高校数学 — 目次 高校数学 / 第2章

第2章三角形の性質

三角形は,中学までの図形の学習でもっとも多くの時間をかけて調べてきた図形である.合同・相似,平行線と角,三平方の定理(ピタゴラスの定理,Pythagorean theorem)——これらの道具はどれも,三角形という一枚の図の中で組み合わさって使われてきた.この章では,その三角形が実はもっと深い構造を持っていることを見ていく.具体的には,1つの三角形に対して「特別な意味を持つ点」がいくつも存在し,しかもそれらの点は,中学で学んだ道具(相似,中点連結定理,三平方の定理)だけを使って厳密に構成できる,という事実を確かめる.

まず2.1節では,角の二等分線が対辺をどのような比に分けるかを調べる.これは「線分を比で分ける」という考え方——内分・外分——の最初の応用例であり,のちの第4章(図形と方程式)・第7章(ベクトル)で内分点・外分点の座標公式を学ぶときの土台になる.続く2.2節・2.3節では,三角形に付随する4つの特別な点——重心(centroid),垂心(orthocenter),外心(circumcenter),内心(incenter)——を,中点連結定理と三平方の定理,そして「距離が等しい点の軌跡は垂直二等分線(角の二等分線)である」という考え方から,1つ1つ手を動かして構成する.これらは古くから「三角形の心(five centers)」と呼ばれ親しまれてきた点たちの主要な4つである.最後に2.4節では,3本の線が1点で交わるかどうかを比だけで判定するチェバの定理と,3点が1直線上に並ぶかどうかを比だけで判定するメネラウスの定理を学ぶ.どちらも一見暗記のための公式に見えるが,実は2.1節で使った「平行線と比」の技法をそのまま応用すれば,自分の手で証明できる——本章では底本には書かれていないその証明も,発展として与える.

この章で学ぶこと
  • 線分の内分点・外分点の意味と,角の二等分線・外角の二等分線が対辺(の延長)を分ける比($AB:AC$)
  • 三角形の重心が各中線を$2:1$に内分すること(中点連結定理を用いた証明),および中線定理 $AB^2+AC^2=2(AM^2+BM^2)$ の証明
  • 垂心(各頂点から対辺への垂線の交点)の定義と,3本の垂線が1点で交わることの証明
  • 外心(各辺の垂直二等分線の交点,外接円の中心)・内心(各角の二等分線の交点,内接円の中心)の定義と存在の証明
  • チェバの定理・メネラウスの定理とその証明,および「覚え方」がなぜあの形になるのか
前提:中学数学の三角形の合同・相似条件,平行線と同位角・錯角,中点連結定理,三平方の定理(ピタゴラスの定理).
もとにしたノート:望月泰英『数学ノート 高校数学』 pp. 3–6.

2.1 角の二等分線と内分・外分

三角形$ABC$の頂点$A$から,$\angle A$を二等分する半直線を引くと,対辺$BC$のどこかと交わる.この交点は,$BC$のちょうど真ん中とは限らない——$AB$と$AC$の長さが違えば,交点は真ん中からずれる.どれだけずれるかを正確に述べるために,まず「線分を比で分ける」という言葉を定義しておこう.

定義2.1 線分の内分点・外分点

2点$B,C$を結ぶ線分$BC$上に点$P$があり,$m,n$を正の数として

$$ BP:PC=m:n $$

が成り立つとき,$P$は線分$BC$を$m:n$に内分(internally divide)するといい,$P$を$BC$の内分点という.一方,直線$BC$上にあって線分$BC$の外側にある点$Q$が($m\neq n$として)

$$ BQ:CQ=m:n $$

を満たすとき,$Q$は線分$BC$を$m:n$に外分(externally divide)するといい,$Q$を$BC$の外分点という.

外分点の定義に「$m\neq n$」という条件を付けたのには理由がある.もし$m=n$なら$BQ=CQ$となり,これを満たす点は$BC$の中点しかない——ところが中点は線分$BC$の内側の点であって外側にはない.つまり$m=n$のとき,外分点はそもそも存在しない.この事実は,2.1.2項の外角の二等分線のところで再び顔を出す.

2.1.1 内角の二等分線

まず,$\angle A$そのもの(内角)の二等分線を考える.

定理2.1 内角の二等分線と内分点

$\triangle ABC$において,$\angle A$の二等分線と辺$BC$の交点を$P$とすると,$P$は辺$BC$を

$$ BP:PC=AB:AC $$

に内分する.

証明の方針は,「平行線を1本補助的に引いて,二等分線が作る2つの等しい角を,平行線が作る等しい角に置き換える」というものである.この技法は,このあと外角の二等分線・チェバの定理・メネラウスの定理でも繰り返し使う,本章の中心的な道具である.

証明(定理2.1)

辺$BA$を$A$を越えて延長し,その延長線上に,点$C$を通り直線$AP$に平行な直線との交点$D$をとる(図2.1).つまり$AP\parallel CD$となるように$D$を定める.

直線$BD$($=$直線$BA$の延長)は,平行な2直線$AP,CD$を切る1本の横断線(transversal)である.したがって同位角(corresponding angles)が等しく,

$$ \angle BAP=\angle ADC $$

が成り立つ.また,直線$AC$も$AP,CD$を切る横断線であるから,錯角(alternate angles)が等しく,

$$ \angle PAC=\angle ACD $$

が成り立つ.一方,$AP$は$\angle A$の二等分線だから$\angle BAP=\angle PAC$である.この3つの等式を並べると

$$ \angle ADC=\angle BAP=\angle PAC=\angle ACD $$

となり,とくに$\angle ADC=\angle ACD$である.$\triangle ACD$において2つの角$\angle ADC,\angle ACD$が等しいので,これらの角にそれぞれ向かい合う辺$AC,AD$も等しい(「2角が等しい三角形は二等辺三角形である」——「二等辺三角形の底角は等しい」の逆にあたる中学で学んだ定理):

$$ AC=AD \qquad \cdots\text{①} $$

次に$AP\parallel CD$を使う.$\angle ABP=\angle DBC$は同じ角である($P$は$B$から見て$C$の方向,$A$は$B$から見て$D$の方向にある点だから,$\angle ABP$と$\angle DBC$はまったく同じ角を指している).また直線$BD$が$AP,CD$を切ることから,先ほどと同じ理由で$\angle BAP=\angle BDC$($=\angle ADC$)である.2組の角がそれぞれ等しいので

$$ \triangle ABP \backsim \triangle DBC $$

($\backsim$は「相似である」を表す記号).相似な図形では対応する辺の比がすべて等しいから,

$$ BA:BD=BP:BC \qquad (\ast) $$

である.ここで$D$は$A$を越えた延長上の点だから$BD=BA+AD$,同様に$P$は$B,C$の間の点だから$BC=BP+PC$である.これを$(\ast)$に代入して整理する(行間).$(\ast)$は$BA\cdot BC=BP\cdot BD$と書けるから,

$$ BA(BP+PC)=BP(BA+AD) $$ $$ BA\cdot BP+BA\cdot PC=BP\cdot BA+BP\cdot AD $$

両辺から共通の$BA\cdot BP$($=BP\cdot BA$)を引くと,

$$ BA\cdot PC=BP\cdot AD $$

すなわち

$$ BA:AD=BP:PC \qquad \cdots\text{②} $$

が得られる.最後に①($AC=AD$)を②の$AD$に代入すると,

$$ AB:AC=BP:PC $$

となり,定理が示された.

(証明終わり)

内角の二等分線の証明図 m n m n B C A P D $CD\parallel AP$
図2.1 内角の二等分線の証明図.$AP\parallel CD$となるように$D$をとると,$\angle ADC=\angle ACD$(青の弧)から$AC=AD$,$\triangle ABP\backsim\triangle DBC$から$AB:AC=BP:PC$が従う.図中の同じ文字$m,n$は,対応する比($BA:AC$と$BP:PC$)を表す.

例題2.1 内角の二等分線の利用

$\triangle ABC$において$AB=6$,$AC=4$,$BC=5$とする.$\angle A$の二等分線と辺$BC$の交点を$P$とするとき,線分$BP,PC$の長さを求めよ.

解答 定理2.1より$BP:PC=AB:AC=6:4=3:2$である.$BP+PC=BC=5$であり,$BP:PC=3:2$は「$BC$を$3+2=5$等分したうちの$3$個分と$2$個分」という意味だから,

$$ BP=5\times\frac{3}{5}=3,\qquad PC=5\times\frac{2}{5}=2 $$

である(検算:$BP+PC=3+2=5=BC$,$BP:PC=3:2=6:4=AB:AC$,どちらも条件を満たす).

2.1.2 外角の二等分線

$AB\neq AC$の$\triangle ABC$で,今度は$\angle A$の外角(隣り合う内角ではないほう,$180^\circ-\angle A$の側)を二等分する半直線を引くと,これは辺$BC$そのものとは交わらず,辺$BC$の延長と交わる.

定理2.2 外角の二等分線と外分点

$AB\neq AC$である$\triangle ABC$において,$\angle A$の外角の二等分線と辺$BC$の延長との交点を$Q$とすると,$Q$は辺$BC$を

$$ BQ:CQ=AB:AC $$

に外分する.

証明(定理2.2)

以下では$AB\gt AC$の場合を示す($AB\lt AC$のときに$E,Q$の位置がどう変わるかは,証明のあとの数学ノートで補う).

辺$BA$を$A$を越えて延長し,その延長線上に点$D$をとる($\angle DAQ$は外角,すなわち二等分される角である).また,点$C$を通り直線$AQ$に平行な直線を引き,辺$AB$(線分$BA$そのもの)との交点を$E$とする.つまり$EC\parallel AQ$となるように$E$を定める(図2.2).

直線$BD$($=$直線$AB$の延長)は平行な2直線$EC,AQ$を切る横断線だから,同位角が等しく,

$$ \angle DAQ=\angle AEC $$

である.また直線$AC$も$EC,AQ$を切る横断線だから,錯角が等しく,

$$ \angle QAC=\angle ACE $$

である.$AQ$は外角$\angle DAC$の二等分線だから$\angle DAQ=\angle QAC$.したがって

$$ \angle AEC=\angle DAQ=\angle QAC=\angle ACE $$

となり,とくに$\angle AEC=\angle ACE$.$\triangle AEC$でこの2角が等しいので,向かい合う辺$AC,AE$も等しい:

$$ AE=AC \qquad \cdots\text{①} $$

次に,$\angle EBC=\angle ABQ$は同じ角である($E$は$B$から見て$A$の方向,$Q$は$B$から見て$C$の方向にある点).また$EC\parallel AQ$と横断線$BD$から$\angle BEC=\angle BAQ$(同位角.$E$から見て$B$の方向と$A$から見て$B$の方向は同じ直線の同じ側だから対応する).2組の角がそれぞれ等しいので

$$ \triangle EBC \backsim \triangle ABQ $$

であり,対応する辺の比から

$$ EB:AB=BC:BQ \qquad (\ast\ast) $$

が成り立つ.ここで$EA=AB-EB$($E$は$B,A$の間の点),$CQ=BQ-BC$($C$は$B,Q$の間の点,$Q$は$C$を越えた延長上)である.$(\ast\ast)$は$EB\cdot BQ=AB\cdot BC$と書けるので,

$$ BA\cdot CQ=AB(BQ-BC)=AB\cdot BQ-AB\cdot BC $$ $$ EA\cdot BQ=(AB-EB)BQ=AB\cdot BQ-EB\cdot BQ=AB\cdot BQ-AB\cdot BC $$

右辺どうしが一致するので$BA\cdot CQ=EA\cdot BQ$,すなわち

$$ BA:EA=BQ:CQ \qquad \cdots\text{②} $$

が得られる.①($AE=AC$)を②の$EA$に代入すると,

$$ AB:AC=BQ:CQ $$

となり,定理が示された.

(証明終わり)

外角の二等分線の証明図 m n m n B C A Q E D $EC\parallel AQ$
図2.2 外角の二等分線の証明図.$EC\parallel AQ$となるように$E$をとると,$\angle AEC=\angle ACE$(青の弧)から$AE=AC$,$\triangle EBC\backsim\triangle ABQ$から$AB:AC=BQ:CQ$が従う.図中の同じ文字$m,n$は,対応する比($BA:AC$と$BQ:CQ$)を表す.

注意:なぜ$AB\neq AC$が必要なのか

定理2.2は$AB\neq AC$を仮定していた.もし$AB=AC$(二等辺三角形)なら,$\angle A$の外角の二等分線は底辺$BC$と平行になり,交点$Q$は存在しない.実際,定義2.1で外分点に$m\neq n$を要求したことを思い出そう——$AB=AC$のときに定理2.2の結論を無理に書くと$BQ:CQ=AB:AC=1:1$となるが,これは外分点の比としては存在しない比である.図形の言葉で言えば,「二等辺三角形の頂角の外角の二等分線は,底辺の垂直二等分線と一致し,底辺とは交わらずに平行に離れていく」ということである.

数学ノート:$AB\lt AC$のとき,$E,Q$の位置はどう変わるか

証明では$AB\gt AC$の場合を示した.$AB\lt AC$のとき(すなわち$AC$の方が長いとき)は,証明全体で$B$と$C$の役割をそっくり入れ替えれば,まったく同じ議論がそのまま使える.具体的には,辺$CA$を$A$を越えて延長した点を$D'$とし,点$B$を通り直線$AQ$に平行な直線を引いて辺$AC$(線分$CA$そのもの)との交点を$E'$とする.証明中の$B,E,D,C$をそれぞれ$C,E',D',B$に読み替えるだけで,同位角・錯角・相似を使う議論はすべてそのまま成り立ち,まず$AE'=AB$(証明中の①「$AE=AC$」に対応する等式)が,続いて$AC:AB=CQ:BQ$(証明中の②に対応する式を整理したもの)が得られる.これは$AB:AC=BQ:CQ$の両辺の書き方を入れ替えただけの同じ式であり,結論は変わらない.違うのは,このとき外分点$Q$が$C$の側ではなく$B$を越えた延長上に現れることである.

一般に,この証明の構造から次のことが読み取れる:$AB,AC$のうち短い方の辺に対応する頂点($A$ではないほう)を越えた延長上に,外分点$Q$が現れる.例題2.2($AB=5\gt AC=3$)ではQが短い方の辺$AC$の頂点$C$を越えた延長上に現れ,その解答で使った経験則(「$AC$の側の辺が短いほど,外角の二等分線は$C$寄りから離れて延びていく」)はこの事実の言い換えにほかならない.演習2.1($AB=5\lt AC=8$)では逆に短い方の辺$AB$の頂点$B$を越えた延長上に$Q$が現れる.

例題2.2 外角の二等分線の利用

$\triangle ABC$において$AB=5$,$AC=3$,$BC=4$とする.$\angle A$の外角の二等分線と辺$BC$の延長との交点を$Q$とするとき,線分$BQ,CQ$の長さを求めよ.

解答 $AB\neq AC$($5\neq3$)なので定理2.2が使え,$BQ:CQ=AB:AC=5:3$である.$AB\gt AC$なので,$Q$は$C$を越えた側の延長上にある($AC$の側の辺が短いほど,外角の二等分線は$C$寄りから離れて延びていく).$CQ=t$とおくと$BQ=BC+CQ=4+t$であり,

$$ \frac{BQ}{CQ}=\frac{4+t}{t}=\frac{5}{3} $$

より$3(4+t)=5t$,すなわち$12+3t=5t$,$2t=12$,$t=6$.よって

$$ CQ=6,\qquad BQ=4+6=10 $$

である(検算:$BQ:CQ=10:6=5:3=AB:AC$,条件を満たす).

2.2 三角形の五心(1)——重心・中線定理・垂心

ここからは,1つの三角形の中に隠れている「特別な点」を探していく.最初に扱うのは,どの頂点からも「対辺のちょうど真ん中」を結んだときにできる点である.

定義2.2 中線・重心

三角形の1つの頂点と,その対辺の中点を結ぶ線分を,その頂点から引いた中線(median)という.三角形には頂点が3つあるから中線も3本あるが,定理2.3で確かめるように,この3本の中線は必ずただ1点で交わる.この交点を,三角形の重心(centroid)という.

2.2.1 重心は中線を2:1に内分する

定理2.3 重心と中線の比

$\triangle ABC$の辺$BC,CA$の中点をそれぞれ$L,M$とする.中線$AL$と$BM$の交点を$G$とすると,

$$ AG:GL=BG:GM=2:1 $$

である.さらに,辺$AB$の中点を$N$として第3の中線$CN$を引くと,これも同じ点$G$を通る.

証明(定理2.3)

$M$は辺$CA$の中点,$L$は辺$CB$の中点だから,中学で学んだ中点連結定理(2辺の中点を結ぶ線分は,残りの辺に平行で長さはその半分になる,という定理)を$\triangle CAB$に適用すると,

$$ ML\parallel AB, \qquad ML=\frac{1}{2}AB \qquad \cdots\text{①} $$

が成り立つ(図2.3).

中線$AL$と$BM$の交点を$G$とする.$ML\parallel AB$であることから,直線$AL$($M,L$を通る直線ではなく$A,G,L$を通る直線)が2直線$AB,ML$を切る横断線になっており,錯角が等しいので$\angle GAB=\angle GLM$.同様に直線$BM$が横断線になっており$\angle GBA=\angle GML$.また,2直線$AL,BM$が$G$で交わってできる$\angle AGB$と$\angle LGM$は対頂角(vertical angles,向かい合う角)だから等しい.3組の角がそれぞれ等しいので(2組が等しければ十分だが,念のため3組とも確認した)

$$ \triangle GAB \backsim \triangle GLM $$

である.相似比は①より$AB:LM=2:1$だから,対応する辺の比もすべて$2:1$になる:

$$ AG:GL=BG:GM=AB:LM=2:1 $$

これで中線$AL,BM$がそれぞれ$G$で$2:1$に内分されることが示された.

3本目の中線も同じ点を通ることの確認. 中線$AL$と中線$CN$($N$は$AB$の中点)についても,$\triangle CAB$の代わりに$\triangle BCA$を使ってまったく同じ議論を行うと(中点連結定理を$N,L$——$AB,CB$の中点——に適用して$NL\parallel CA$,$NL=\frac12 CA$を得て,$\triangle G'AC\backsim\triangle G'LN$を作ればよい),中線$AL$と$CN$の交点を$G'$とすると,やはり$AG':G'L=2:1$であることがわかる.ところが,中線$AL$上で「$A$から$2:1$の位置」にある点はただ1つしかない(線分を$2:1$に内分する点は一意に決まる).したがって$G$と$G'$は同じ点である.つまり中線$CN$も点$G$を通る.よって3本の中線$AL,BM,CN$はすべて同じ点$G$で交わり,$G$はいずれの中線も頂点側から$2:1$に内分する.

(証明終わり)

数学ノート:なぜこの最後の一段落が必要なのか

「2本の中線が$2:1$に交わる」ことを示しただけでは,実は3本の中線が同じ1点を通ることまでは言えていない.3本目が本当に同じ点を通ることを確認して初めて,「重心」という1つの点の名前を安心して使えるようになる.一見当たり前に見える「3本とも1点で交わる」という事実も,きちんと証明が必要な定理なのである.

重心が中線を2:1に内分する証明図 B C A L M G 2 1 2 1
図2.3 中線$AL,BM$の交点$G$は,どちらの中線も頂点側から$2:1$に内分する.$\triangle GAB\backsim\triangle GLM$(相似比$2:1$)が根拠である.

例題2.3 重心の比の利用

$\triangle ABC$の頂点$A$から引いた中線$AL$の長さが$9$であるとき,重心$G$について$AG,GL$の長さを求めよ.

解答 定理2.3より$AG:GL=2:1$であり,$AG+GL=AL=9$である.$2:1$は「$9$を$2+1=3$等分したうちの$2$個分と$1$個分」を意味するから,

$$ AG=9\times\frac{2}{3}=6,\qquad GL=9\times\frac{1}{3}=3 $$

である(検算:$AG+GL=6+3=9=AL$,$AG:GL=6:3=2:1$,条件を満たす).

2.2.2 中線定理

次に,中線の長さそのものと,三角形の3辺の長さを結びつける等式を証明する.

定理2.4 中線定理

$\triangle ABC$の辺$BC$の中点を$M$とすると,

$$ AB^2+AC^2=2\bigl(AM^2+BM^2\bigr) $$

が成り立つ.

証明(定理2.4)

頂点$A$から辺$BC$へ垂線を下ろし,その足を$H$とする(図2.4のように,$H$が$M$と$C$の間にある場合で示す.$H$が他の位置にくる場合の扱いは,このあとの注で補う).$\triangle ABH,\triangle ACH$はどちらも$H$で直角をなす直角三角形だから,三平方の定理より

$$ AB^2=BH^2+AH^2, \qquad AC^2=CH^2+AH^2 $$

である.図の配置から$BH=BM+MH$,$CH=MC-MH$($H$が$M,C$の間にあるので,$C$から$H$までの距離は$MC$から$MH$を引いたもの)だから,これらを代入して両辺を足し合わせると,

$$ AB^2+AC^2=(BM+MH)^2+AH^2+(MC-MH)^2+AH^2 $$

右辺の2つの平方をそれぞれ展開する($(x+y)^2=x^2+2xy+y^2$,$(x-y)^2=x^2-2xy+y^2$):

$$ =BM^2+2\,BM\!\cdot\!MH+MH^2+AH^2+MC^2-2\,MC\!\cdot\!MH+MH^2+AH^2 $$

ここで$M$は$BC$の中点だから$BM=MC$である.したがって$2\,BM\!\cdot\!MH$と$-2\,MC\!\cdot\!MH$は,$BM=MC$より同じ大きさで符号が逆なので打ち消し合う.また$BM^2+MC^2=2BM^2$($BM=MC$だから),$MH^2$が2つで$2MH^2$,$AH^2$が2つで$2AH^2$になる.まとめると

$$ AB^2+AC^2=2BM^2+2MH^2+2AH^2=2\bigl(BM^2+MH^2+AH^2\bigr) $$

さらに,$\triangle AMH$も$H$で直角をなす直角三角形だから,三平方の定理より$MH^2+AH^2=AM^2$である.これを代入すると,

$$ AB^2+AC^2=2\bigl(BM^2+AM^2\bigr)=2\bigl(AM^2+BM^2\bigr) $$

となり,定理が示された.

(証明終わり)

中線定理の証明図 B C A M H
図2.4 中線定理の証明図.垂線$AH$(青)を補助線として引き,直角三角形$ABH,ACH,AMH$の三平方の定理を組み合わせる.

数学ノート:$H$が$M$と$C$の間にない場合はどうなるか

図2.4では垂線の足$H$がたまたま$M,C$の間にある三角形を選んだが,$\triangle ABC$の形によっては$H$が$B,M$の間にきたり,$M$自身と一致したり($AB=AC$の二等辺三角形の場合),あるいは三角形の外に出たりする(鈍角三角形の場合).いずれの場合も,$BH,CH$を$BM,MH$の和や差として符号に注意して書き直せば(たとえば$H$が$B,M$の間なら$BH=BM-MH$,$CH=MC+MH$になる),同じ計算が同じ結論$AB^2+AC^2=2(AM^2+BM^2)$に到達する.すべての場合を一度に扱う,より見通しのよい証明は,第3章で学ぶ余弦定理,あるいは第7章で学ぶベクトルを使うと得られる($\vec{AM}=\frac12(\vec{AB}+\vec{AC})$から出発すればよい).

例題2.4 中線定理の利用

$\triangle ABC$において$AB=9$,$AC=7$,$BC=8$とする.辺$BC$の中点を$M$とするとき,中線$AM$の長さを求めよ.

解答 $BM=\dfrac{BC}{2}=4$である.中線定理(定理2.4)より

$$ AB^2+AC^2=2\bigl(AM^2+BM^2\bigr) $$ $$ 9^2+7^2=2\bigl(AM^2+4^2\bigr) $$ $$ 81+49=2\,AM^2+32 $$ $$ 130-32=2\,AM^2 $$ $$ AM^2=\frac{98}{2}=49 $$

$AM\gt 0$だから$AM=7$である.

2.2.3 垂心

定義2.3 垂心

三角形の各頂点から,それぞれの対辺(またはその延長)へ垂線を下ろす.この3本の垂線が交わる点を,三角形の垂心(orthocenter)という.

垂心の図 B C A H
図2.5 垂心$H$の図.各頂点から対辺への垂線(3本)が1点$H$で交わる.

図2.5は3本の垂線が1点で交わっているように見えるが,これも重心のときと同様,証明が必要な事実である.証明のために,もとの三角形$ABC$の各頂点を通り対辺に平行な直線を3本引き,一回り大きい三角形$A^*B^*C^*$を作る.このとき$A,B,C$はそれぞれ$A^*B^*C^*$の辺$B^*C^*,\,C^*A^*,\,A^*B^*$の中点になるように$A^*,B^*,C^*$をとる(図2.6).

イメージ:垂心の3線が1点に集まる理由

$A$が$B^*C^*$の中点で,しかも中点連結定理の一般化により辺$BC$は辺$B^*C^*$に平行である($B,C$がそれぞれ辺$A^*C^*,A^*B^*$の中点だから,$BC$は$\triangle A^*B^*C^*$の中点連結線にあたる).したがって「$BC$に垂直な直線」と「$B^*C^*$に垂直な直線」は同じ向きを指す.つまり,$\triangle ABC$の頂点$A$から辺$BC$へ引いた垂線は,$B^*C^*$の中点$A$を通り$B^*C^*$に垂直な直線,すなわち辺$B^*C^*$の垂直二等分線そのものである.同じ議論を$B,C$についても行うと,$\triangle ABC$の3本の垂線は,$\triangle A^*B^*C^*$の3本の垂直二等分線と完全に一致する.ところが2.3節の定理2.5で証明するように,どんな三角形でも3本の垂直二等分線は必ず1点(外心)で交わる.したがって,$\triangle ABC$の3本の垂線も必ず1点で交わる——それが垂心である.

垂心の性質(反中点三角形)の図 B C A A* B* C* H
図2.6 $\triangle ABC$(内側,黒)の各頂点を通り対辺に平行な直線で作った大きい三角形$A^*B^*C^*$(外側,灰色破線).$A,B,C$はそれぞれ$A^*B^*C^*$の辺の中点になっており,$\triangle ABC$の垂心$H$は,$\triangle A^*B^*C^*$の外心と一致する.

例題2.5 直角三角形の垂心

$\triangle ABC$の$\angle C=90^\circ$であるとき,垂心は頂点$C$自身であることを示せ.

解答 $\angle C=90^\circ$より,辺$CA$と辺$CB$は垂直である.したがって,辺$CB$自身が「頂点$B$から対辺$CA$へ引いた垂線」の役割を果たしている——なぜなら,$CB$は点$B$を通り,かつ$CB\perp CA$なので,直線$CB$こそが「$B$を通り$CA$に垂直な直線」に一致する.同様に,直線$CA$は「$A$を通り対辺$CB$へ垂直な直線」に一致する.つまり,頂点$B$からの垂線は直線$CB$そのもの,頂点$A$からの垂線は直線$CA$そのものであり,この2直線は明らかに点$C$で交わる.垂心は3本の垂線すべての交点だから,垂心は点$C$である.

2.3 三角形の五心(2)——外心・内心・重心

前節では「対辺の中点」「垂線の足」を使って重心・垂心を作った.この節では,「距離が等しい点の集まり」という視点から,もう2つの特別な点——外心と内心——を作る.考え方の柱になるのは次の単純な事実である:2点$X,Y$から等しい距離にある点は,線分$XY$の垂直二等分線上にすべて並ぶ(そして垂直二等分線上の点は,逆に必ず$X,Y$から等しい距離にある).角の二等分線についても同様に,角の2辺(をなす2直線)から等しい距離にある点は,その角の二等分線上にすべて並ぶ.この2つの事実を使うと,外心・内心の存在は「証明できる定理」になる.

2.3.1 外心

定義2.4 外心

三角形の各辺の垂直二等分線の交点を,その三角形の外心(circumcenter)という.

定理2.5 外心の存在と外接円

どんな三角形$ABC$についても,3辺の垂直二等分線はただ1点$O$で交わる.この点$O$は3頂点$A,B,C$から等しい距離にあり,$O$を中心として$A,B,C$を通る円を描くことができる(この円を外接円(circumscribed circle)といい,半径を外接円の半径という).

証明(定理2.5)

辺$AB$の垂直二等分線と辺$BC$の垂直二等分線は($A,B,C$が一直線上にない限り)平行にはならないから,どこかの点$O$で交わる.$O$は辺$AB$の垂直二等分線上にあるから,冒頭の事実より

$$ OA=OB $$

である.同様に,$O$は辺$BC$の垂直二等分線上にあるから

$$ OB=OC $$

である.この2つを合わせると$OA=OB=OC$,すなわち$O$は3頂点すべてから等しい距離にある.とくに$OA=OC$が成り立つが,これはちょうど「$O$が辺$CA$の垂直二等分線上にある」ということそのものである(冒頭の事実の逆向き).したがって,辺$CA$の垂直二等分線も点$O$を通る.結局,3本の垂直二等分線はすべて点$O$を通り,$O$は1点に定まる.$OA=OB=OC$という共通の長さを半径として$O$を中心に円を描けば,その円は$A,B,C$の3点をすべて通る.

(証明終わり)

外心と外接円の図 B C A O
図2.7 外心$O$と外接円.$OA=OB=OC$が外接円の半径になる.

Point:外接円は三角形を外から包む

外接円は3頂点$A,B,C$を通り,三角形$ABC$全体を内部に含む(辺の途中には触れず,頂点だけを通る).「三角形が外接円の内側にすっぽり収まる」というイメージで覚えるとよい.これに対して次に学ぶ内接円は,逆に三角形の内側に収まりながら各辺に触れる円である.

例題2.6 直角三角形の外心

$\triangle ABC$の$\angle A=90^\circ$であるとき,外心は辺$BC$(斜辺)の中点であることを示せ.

解答 辺$BC$の中点を$M$とする.$\angle A=90^\circ$なので,三平方の定理(の$\triangle ABC$自身への適用)より

$$ AB^2+AC^2=BC^2 $$

である.一方,中線定理(定理2.4)を$\triangle ABC$に適用すると

$$ AB^2+AC^2=2\bigl(AM^2+BM^2\bigr) $$

である.$M$は$BC$の中点だから$BM=\dfrac{BC}{2}$,すなわち$BM^2=\dfrac{BC^2}{4}$.2つの式の左辺は同じ$AB^2+AC^2$だから,右辺どうしも等しい:

$$ BC^2=2AM^2+2BM^2=2AM^2+\frac{BC^2}{2} $$

整理すると$BC^2-\dfrac{BC^2}{2}=2AM^2$,すなわち$\dfrac{BC^2}{2}=2AM^2$,よって$AM^2=\dfrac{BC^2}{4}=BM^2$.長さは正だから$AM=BM$.$M$はもともと$BC$の中点だから$BM=CM$でもある.したがって

$$ AM=BM=CM $$

となり,$M$は3頂点$A,B,C$から等しい距離にある点である.定理2.5の証明で見たとおり,3頂点から等しい距離にある点はただ1つ(外心)しかないから,$M$こそが外心である.

2.3.2 内心

定義2.5 内心

三角形の各角の二等分線の交点を,その三角形の内心(incenter)という.

定理2.6 内心の存在と内接円

どんな三角形$ABC$についても,3つの角の二等分線はただ1点$I$で交わる.この点$I$は3辺(を含む直線)から等しい距離にあり,$I$を中心としてその距離を半径とする円を描くと,3辺すべてに接する(内接円(inscribed circle)という).

証明(定理2.6)

$\angle A$の二等分線と$\angle B$の二等分線は,三角形の内部でただ1点$I$で交わる.$I$は$\angle A$の二等分線上にあるから,冒頭の事実(角の二等分線と等距離)より,$I$から辺$AB$を含む直線までの距離と,辺$AC$を含む直線までの距離は等しい.同様に$I$は$\angle B$の二等分線上にあるから,$I$から辺$BA$($=AB$)までの距離と,辺$BC$までの距離も等しい.この2つの事実で「辺$AB$までの距離」が共通しているので,

$$ (\text{$I$から辺$CA$までの距離})=(\text{$I$から辺$AB$までの距離})=(\text{$I$から辺$BC$までの距離}) $$

となり,$I$は3辺すべてから等しい距離にある.とくに「辺$CA$までの距離=辺$BC$までの距離」が成り立つが,これはちょうど「$I$が$\angle C$の二等分線上にある」ということそのものである.したがって,$\angle C$の二等分線も点$I$を通り,3本の角の二等分線はすべて点$I$で交わる.辺$BC,CA,AB$への垂線の足をそれぞれ$D,E,F$とすると,$ID=IE=IF$(3辺までの共通の距離)だから,$I$を中心,$ID$を半径とする円は,3辺すべてに(垂線の足$D,E,F$で)接する.

(証明終わり)

内心と内接円の図 B C A I D E F
図2.8 内心$I$と内接円.$ID=IE=IF$が内接円の半径になり,円は各辺に内側から接する.

Point:内接円は三角形の内側から各辺に接する

内接円は,三角形の内側にすっぽり収まりながら,3辺すべてに1点ずつ触れる(接する)円である.外接円が「頂点を通り三角形を内部に含む」のに対して,内接円は「辺に触れながら三角形の内部に収まる」——ちょうど逆の関係になっている.

数学ノート:内接円の半径を面積から求める公式

内心$I$と面積$S=[\triangle ABC]$を使うと,内接円の半径$r=ID=IE=IF$を求める公式が作れる.$I$と3頂点を結ぶと,$\triangle ABC$は$\triangle IBC,\triangle ICA,\triangle IAB$という3つの小さな三角形に分割される.それぞれの面積は「底辺(三角形の辺)$\times$高さ$(=r)\div2$」で書けるから,$BC=a,CA=b,AB=c$として

$$ S=\frac12 r\,a+\frac12 r\,b+\frac12 r\,c=\frac12 r(a+b+c) $$

である.三角形の半周長を$s=\dfrac{a+b+c}{2}$($s$はsemi-perimeterの頭文字)と書くと,この式は$S=rs$,すなわち

$$ r=\frac{S}{s} $$

とまとめられる.次の例題で実際に使ってみよう.

例題2.7 内接円の半径

3辺の長さが$3,4,5$である直角三角形($\angle C=90^\circ$,$CA=3,CB=4,AB=5$とする)の内接円の半径$r$を求めよ.

解答 $\angle C=90^\circ$なので面積は$S=\dfrac12\times3\times4=6$である.半周長は$s=\dfrac{3+4+5}{2}=6$.数学ノートの公式$r=\dfrac{S}{s}$を使うと

$$ r=\frac{6}{6}=1 $$

である.

2.3.3 重心のまとめ——物理的な意味

2.2節で,三角形の重心を「3本の中線の交点」として構成した.外心・内心と同じ図の中に描くと,重心$G$は次のような点である(図2.9).

重心(3本の中線)の図 B C A G
図2.9 重心$G$.3本の中線がすべて$G$を通る(定理2.3).

Point:重心は物理でいう「重さの中心」である

一様な材質でできた三角形の板(厚さ・密度が一様な板)を用意すると,その板をぴったり水平に支えて釣り合わせることができるのは,ちょうど重心の真下(または真上)を支えたときである.重心(centroid,「重さの中心」)という名前は,この物理的な性質に由来する.材料科学で薄い板状の試料の力学的なつり合いを考えるときにも,同じ考え方が使われる.

ノートの誤記・表記のゆれについて

底本のノートには,本節の点の呼び方について2か所の表記のゆれがある.(1) 内心を導入する説明文では中心を「$I$」($ID=IE=IF$)と呼んでいるが,図の中では中心が「$Q$」とラベルされている.(2) 重心を扱う2枚の図のうち,中線の比を証明する図(本書の図2.3にあたる)では交点が「$G$」とラベルされているのに対し,重心を定義する図(本書の図2.9にあたる)では交点が「$R$」とラベルされている.どちらも同じ点を指す呼び方のゆれであり,本書では内心を一貫して$I$,重心を一貫して$G$に統一した.

数学ノート:五心のうち,本章で扱わなかったもの

重心・垂心・外心・内心を合わせて,しばしば「三角形の五心」と呼ばれる(本節の表題もそれにならっている).しかし五心と呼ばれる代表的な点は実は5つあり,本章で学んだ4つに,傍心(ぼうしん,excenter)を加えたものである.傍心は,1つの内角の二等分線と,残り2つの頂点における外角の二等分線の交点として作られる点で,三角形は3つの傍心を持つ.2.1.2項で学んだ「外角の二等分線」の考え方を,角の二等分線の交点(内心)の議論にそのまま応用したものだと考えれば,証明の道具はすでにそろっている.発展的な話題として,関心があれば自分で図をかいて確かめてみるとよい.

寄り道:オイラー線

本節で作った外心$O$,重心$G$と,2.2節で作った垂心$H$を1つの三角形の中に同時に描くと,実は3点$O,G,H$は必ず一直線上に並び,しかも$G$は線分$OH$を$OG:GH=1:2$に内分する.この一直線は,発見者にちなんでオイラー線(Euler line)と呼ばれる.図2.10は,本節でずっと使ってきた三角形について,実際に$O,G,H$を計算し一直線に並ぶことを確認したものである.この事実の簡潔な証明は,ベクトルを使うのがもっとも見通しがよい(第7章でベクトルを学んだあとに,$\vec{OA}+\vec{OB}+\vec{OC}=\vec{OH}$という関係式から出発して確かめることができる).

オイラー線の図 B C A O G H
図2.10 外心$O$・重心$G$・垂心$H$は一直線(オイラー線)上に並び,$OG:GH=1:2$である.

2.4 チェバの定理とメネラウスの定理

最後に,三角形の辺の上(またはその延長上)に3点を取ったとき,「そこから引いた3本の線が1点で交わるかどうか」「その3点が1本の直線に並ぶかどうか」を,比の積だけで判定できる2つの定理を学ぶ.底本のノートでは証明は省略されている(「証明は略す」とだけ書かれている)が,本書では2.1節で使った技法(相似・平行線と比)を応用して,証明も与える.

2.4.1 チェバの定理

定理2.7 チェバの定理(Ceva's theorem)

$\triangle ABC$の辺$AB,BC,CA$上(またはその延長上)に,それぞれ点$R,P,Q$をとる.3本の線分(またはその延長)$AP,BQ,CR$が1点で交わるならば,

$$ \frac{AR}{RB}\times\frac{BP}{PC}\times\frac{CQ}{QA}=1 $$

が成り立つ.

証明(定理2.7)

$AP,BQ,CR$が1点$X$で交わっているとする(図2.11).「頂点を共有し,底辺が同一直線上にある2つの三角形の面積比は,底辺の長さの比に等しい」という事実(三角形の面積$=\frac12\times$底辺$\times$高さで,共通の頂点から底辺までの高さが同じだから)を使う.

まず,頂点$A$と頂点$X$のそれぞれから底辺$BC$を見ると,

$$ \frac{BP}{PC}=\frac{[\triangle ABP]}{[\triangle ACP]}=\frac{[\triangle XBP]}{[\triangle XCP]} $$

($[\ \cdot\ ]$は面積を表す.前半は頂点$A$,後半は頂点$X$から底辺$BC$上の$B,P,C$を見たときの面積比).一般に$\dfrac{a}{b}=\dfrac{c}{d}$のとき$\dfrac{a}{b}=\dfrac{a-c}{b-d}$が成り立つ($a=kb,c=kd$とおけば$a-c=k(b-d)$よりただちにわかる)から,

$$ \frac{BP}{PC}=\frac{[\triangle ABP]-[\triangle XBP]}{[\triangle ACP]-[\triangle XCP]} $$

である.ここで,$X$は線分$AP$上の点だから,線分$BX$は$\triangle ABP$を$\triangle ABX$と$\triangle XBP$に分ける:$[\triangle ABP]=[\triangle ABX]+[\triangle XBP]$,すなわち$[\triangle ABP]-[\triangle XBP]=[\triangle ABX]$.同様に線分$CX$は$\triangle ACP$を$\triangle ACX$と$\triangle XCP$に分けるから$[\triangle ACP]-[\triangle XCP]=[\triangle ACX]$.よって

$$ \frac{BP}{PC}=\frac{[\triangle ABX]}{[\triangle ACX]} \qquad \cdots\text{①} $$

まったく同じ議論を,頂点$B$と辺$CA$上の点$Q$,頂点$C$と辺$AB$上の点$R$についても行うと($X$がそれぞれ$BQ,CR$上にあることを使う),

$$ \frac{CQ}{QA}=\frac{[\triangle BCX]}{[\triangle BAX]} \qquad \cdots\text{②}, \qquad\qquad \frac{AR}{RB}=\frac{[\triangle CAX]}{[\triangle CBX]} \qquad \cdots\text{③} $$

が得られる.①②③の右辺をすべて掛け合わせると,$[\triangle ABX]=[\triangle BAX]$,$[\triangle ACX]=[\triangle CAX]$,$[\triangle BCX]=[\triangle CBX]$(同じ3点を結んだ三角形は,頂点を挙げる順序によらず面積が等しい)ことから,分子と分母がちょうど同じ3つの面積の積になり,きれいに打ち消し合う:

$$ \frac{BP}{PC}\times\frac{CQ}{QA}\times\frac{AR}{RB}=\frac{[\triangle ABX]}{[\triangle ACX]}\times\frac{[\triangle BCX]}{[\triangle BAX]}\times\frac{[\triangle CAX]}{[\triangle CBX]}=1 $$

したがって$\dfrac{AR}{RB}\times\dfrac{BP}{PC}\times\dfrac{CQ}{QA}=1$である.

(証明終わり)

数学ノート:逆も成り立つ

実は定理2.7の逆——「$\dfrac{AR}{RB}\times\dfrac{BP}{PC}\times\dfrac{CQ}{QA}=1$が成り立つならば$AP,BQ,CR$は1点で交わる」——も真である.証明の方針だけ述べておく:$AP$と$BQ$の交点を$X$とし,直線$CX$が辺$AB$(の延長)と交わる点を$R'$とする.$AP,BQ,CR'$は(定義から)$X$で交わっているから,証明した向きの定理より$\dfrac{AR'}{R'B}\times\dfrac{BP}{PC}\times\dfrac{CQ}{QA}=1$.仮定と比べると$\dfrac{AR'}{R'B}=\dfrac{AR}{RB}$となるが,辺$AB$を同じ比に分ける点はただ1つしかないから$R'=R$.つまり$CR$も点$X$を通り,3本は1点で交わる.

チェバの定理の図 A B C R P Q X AR/RB BP/PC CQ/QA
図2.11 チェバの定理.$\triangle ABC$の辺上の点$R,P,Q$から引いた$AP,BQ,CR$が1点$X$で交わるとき,$\dfrac{AR}{RB}\times\dfrac{BP}{PC}\times\dfrac{CQ}{QA}=1$.覚え方は「$A$から出発して分子$\to$分母,分子$\to$分母,…」と一周する.

例題2.8 チェバの定理の利用

$\triangle ABC$の辺$AB$上に点$R$を$AR:RB=2:1$に,辺$BC$上に点$P$を$BP:PC=3:1$にとる.$AP,BQ,CR$が1点で交わるように辺$CA$上に点$Q$をとるとき,$CQ:QA$を求めよ.

解答 定理2.7より

$$ \frac{AR}{RB}\times\frac{BP}{PC}\times\frac{CQ}{QA}=1 $$

に$\dfrac{AR}{RB}=\dfrac{2}{1}$,$\dfrac{BP}{PC}=\dfrac{3}{1}$を代入すると

$$ \frac{2}{1}\times\frac{3}{1}\times\frac{CQ}{QA}=1 $$

より$\dfrac{CQ}{QA}=\dfrac{1}{6}$,すなわち$CQ:QA=1:6$である.(図2.11はこの数値でかいた図であり,実際に$A=(2,5)$,$B=(0,0)$,$C=(6,0)$のように座標をおいて$R,P,Q$を計算すると,$AP,BQ,CR$がぴったり同じ1点$X$で交わることが確かめられる.)

2.4.2 メネラウスの定理

定理2.8 メネラウスの定理(Menelaus' theorem)

$\triangle ABC$の辺$AB,BC,CA$を含む直線(辺そのもの,またはその延長)が,三角形の頂点を通らない1本の直線$\ell$とそれぞれ点$R,P,Q$で交わるとする.このとき

$$ \frac{AR}{RB}\times\frac{BP}{PC}\times\frac{CQ}{QA}=1 $$

が成り立つ.

チェバの定理と見た目はそっくりだが,チェバの定理は「三角形の内部を通る3本の線」についての定理であり,メネラウスの定理は「三角形の外を横切る1本の直線」についての定理である,という違いがある.証明も別の考え方を使う.なお,この式の覚え方は,2.4.1項で述べたチェバの定理の場合とまったく同じ($A$から出発して分子$\to$分母,分子$\to$分母,……と一周する)でよい——理由は演習2.4で確かめる.

証明(定理2.8)

次の補題を使う.

補題. 2点$X,Y$を通る直線が,直線$\ell$と点$Z$で交わるとする.$X,Y$から$\ell$へ下ろした垂線の長さ(垂線の足までの距離)をそれぞれ$d(X,\ell),d(Y,\ell)$とすると,

$$ \frac{XZ}{ZY}=\frac{d(X,\ell)}{d(Y,\ell)} $$

である.

補題の証明. $X,Y$から$\ell$へ下ろした垂線の足をそれぞれ$X',Y'$とする.$X',Z,Y'$はすべて直線$\ell$上にあるので一直線上にある.$\triangle XZX'$と$\triangle YZY'$は,$X'$と$Y'$でそれぞれ直角をなす直角三角形であり,$\angle XZX'$と$\angle YZY'$は対頂角($Z$を挟んで向かい合う角)だから等しい.2組の角がそれぞれ等しいので$\triangle XZX'\backsim\triangle YZY'$であり,対応する辺の比から$\dfrac{XZ}{YZ}=\dfrac{XX'}{YY'}=\dfrac{d(X,\ell)}{d(Y,\ell)}$.(補題の証明終わり)

この補題を,直線$\ell$(定理の中の横断する直線)と,$X,Y$として頂点の組$(B,C),(C,A),(A,B)$を順に当てはめると,

$$ \frac{BP}{PC}=\frac{d(B,\ell)}{d(C,\ell)}, \qquad \frac{CQ}{QA}=\frac{d(C,\ell)}{d(A,\ell)}, \qquad \frac{AR}{RB}=\frac{d(A,\ell)}{d(B,\ell)} $$

が得られる($P,Q,R$はそれぞれ直線$BC,CA,AB$と$\ell$の交点である).この3つの右辺をすべて掛け合わせると,

$$ \frac{BP}{PC}\times\frac{CQ}{QA}\times\frac{AR}{RB}=\frac{d(B,\ell)}{d(C,\ell)}\times\frac{d(C,\ell)}{d(A,\ell)}\times\frac{d(A,\ell)}{d(B,\ell)}=1 $$

となり,定理が示された.なお,この補題は$Z$が線分$XY$の内側にあっても外側にあっても(距離はつねに正の量として)そのまま成り立つので,$P,Q,R$のうちどれが辺の内分点でどれが外分点であっても証明は変わらない.

(証明終わり)

数学ノート:符号付きの比を使うと$-1$になる

本書では$AR,RB$などをすべて正の長さとして扱い,定理の結論を$+1$の形で述べた.より進んだ教科書では,向き(内分か外分か)を区別するために「符号付きの比」(外分のときは負の値とする)を使うことが多く,その流儀では定理の結論は$\dfrac{AR}{RB}\times\dfrac{BP}{PC}\times\dfrac{CQ}{QA}=-1$という,マイナス符号のついた美しい形にまとまる.興味があれば,具体的な座標を使ってこの符号の出どころを確かめてみるとよい.

メネラウスの定理の図 A B C R Q P
図2.12 メネラウスの定理.辺$AB$上の$R$,辺$CA$上の$Q$,辺$BC$の延長上の$P$を通る1本の直線に対して,$\dfrac{AR}{RB}\times\dfrac{BP}{PC}\times\dfrac{CQ}{QA}=1$.

例題2.9 メネラウスの定理の利用

$\triangle ABC$の辺$AB$上に点$R$を$AR:RB=1:2$に,辺$CA$上に点$Q$を$CQ:QA=1:3$にとる.直線$RQ$が辺$BC$の延長と交わる点を$P$とするとき,$BP:PC$を求めよ.

解答 定理2.8より

$$ \frac{AR}{RB}\times\frac{BP}{PC}\times\frac{CQ}{QA}=1 $$

に$\dfrac{AR}{RB}=\dfrac{1}{2}$,$\dfrac{CQ}{QA}=\dfrac{1}{3}$を代入すると

$$ \frac{1}{2}\times\frac{BP}{PC}\times\frac{1}{3}=1 $$

より$\dfrac{BP}{PC}=6$,すなわち$BP:PC=6:1$である(図2.12はこの数値でかいた図である.座標$A=(2,5)$,$B=(0,0)$,$C=(6,0)$で実際に直線$RQ$と直線$BC$の交点を計算すると,$P$は$BC$の延長上——$C$を越えた側——にあり,$BP:PC=6:1$になることが確かめられる).

2.5 まとめと演習

2.5.1 まとめ

\begin{equation} \begin{gathered} AB:AC=BP:PC\ (\text{内分,内角二等分線})\quad,\quad AB:AC=BQ:CQ\ (\text{外分,外角二等分線}) \\[4pt] AG:GL=2:1\ (\text{重心}) \qquad AB^2+AC^2=2(AM^2+BM^2)\ (\text{中線定理}) \\[4pt] \frac{AR}{RB}\times\frac{BP}{PC}\times\frac{CQ}{QA}=1\ (\text{チェバ・メネラウス}) \end{gathered} \label{eq:2-key-equivalences} \end{equation}

2.5.2 演習問題

演習2.1 内角・外角の二等分線

$\triangle ABC$において$AB=5$,$AC=8$,$BC=7$とする.$\angle A$の二等分線と辺$BC$の交点を$P$,$\angle A$の外角の二等分線と辺$BC$の延長との交点を$Q$とするとき,$BP,PC$および$BQ,CQ$をそれぞれ求めよ.

ヒント:内分は定理2.1,外分は定理2.2を使う.$AB\lt AC$なので,外分点$Q$は辺$BC$の延長のうち,どちら側($B$側か$C$側か)に出るかに注意する(定理2.2の証明のあとの数学ノート「$AB\lt AC$のとき,$E,Q$の位置はどう変わるか」を参照).

演習2.2 正三角形の五心

正三角形では,重心・垂心・外心・内心の4点がすべて一致することを説明せよ.

ヒント:正三角形の対称性(各中線が同時に垂直二等分線にも角の二等分線にも垂線にもなること)に着目する.

演習2.3 中線定理の利用

$\triangle ABC$において$AB=7$,$AC=5$,$BC=8$とする.中線定理を使って,辺$BC$の中点$M$と頂点$A$を結ぶ中線$AM$の長さを求めよ.

ヒント:例題2.4とまったく同じ手順で計算できる.答えが整数になるとは限らない.

演習2.4 チェバとメネラウスの違い

チェバの定理とメネラウスの定理は,どちらも同じ式$\dfrac{AR}{RB}\times\dfrac{BP}{PC}\times\dfrac{CQ}{QA}=1$で表される.この2つの定理が主張している幾何学的な状況の違いを説明せよ.また,「$A$から出発して分子$\to$分母,分子$\to$分母,……と一周する」という覚え方が,なぜ2つの定理の両方に共通して使えるのかも説明せよ.

ヒント:2.4節の本文と図2.11・図2.12を見比べる.点$R,P,Q$の並び方(内分か外分か)がどう違うかに注目する.

演習2.5 中線とチェバの定理

三角形の3本の中線(各頂点から対辺の中点へ引いた線分)は,チェバの定理の関係式$\dfrac{AR}{RB}\times\dfrac{BP}{PC}\times\dfrac{CQ}{QA}=1$を満たすことを確認せよ.また,この事実と定理2.7(チェバの定理の逆も成り立つこと,2.4.1項の数学ノート参照)を使って,2.2節の定理2.3(3本の中線が1点で交わること)の別証明を与えよ.

ヒント:中線の場合,$R,P,Q$はすべて辺の中点だから,$AR:RB,\,BP:PC,\,CQ:QA$はすべて$1:1$である.

演習2.6 直角三角形の外接円・内接円

3辺の長さが$5,12,13$である直角三角形($\angle C=90^\circ$,$CA=5,CB=12,AB=13$)の外接円の半径$R$と内接円の半径$r$を求めよ.

ヒント:外接円の半径は例題2.6,内接円の半径は例題2.7と同じ考え方が使える.

2.5.3 参考文献

  1. 望月泰英『数学ノート 高校数学』(手書き講義ノート).本章の底本.
  2. 杉山吉茂 監修『体系数学1・2 幾何編』,数研出版.
  3. H. S. M. Coxeter, S. L. Greitzer, Geometry Revisited, Mathematical Association of America, 1967.