2 成分系の状態図 ― 組成と温度を動かすと,組織はどう変わるか

状態図は「この組成でこの温度なら,どの相が,どんな割合で共存するか」を 1 枚にまとめた地図です. ①では図の上を自由に動かして,そのときの材料組織(初晶・共晶組織・包晶の殻・析出物.『よくわかる無機材料化学』図 2-7・2-8 と同じ描き方)とてこの法則による相の割合を見ます. ②では,その状態図が自由エネルギー曲線の共通接線から出てくることを確かめ,相互作用パラメーター Ω を動かして全率固溶・共晶・包晶・偏晶の型が生まれる様子(田中 2008 の図 3)も見ます. ③では融液から冷やして,平衡冷却と急冷(Scheil)を切り替え,共晶・包晶の温度で冷却が止まる様子(熱停止), ミクロ偏析・非平衡共晶・クエンチによるガラス化まで追えます. 曲線はすべて正則溶体モデルからその場で計算していて, 融点・共晶点・包晶点は実在の材料(金属 7 系・セラミックス 6 系)に合わせてあり,教科書の図と同じ形の模式的な系(共晶・包晶)と,模式的な偏晶系(2 液相分離型)も選べます. 組成は mol% と mass% を切り替えられます. ④では融液を急冷するとガラスに,ゆっくり冷やすと結晶になる様子を,⑤では高温で均一だったガラスや固溶体が,冷やすとスピノーダル分解で 2 相に分かれる様子を,原子の並びの模式図で見ます.

これは「モデルで描いた状態図」です. 各相の 1 mol あたりの自由エネルギーを G = (1−X)gA + X gB + RT[(1−X)ln(1−X) + XlnX] + X(1−X)[L0 + L1(1−2X) + L2(1−2X)2] と置き(Redlich–Kister の 3 項まで), 下側凸包(=共通接線)を数値的に求めて状態図にしています. 純成分の融点と融解エンタルピーは実測値,相互作用パラメーター L0, L1, L2 は 共晶点・包晶点の温度と組成,固溶限が実測に合うように決めた値です ―― CALPHAD の熱力学アセスメントではありません. 内部計算の組成はすべてモル分率です(表示は mol% と mass% を切り替えられます). 「A–B 教科書 図 2-7/2-8 の形」と「A–B 模式的な偏晶系」の 3 つは,図と同じ形になるようにパラメーターを決めた架空の系です. 偏晶系と ② の «Ω を動かす» は,田中敏宏「合金と平衡状態図」(溶接学会誌 77 巻 6 号,576–581,2008)の図 1・図 3 にならいました.
データの出どころ:融点と融解エンタルピーは CRC Handbook of Chemistry and Physics と Kubaschewski Materials Thermochemistry, 共晶点・包晶点は ASM Handbook Vol. 3, Alloy Phase Diagrams と “Phase Diagrams for Ceramists”(The American Ceramic Society)によります. 急冷は Scheil–Gulliver の式 (CL − CS)dfS = (1 − fS)dCL を液相線・固相線に沿って数値積分したもので, 固相中の拡散をまったく無視した極限です(実際はその途中に来ます). 詳しい導出は 自由エネルギーから状態図・フェイズフィールド法までへ. Gibbs 自由エネルギーもあわせてどうぞ.