固体を温めると膨らみます.どれくらい膨らむかを決めているのは,じつは硬さ ―― 体積弾性率 BT です.擬調和近似(QHA)から出てくる関係式 αV = γCV / (BTV) が,そのことを一行で言い切っています. ①では立方晶の結晶を 3 次元の supercell で組み,温度を上げながら原子をゆらします ―― 振幅は原子変位パラメーター ADP の式そのままなので,0 K でも振動が止まりません. ②では 38 種類の立方晶について αV と BT を並べます. ③では温度を横軸にして,膨らみ方・硬さ・比熱がどう変わるかを追います. Grüneisen 定数 γ が負になると,温めたのに縮みます(負熱膨張,Cu2O).
曲線はすべて第一原理計算(QHA)の出力そのものです.
V(T)・αV(T)・BT(T)・
CV(T) は,
Y. Mochizuki et al., J. Phys. Chem. C 128, 525 (2024) の
もとになった phonopy-qha の計算結果を 0 〜 595 K の範囲でそのまま読んでいます
(立方晶のみ,38 物質).格子定数もこの体積から a = (natV)1/3
で作るので,画面に出る a は実験値ではなく計算値です
―― ずれの中央値は 0.6 %,大きいのは Fe(−4.8 %)と Ce(−10.9 %)だけで,
どちらも理由を物質ごとの注記に書いてあります.
595 K より上と Cu2O だけが模型です
―― 中身は③の「温度依存はどう出したか」に書きました.
ΘD は,同じ計算が出した CV(T) に
Debye 模型を当てはめた値です.これで見積もった ADP を実測の Debye–Waller
B パラメーター(室温)と 20 物質で照合すると,中央値 1.02 倍・平均 1.01 倍で合います
(ダイヤモンド 0.153 対 0.11,Cu 0.530 対 0.55 Ų).
考え方は Mie–Grüneisen の状態方程式の導出に書きました.
データの出どころ:温度依存はすべて上記論文の QHA 計算,
300 K の αV・γ・BT は同論文 Table S2/S3,
比較用の室温実験格子定数と融点・分解温度・変態点は
CRC Handbook of Chemistry and Physics と Wyckoff Crystal Structures,
描画用の半径は金属半径・共有結合半径と Shannon のイオン半径,
実測 Debye–Waller B は
International Tables for Crystallography 系の標準値です.
ここでの ΘD は「計算した比熱をいちばんよく再現する Debye 温度」であって,
低温比熱から決めた文献値とは別物です
(ダイヤモンドは 1835 K に対し文献 2230 K,Cu2O は 424 K に対し文献 188 K).