,κ は温度に依らない比で,κ < 1/√2 なら第一種(磁場を完全に排除するか常伝導に戻るか),κ > 1/√2 なら第二種(渦糸が侵入)です.
Hc は凝縮エネルギー −a²/2b を磁場のエネルギーで測ったもの(熱力学的臨界磁場)で,磁束量子 Φ₀ = h/2e を使うと μ₀Hc = Φ₀/(2√2 π λ ξ) とも書けます.
3. 実測値から GL の係数を決める ― 12 元素の表と,ベクトルポテンシャルの効果
3.1 Hc(0) と λ(0) から a, b へ
GL 理論は Tc 近傍の理論ですが,教育目的には「実在の超伝導体の帽子はどれくらいの深さか」を知りたい.そこで (3)・(5)・(6) の関係を T = 0 まで線形に外挿し,実測の臨界磁場と侵入長から係数を決めます:
(7)
(8)
m* = 2me,e* = 2e を使うと ns(0) = me/2μ₀e²λ²,つまり London の λ を伝導電子の半分の密度で説明する形です.
結果を表にまとめます(シミュレーター①のプリセットと同じ値).Pb を例にとると a(0) ≈ −3 µeV,b ≈ 0.3 µeV nm³,凝縮エネルギー密度 2.6 kJ/m³ = 1 対あたり 1.5 µeV:Fermi エネルギー(数 eV)の 10−6 倍しかなく,超伝導が「弱い」秩序であることがわかります(Δ²/εF の桁).
| 元素 | Tc (K) | μ₀Hc(0) (mT) | θD (K) | λ(0) (nm) | ξGL(0) (nm) | κ | ns(0) (10²² cm⁻³) | a(0) (µeV) | b (µeV nm³) | fc (J/m³) | N(0)V | λep | Δ(0) (meV) | 2Δ/kBTc 実測 |
| Al | 1.140 | 10.5 | 428 | 16 | 1385 | 0.012 | 5.5 | −0.00993 | 0.00018 | 44 | 0.165 | 0.43 | 0.173 | 3.40 |
| Ga | 1.091 | 5.1 | 320 | 16† | 2798 | 0.0058 | 5.3 | −0.00243 | 0.000046 | 10 | 0.172 | 0.45 | 0.166 | ― |
| In | 3.404 | 29.3 | 108 | 30 | 265 | 0.11 | 1.6 | −0.272 | 0.017 | 340 | 0.279 | 0.80 | 0.517 | 3.60 |
| Tl | 2.390 | 17.1 | 78.5 | 22† | 620 | 0.035 | 2.9 | −0.0495 | 0.0017 | 120 | 0.276 | 0.79 | 0.363 | 3.57 |
| Sn | 3.722 | 30.9 | 200 | 34 | 222 | 0.15 | 1.2 | −0.388 | 0.032 | 380 | 0.243 | 0.66 | 0.566 | 3.50 |
| Pb | 7.193 | 80.3 | 105 | 37 | 78 | 0.47 | 1.0 | −3.11 | 0.30 | 2600 | 0.356 | 1.24 | 1.093 | 4.38 |
| Zn | 0.875 | 5.3 | 327 | 18† | 2507 | 0.0070 | 4.6 | −0.00303 | 0.000066 | 11 | 0.165 | 0.43 | 0.133 | 3.20 |
| Cd | 0.560 | 3.0 | 209 | 110 | 705 | 0.16 | 0.12 | −0.0383 | 0.033 | 3.6 | 0.165 | 0.43 | 0.085 | 3.20 |
| Hg | 4.153 | 41.2 | 72 | 26† | 216 | 0.12 | 2.1 | −0.409 | 0.020 | 680 | 0.336 | 1.10 | 0.631 | 4.60 |
| V | 5.380 | 142.0 | 380 | 50† | 33 | 1.5 | 0.57 | −17.4 | 3.0 | 8000 | 0.228 | 0.61 | 0.818 | 3.40 |
| Nb | 9.500 | 198.0 | 275 | 39 | 30 | 1.3 | 0.93 | −21.0 | 2.3 | 16000 | 0.286 | 0.83 | 1.444 | 3.80 |
| Ta | 4.483 | 83.0 | 240 | 35 | 80 | 0.44 | 1.2 | −2.97 | 0.26 | 2700 | 0.244 | 0.66 | 0.681 | 3.60 |
データの出典と推定値(† 印)
Tc・Hc(0)・実測の 2Δ/kBTc は Kittel『固体物理学入門』の表,θD は Webb–Marsiglio–Hirsch (2015) Table III.
λ(0) は Kittel(Meservey–Schwartz の表:Al は London 値 16 nm,Sn 34,Pb 37,Cd 110,Nb 39),In は弱磁場侵入の直接測定 29.9 nm(Raychaudhuri ら 1985),Ta は 33–35 nm(McEvoy ら 1969,Auer–Ullmaier 1973).
† のうち Ga・Tl・Zn・Hg は実測値が手元の文献にないため,自由電子の London 値 √(m/μ₀ne²)(Ashcroft–Mermin の n)に電子格子相互作用による質量増強 √(1 + λep) を掛けた推定値,V は κ = 1.5(Radebaugh–Keesom 1966,比熱の混合状態解析)と Hc(0) から (8) で逆算した値です.
ξGL(0) は (8) で計算した GL の長さで,clean 極限の Pippard 長 ξ₀ = ħvF/πΔ(0) とは ξGL(0) ≈ 0.74 ξ₀ の関係(Al 1600,Sn 230,Pb 83,Cd 760,Nb 38 nm の実測とおおむね整合).
実験値自体に 2 倍程度の幅があること(Kawamura ら 2026 の Table I に整理)に注意.N(0)V は BCS 式,λep は McMillan 式(μ* = 0.13)を Tc について逆解きした値(§6.2).
3.2 一様なベクトルポテンシャル ― 超流動速度と対破壊
講義の式 (1) の運動項に,位相が一定で一様な A を入れてみます.ゲージ不変な組合せは A − (ħ/e*)∇θ なので,一様な A は「位相の勾配」すなわち超流動速度 vs をもつ状態と同じです:
(9)
(10)
運動エネルギーが |ψ|² の係数に足されるので,一様な A(超流動)は帽子を平らにし,A = Ac で aeff = 0 となって超伝導が消えます(実際の対破壊電流は j が最大になる ½m*vs² = |a|/3 で,jdp = Φ₀/(3√3 π μ₀λ²ξ)).
シミュレーター①では |A| を ħ/2eξ(0) を単位に動かせます.Pb で A ≈ 4 T·nm,vs ≈ 1 km/s,j ≈ 10⁸ A/cm² の桁になり,第一原理計算の対破壊電流(Kawamura ら 2026:Pb 1.5×10⁸ A/cm²)と合います.
なお e* = 0 の中性超流動体では A は結合しませんが,位相勾配 ∇θ による同じ効果(Landau の臨界速度の GL 版)が残ります.
4. 時間依存 GL 理論と集団励起 ― Higgs モード,南部–Goldstone モード,Anderson–Higgs 機構
4.1 時間依存 GL の Lagrangian(講義 §2.2)
秩序パラメーターのダイナミクスを扱うには,自由エネルギー (1) に時間微分の項を足した Lagrangian を考えます.講義の式 (9) は(ħ = 1)
(11)
c₁ の項は時間 1 階(Gross–Pitaevskii 型・Schrödinger 型),c₂ の項は時間 2 階(Klein–Gordon 型)です.
ゲージ変換 A → A + ∇χ,φ → φ − ∂tχ,ψ → eie*χψ で不変になるように電磁ポテンシャルが組み込まれています.
講義の脚注が強調するように,時間依存 GL をミクロから正当化できるのはギャップレス超伝導体など限られた場合で,しかもそのとき出てくる時間微分項は減衰項(∝ −∂tψ)になり振動を記述できません.ここでは現象論として「おおらかに」扱います(§7 でミクロな理論に置き換えます).
4.2 振幅と位相 ― Higgs モードと南部–Goldstone モード
基底状態 ψ₀ = √(−a/b)(正の実数にとる)からのずれを,振幅と位相に分けて書きます(講義の式 (10)).
(12)
これを (11) に代入して展開すると(講義の式 (11))
(13)
- 初項 2aH² は Higgs モードの質量項です(a < 0 なので −2|a|H²,つまり H に復元力が働く).エネルギーギャップは ∝ (−2a)1/2 ∝ (Tc − T)1/2.帽子の絵では,縁の位置で「縁と直角の方向」の曲率です.第二項は Higgs モードの運動項.
- 位相 θ には質量項(∝ θ²)がありません.帽子の縁に沿った方向にはエネルギーの勾配がないからで,これは連続対称性が自発的に破れると必ずギャップレスのモードが現れるという Goldstone の定理そのものです.電荷中性(e* = 0)の超流動体では実際にギャップレスの位相モードが存在します(Anderson–Bogoliubov モード,⁴He の第一音波・冷却原子の音波).
- 位相と振幅は第四項から出る −(2c₁/e*) ∂tθ ψ₀H で線形に混成します.二つが独立なモードになるには c₁ = 0 が必要で,c₁ の項は粒子・正孔対称性を破るので,「振幅モードと位相モードの分離には粒子・正孔対称性が要る」と言われます(Pekker–Varma).超伝導体では Fermi 準位のまわりの低エネルギーで粒子・正孔対称性が近似的に成り立つので c₁ を無視できます.
4.3 Anderson–Higgs 機構 ― 位相モードが電磁場に「食べられる」
電荷をもつ超伝導体(e* ≠ 0)では,θ は A − ∇θ/e* または φ + ∂tθ/e* の組合せでしか現れません.
したがってゲージ変換 A → A − ∇θ/e*,φ → φ + ∂tθ/e*(ユニタリーゲージ)で θ を表面上消してしまえます.新しいポテンシャルを再び A,φ と書くと(講義の式 (12))
(14)
位相モード θ が消え,代わりに電磁場の質量項 ∝ e*²ψ₀²A²/2m* が第三項に現れました.これが Anderson–Higgs 機構です(Anderson 1958, 1963;Englert–Brout,Higgs,Guralnik–Hagen–Kibble 1964).
電磁場が質量をもつということは,超伝導体の中を電磁場が真空のように自由に伝搬できないことで,Meissner 効果そのものです(§2.3 の London 方程式は,この質量項を A で微分したもの).
質量をもった電磁場には横波 2 成分に加えて縦波(伝搬方向に偏極した成分)が現れるので,モードの数は
(15)
と数が合います(講義の式 (13)).物理的には,位相モードは長距離の Coulomb 相互作用と混じってプラズマ振動数 ωp(元素金属で ħωp ≈ 10 eV,2Δ の 10³–10⁴ 倍)まで押し上げられ,低エネルギーには残りません.
残るのは Higgs モードだけで,これが通常の超伝導体で低エネルギーに現れる唯一の秩序パラメーターの集団励起です(シミュレーター③の励起スペクトル).
臨界温度の近くでは熱励起された常伝導電子が電磁場を遮蔽して位相モードが復活することがあり,Carlson–Goldman モード(1975)と呼ばれます.
4.4 Higgs モードの分散関係とギャップ 2Δ
c₁ = 0 とおいて (14) から H の Euler–Lagrange 方程式を作ると(講義の式 (14))
(16)
電磁場のないとき,平面波 H ∼ eiq·r − iωt を入れると Higgs モードの分散と,そのギャップが得られます(講義の式 (15)–(16)).
(17)
時間依存 GL 理論からはギャップの値そのものは決まりませんが,ミクロな計算(§7)から ωH = 2Δ(Cooper 対を壊して準粒子が励起され始めるエネルギーと同じ)であることが知られています.
GL 理論をミクロから導く(Gor'kov)と,係数 b について b(ψ₀/Δ)² = 3/4εF が成り立つので(講義の式 (18)),ωH = 2Δ と組み合わせて c₂ が決まります(講義の式 (19)):
(18)
Cooper 対なので m* = 2m,εF = ½mvF² を使えば,Higgs モードの分散はミクロな量だけで書けます(講義の式 (20);Littlewood–Varma 1982 がミクロな計算で得た結果と一致).
(19)
Higgs モードのギャップ 2Δ は準粒子連続体の下端と同じなので,Higgs モードは連続体に「接して」おり,準粒子に減衰しやすい(§7.3 の t−1/2 減衰).これが超伝導体で Higgs モードの観測が難しい理由です.
▶ シミュレーター③:励起スペクトルと Anderson–Higgs 機構
5. 非線形応答 ― Higgs モードはなぜ光で直接見えないか,3 次高調波の共鳴
(14) を見ると,Higgs モード H と電磁場 (A, φ) の間に線形の結合はありません(A²H,φ²H の形だけ).Higgs モードは電荷も磁化ももたないので,線形応答(通常の吸収スペクトル)では励起できないのです.
励起するには A²H の非線形結合=2 光子吸収を使います:周波数 Ω の光子 2 個が周波数 2Ω の Higgs モードを作る(講義の図 3).
単一周波数の一様な外場 A(t) = A₀e−iΩt,φ = 0 を (16) に入れると(講義の式 (21)–(22))
(20)
Higgs 場は周波数 2Ω で振動し,2Ω = ωH = 2Δ で共鳴して振幅が発散します.観測量はカレントで,(14) から j = ∂L/∂A = −(2e*²ψ₀/m*)AH + ⋯(講義の式 (23)).
(20) を代入すると(講義の式 (24))
(21)
外場の周波数 Ω と Higgs モードの 2Ω が合わさって,カレントは 3Ω で振動する ― 3 次高調波発生です(講義の図 4).Higgs モードの共鳴で 3 次高調波の強度が発散的に増大するので,
周波数を固定したテラヘルツ光を当てて温度を掃引し,2Δ(T) = 2Ω となる温度で 3 次高調波が増大することを NbN 薄膜で観測したのが Matsunaga ら (2014) の実験です.
BCS 理論では準粒子への減衰が入るため発散の冪が |2Ω − 2Δ|−1/2 に弱まり,共鳴点で位相が π/2 跳びます(§7.4,講義の図 7).
3 次高調波を Higgs モードが担うか準粒子(Cooper 対破壊)が担うかは偏光依存性で区別され,clean 極限では準粒子が支配的という指摘(Cea–Castellani–Benfatto 2016)と,実験の偏光無依存性(Matsunaga ら 2017)との齟齬は,不純物による常磁性結合(p·A 型)を取り込むことで解決されました(Tsuji–Nomura 2020:NbN では主に Higgs モード).
▶ シミュレーター③:3 次高調波の共鳴
6. BCS 平均場 ― ギャップ方程式,転移温度,GL との対応
6.1 BCS ハミルトニアンと南部スピノル(講義 §3.1)
フォノンなどに媒介された引力で,運動量 k・スピン ↑ と −k・↓ の電子が Cooper 対を作って凝縮するのが BCS 理論です.対と対の間の散乱だけを残したハミルトニアン(講義の式 (25))を平均場近似し,ギャップ関数 Δ = (V/N)Σk⟨c−k↓ck↑⟩ を定義すると(講義の式 (27)–(28))
(22)
Δ/V = (1/N)Σ⟨c−k↓ck↑⟩ は Cooper 対の凝縮密度で,GL 理論の ψ(r) に相当します.2 成分の南部スピノル ψk と 2×2 行列 hk で書けることが,Anderson の擬スピン(§7)と,Dirac 方程式との類似(南部の着想,§8)の出発点です.
hk を対角化すると準粒子エネルギー Ek± = ±√(εk² + Δ²):Fermi エネルギーの上下に 2Δ のギャップが開きます.
6.2 ギャップ方程式と転移温度
Δ を自己無撞着に決めると(講義の式 (32))
(23)
右の形は,状態密度を Fermi 準位の値 N(0)(片スピン)で一定とし,引力の働く範囲をフォノンのカットオフ ħωD(Debye エネルギー)で切ったものです.T = 0 では積分ができて
Δ = ħωD/sinh(1/N(0)V),弱結合 N(0)V ≪ 1 で(講義の式 (33))
(24)
Tc は Δ(T) = 0 になる温度で,(23) に Δ = 0 を入れて解けば得られます(γ = 0.5772 は Euler の定数).
e−1/x は x = 0 で全ての導関数が 0 になる非解析的な関数で,どんなに弱い引力でも超伝導になるが,摂動論では決して出てこないことを意味します.
ħωD ≈ 数 10 meV,指数因子で 1–2 桁下がって Δ ≈ 0.1–1.5 meV(Al 0.17,Pb 1.09,Nb 1.44 meV;2Δ にして 0.05–0.7 THz),というのが元素超伝導体のスケールです.
シミュレーター②は (23) を Simpson 法と 2 分法で数値的に解き,Δ(T) と Tc を求めています(弱結合式との差は N(0)V ≈ 0.4 の Pb でも数 %).
実測の 2Δ(0)/kBTc は Al 3.4,Sn 3.5,In 3.6,Nb 3.8 とほぼ BCS 値ですが,Pb 4.38,Hg 4.6 は大きく外れます.これは電子格子相互作用が強く(λ ≈ 1),フォノンの遅延効果を取り込んだ Eliashberg 理論が要る強結合超伝導体です.
その効果を経験的にまとめた McMillan の式(1968)が
(25)
で,λ = 2∫dω α²F(ω)/ω が電子格子結合定数,μ* ≈ 0.1–0.15 が Coulomb 斥力の擬ポテンシャルです.McMillan 自身は実測の Tc と θD からこの式を逆解きして各元素の λ を求めました(Pb 1.12,Hg 1.0,Nb 0.82,Al 0.38 程度).
シミュレーター②のプリセットも同じ手順で λ を逆算しています(μ* = 0.13).なお,BCS 論文の表(Kittel に転載)の N(0)V(Al 0.18,Sn 0.25,Pb 0.39 など)も (24) を θD と Tc について逆解きしたもので,θD の取り方(Al で 375 K と 428 K)が違えば得られる N(0)V も変わり,BCS 表の 0.18 と本表の 0.165 というわずかな差が,予言する Tc を 5 割以上変えます ― 指数関数の敏感さです(シミュレーター①の BCS 欄).
6.3 GL との対応 ― Gor'kov の導出
Gor'kov (1959) は Tc 近傍で BCS 理論から GL 方程式を導き,ψ が Δ に比例すること,e* = 2e,m* = 2m であることを示しました.ψ を Δ そのものにとる規格化では
(26)
すなわち Tc 近傍で Δ(T) ≈ 3.06 kBTc√(1 − T/Tc)(ζ(3) = 1.202).シミュレーター②の読み出しで,0.9Tc における数値解と比べられます.
同じ導出から,clean 極限で ξ(T) = 0.74 ξ₀/√(1 − T/Tc)(ξ₀ = ħvF/πΔ(0) は Pippard–BCS のコヒーレンス長),λ(T) = λL(0)/√(2(1 − T/Tc)) が出ます.
§3 の「Hc(0) と λ(0) から a(0),b を決める」やり方は,この Tc 近傍の関係を T = 0 まで線形に外挿したものです.
▶ シミュレーター②:ギャップ方程式・McMillan 式・元素の表
7. Anderson の擬スピンと Higgs モードの振動(講義 §3.2)
7.1 時間依存 BdG 方程式と擬スピン
南部スピノルの時間発展 i∂tψk = hkψk(時間依存 Bogoliubov–de Gennes 方程式,講義の式 (34))で,各時刻に Δ(t) を自己無撞着に決めながら進めるのが時間依存平均場理論です.
同時刻の 2 点相関関数 σkα = ½⟨ψk†ταψk⟩(α = x, y, z)を用意すると,これはスピン演算子の期待値の形をしているので Anderson の擬スピン(1958)と呼ばれます.運動方程式は Bloch 方程式の形になります(講義の式 (37)–(38)):
(27)
有効磁場 bk に Δ 自身が入るので非線形です(可積分であることが知られています:Barankov–Levitov–Spivak 2004,Yuzbashyan ら 2005).
平衡状態は σkx = (Δ/2Ek)tanh(βEk/2),σy = 0,σz = −(εk/2Ek)tanh(βEk/2).
z 成分は各 k の占有(運動量分布),x, y 成分は位相込みの Cooper 対密度です.常伝導では εk = 0 を境に上下を向くドメイン構造,超伝導では境界付近で幅 ~Δ にわたってねじれた構造になります(講義の図 5,シミュレーター②の左下図).
7.2 線形化と Anderson の条件 ― Higgs モードの固有振動数 2Δ
平衡からのずれ δσk,δΔ(実にとる)について線形化すると(T = 0,講義の式 (40)–(42))
(28)
Fourier 変換して自己無撞着条件 δΔ = (V/N)Σδσx と連立すると,非自明な解の条件は(講義の式 (45))
(29)
ω = 2Δ を入れるとギャップ方程式 (23) に一致するので,周波数 2Δ の固有振動モードが存在します.これがギャップ関数の振幅の振動=GL の Higgs モードです.
この指摘は Anderson (1958) によるもので,素粒子論で Higgs 粒子を予言した Higgs の論文(1964)より先です.
7.3 相互作用クエンチ ― 2Δ で振動し t−1/2 で減衰する
T = 0 の平衡状態から t = 0 で引力を V → V + δV と急に変える(クエンチ)と,自己無撞着条件が δΔ(t) = (Δ/V)δV + (V/N)Σδσx に変わり(講義の式 (46)),Volkov–Kogan (1974) の Laplace 変換法で解けます.長時間の漸近形は(講義の式 (51))
(30)
ギャップの振幅は周波数 2Δ で振動し,振幅は t−1/2 で冪的にゆっくり減衰します(講義の図 6).衝突項がないのに減衰するのは,各擬スピンが k ごとに違う周波数 2Ek で歳差運動して位相がばらける「Landau 減衰」型の機構です.ただし可積分性のため系全体は熱平衡化しません.
テラヘルツポンプ・プローブ分光でポンプ光をクエンチとみなすと,NbN でギャップが 2Δ の周期で振動しながら減衰する様子が観測されています(Matsunaga ら 2013).
シミュレーター②の右下図は,線形化した (28) を 300 点の k 格子で RK4 積分したもので,(30) の漸近形(灰色の破線)に乗ることが確かめられます.
7.4 振動電場による駆動と 3 次高調波(BCS 版)
電場を Peierls 位相 εk−A(t) で入れると(講義の式 (52)–(54)),有効磁場の z 成分は A について偶関数になり,秩序パラメーターは電場の 2 乗と結合します(GL の 2 光子吸収と整合).
長時間の結果(講義の式 (55))は,クエンチと同じ t−1/2 項に加えて 2Ω で振動する項をもち,2Ω = 2Δ で共鳴しますが,発散の冪は GL の |2Ω − 2Δ|−1 から |2Ω − 2Δ|−1/2 に弱まり,位相は共鳴点で π/2 だけ跳びます(講義の図 7;Tsuji–Aoki 2015).
これは BCS では Higgs モードが極ではなく分岐点に対応する(準粒子連続体と縮退している)ためです.カレントの 3 次成分は j(3)(t) = (2/V)ΔδΔ(t)A(t) + (K/6)A(t)³(講義の式 (58),立方格子で (1,1,1) 偏光)で,GL の (21) と同様に δΔ に比例する項が 3 次高調波の共鳴を担います.
8. 南部と「自発的対称性の破れ」― 超伝導から素粒子論へ
南部陽一郎の 2008 年ノーベル物理学賞の授賞理由は「素粒子物理学における自発的対称性の破れの機構の発見」ですが,その出発点は超伝導理論でした.ノーベル講演(Rev. Mod. Phys. 81, 1015 (2009))で本人が語る経緯は次のとおりです.
- 1956 年,シカゴで Schrieffer が後に BCS 理論と呼ばれることになる理論のセミナーをした.南部は状態ベクトルの大胆さに感銘を受けつつ,それがゲージ不変性を尊重していないように見えることを心配した.
- ほどなく Bogoliubov と Valatin が準粒子を導入したが,準粒子は電子と正孔の重ね合わせで定まった電荷をもたない.それなら Meissner 効果のような電磁的性質を BCS 理論で議論してよいのか? 自分なりに納得するのに 2 年かかった.
- 答え(南部 1960, Phys. Rev. 117, 648):ゲージ不変性(電荷保存)を救っているのは質量ゼロの集団モードで,それは失われた対称性を回復しようとする励起(長波長極限でエネルギー → 0)である.今日それは南部–Goldstone ボソンと呼ばれる.さらにこのモードは Coulomb 相互作用と混じってプラズモン ωp² = ne²/ε₀m になる ― §4.3 の Anderson–Higgs 機構の原型です.
- Bogoliubov–Valatin 方程式が Dirac 方程式に形式的に似ていることから,南部は BCS 理論を素粒子論に移した:ギャップ Δ は核子の質量 M に,電磁カレントは軸性カレントに,カイラル対称性が破れて核子が質量を得,π 中間子がその南部–Goldstone ボソン(対称性が厳密なら質量ゼロ)になる.Jona-Lasinio との具体模型(南部–Jona-Lasinio 模型,1961)は BCS 模型と同じ形をしている.
- 「連続対称性が自発的に破れると必ずギャップレスのモードが現れる」は Goldstone (1961) と Goldstone–Salam–Weinberg (1962) で定理になり,ゲージ場があるとそのモードがゲージ場に吸われて質量が生じることを Anderson (1963) が超伝導(プラズモン)で指摘し,Englert–Brout,Higgs,Guralnik–Hagen–Kibble (1964) が相対論的に定式化して Weinberg–Salam の電弱統一理論(1967)に使われた.Nobel 講演では「WS 理論は GL 理論に似ており,NJL 模型は Gell-Mann–Lévy 模型に移行する.この類似が本物なら Higgs 場は背後にある力学の有効記述かもしれない」とも述べています.
- 講演の最後で南部は「BCS 機構はフェルミオンに質量ギャップを作り,低エネルギーのボソンとして南部–Goldstone モードと Higgs モードを生む.そのボソンがさらに次の対称性の破れを引き起こす(tumbling)」として,「原子 → 結晶 → フォノン → 超伝導」の連鎖を例に挙げます:結晶ができるときの南部–Goldstone モードがフォノンで,そのフォノンが Cooper 対を作らせて超伝導を起こす.これは §9 の主題そのものです.
用語の整理
南部–Goldstone モード=位相 θ の振動(縁に沿う,質量ゼロ).超伝導体ではプラズモンに変わる.
Higgs モード=振幅 |ψ| の振動(縁と直角,ギャップ 2Δ).超伝導体で Anderson (1958) が指摘.
Anderson–Higgs 機構=ゲージ場が南部–Goldstone モードを吸って質量をもつこと=Meissner 効果.
素粒子論の Higgs ボソンは Higgs モードの,W・Z ボソンの質量は Anderson–Higgs 機構の,π 中間子(と核子質量)は南部–Goldstone モード(と Δ)の,それぞれ相対論版です.
9. 自発的対称性の破れは「虚数振動数を有するフォノン」と本質的に同じもの
9.1 構造相転移の Landau 理論とソフトモード
構造相転移の秩序パラメーターは原子変位のパターン Q(高対称構造の格子振動のうち,転移で凍結する 1 つのモードの振幅)です.Landau の自由エネルギーは
(31)
で,式 (1) と同じ形です(a ↔ ½A(T − T₀),b/2 ↔ ¼B).T > T₀ では Q = 0 の高対称構造が安定で,Q の振動はモードの有効質量 M を使って
(32)
と,転移点に向かって軟化します(Cochran 1960 のソフトモード;Scott 1974 の総説).T < T₀ で高対称構造のまま調和近似をすると Mω² = A(T − T₀) < 0,つまり振動数が虚数です.
なぜ ω² が温度に比例するのか,そして 0 K の近くで比例が崩れるのか
Mω² = A(T − T₀) の線形則は,4 次の非調和項が熱的な原子変位の 2 乗平均を通じてソフトモードを硬くすることから出ます:ω²(T) = ωharm² + g⟨u²⟩.古典領域では等分配で ⟨u²⟩ ∝ kBT なので ω² は T に比例し,ωharm² < 0(T = 0 の DFT が与える負の曲率)を T₀ で打ち消します.量子的には ⟨u²⟩ = (ħ/2MΩ)coth(ħΩ/2kBT) で,0 K に近づくと零点振動の値に留まるため ω² の温度依存性は寝てきます(Barrett の式 ω² ∝ (T₁/2)coth(T₁/2T) − T₀,Barrett 1952).寝たところで ω² が正のままなら転移は起こらず,SrTiO₃・KTaO₃ の量子常誘電(Müller–Burkard 1979)になります.組成で量子常誘電へ渡る実例として,Li₂Sr(Nb1−xTax)₂O₇ では Ta 量 x を増やすと弱い強誘電転移の温度が 220 K(x = 0)から 40 K(x = 0.3)へ下がり,x = 0.4 で転移が消えて incipient ferroelectric になります(Nagai, Mochizuki ら 2020:Barrett の式で解析).シミュレーター④では「量子ゆらぎ T₁/T₀」のスライダーで Barrett の飽和を入れられます:実効的な ã = (θ/2)coth(θ/2τ) − 1(θ = T₁/T₀,τ = T/T₀)で,古典の参照線と量子飽和込みの ω² を重ね,転移温度は Tc/T₀ = θ/ln((2 + θ)/(2 − θ)),θ ≥ 2 では転移が起こらず単一井戸のままになります(SrTiO₃ 相当のプリセット).
9.2 DFT の「虚数振動数を有するフォノン」=帽子の中心の負の曲率
第一原理計算(DFPT や phonopy の有限変位法)で高対称構造のフォノンを計算し,動力学行列の固有値 ω² が負になる枝が出ることがあります.慣習的に −√|ω²| として負の振動数で表示される,いわゆる虚数振動数を有するフォノンです.
これは (32) の T = 0 における値 Mω² = −AT₀ そのもので,帽子の中心(対称な構造)でエネルギー面が下に凸でないこと,すなわち対称な構造が不安定で対称性が自発的に破れることを意味します.
実際の計算では,虚のモードの固有ベクトルに沿って原子を動かしてエネルギーを下げていくと帽子の縁(Q = ±Q₀ = ±√(AT₀/B) の低対称構造)に落ち,そこで再びフォノンを計算すると虚のモードは消えて,
(33)
という実の振動数の振幅モードが現れます.これは §4.2 の Higgs モードの質量項 2aH²(ポテンシャルの曲率 ∂²/∂H² は −4a)とまったく同じ計算です:a ↔ ½A(T − T₀) を入れると −4a = 2A(T₀ − T) で,係数まで一致します.対応をまとめると次の表になります.
| 超伝導(GL) | 格子(Landau・ソフトモード) |
| 秩序パラメーター ψ = |ψ|eiθ(複素,U(1)) | ソフトモードの振幅 Q(実:Z₂)または 2 成分 (Q₁, Q₂)(U(1) 様) |
| a = a₀(T − Tc) | ½A(T − T₀) = ½Mωsoft²(高対称構造の調和近似) |
| a < 0:ψ = 0 が不安定(帽子の中心) | ω² < 0:虚数振動数を有するフォノン(DFT の負の振動数) |
| |ψ|₀ = √(−a/b) ∝ (Tc − T)1/2 | Q₀ = √(A(T₀ − T)/B):歪んだ低対称構造 |
| 凝縮エネルギー −a²/2b = −μ₀Hc²/2 | 歪みによるエネルギー利得 −A²(T₀ − T)²/4B(DFT の ΔE) |
| Higgs モード ωH² ∝ −2a(ミクロには 2Δ) | 振幅モード MωA² = 2A(T₀ − T):低対称相の全対称(A₁)フォノン,Raman 活性 |
| 南部–Goldstone モード(位相 θ,ω = 0) | Z₂:存在しない(最小は 2 点)/U(1):phason・Goldstone フォノン(異方性で擬 Goldstone) |
| Anderson–Higgs 機構(位相が電磁場に吸われて ωp) | 対応するゲージ場はない.ただし phason は不純物のピン止め・整合性で質量を得る |
| 線形応答では Higgs は見えない(A²H 結合) | A₁ モードは Raman 活性(E²Q 結合=同じ 2 次の結合)で直接見える |
| |ψ|² は 1 対あたり µeV の凝縮エネルギー | 歪みのエネルギーは原子あたり meV–100 meV |
この意味で,超伝導の自発的対称性の破れと「虚数振動数を有するフォノン」は本質的に同じ現象です:どちらも対称な状態でエネルギー面の曲率が負になり(Landau の a < 0),系が有限の秩序パラメーターをもつ状態に落ちる.Higgs モードは新しい平衡点のまわりの「縁と直角」の振動で,超伝導ではそれが 2Δ の Cooper 対振幅の振動,格子では低対称相の A₁ フォノンです.
南部が講演で挙げた「原子 → 結晶 → フォノン → 超伝導」の連鎖は,結晶化(並進対称性の破れ)の Goldstone モードが音響フォノンであることまで含めて,この対応を言い表しています.
9.3 違うところ ― Z₂ か U(1) か,そしてゲージ場
- 対称性の種類:超伝導の ψ は複素数なので破れる対称性は連続な U(1) で,位相の南部–Goldstone モードが必ず出ます.一方,ひとつの実の秩序パラメーター Q(例:ペロブスカイトの八面体回転,強誘電歪み,Peierls 二量化)で起こる構造相転移は Q → −Q の離散対称性 Z₂(またはより大きな離散群)の破れで,最小は帽子の縁ではなく孤立した点です.
したがって振幅モード(Higgs の相当物)はあるが Goldstone モードはありません.Goldstone フォノンが出るのは,秩序パラメーターが 2 次元以上の既約表現に属し,低次の Landau 展開が回転対称(U(1) 様のメキシコ帽)になる特別な場合です(§10).
- ゲージ場:格子には電磁場に相当するゲージ場がないので Anderson–Higgs 機構はなく,U(1) 様の場合の Goldstone フォノンは(結晶の離散性による異方性を除けば)本当にギャップレスです.電荷密度波の phason は不純物にピン止めされて質量をもちますが,これはゲージ場ではなく並進対称性の明示的な破れによるものです.
- 質量の重みづけ:Higgs/Goldstone は自由エネルギーの曲率(力定数行列)の固有ベクトルですが,フォノンは動力学行列 Φij/√(MiMj) の固有ベクトルです.原子の質量が全部同じでない限り両者は一致せず,Higgs/Goldstone は同じ既約表現のフォノン群に分配されます(Meier ら 2020).
- ミクロな正体:超伝導の Higgs モードのギャップ 2Δ は準粒子連続体の下端と一致し,準粒子に減衰します(§4.4,§7.3).格子の振幅モードは別の連続体に埋もれているとは限らず,孤立した鋭い Raman ピークとして観測できることが多い.逆に格子では 4 次の項 B や 6 次の異方性が大きく,高温では変位型でなく秩序–無秩序型(各サイトの Q がすでに ±Q₀ に落ちていてドメインが揺らぐ)になってソフトモードが見えないこともあります.
DFT で虚数振動数を有するフォノンを扱う手順(対応の実践)
(1) 高対称構造でフォノンを計算し,虚のモードとその既約表現(対称性)を同定する(帽子の中心の曲率と,秩序パラメーターの対称性).
(2) 虚のモードの固有ベクトルに沿って構造を歪ませてエネルギー E(Q) を計算し,二重井戸(あるいはメキシコ帽)にフィットして Landau 係数 A, B(, c′)を得る(Meier らは InMnO₃ で a = −0.82 eV Å−2,b = 1.13 eV Å−4,ErMnO₃ で −3.83,6.20).
(3) 最小構造でフォノンを再計算すると振幅モード(A₁)が実の振動数で現れる(Higgs).2 成分秩序なら位相モードも同定する(Goldstone).
(4) 既約表現から低対称相の空間群(isotropy subgroup)を決める作業は,まさに CrystOD が扱う群論の問題です.
▶ シミュレーター④:二重井戸・メキシコ帽と振動数の 2 乗の温度依存性,1 次元鎖の amplitudon/phason
10. 文献調査 ― フォノンにも Higgs モードと南部–Goldstone モードはあるか
結論から言うと「ある」です.ただし Goldstone フォノンが出るのは秩序パラメーターが連続対称性(実際には離散群の中の近似的な連続対称性)をもつ場合に限られ,Higgs フォノンは自由エネルギーの曲率の固有モードとして定義されるので単一のフォノンと一対一には対応しません.以下,主要な文献を年代順に整理します.
10.1 電荷密度波の amplitudon と phason(1974–)
もっとも古く,もっとも確立した例は電荷密度波(CDW)です.Lee–Rice–Anderson (1974) は Fröhlich ハミルトニアンから,非整合な CDW の秩序パラメーター Δeiφ に対して,振幅の振動 amplitudon(ギャップ ωA ≈ √λ ω2kF,CDW ギャップ 2Δ より小さい)と位相の滑り phason(ギャップレス,音速 ∝ vF√(m/m*))を導きました.Grüner の総説(Rev. Mod. Phys. 60, 1129 (1988))に体系的にまとめられています.
phason は不純物・整合性でピン止めされて有限の質量をもち,その質量を超える電場で CDW が滑る(非線形伝導).
2H-NbSe₂ の Raman 散乱(Sooryakumar–Klein 1980)で超伝導転移とともに現れた新しいピークを,Littlewood–Varma (1981, 1982) は CDW の amplitudon と超伝導の Higgs モードの結合として説明しました ― これが凝縮系で最初の Higgs モードの観測とされています(Pekker–Varma 2015 の総説).
最近の理論として Yang–Chen (arXiv:2505.05025, 2025) は,CDW の位相揺らぎを取り込んだ自己無撞着な相転移理論を構築し,(TaSe₄)₂I で phason が温度上昇とともに軟化して Td ≈ 160 K でピン止めが外れ(ギャップレス化),Tc ≈ 268 K で 1 次転移すること,2Δ/kBTc ≈ 17 という BCS 値 3.53 からの大きなずれ,amplitudon(0.23 THz)が Td で軽い減衰から重い減衰に変わることを示しました.
超伝導と違って粒子・正孔対称性がないため amplitudon と phason が結合し(§4.2 の c₁ 項に相当),それが減衰の起源になります.
希土類三テルル化物 RTe₃ では CDW の amplitudon が偏光 Raman で 2 回対称性を示し「軸性 Higgs モード」と呼ばれ(Wang ら, Nature 606, 896 (2022)),Wulferding ら(arXiv:2411.08331;東京理科大学の遠山貴巳氏が共著)は GdTe₃・LaTe₃ で面直磁場によって Higgs モードの軸性成分(Raman テンソルの反対称非対角成分)が磁場に比例して増大し,磁場反転で 90° 位相が変わることを示し,スピンではなく軌道角運動量(Te の px ± ipy 混成)が軸性の起源だと結論しています.
10.2 構造相転移の Goldstone フォノン(2005–)
- Cd₂Re₂O₇(パイロクロア,Kendziora ら, PRL 95, 125503 (2005)):200 K の立方 → 正方転移は 2 重縮退の Γ₃⁻(Eu)フォノンの不安定性で起こり(Sergienko–Curnoe 2003),Landau 展開の異方性項は 6 次でしか現れないためメキシコ帽になる.偏光 Raman で転移以下に B₁ 対称の零周波数ピークが発散的な強度で現れ,結晶で最初の Goldstone フォノンとされました.後に時間分解コヒーレントフォノン分光から不適切変位型転移としての再解釈も提案され(Harter ら 2018),拡散散乱の機械学習解析で Goldstone モードの存在が支持されています(Venderley ら 2022).
- PbSr₂Ti₂O₇(Ruddlesden–Popper,Nakhmanson–Naumov, PRL 104, 097601 (2010)):第一原理計算で分極方向が面内で縮退した Goldstone 様状態を予測.
- (111) 歪み SrMnO₃(Marthinsen ら, Phys. Rev. Materials 2, 014404 (2018)):圧縮歪みで二つの面内回転不安定性が結合してメキシコ帽型のエネルギー面ができ,Goldstone 様フォノンモードが現れることを第一原理計算で予測.「素粒子・超流動 He・超伝導・マグノンでは知られているが,構造的な Goldstone モードは稀」と位置づけています.
- そのほか,充填スクッテルダイト SnFe₄Sb₁₂ の集団 Goldstone モードによる極低熱伝導(Fu ら 2018),リラクサー強誘電体 PbMg1/3Nb2/3O₃ の Goldstone 様・Higgs 様構造モード(Prosandeev ら 2020),六方晶 BaMnO₃(Zhang–Ye–Li 2021)などが報告されています.
10.3 六方晶マンガナイト ― 「教科書的」な構造 Higgs モード(Meier ら 2020)
Meier, Stucky, Teyssier, Griffin, van der Marel, Spaldin, Phys. Rev. B 102, 014102 (2020) は,本調査の問いに最も直接に答える論文です.
- 系:六方晶マンガナイト RMnO₃ の P6₃/mmc → P6₃cm 転移は MnO₅ 三角両錐の三量化傾斜(2 次元の秩序パラメーター:傾斜の大きさ Q と角度 θ)で起こり,小さな Q ではエネルギーが θ に依らない ― 結晶では珍しく U(1) 対称のメキシコ帽になります(Fennie–Rabe 2005;Artyukhin ら 2014).離散性は 6 次の c′cos 6θ と 2 次秩序パラメーター(分極 P)との結合 −gQ³Pcos 3θ を通じて縁に 6 つの窪みを作ります(Z₆).
- 理論:Landau 理論で Higgs モードの曲率が −2a(T)(本解説の (33) と同じ),Goldstone は 0 であることを示した上で,多元素結晶では Higgs/Goldstone は力定数行列の固有ベクトルであり,質量で割った動力学行列の固有ベクトル(フォノン)とは一致しないことを指摘.Goldstone(ω = 0)だけは質量に依らず単一フォノンに対応し,Higgs は同じ既約表現(A₁)のフォノン群に分配される.DFT の Landau 係数(InMnO₃:a = −0.82 eV Å−2,b = 1.13 eV Å−4,c′ = 0.04 eV Å−6;ErMnO₃:−3.83,6.20,0.06)から,帽子の高さは ErMnO₃ で ~500 meV,InMnO₃ で ~170 meV,縁の窪みは ~200 meV と ~50 meV.
- モードの同定:最低の A₁ フォノン(InMnO₃ 128 cm−1,ErMnO₃ 130 cm−1;Landau 理論では 96,106)が Higgs 性が最も強く,最低の B₁ フォノン(InMnO₃ 65 cm−1,ErMnO₃ 107 cm−1;Landau では 21,82)が Goldstone 性が最も強い.縁の窪みが小さい InMnO₃ で Goldstone 様モードが低いことは,本シミュレーター④の擬 Goldstone のギャップ ∝ √c′ と整合します.
- 実験:温度依存 Raman(4–300 K)で,InMnO₃(TC ≈ 500 K)の最低 A₁ モードが 300 K までに ~20 cm−1 軟化し(Landau 理論の予測 ~30 cm−1),準調和近似で計算した熱膨張の効果では説明できないことから,構造相転移の Higgs モードの初めての実験的同定と結論.ErMnO₃(TC ≈ 1200 K)では 300 K まででは熱膨張の効果が支配的.
この系の後続として,Juraschek–Meier–Narang (PRL 124, 117401 (2020)) は光学不活性な Goldstone 様フォノンを,赤外活性な Higgs 様フォノンをテラヘルツパルスで共鳴駆動して非線形結合で間接励起する方法を提案し,Rangwala–Ganesan (arXiv:2602.07462, 2026) はその非線形フォノニクス模型(Higgs 4.0 THz,Goldstone 2.4 THz)で Higgs–Goldstone 結合によるフォノン周波数コムの発生条件を数値的に調べています.
Meier ら (arXiv:2107.11332, 2021) はさらに,複数の既約表現が関わる構造相転移(パイロクロア Cd₂Nb₂O₇)で,多バンド超伝導体の Leggett モード(2 つの秩序パラメーターの相対位相の振動)に対応する「反位相 Goldstone(anti-phason)」と,新しい「反位相 Higgs モード」が存在することを Landau 理論で示しました.
10.4 場の理論としての整理と,本調査のまとめ
Vallone (Phys. Status Solidi B 257, 1900443 (2020)) は結晶の Higgs/Goldstone フォノンを場の理論として扱い,Pekker–Varma (Annu. Rev. Condens. Matter Phys. 6, 269 (2015)) は超伝導・CDW・磁性体・冷却原子にわたる振幅(Higgs)モードの総説です.
以上をまとめると:
- 超伝導の GL 自由エネルギーと構造相転移の Landau 自由エネルギーは同じ φ⁴ 型で,DFT の虚数振動数を有するフォノンは Landau 係数 a < 0(帽子の中心の負の曲率)そのものである(§9).
- 低対称相の振幅モード(A₁ フォノン)は Higgs モードの格子版で,Raman 活性なので直接見える.六方晶 InMnO₃ で温度依存 Raman により同定された(Meier ら 2020).
- Goldstone フォノンは秩序パラメーターが 2 成分以上で低次の Landau 展開が回転対称なときだけ現れる:CDW の phason(1974)が原型で,結晶構造では Cd₂Re₂O₇(2005)が最初,六方晶マンガナイト・歪み SrMnO₃・パイロクロア Cd₂Nb₂O₇ などに広がっている.結晶の離散性による 6 次の異方性で小さなギャップ(擬 Goldstone)をもつ.
- 格子にはゲージ場がないので Anderson–Higgs 機構(プラズモン化)はない.代わりに phason は不純物ピン止めで質量を得る.
- 多元素結晶では Higgs/Goldstone(力定数行列の固有モード)と単一フォノン(動力学行列の固有モード)は一致せず,同じ既約表現のフォノン群に分配される ― 「Higgs フォノン」は厳密には「Higgs 性の強いフォノン」である.
11. 実装ノート
- 単位と定数:SI(CODATA 2022).Cooper 対の m* = 2me,e* = 2e を既定にし,スライダーで m*/me と e*/e を独立に変えられます(e* = 0 で中性超流動体).GL の係数は §3.1 の (7)–(8) で実測値から決め,a(T) は T = 0 まで線形.経験式 Hc(T) = Hc(0)(1 − t²) は Tc 近傍で傾きが線形モデルの 2 倍なので,右図に参考として重ねています.
- メキシコ帽の描画:f̃ = 2ãr̃² + (b/b₀)r̃⁴(ã = aeff/|a(0)|,r̃ = |ψ|/ψ₀(0),高さの単位 fc = a(0)²/2b)を極座標メッシュ(20 × 40)で描き,奥から手前へ塗る画家のアルゴリズムで隠面処理.④の U(1) 帽子は c′r̃⁶(1 − cos 6θ)/2 の異方性を加えたもの.玉の Higgs 振動の見かけの周波数は √(−2ã) に比例させ,臨界減速を表現しています.
- BCS ギャップ方程式:(23) を ħωD = 1 の無次元形 1/N(0)V = ∫₀¹ dx tanh(√(x² + d²)/2τ)/√(x² + d²) にして Simpson 法(400 分割)で積分し,d = Δ/ħωD と τc = kBTc/ħωD を 2 分法で解きます.Δ(T) の補間式 Δ(0)tanh(1.74√(Tc/T − 1)) は①③で使用.
- 擬スピンのクエンチ:線形化した (28) を,ε = Δ sinh u の非一様格子(301 点,|ε| ≤ ħωD)で離散化し,ギャップ方程式を離散和で厳密に満たす N(0)V = 1/Σwi/2Ei を用いて,自己無撞着条件 δΔ = ΔδV/V + N(0)VΣwiδσxi とともに RK4(dt = 0.02/Δ,Δt ≤ 40)で積分.漸近形 (30) を重ねて表示します.
- McMillan の逆解き:λ = (1.04 + Lμ*)/(L(1 − 0.62μ*) − 1.04),L = ln(θD/1.45Tc).BCS の逆解きは N(0)V = 1/ln(1.134 θD/Tc).
- ③の励起スペクトル:波数の単位 q₀ = 2√3Δ(0)/ħvF で Higgs の分散 (19) は ω/2Δ(0) = √(Δ̃² + q̃²),中性の南部–Goldstone は ω = vFq/√3.vF は Kawamura ら (2026) の Fermi 面平均(Al, In, Sn, Pb, Nb, Ta)か Ashcroft–Mermin の自由電子値,ωp は自由電子密度から(V, Ta は典型値 10 eV).3 次高調波の共鳴曲線は GL の |2Ω − ωH|−1 と BCS の |2Ω − 2Δ|−1/2 を模式的に描いたもの.
- ④の格子模型:Ẽ = 2ãq² + q⁴,ω̃² = Ẽ″/4(ω₀² = AT₀/M を単位).古典では ã = T/T₀ − 1,量子ゆらぎ T₁/T₀ = θ を入れると Barrett の式 ã = (θ/2)coth(θ/2τ) − 1(θ → 0 で古典に戻る).高対称構造の調和近似 ω̃² = ã(T < Tc で負),振幅モード ω̃A² = −2ã,擬 Goldstone ω̃G² = 4.5c′(−ã)²(Q₀² ∝ −ã).右図の縦軸は ω²/ω₀² なので,ソフトモードと高対称構造の調和近似は転移点を突き抜ける一本の直線(Cochran の ω² ∝ T − T₀)として見え,不安定モードを虚数軸に描く必要がありません.転移温度 Tc/T₀ = θ/ln((2 + θ)/(2 − θ)),θ ≥ 2 で転移なし.1 次元鎖は Z₂ で二量化 (−1)nu,U(1) で非整合変調 ucos(Qna + θ)(Qa = 2π/4.3).
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12. 参考文献
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