線形応答理論入門 — 目次 第VI部 第一原理計算への展開 / 第14章

第14章準粒子自己無撞着 GW 法(QSGW) — 最良の独立粒子描像を自己無撞着に決める

第9〜12章で,電子気体の誘電関数 $\epsilon(\qq,\omega)=1-v(q)\chi^0(\qq,\omega)$ を組み立てた.第13章と付録C で,相互作用の効果を自己エネルギー $\Sig$ に押し込む Dyson 方程式と,$\Sig$ を計算する Feynman 図形の言葉を学んだ.付録C の最後では,固体の第一原理計算で標準的に使われる GW 近似 $\Sig=\ii GW$ を紹介した.$W=v/\epsilon$ は第9章の線形応答そのものであり,GW 近似とは「電子が自分の作った分極雲から受ける反作用」を線形応答で計算することに他ならない.

ところが,GW 近似を実際の物質に適用しようとすると,すぐに一つの問いに突き当たる.「$G$ と $W$ を,どの1電子状態から作るのか」である.標準的な処方(one-shot GW,$G^{\rm LDA}W^{\rm LDA}$)は密度汎関数理論(LDA)の Kohn–Sham 軌道から作る.しかし LDA の軌道やバンドギャップが悪い物質——遷移金属酸化物,$d$/$f$ 電子系,ギャップがほとんど閉じてしまう InN や Ge——では,答えが出発点に引きずられて定性的にさえ間違う.かといって $G$ を Dyson 方程式で「完全に自己無撞着」にすると,こんどはバンド幅が広がりすぎ,プラズモンのスペクトルが壊れる.

この難問に対する一つの答えが,小谷岳生・M. van Schilfgaarde・S. Faleev によって 2004〜2007 年に提案された準粒子自己無撞着 GW 法(quasiparticle self-consistent GW, QSGW)である.発想は明快で,「摂動論の出発点となる独立粒子ハミルトニアン $H^0$ そのものを,摂動が最小になるように自己無撞着に決める」.決め方の指針は Landau の準粒子描像であり,結果として得られる $H^0$ の固有値は,GW 近似の範囲での準粒子エネルギーに一致する.LDA にも DFT にも依存しない,パラメータのない第一原理の方法である.

本章では,QSGW の基本方程式を Fetter–Walecka の記法に揃えて導出し,「なぜそれが最良なのか」をノルム汎関数の最小化と$Z$ 因子の相殺という二つの観点から説明し,実際の物質でどれだけ合い,どこに系統的な誤差が残り,それが線形応答理論の何に由来するのかを見る.底本は小谷らの原論文4篇(参考文献 [3]–[6])である.数式は追わなくても 14.1 節と 14.5 節で「何をする方法か」は掴めるように書いた.

この章で学ぶこと
  • one-shot GW($G^{\rm LDA}W^{\rm LDA}$)の手続きと,その三つの病——全電子で見るとギャップが過小,出発点依存,$d$/$f$ 系での定性的破綻
  • 完全自己無撞着 GW がなぜ悪化させるのか:$P=-\ii GG$ に入る $Z\times Z$ の抑制,$W$ の過小遮蔽
  • 裸の準粒子($H^0$ の固有状態 $\{\epsilon_i,\psi_i\}$)と着衣の準粒子($\{E_i,\Phi_i\}$),両者を一致させる条件から出る QSGW の基本方程式 $\Vxc=\tfrac12\sum_{ij}\ket{\psi_i}\{\Re[\Sig(\epsilon_i)]_{ij}+\Re[\Sig(\epsilon_j)]_{ij}\}\bra{\psi_j}$
  • 自己無撞着サイクルの構造と,収束後に成り立つこと($Z=1$ が自然に出る,$H^0$ のバンド=準粒子バンド)
  • 正当化:ノルム汎関数 $M[\Veff]$ の最小化,Landau–Silin の準粒子描像,Ward 恒等式による $Z$ 因子相殺,Hartree–Fock・COHSEX・Kohn–Sham との関係
  • 結果:半導体・酸化物・遷移金属・MnO/NiO のバンドギャップ,$d$ 準位,バンド幅,磁気モーメント.系統誤差(ギャップ $+10$〜$20\%$,$\epsilon_\infty$ $-20\%$)が RPA の電子‐正孔相互作用の欠如に由来すること
  • 全電子・混合基底実装の要点:自己エネルギーの行列要素,$\omega'$ 積分の経路変形(第5章の応用),Kramers–Kronig による $\Re\Pi$ の計算(第4章の応用),$q\to0$ の発散の扱い
前提:第8章(Lehmann 表示,スペクトル関数),第9・10章(誘電関数,Lindhard 関数 $\chi^0$,RPA),第13章(Dyson 方程式,自己エネルギー,$Z$ 因子),付録C(Feynman 図形,Hedin の方程式,GW 近似,頂点補正と $Z$–$\Gamma$ 相殺).密度汎関数理論(Kohn–Sham 方程式,LDA)の初歩は既知とする.本章は,本書の線形応答理論が現代の第一原理計算のどこに使われているかを示す「出口」の章である.

14.1 動機 — GW 近似は「何から作るか」で答えが変わる

14.1.1 one-shot GW の手続き

付録C の C.8.3 で述べた標準的な手続きを,まず復習する.(i)LDA の Kohn–Sham 方程式を解いて軌道 $\psi_i$ と固有値 $\epsilon_i$ を得る.(ii)それから $G^{\rm LDA}$ を作り,RPA で $W^{\rm LDA}=v/\epsilon^{\rm RPA}$ を作る.(iii)$\Sig=\ii G^{\rm LDA}W^{\rm LDA}$ を一度だけ計算し,準粒子エネルギーを1次摂動で

$$ \begin{equation} E_i=\epsilon_i+Z_i\Big[\bra{\psi_i}\Sig(\epsilon_i)\ket{\psi_i}-\bra{\psi_i}V^{\rm xc}_{\rm LDA}\ket{\psi_i}\Big],\qquad Z_i=\Big[1-\bra{\psi_i}\frac{\partial\Sig}{\partial\omega}\Big|_{\epsilon_i}\ket{\psi_i}\Big]^{-1} \label{eq:14-oneshot} \end{equation} $$

と求める.Hybertsen と Louie(1986)がこの処方を $sp^3$ 半導体に適用し,LDA で $0.5\,\mathrm{eV}$ 程度だった Si のギャップが実験値 $1.17\,\mathrm{eV}$ の近くまで開くことを示して以来,「GW 計算」といえばほぼこの one-shot GW($G^{\rm LDA}W^{\rm LDA}$,$G_0W_0$)を指してきた.

14.1.2 三つの病

しかし,擬ポテンシャルを使わず内殻まで含めた全電子の実装で丁寧に計算すると,one-shot GW には系統的な欠陥があることが 2000 年代初頭に明らかになった(小谷–van Schilfgaarde 2002 [3],Faleev ら 2004 [4]).

表14.1 Si の最小ギャップ $E_g$(eV).全電子の3つの実装で one-shot GW($G^{\rm LDA}W^{\rm LDA}$)を比べると,いずれも実験より $0.3\,\mathrm{eV}$ 小さい.自己無撞着化(SCGW,14.3 節の方法の原型)で実験に近づく.出典:[4] Table I
PAW(価電子のみ)LAPWLAPW, SCGWFP-LMTO [4]FP-LMTO, SCGW [4]実験
$E_g$0.920.851.030.841.141.17
$\Gamma_{15c}$3.093.123.483.063.403.40
  1. ギャップの系統的な過小評価.表14.1 のように,全電子計算で揃えると Si のギャップは $0.3\,\mathrm{eV}$ 足りない.同じ傾向はほぼすべての $sp$ 半導体に見られる([5] Fig. 1 上段).理由は単純で,LDA のギャップが小さいと $\chi^0$ が大きく,遮蔽が効きすぎて $W$ が小さくなり,ギャップの補正が足りなくなる.初期の擬ポテンシャル計算で実験とよく合って見えたのは,内殻の扱いなど別の誤差との相殺による部分が大きかった.
  2. 出発点依存性.LDA 固有値だけを更新する「固有値のみの自己無撞着化」を行うと,ZnS のギャップは $3.19\to3.64\,\mathrm{eV}$,ZnSe は $2.32\to2.41\,\mathrm{eV}$ と動く.さらに出発点を LDA から GGA に変えるだけで ZnSe は $2.41\to2.69\,\mathrm{eV}$ になる(Luo ら,[6] の序論).同じ量の計算結果がグループごとに食い違う,という GW 計算の長年の悩みの原因の一つがここにある.何を $G^0$ に使うかで答えが変わるなら,それは理論ではなく処方箋である.
  3. LDA 軌道が悪いときの定性的破綻.LDA で InN や Ge のギャップはほぼゼロ(あるいは負)になり,そこから出発した one-shot GW は「金属から絶縁体へ」という大きな変化を1次摂動で追えない.NiO では one-shot GW のギャップは $\sim1\,\mathrm{eV}$(実験 $4.3\,\mathrm{eV}$)にとどまり,CoO や ErAs では定性的に間違う.LDA の軌道が $d$ 電子と $sp$ 電子の混成を間違えているとき,固有値だけ直しても軌道は直らないからである.

14.1.3 完全自己無撞着 GW はなぜ悪化させるのか

素朴に考えれば,Dyson 方程式 $G=G^0+G^0\Sig G$ を満たす $G$ で $\Sig=\ii GW$,$W=v/(1-v\Pol)$,$\Pol=-\ii GG$ を全部作り直し,収束するまで回せばよいはずである(完全自己無撞着 GW,full SCGW).これは Luttinger–Ward 汎関数から導かれる「保存近似」(付録C C.8.4 理由1)であり,理論的には整っている.ところが実際に計算すると(Holm–von Barth 1998 [10],Ku–Eguiluz 2002 [11]):

原因は付録C で述べた $Z$ 因子にある.相互作用のある $G$ は $G=ZG^{\rm QP}+\bar G$(準粒子部分+非干渉部分,$Z\simeq0.7$〜$1$)と書ける.$\Pol=-\ii GG$ を作ると,粒子‐正孔対励起の重みは $Z\times Z$ だけ抑制され,残りは物理的に不明瞭な「準粒子×サテライト」の中間状態に行く.抑制された $\Pol$ は遮蔽が弱すぎる $W$ を与え,Hartree–Fock 的な(遮蔽なしの極限で起こる)バンド幅の広がりが現れる.しかも $\Pol$ は密度応答関数 $\delta n/\delta V$ としての意味を失い,$f$ 和則(第8章)も満たさない.Landau の準粒子描像は,$\Pol$ に入るのは重み 1 の準粒子であるべきだと要請する——これを破ったのが完全自己無撞着 GW である(14.4.2 で Ward 恒等式を使って精密に述べる).

14.1.4 QSGW の発想 — 摂動論の「分割」を最適化する

整理すると,欲しいのは次の二つを同時に満たす方法である.(a)答えが出発点(LDA)に依存しない.(b)$W$ を作る $\Pol$ には,重み 1 の準粒子を使う.

QSGW の発想はこうである.多体ハミルトニアン $\Ham$ を,独立粒子ハミルトニアン $\Ham^0$ と残り $\Ham-\Ham^0$ に分けて摂動論を組む.ここで $\Ham^0$ の選び方には大きな自由度がある——$V^{\rm eff}$ は静的・Hermite であれば非局所でもよい.ならば,$\Ham^0$ を,摂動 $\Ham-\Ham^0$ の効果が最小になるように選ぼう.「最小」を測る物差しは Landau の準粒子である:$\Ham^0$ の固有状態(裸の準粒子)と,GW 近似で計算した相互作用系の準粒子(着衣の準粒子)が,できるだけ一致するように $\Ham^0$ を決める.この条件は $\Ham^0$ 自身を含むから自己無撞着に解く——自己無撞着摂動論(self-consistent perturbation theory)である.

物理的な注意:Hartree–Fock はすでに同じ発想である

Hartree–Fock 法は,裸の Coulomb 相互作用 $v$ の範囲で同じことをしている.軌道を「1次の補正が消える」ように自己無撞着に決める(Brillouin の定理).その結果,HF の固有値は Koopmans の定理の意味で1電子励起エネルギーになる.QSGW は,$v$ を遮蔽された $W$ に,静的な交換 $\Sigma_x$ を動的な $\Sig(\omega)$ に置き換えて,同じ構造を組み直したものと見ることができる.14.3 節の最後で,$W\to v$ の極限で QSGW が厳密に HF に戻ることを確かめる.

14.2 準備 — 独立粒子ハミルトニアンから GW 自己エネルギーまで(記法の統一)

14.2.1 記法と単位

本章では第一原理計算の慣例に従い $\hbar=1$ とし,振動数 $\omega$ をエネルギーの単位で測る(Hartree 原子単位では $\hbar=m=e=1$,エネルギーの単位は $1\,\mathrm{Ha}=27.211\,\mathrm{eV}$).スピン添字は省略する(スピン偏極系では各式にスピン添字が付くだけである).Fetter–Walecka(F–W)および本書の他章との記号の対応を表14.2 にまとめる.

表14.2 記号の対応.F–W の $\Sig$ は振動数の次元をもつが,$\hbar=1$ ではエネルギーと同じになる
量F–W/本書第8〜13章・付録C本章小谷らの論文 [3]–[6]
独立粒子ハミルトニアン$\Ham_0$(第6章)$H^0=-\nabla^2/2m+\Veff$$H^0$
1粒子 Green 関数$G$, $G^0$(時間順序積,F–W (7.1))$G$, $G^0$$G$, $G^0$
固有自己エネルギー$\Sig$(付録C),$\Sigma$(第13章,エネルギー次元)$\Sig$($\hbar=1$)$\Sigma$
裸の Coulomb 相互作用$U_0$,$v(q)=4\pi e^2/q^2$(第9章)$v(\rr,\rr')=e^2/\abs{\rr-\rr'}$$v$
遮蔽された相互作用$U$(F–W (9.40),付録C C.7),$W$(付録C C.8)$W\equiv U$$W$
固有分極$\Pol$(付録C C.7)$\Pol$$P$
RPA 分極(1ループ)$\Pi^0$=Lindhard 関数 $\chi^0$(第10章)$\Pi^0=-\ii G^0G^0$$P=-\ii G^0\times G^0$
誘電関数$\epsilon=1-v\chi^0$(第9章)$\epsilon=1-v\Pol$$\epsilon$
裸の準粒子$\epsilon_\kk$(F–W)$\{\epsilon_i,\psi_i\}$:$H^0$ の固有対$\{\epsilon_i,\Psi_i\}$
着衣の準粒子$\tilde\epsilon_\kk$(付録C C.1)$\{E_i,\Phi_i\}$:式 \eqref{eq:14-dressed} の解$\{E_i,\Phi_i\}$

添字 $i$ は波数とバンド指数の組 $i\equiv(\kk,n)$ を表す.演算子 $X$ の Hermite 部分を $\Re X\equiv(X+X^\dagger)/2$ と書く(行列要素の実部ではないことに注意.$\Re[\Sig(\omega)]$ の行列要素は一般に複素数である).

14.2.2 独立粒子ハミルトニアンと $G^0$

出発点は,静的・Hermite・(一般に)非局所なポテンシャル $\Veff(\rr,\rr')$ をもつ独立粒子ハミルトニアンである:

$$ \begin{equation} H^0=-\frac{\nabla^2}{2m}+\Veff(\rr,\rr'),\qquad H^0\psi_i=\epsilon_i\psi_i . \label{eq:14-H0} \end{equation} $$

Kohn–Sham 理論では $\Veff$ は局所 $\Veff(\rr)\delta(\rr-\rr')$ に制限されるが,QSGW ではその制限を外す.Hartree–Fock の Fock 演算子 $-\sum_{i}^{\occ}\psi_i(\rr)\psi_i^*(\rr')v(\rr,\rr')$ がその典型例である.$H^0$ の固有対 $\{\epsilon_i,\psi_i\}$ から,相互作用のない Green 関数を作る(F–W (9.14) の一般化,付録C C.1.2):

$$ \begin{equation} G^0(\rr,\rr',\omega)=\sum_i\frac{\psi_i(\rr)\psi_i^*(\rr')}{\omega-\epsilon_i\pm\ii\delta},\qquad \begin{cases}-\ii\delta&(\text{占有状態}),\\ +\ii\delta&(\text{非占有状態}).\end{cases} \label{eq:14-G0} \end{equation} $$

極の位置(占有は上半面,非占有は下半面)は F–W の時間順序積 Green 関数の規約である.$G^0$ のスペクトル関数 $A^0(\omega)=-\frac1\pi\Im\Tr G^0$ は $\epsilon_i$ に立つデルタ関数の集まりで,重みはすべて 1,寿命は無限大である(付録C C.1.2).

14.2.3 RPA 分極,遮蔽相互作用,GW 自己エネルギー

$G^0$ から RPA の分極を作る.固有関数で書くと(スピン和を含む)

$$ \begin{equation} \Pi^0(\rr,\rr',\omega)=\sum_{i}^{\occ}\sum_{j}^{\unocc} \left[\frac{\psi_i^*(\rr)\psi_j(\rr)\,\psi_j^*(\rr')\psi_i(\rr')}{\omega-(\epsilon_j-\epsilon_i)+\ii\delta} -\frac{\psi_i(\rr)\psi_j^*(\rr)\,\psi_j(\rr')\psi_i^*(\rr')}{\omega+(\epsilon_j-\epsilon_i)-\ii\delta}\right]. \label{eq:14-Pi0} \end{equation} $$

$\psi_i$ が平面波なら,これは第10章で完全導出した Lindhard 関数 $\chi^0(\qq,\omega)=\frac1V\sum_{\kk\sigma}\frac{n_\kk-n_{\kk+\qq}}{\omega+\epsilon_\kk-\epsilon_{\kk+\qq}+\ii\delta}$ に一致する(演習14.1).つまり \eqref{eq:14-Pi0} は「一般のバンド構造に対する Lindhard 関数」である.遮蔽された相互作用は第9章の自己無撞着な遮蔽の議論そのもので,

$$ \begin{equation} W=v+v\,\Pol\,W=(1-v\Pol)^{-1}v=\epsilon^{-1}v,\qquad \Pol\simeq\Pi^0\ \ (\text{RPA}). \label{eq:14-W} \end{equation} $$

(演算子の積は $\int\dd^3r''$ の畳み込み.F–W (9.40),付録C C.7.)これで GW 近似の自己エネルギーが書ける(Hedin 1965 [1],付録C C.8.1):

$$ \begin{equation} \Sig(\rr,\rr',\omega)=\frac{\ii}{2\pi}\int_{-\infty}^{\infty}\dd\omega'\;G^0(\rr,\rr',\omega-\omega')\,W(\rr,\rr',\omega')\,\ee^{-\ii\delta\omega'} . \label{eq:14-SigmaGW} \end{equation} $$

これは付録C の $\Sig=\ii G^0W$ を振動数表示で書いたものである.収束因子 $\ee^{-\ii\delta\omega'}$ は,F–W の Feynman 則 6(同じ相互作用線の両端を結ぶ線には $\ee^{\ii\omega\eta}$,付録C 定義C.2)の現れで,$W$ の瞬間的な部分 $v$ から来る交換項の振動数積分を正しく定義する.

導出14.1:式 \eqref{eq:14-SigmaGW} の $W\to v$ の部分が Fock の交換演算子になること

$W=v+W_c$($W_c\equiv W-v$ は相関部分)と分ける.$v$ は $\omega'$ に依らないから,$v$ の部分は

$$ \Sigma_x(\rr,\rr')=\ii\,v(\rr,\rr')\int\frac{\dd\omega'}{2\pi}\,G^0(\rr,\rr',\omega-\omega')\,\ee^{-\ii\delta\omega'} . $$

$\omega''=\omega-\omega'$ と置くと $\ee^{-\ii\delta\omega'}=\ee^{-\ii\delta\omega}\ee^{+\ii\delta\omega''}$.因子 $\ee^{\ii\delta\omega''}$ は上半面で減衰するので,$\omega''$ 積分は上半面で閉じる(第5章,Jordan の補題).\eqref{eq:14-G0} の極の位置を確認する:占有状態の分母は $\omega''-\epsilon_i-\ii\delta$ だから極は $\omega''=\epsilon_i+\ii\delta$(上半面),非占有状態の極は $\epsilon_j-\ii\delta$(下半面)にある.したがって上半面で閉じた積分に寄与するのは占有状態だけで,留数定理より

$$ \int\frac{\dd\omega''}{2\pi}\,G^0(\rr,\rr',\omega'')\,\ee^{\ii\delta\omega''}=\ii\sum_i^{\occ}\psi_i(\rr)\psi_i^*(\rr') \quad\Longrightarrow\quad \Sigma_x(\rr,\rr')=-\sum_i^{\occ}\psi_i(\rr)\psi_i^*(\rr')\,v(\rr,\rr') . $$

これは Hartree–Fock の交換(Fock)演算子そのものである.$\omega$ に依らず(静的),Hermite である.付録C 導出C.5 で F–W の運動量空間の規則から出した $-\int\frac{\dd^3k_1}{(2\pi)^3}V(\kk-\kk_1)\theta(k_F-k_1)$ の,一般のバンドへの拡張になっている.相関部分 $\Sigma_c=\frac{\ii}{2\pi}\int\dd\omega'\,G^0(\omega-\omega')W_c(\omega')$ は $\omega$ に依存し,非 Hermite 部分(寿命)をもつ.

14.2.4 GW が与える「振動数依存のポテンシャル」と準粒子方程式

原子核からの外部ポテンシャル $\Vext$,$G^0$ の密度 $n(\rr)=-\frac{\ii}{2\pi}\int\dd\omega\,G^0(\rr,\rr,\omega)\ee^{\ii\delta\omega}=\sum_i^{\occ}\abs{\psi_i(\rr)}^2$ から作った Hartree ポテンシャル $\VH$,そして $\Sig(\omega)$ を合わせると,GW 近似は $\Veff$ に対して

$$ \begin{equation} \VGW(\omega)=\Vext+\VH+\Sig(\omega),\qquad \Delta V(\omega)\equiv\VGW(\omega)-\Veff \label{eq:14-VGW} \end{equation} $$

という振動数依存の1体ポテンシャルを返す.$\Veff$ を与えると $\VGW(\omega)$ が決まる——GW 近似とは $\Veff\mapsto\VGW(\omega)$ という写像である.相互作用系の Green 関数は Dyson 方程式(第13章 13.10 節,付録C C.6.2)により

$$ \begin{equation} G(\omega)=\big[\omega-H^0-\Delta V(\omega)\big]^{-1}=\Big[\omega+\frac{\nabla^2}{2m}-\VGW(\omega)\Big]^{-1}. \label{eq:14-Dyson} \end{equation} $$

$\Delta V(\omega)$ が「$H^0$ に対する摂動」である.one-shot GW は $\Veff=V^{\rm KS}_{\rm LDA}$ を入れて $\Delta V$ を1次摂動で評価したもの(式 \eqref{eq:14-oneshot})に他ならない.

補足:$Z$ 因子を掛けないほうが良い,という経験則

式 \eqref{eq:14-oneshot} の $Z_i$ は $\Sig$ の振動数依存性を線形化したときに出る因子で,Lehmann 表示の重み $Z$(第13章,付録C C.1.3)と同じものである.教科書的にはこれを掛けるのが「正しい」が,小谷らは $Z=1$ と置くほうが(one-shot の範囲では)系統的に良い結果を与えることを示した([6] 表 II〜IV の one-shot と one-shot-NZ を比較せよ:Si $0.98\to1.13$,GaAs $1.44\to1.75\,\mathrm{eV}$).Mahan は Fröhlich ハミルトニアンの解析で,$Z=1$ が Rayleigh–Schrödinger 摂動論,$Z$ を掛けるのが Brillouin–Wigner 摂動論に対応し,前者が望ましいと論じている.より深い理由は 14.4.2 の $Z$ 因子相殺にある.QSGW では,$Z$ をどうするかという問いそのものが消える(14.3.4).

14.3 QSGW の基本方程式 — 裸の準粒子と着衣の準粒子を一致させる

14.3.1 二種類の準粒子

Landau の準粒子描像によれば,少なくとも Fermi エネルギー $E_F$ の近くには,1粒子的な基本励起(準粒子)が存在する.GW 近似の範囲で,その準粒子のエネルギー $E_i$ と波動関数 $\Phi_i(\rr)$ は,式 \eqref{eq:14-Dyson} の $G$ の極として

$$ \begin{equation} \Big[-\frac{\nabla^2}{2m}+\Vext+\VH+\Re\big[\Sig(E_i)\big]\Big]\Phi_i=E_i\,\Phi_i \label{eq:14-dressed} \end{equation} $$

で決まる.ここで $\Re[\Sig(E_i)]$ は Hermite 部分である.Hermite 部分だけを取るのは $E_i$ を実数にするためで,反 Hermite 部分(寿命の逆数,付録C C.1.3)は $E_i\to E_F$ でゼロになるから $E_F$ 近傍では問題にならない.式 \eqref{eq:14-dressed} は「自分のエネルギー $E_i$ で評価した $\Sig$ を含む」という意味で非線形な固有値問題であり,解 $\{E_i,\Phi_i\}$ を着衣の準粒子(dressed QP)と呼ぶ.

一方,$H^0$ の固有対 $\{\epsilon_i,\psi_i\}$ を裸の準粒子(bare QP)と呼ぶ.裸の準粒子どうしは裸の Coulomb 相互作用 $v$ で相互作用し,$\Ham-\Ham^0$ を断熱的に入れると着衣の準粒子へ移行する.着衣の準粒子は「中心の裸の準粒子+他の裸の準粒子が作る分極雲」でできており,これは RPA で $G^0$ から $G$ の極を計算するときの描像そのものである.Pines–Nozières の荷電 Fermi 液体論(Landau–Silin の準粒子)と整合する見方である.

(a) 裸の準粒子:H⁰ のスペクトル関数 A⁰(ω) (b) 着衣の準粒子:G のスペクトル関数 A(ω) ω ω ε₁ε₂ε₃ε₄ 重み 1,幅 0(寿命 ∞) EF サテライト (重み 1−Z) E₁E₂E₃E₄ 重み Z<1,幅 ∝ |Im Σ*|(有限寿命) EF H−H⁰ を断熱的に入れる QSGW の要請:εi の位置を Ei の位置に一致させるように Veff を選ぶ(重み・幅は問わない)
図14.1 裸の準粒子($H^0$ の固有状態)と着衣の準粒子($G$ の極).相互作用を入れると,ピークは位置がずれ(くりこみ),幅をもち(寿命),重みの一部がサテライトへ移る(付録C C.1.3).QSGW は,$\Veff$ を調節してピークの位置を一致させる.幅と重みは $H^0$ には持たせない(静的・Hermite だから持てない).

14.3.2 一致の要請から基本方程式へ

QSGW の要請は,裸の準粒子と着衣の準粒子が,$E_F$ の近くでできるだけ一致すること:$\{\epsilon_i,\psi_i\}\simeq\{E_i,\Phi_i\}$ である.これが成り立つように $\Veff$(の交換相関部分 $\Vxc\equiv\Veff-\Vext-\VH$)を決めたい.自己無撞着性が達成されたとしよう.すると式 \eqref{eq:14-dressed} で $\Re[\Sig(E_i)]\ket{\Phi_i}\simeq\Re[\Sig(\epsilon_i)]\ket{\psi_i}$ と置いてよい.$\{\psi_i\}$ は $H^0$ の固有関数だから完全系をなす($\{\Phi_i\}$ は非線形固有値問題の解なので,一般には完全系にならないことに注意).そこで展開する:

$$ \begin{equation} \Re[\Sig(\epsilon_i)]\ket{\psi_i}=\sum_j\ket{\psi_j}\,\Re[\Sig(\epsilon_i)]_{ji},\qquad \Re[\Sig(\omega)]_{ji}\equiv\bra{\psi_j}\Re[\Sig(\omega)]\ket{\psi_i}. \label{eq:14-expand} \end{equation} $$

右辺を「$\ket{\psi_i}$ に作用して同じ結果を返す,振動数に依らない演算子」で置き換えたい.そのような演算子は

$$ \begin{equation} R\equiv\sum_{j,i}\ket{\psi_j}\,\Re[\Sig(\epsilon_i)]_{ji}\,\bra{\psi_i},\qquad R\ket{\psi_i}=\Re[\Sig(\epsilon_i)]\ket{\psi_i} \label{eq:14-R} \end{equation} $$

である(各 $\ket{\psi_i}$ に対して,その状態自身のエネルギー $\epsilon_i$ で評価した $\Sig$ を当てがう).$R$ は式 \eqref{eq:14-dressed} の $\Re[\Sig(E_i)]$ の代わりに使えるが,$R$ は Hermite ではない——$\bra{\psi_j}R\ket{\psi_i}=\Re[\Sig(\epsilon_i)]_{ji}$ と $\bra{\psi_i}R\ket{\psi_j}^*=\Re[\Sig(\epsilon_j)]_{ji}$ は,$\Sig$ を評価するエネルギーが $\epsilon_i$ と $\epsilon_j$ で違うからである.$\Veff$ は Hermite でなければならない(固有値が実数で,固有関数が完全直交系をなすために).そこで $R$ の Hermite 部分を取る:

導出14.2:$R$ の Hermite 部分

$A(\omega)\equiv\Re[\Sig(\omega)]$ は Hermite だから $A(\omega)_{ji}^*=A(\omega)_{ij}$.$R^\dagger=\sum_{j,i}\ket{\psi_i}A(\epsilon_i)_{ji}^*\bra{\psi_j}=\sum_{j,i}\ket{\psi_i}A(\epsilon_i)_{ij}\bra{\psi_j}$.一方 $R$ で添字の名前を $i\leftrightarrow j$ と付け替えると $R=\sum_{i,j}\ket{\psi_i}A(\epsilon_j)_{ij}\bra{\psi_j}$.よって

$$ \Re R=\frac{R+R^\dagger}{2}=\frac12\sum_{i,j}\ket{\psi_i}\big\{A(\epsilon_i)_{ij}+A(\epsilon_j)_{ij}\big\}\bra{\psi_j}. $$

対角要素($i=j$)は $A(\epsilon_i)_{ii}=\bra{\psi_i}\Re[\Sig(\epsilon_i)]\ket{\psi_i}$ で,これは one-shot GW の式 \eqref{eq:14-oneshot} の $Z=1$ での補正項と同じものである.非対角要素は,2つの状態のエネルギーで評価した $\Sig$ の平均になる.

QSGW の基本方程式(van Schilfgaarde–Kotani–Faleev 2006 [5] 式(2),Kotani–van Schilfgaarde–Faleev 2007 [6] 式(10),「mode A」)

$$ \begin{equation} \Vxc_{\rm QSGW}=\frac12\sum_{i,j}\ket{\psi_i}\Big\{\Re\big[\Sig(\epsilon_i)\big]_{ij}+\Re\big[\Sig(\epsilon_j)\big]_{ij}\Big\}\bra{\psi_j}, \qquad \Veff=\Vext+\VH+\Vxc_{\rm QSGW}. \label{eq:14-QSGW} \end{equation} $$

右辺の $\Sig$ と $\{\epsilon_i,\psi_i\}$ は $\Veff$ から GW 近似で計算されるから,これは $\Veff$ に対する自己無撞着方程式である.

式 \eqref{eq:14-QSGW} は,$E_F$ 近傍で $\{\epsilon_i,\psi_i\}\simeq\{E_i,\Phi_i\}$ という要請から導いたが,この要請だけでは $\Vxc$ は一意に決まらない.非対角要素の扱いには他の選択もある.小谷らが最初の論文 [4] で試した別の処方は

$$ \begin{equation} \Vxc_{\rm mode\,B}=\sum_i\ket{\psi_i}\Re[\Sig(\epsilon_i)]_{ii}\bra{\psi_i}+\sum_{i\neq j}\ket{\psi_i}\Re[\Sig(E_F)]_{ij}\bra{\psi_j} \label{eq:14-modeB} \end{equation} $$

(非対角要素を $E_F$ で評価する,「mode B」)である.対角部分は mode A と同じ.両者の結果はよく似ており(Si のギャップ:mode A $1.25$,mode B $1.28\,\mathrm{eV}$;GaAs:$1.97$ と $2.03\,\mathrm{eV}$ [6]),この違いが QSGW の処方に内在する曖昧さの大きさを示す.実用上は mode A が最も系統的に実験と合う.

14.3.3 自己無撞着サイクル

出発点:H⁰ = HLDA(ΔVxc ≡ Vxc − VxcLDA = 0) 1 回目の反復=one-shot GW(Z=1,非対角成分つき) ① H⁰ = −∇²/2m + Veff を対角化 → 裸の準粒子 {εi, ψi},密度 n(r),VH ② G⁰ → Π⁰ = −iG⁰G⁰(RPA,第10章) → W = (1 − vΠ⁰)⁻¹ v(第9章) ③ Σ*(ω) = iG⁰W の行列要素 ⟨ψi|Σ*(ε)|ψj⟩ 非対角成分も必要(標準 GW の 3〜10 倍の手間) ④ Vxc = ½Σij|ψi⟩{ReΣ*(εi)+ReΣ*(εj)}ij⟨ψj| Veff = Vext + VH + Vxc 収束判定: ‖Vxcnew − Vxcold‖ < 許容値? いいえ → ①へ(混合して) 収束 → QSGW バンド {εi, ψi} = 準粒子バンド 反復の実際([6] Sec. II G) ・太枠の②③が全体の 100〜1000 倍の計算量 ・④→①の間に,ΔVxc を固定して密度と  VH だけを収束させる内側ループを回す ・Si なら 3〜4 回で準粒子準位が 0.01 eV に収束 ・NiO など低エネルギー揺らぎ(スピン・軌道)  のある系,相転移近傍では多数回必要 ・k 点収束は LDA より遅い  (GaAs:8×8×8 で 0.01 eV) 収束後に成り立つこと(14.3.4) ・εi = Ei, ψi = Φi(EF 近傍,Hermite 部分で) ・⟨ψi|Σ*(εi) − Vxc|ψi⟩ = 0(1 次補正が消える) ・「Z を掛けるか」という問いが消える ・寿命 Im Σ*(εi) は事後的に評価 ・LDA の記憶は消える(出発点依存性なし) ・W は重み 1 の準粒子から作られている
図14.2 QSGW の自己無撞着サイクル([6] Fig. 2 を再構成).太枠が計算時間を支配する.1回目の反復は one-shot GW($Z=1$,非対角成分つき)に等しく,反復を重ねるごとに LDA の記憶が消えていく.

サイクルは図14.2 のとおりである.出発点として LDA を使うのは単に初期値のためであり,収束解は LDA に依らない([6] では,出発条件を変えても結果が変わらないことを確認している).一度 $\Vxc$ が更新されると,$\Delta\Vxc\equiv\Vxc-\Vxc_{\rm LDA}$ を固定したまま密度と Hartree ポテンシャルを収束させる内側ループを回す.$\Vxc$ そのものより $\Delta\Vxc$ のほうが密度変化に鈍感なので,高価な $\Sig$ の再計算の回数を減らせる.

14.3.4 収束したら何が成り立つか

収束した $\Veff$ に対しては,構成により次が成り立つ.

  1. 対角要素の一致.$\bra{\psi_i}\Vxc\ket{\psi_i}=\bra{\psi_i}\Re[\Sig(\epsilon_i)]\ket{\psi_i}$.したがって one-shot 型の1次補正 $\bra{\psi_i}\Sig(\epsilon_i)-\Vxc\ket{\psi_i}$ の Hermite 部分は恒等的にゼロである.式 \eqref{eq:14-oneshot} の $Z$ を掛ける・掛けないの問題は,掛ける相手がゼロになることで消える.
  2. $H^0$ のバンド=準粒子バンド.$E_F$ 近傍で $\epsilon_i=E_i$,$\psi_i=\Phi_i$(Hermite 部分の範囲で).つまりQSGW のバンド図は,それ自体が GW 近似の準粒子エネルギーである.LDA のバンド図に「GW 補正を足す」必要がない.これが「$H^0$ の固有値に物理的意味を与える」ということの内容であり,Kohn–Sham 固有値が(厳密な DFT でさえ)準粒子エネルギーではないのと対照的である.
  3. 寿命は事後的に.$H^0$ は静的・Hermite だから寿命をもたない.準粒子の寿命 $1/\tau_i=-2\Im\bra{\psi_i}\Sig(\epsilon_i)\ket{\psi_i}$ は,収束した $G^0$ と $W$ から最後に一度だけ評価する.$\Im\Sig$ は $E_F$ でゼロ,絶縁体では「電子のエネルギーが(伝導帯下端)$+E_g$ 以下なら厳密にゼロ」(粒子‐正孔対を励起して崩壊できないため;14.6.3).
  4. $W$ は重み 1 の準粒子から作られている.$\Pi^0=-\ii G^0G^0$ の $G^0$ は $H^0$ のものだから,粒子‐正孔対は重み 1 で入る.14.1.3 の要請 (b) が満たされる.
  5. 密度.Hartree ポテンシャルに使う密度は $G^0$ の密度 $n_{G^0}=\sum_i^{\occ}\abs{\psi_i}^2$(準粒子密度)である.相互作用系の真の密度 $n_G$ とは $\Sig-\Vxc$ に比例する差があり,これは QSGW の内部的な不整合の大きさを測る量である([6] 式(23)).

定理14.1($W\to v$ の極限で QSGW は Hartree–Fock に一致する)

遮蔽を切って $W=v$ とすると,導出14.1 により $\Sig=\Sigma_x$ は $\omega$ に依らない Hermite 演算子になる.このとき $\Re[\Sig(\epsilon_i)]_{ij}=\Re[\Sig(\epsilon_j)]_{ij}=(\Sigma_x)_{ij}$ だから,式 \eqref{eq:14-QSGW} は近似なしに $\Vxc=\sum_{ij}\ket{\psi_i}(\Sigma_x)_{ij}\bra{\psi_j}=\Sigma_x$ を与える.サイクルは $\Veff=\Vext+\VH+\Sigma_x[\{\psi\}]$ の自己無撞着解,すなわち Hartree–Fock の SCF 方程式に一致する.より一般に,$\Sig$ が静的・Hermite ならばどんな $\Sig$ でも QSGW はそれを厳密に再現する.QSGW の「近似」は,$\Sig$ の振動数依存性を $\epsilon_i$ と $\epsilon_j$ での値の平均で代表させる,その一点に集約されている.

補足:COHSEX との違い

静的・Hermite な自己エネルギーの近似として古典的なのが Hedin の COHSEX(Coulomb hole + screened exchange)である: $\Sigma^{\rm SEX}(\rr,\rr')=-\sum_i^{\occ}\psi_i(\rr)\psi_i^*(\rr')\,W(\rr,\rr',\omega=0)$, $\Sigma^{\rm COH}(\rr,\rr')=\tfrac12\delta(\rr-\rr')\big[W(\rr,\rr',0)-v(\rr,\rr')\big]$. これは式 \eqref{eq:14-SigmaGW} で $W$ の振動数依存性を無視(静的遮蔽)した近似で,計算は軽いがギャップを $\sim1\,\mathrm{eV}$ 過大評価することが知られている.QSGW の $\Vxc$ も静的・Hermite だが,$\Sig(\omega)$ の振動数依存性を捨てずに,各状態のエネルギー $\epsilon_i$ で評価した値を使う点が本質的に違う.Bruneval–Vast–Reining(2006 [9])は擬ポテンシャル法で QSGW を実装し,COHSEX や HF と系統的に比較している.

14.4 なぜそれが最良なのか — ノルム汎関数,Landau–Silin 描像,$Z$ 因子相殺

14.4.1 ノルム汎関数の最小化

14.3.2 の導出は「一致させたい」という要請からの構成であった.同じ式が,摂動の大きさを測るノルムを最小化するという変分的な形からも出る.摂動 $\Delta V(\omega)=\VGW(\omega)-\Veff$ の大きさを,$H^0$ の準粒子の上で測る正定値のノルム汎関数を定義する [6]:

$$ \begin{equation} M[\Veff]\equiv\Tr\Big\{\Re[\Delta V(\omega)]\;\rho\;\Re[\Delta V(\omega)]\Big\},\qquad \rho\equiv\delta(\omega-H^0), \label{eq:14-norm} \end{equation} $$

トレースは空間(とスピン)と $\omega$ についてとる.重み $\rho=\delta(\omega-H^0)$ は「$H^0$ の準粒子のエネルギーのところで摂動の大きさを測る」という意味である.

導出14.3:ノルムの最小化が式 \eqref{eq:14-QSGW} を与えること

$\omega$ 積分を先に実行する.$\delta(\omega-H^0)=\sum_j\ket{\psi_j}\delta(\omega-\epsilon_j)\bra{\psi_j}$ だから

$$ M=\int\!\dd\omega\sum_j\delta(\omega-\epsilon_j)\bra{\psi_j}\Re[\Delta V(\omega)]\,\Re[\Delta V(\omega)]\ket{\psi_j} =\sum_j\bra{\psi_j}\Re[\Delta V(\epsilon_j)]^2\ket{\psi_j} =\sum_{i,j}\Big|\bra{\psi_i}\Re[\VGW(\epsilon_j)]-\Veff\ket{\psi_j}\Big|^2 . $$

最後の等号では完全系 $\sum_i\ket{\psi_i}\bra{\psi_i}$ を挟み,$\Re[\Delta V]$ が Hermite であること,$\Veff$ が Hermite なので $\Re[\VGW-\Veff]=\Re\VGW-\Veff$ であることを使った.$\Vext+\VH$ は共通なので,$A(\omega)\equiv\Re[\Sig(\omega)]$,$X\equiv\Vxc$(Hermite,$X_{ji}=X_{ij}^*$)と書けば

$$ M=\sum_{i,j}\abs{A(\epsilon_j)_{ij}-X_{ij}}^2 . $$

添字の組 $(i,j)$ と $(j,i)$ の項をまとめる.$X_{ji}=X_{ij}^*$ と $A(\epsilon_i)_{ji}=A(\epsilon_i)_{ij}^*$ より $\abs{A(\epsilon_i)_{ji}-X_{ji}}^2=\abs{A(\epsilon_i)_{ij}-X_{ij}}^2$ だから,$i\neq j$ の各組について最小化すべきは

$$ \abs{a-x}^2+\abs{b-x}^2,\qquad a\equiv A(\epsilon_j)_{ij},\ b\equiv A(\epsilon_i)_{ij},\ x\equiv X_{ij}\in\mathbb{C}. $$

$x$ について微分($\partial/\partial x^*$)して $-(a-x)-(b-x)=0$,すなわち $x=(a+b)/2$.対角 $i=j$ は $\abs{A(\epsilon_i)_{ii}-X_{ii}}^2$ の最小化で $X_{ii}=A(\epsilon_i)_{ii}$.まとめると

$$ X_{ij}=\frac12\Big\{\Re[\Sig(\epsilon_i)]_{ij}+\Re[\Sig(\epsilon_j)]_{ij}\Big\}, $$

これは式 \eqref{eq:14-QSGW} に他ならない.ただし,$\rho$(すなわち $\{\epsilon_j,\psi_j\}$)と $\VGW$ は $\Veff$ を通じて変わるので,ここで行ったのは「$\rho$ と $\Sig$ を固定した上での,$X$ についての最小化」である.その意味で QSGW の解は $M$ の自己無撞着な停留点であり,厳密な最小化は手に負えないが,近似的な解として \eqref{eq:14-QSGW} が得られる,というのが [5,6] の立場である.

この定式化が教えることは二つある.第一に,QSGW は与えられた $\Vext$ に対して $\Veff$ を決める汎関数として定義できる(DFT が $\Vext\mapsto V^{\rm KS}$ を定めるのと同じ意味で).第二に,摂動 $\Ham-\Ham^0$ には Coulomb 相互作用だけでなく1体の反対項 $\Vext-\Veff$ も含まれており,QSGW はこの反対項が Coulomb 相互作用による準粒子の変化を打ち消すように $\Veff$ を選んでいる.「着衣の準粒子の中心にいる電子の運動が,$\Ham-\Ham^0$ によって変えられない」ように $H^0$ を決めた,というのが物理的な内容である.

14.4.2 Landau–Silin 描像と $Z$ 因子の相殺 — なぜ $G$ ではなく $G^0$ で摂動展開するのか

付録C C.8.4 の理由2で,$Z$ 因子と頂点関数 $\Gamma$ が相殺することを述べた.QSGW の正当化の核心はここにあるので,[6] の付録A に沿ってもう一段精密に述べる.以下,記号的な記法(積分・添字を省略)を使う.

厳密には $\Sig=\ii GW\Gamma$ である(Hedin の第1式,付録C C.8.1).$G$ を準粒子部分と非干渉部分に分ける:

$$ \begin{equation} G=Z\,G^{0}+\bar G . \label{eq:14-ZG} \end{equation} $$

ここで $G^0$ は重み 1 の準粒子 Green 関数($E_F$ 近傍では QSGW の $H^0$ が与えるもの),$Z$ はくりこみ因子,$\bar G$ はプラズモンサテライトなどの非干渉部分である.

(a) $\Sig$ における相殺.$\ii GW\Gamma$ の積分で支配的なのは $W$ の長距離・静的な部分($q\to0$,$\omega\to0$)である.この極限で,絶縁体では Ward 恒等式により

$$ \begin{equation} \Gamma\;\longrightarrow\;1-\frac{\partial\Sig}{\partial\omega}=\frac1Z . \label{eq:14-Ward} \end{equation} $$

したがって $\ii GW\Gamma\simeq\ii(ZG^0)W(1/Z)+\ii\bar GW\Gamma=\ii G^0W+(\bar G\text{ の項})$.$\bar G$ が構造に乏しければ $\ii\bar GW$ は状態に依らないほぼ一定のシフト(化学ポテンシャルの変化程度)しか与えない.結局 $\Sig\simeq\ii G^0W$:重み 1 の準粒子 $G^0$ に裸の頂点,が正しい組合せであり,$\Sig=\ii GW$(着衣の $G$ に裸の頂点)は $Z$ を一回余分に掛けている.

(b) $\Pol$ における相殺.厳密な固有分極は,2粒子既約核 $I$ を使って $\bar\Pi=G_2+G_2IG_2+G_2IG_2IG_2+\cdots$($G_2=-\ii GG$)と書ける(電子‐正孔の梯子).$G_2$ の中間状態の粒子‐正孔対は $Z\times Z$ の重みで入るが,梯子の両端に現れる因子 $1/(1-G_2I)$ が頂点関数の役割を果たし,$q\to0$,$\omega\to0$ で $1/Z$ ずつを供給する.正味の重みは $\tfrac1Z\times Z^2\times\tfrac1Z=1$——粒子‐正孔対は重み 1 で $\Pol$ に入る.これは $\Pol\simeq\Pi^0=-\ii G^0G^0$($G^0$ は重み 1 の準粒子)が良い近似であることを意味する.Bechstedt らは最低次でこの相殺を数値的に確かめている [12].

完全自己無撞着 GW は,$\Gamma=1$ のまま $G$ を着せ替えるので,(a) でも (b) でも $Z$ 因子が相殺されずに残る.$\Sig=\delta E_{xc}[G]/\delta G$ という Luttinger–Ward の形は厳密だが,$G$ による展開は各項の間に $Z$ を打ち消すための大きな相殺を含み,極めて非効率である.一方,$G^0$ による展開($G_0W_0$ や QSGW)は,準粒子を正しい重み 1 で含む——これが Landau–Silin の準粒子描像が最初から期待することである.問題は「$G$ からどうやって $G^0$ を取り出すか」であり,QSGW はその(ほぼ)最適な処方を与える:$G\to G^0\to\Sig\to G\to G^0\to\cdots$.

金属では式 \eqref{eq:14-Ward} の右辺に Fermi 面の存在による追加項が付き $\Gamma>1/Z$ となるが,議論の骨格は変わらない.なお同じ理由で,Bethe–Salpeter 方程式(梯子の和)も $G$ ではなく $G^0$ で組むべきである.

14.4.3 何が「定義」で何が「近似」か — DFT,保存則,全エネルギー

QSGW の立ち位置を,他の理論と比べて整理しておく.

表14.3 独立粒子ハミルトニアン $H^0$ を決める諸理論の比較
$\Vxc$ の性質$H^0$ の固有値の意味出発点依存性決め方の原理
Kohn–Sham(LDA/GGA)局所・静的基底状態密度を再現する補助系の固有値.準粒子エネルギーではないなし(自己無撞着)全エネルギー汎関数の最小化
Hartree–Fock非局所・静的($\Sigma_x$)Koopmans の意味の除去・付加エネルギー(遮蔽なし)なし全エネルギーの最小化=1次補正の消去
one-shot GW—(LDA の $H^0$ に $\Sig-\Vxc_{\rm LDA}$ を1次摂動)$E_i$ は GW の準粒子エネルギー($Z$ の扱いに曖昧さ)強い—
完全自己無撞着 GW($H^0$ を使わない)$G$ の極なしLuttinger–Ward 汎関数(保存近似)
QSGW非局所・静的・HermiteGW の準粒子エネルギーそのものなし摂動のノルム最小化=裸・着衣の準粒子の一致

14.5 結果 — 何がどれだけ合い,何が残るか

14.5.1 バンドギャップ

表14.4 に,小谷らの全電子計算 [4,6] による最小ギャップを,LDA・one-shot GW・固有値のみの自己無撞着化(e-only:固有値は更新するが LDA 軌道は固定)・QSGW(mode A)で比べる.実験値には,計算に含まれていないスピン軌道相互作用と零点振動による電子‐格子くりこみの補正を加えた値(expt+corr)も示す.

表14.4 最小バンドギャップ(eV).one-shot は式 \eqref{eq:14-oneshot}($Z$ つき),e-only は固有値のみ自己無撞着,QSGW は mode A($6\times6\times6$ $k$ 点;$8\times8\times8$ では $0.02$〜$0.04\,\mathrm{eV}$ 小さい).ZnO・Cu$_2$O は $\Gamma$ 点の直接ギャップ.MnO・NiO は [4] の値(QSGW の原型,反強磁性II型).expt+corr はスピン軌道と零点振動の補正込み.出典:[6] Tables II–V,[4] Table II
物質LDAone-shote-onlyQSGW実験expt+corrQSGW/expt+corr
Si0.460.981.141.251.171.241.01
C(ダイヤモンド)4.095.515.945.975.505.871.02
SiC(3C)1.312.162.512.532.39—1.06
GaAs0.341.441.691.971.521.691.17
ZnS1.863.233.834.063.833.941.03
ZnSe1.052.312.793.112.823.001.04
ZnO(ウルツ鉱,$\Gamma$)0.712.463.643.873.443.601.08
Cu$_2$O($\Gamma$)0.531.511.982.362.172.201.07
MnO0.78—(定性的に誤り)3.53.9±0.4—0.90
NiO0.45≈1(定性的に誤り)4.84.3—1.12
図14.3 計算されたバンドギャップと実験値(表14.4).点にカーソルを合わせると数値が出る.LDA(三角)は全物質で大きく過小,one-shot GW(四角)は改善するが依然として対角線の下,QSGW(丸)は対角線のわずかに上に系統的に並ぶ.MnO・NiO の one-shot 値は [4,6] に表として与えられていないので省いた(NiO では $\sim1\,\mathrm{eV}$ [6] の序論).[5] Fig. 1 の再構成.

図14.3 から読み取れることは三つある.(1)LDA は全物質で大きく過小,one-shot GW は改善するが依然として過小(14.1.2 の病1).(2)QSGW は全物質で対角線のわずかに上,すなわち系統的にわずかに過大である.誤差は $\Gamma$–$\Gamma$ 遷移で $\sim0.25\,\mathrm{eV}$,$\Gamma$–$X$ 遷移で $\sim0.1\,\mathrm{eV}$ 程度,比にして $1.0$〜$1.2$ である([5,6]).(3)誤差の符号が揃っている——これは重要で,原因が一つの物理(RPA の $W$ における電子‐正孔相互作用の欠如,14.5.3)に帰着することを示唆する.

e-only と QSGW の差は,LDA 軌道がどれだけ悪いかの指標になる.$sp$ 半導体(Si,C,SiC)では差は $0.1\,\mathrm{eV}$ 以下で LDA 軌道はほぼ正しい.Cu$_2$O では $0.4\,\mathrm{eV}$ の差があり,Cu $3d$ と O $2p$ の混成が LDA で不正確なことを反映する.MnO・NiO では e-only は定性的に誤る:ギャップが小さすぎるだけでなく伝導帯の最小点の位置が違い,磁気モーメントは(軌道が変わらないので)LDA の過小評価のまま動かない.「固有値だけ直す」では足りず,軌道を直すために $\Vxc$ の非対角要素が要る,というのが QSGW の主張の核心である.

14.5.2 $d$ 準位,バンド幅,磁気モーメント

ギャップ以外の量も系統的に改善する.

表14.5 ギャップ以外の諸量.エネルギーは eV,モーメントは $\mu_B$.出典:[5] Table I・Fig. 2,[6] Tables III–IV,[4] Table II
量LDAone-shotQSGW実験
ZnS の Zn $3d$ 準位($\Gamma$,価電子帯上端から)$-6.4,\,-6.0$$-7.3,\,-6.9$$-8.3,\,-8.0$$-8.7$
GaAs の Ga $3d$ 準位$-14.9$$-16.8$$-18.1$$-18.8$
Na の占有バンド幅(LDA 比)1—$15\%$ 狭い$\sim15\%$ 狭い
Fe の $d$ バンド幅5.2—4.64.6
Ni の $d$ バンド幅4.4—4.04.0
Ni の交換分裂0.6—0.50.3
磁気モーメント Fe / Ni2.2 / 0.6—2.2 / 0.72.2 / 0.6
磁気モーメント MnO / NiO4.5 / 1.3—4.8 / 1.74.6 / 1.9
GaAs の伝導帯有効質量 $m_c/m_0$([5] の計算条件)0.0200.0590.0770.065
GaAs の $\epsilon_\infty$([5])——8.410.8

14.5.3 系統誤差の原因 — RPA の $W$ には電子‐正孔相互作用がない

QSGW の誤差は小さいだけでなく向きが揃っている.ギャップは過大,$\epsilon_\infty$ は過小,有効質量は過大.三つは一つの鎖でつながる:

RPA の $\Pol\simeq\Pi^0$ には,励起された電子と正孔の間の引力(梯子図形,付録C 図C.19 右・C.8.4 理由3)が入っていない → 粒子‐正孔対の励起エネルギーが高すぎ,$\epsilon_\infty$ が $15$〜$25\%$ 小さい(表14.6)→ $W=v/\epsilon$ の遮蔽が弱すぎる → 交換項 $\ii G^0W$ がギャップを開きすぎる → $\kk\cdot\pp$ 摂動論により $m_c\propto E_g$ だから有効質量も比例して過大(GaAs:$E_g$ の比 $1.16$,$m_c$ の比 $1.18$ [5]).

表14.6 光学誘電率 $\epsilon_\infty$.QSGW の $H^0$ から RPA で計算(局所場補正 LFC の有無).出典:[6] Table VI,[5]
ZnO($\kk\parallel c$)Cu$_2$OMnONiOGaAs
QSGW(LFC なし / あり)3.2 / 3.05.9 / 5.53.9 / 3.84.4 / 4.38.4
実験3.75–4.06.464.955.43–5.710.8

この診断は,$\Im\epsilon(\omega)$ のスペクトル形でも裏付けられる.ZnO や Cu$_2$O の QSGW の $\Im\epsilon$ は実験よりピークが高エネルギー側にあり,Bethe–Salpeter 方程式で電子‐正孔相互作用(励起子効果)を入れるとピークが低エネルギー側に動いて実験に近づくことが,Arnaud–Alouani や Bruneval らによって示されている([6] Sec. III D).したがって次の一手は明確である:$W$ を作る $\Pol$ に梯子図形を入れ,その $W$ で QSGW のサイクルを回す.これは 14.5.4 で述べるように後年実現された.

なお実験と比べる際には,計算に含まれない二つの効果を補正する必要がある.スピン軌道相互作用(GaAs で $0.11\,\mathrm{eV}$)と,原子核の零点振動による電子‐格子くりこみ(ダイヤモンドで $0.37\,\mathrm{eV}$,AlN で $0.2\,\mathrm{eV}$,重い元素の化合物では $\lesssim0.1\,\mathrm{eV}$)である.後者は軽い元素ほど大きく,表14.4 の expt+corr にはこれが含まれている.

14.5.4 その後の発展

14.6 実装の要点 — 全電子・混合基底・$\omega$ 積分・$q\to0$

QSGW の式 \eqref{eq:14-QSGW} は簡潔だが,$\Sig$ の非対角要素まで全電子で精度よく計算するのは容易でない.小谷らの実装 [3,6,7] の要点を,本書の道具(第4・5章)との対応を意識して述べる.

14.6.1 なぜ全電子か,混合基底とは何か

内殻電子は $\Sig$ に無視できない寄与をする.擬ポテンシャルで内殻を消すと,価電子と内殻の交換項が落ち,Ga $3d$ のような半内殻の扱いも不正確になる.[3] は全電子の全ポテンシャル LMTO(FP-LMTO)を土台に,内殻と価電子を同じ足場で扱う GW を初めて実装し,「擬ポテンシャル GW がギャップで実験と合って見えたのは誤差の相殺だった」ことを示した.

$W$ や $\Pol$ は2点関数 $f(\rr,\rr')$ であり,これを展開するには固有関数の積 $\psi_i^*(\rr)\psi_j(\rr)$ を張れる基底が要る.小谷らの混合基底 $\{M_I^\kk(\rr)\}$ は,マフィンティン(MT)球の内側では Aryasetiawan の積基底(動径関数の積 $\varphi_{l}\varphi_{l'}$ から作り,線形従属を除いたもの;遷移金属原子あたり $100$〜$150$ 関数),格子間領域では MT 球の寄与を射影除去した平面波(IPW)からなる.局在した $d$・$f$ 電子や内殻の積も効率よく張れる.Coulomb 相互作用は双対基底 $\tilde M$ を使って $v=\sum_{\kk IJ}\ket{\tilde M_I^\kk}v_{IJ}(\kk)\bra{\tilde M_J^\kk}$ と展開され,$W$,$\Pol$ も同様である.

14.6.2 自己エネルギーの行列要素

導出14.1 の交換項は,混合基底では($i=(\qq,n)$,$\sum_\kk^{\rm BZ}$ は Brillouin 域の和)

$$ \begin{equation} \bra{\psi_{\qq n}}\Sigma_x\ket{\psi_{\qq m}}=-\sum_{\kk}^{\rm BZ}\sum_{n'}^{\occ}\sum_{IJ} \braket{\psi_{\qq n}|\psi_{\qq-\kk\,n'}\tilde M_I^\kk}\,v_{IJ}(\kk)\,\braket{\tilde M_J^\kk\psi_{\qq-\kk\,n'}|\psi_{\qq m}} \label{eq:14-Sigx} \end{equation} $$

となる([6] 式(31)).分極 \eqref{eq:14-Pi0} は(時間反転対称性を仮定して)

$$ \begin{equation} \Pi^0_{IJ}(\qq,\omega)=\sum_{\kk}^{\rm BZ}\sum_{n}^{\occ}\sum_{n'}^{\unocc} \braket{\tilde M_I^\qq\psi_{\kk n}|\psi_{\qq+\kk\,n'}}\braket{\psi_{\qq+\kk\,n'}|\psi_{\kk n}\tilde M_J^\qq} \left[\frac{1}{\omega-\epsilon_{\qq+\kk n'}+\epsilon_{\kk n}+\ii\delta}-\frac{1}{\omega+\epsilon_{\qq+\kk n'}-\epsilon_{\kk n}-\ii\delta}\right], \label{eq:14-PiIJ} \end{equation} $$

相関部分は $W^c\equiv W-v$ を使って

$$ \begin{equation} \bra{\psi_{\qq n}}\Sigma_c(\omega)\ket{\psi_{\qq m}}=\sum_{\kk}^{\rm BZ}\sum_{n'}^{\rm all}\sum_{IJ} \braket{\psi_{\qq n}|\psi_{\qq-\kk\,n'}\tilde M_I^\kk}\braket{\tilde M_J^\kk\psi_{\qq-\kk\,n'}|\psi_{\qq m}} \int_{-\infty}^{\infty}\frac{\ii\,\dd\omega'}{2\pi}\,\frac{W^c_{IJ}(\kk,\omega')}{\omega-\omega'-\epsilon_{\qq-\kk\,n'}\pm\ii\delta} \label{eq:14-Sigc} \end{equation} $$

($-\ii\delta$ は占有,$+\ii\delta$ は非占有;[6] 式(34)).必要な入力は,積の行列要素 $\braket{\psi|\psi\tilde M}$,固有値 $\epsilon_{\kk n}$,Coulomb 行列 $v_{IJ}(\kk)$,重なり行列だけである.QSGW では $n\neq m$ の非対角要素まで要るので,標準の GW より $3$〜$10$ 倍の手間がかかる.

14.6.3 $\omega'$ 積分 — 第5章の経路変形がそのまま使われる

式 \eqref{eq:14-Sigc} の $\omega'$ 積分は,実軸上では $W^c(\omega')$ がプラズモンや粒子‐正孔対に対応する鋭い構造をもつため扱いにくい.そこで積分路を虚軸へ回す(第5章 5.4 節の積分路の変形).被積分関数の極の配置を図14.4 に示す.

回転で掃く領域(第1象限) 回転で掃く領域(第3象限) Re ω' Im ω'(変形後の積分路) 元の積分路(実軸) ×××× ×××× Wc(ω') の極:Ωn − iδ(第4象限) Wc(ω') の極:−Ωn + iδ(第2象限) 0 ω − EF 0 < ω − εj < ω − EF の非占有極だけが 回転で横切られ,留数 Wc(ω − εj) として残る G⁰(ω−ω') の極:非占有 ω − εj + iδ(上半面) G⁰(ω−ω') の極:占有 ω − εi − iδ(下半面) ×Wc(ω') の極(±Ωn ∓ iδ) 図は電子状態 ω > EF の場合. 正孔 ω < EF では左右が入れ替わる
図14.4 式 \eqref{eq:14-Sigc} の $\omega'$ 積分路の変形([6] Fig. 1 の再構成).$W^c(\omega')$ の極は第2・第4象限,$G^0(\omega-\omega')$ の極は実軸のすぐ上(非占有)と下(占有)にある.実軸の積分路を反時計回りに $90°$ 回して虚軸に乗せると,第1・第3象限が掃かれる.そこにある $G^0$ の極(電子なら $E_F<\epsilon_j<\omega$ の非占有状態)だけが留数として残り,$W^c$ の極は横切らない.

結果は「虚軸上の積分」+「実軸上の有限区間の極の寄与」に分かれる([6] 式(56)–(58)).$\omega_\epsilon\equiv\omega-\epsilon_{\qq-\kk n'}$ と書き,添字を省くと

$$ \begin{equation} \begin{aligned} X&\equiv\int\frac{\ii\,\dd\omega'}{2\pi}\frac{W^c(\omega')}{\omega_\epsilon-\omega'\pm\ii\delta}=X_{\rm img}+X_{\rm real},\\ X_{\rm img}&=-\frac1\pi\int_0^\infty\dd\omega'\,W^S(\omega')\frac{\omega_\epsilon}{\omega'^2+\omega_\epsilon^2} +\frac1\pi\int_0^\infty\dd\omega'\,W^A(\omega')\frac{\omega'}{\omega'^2+\omega_\epsilon^2},\\ X_{\rm real}&=\begin{cases}\ \ W^c(\omega_\epsilon)&(\omega-E_F>\omega_\epsilon>0),\\ -W^c(\omega_\epsilon)&(0>\omega_\epsilon>\omega-E_F),\\ \ \ 0&(\text{それ以外}),\end{cases} \end{aligned} \label{eq:14-contour} \end{equation} $$

ここで $W^S(\omega')=[W^c(\ii\omega')+W^c(-\ii\omega')]/2$,$W^A(\omega')=[W^c(\ii\omega')-W^c(-\ii\omega')]/2\ii$(時間反転対称なら $W^A=0$).虚軸上の $W^c(\ii\omega')$ は滑らかな実関数で数値積分しやすい.物理的に大切なのは $X_{\rm real}$ で,準粒子の寿命($\Sig$ の反 Hermite 部分)はすべて $X_{\rm real}$ の虚部から来る.$\omega=E_F$ では実軸上の区間が消えるので寿命は無限大,絶縁体では電子のエネルギーが(伝導帯下端)$+E_g$ を超えるまで $\Im W^c$ の寄与がなく,寿命は厳密に無限大——粒子‐正孔対を作って崩壊する閾値(衝突電離の閾値)が,積分路の図からそのまま読める.

もう一つ,第4章の道具も使われている.分極 \eqref{eq:14-PiIJ} の Brillouin 域積分は四面体法で行うが,小谷らはまず $\Im\Pi^0$ をエネルギー窓ごとのヒストグラムとして計算し,$\Re\Pi^0$ は Kramers–Kronig 関係(Hilbert 変換)で求める.$\Im\Pi^0$ は $\delta(\omega-(\epsilon_{n'}-\epsilon_n))$ の四面体内の断面積として解析的に求まるので,広い $\omega$ 範囲で $\Pi^0$ が要る QSGW では計算時間を大幅に節約できる.因果律が計算の道具になる例である.

14.6.4 $q\to0$ の発散とその他の技術

14.7 線形応答理論から見た QSGW — 本書の総まとめとして

最後に,本書全体の視点から QSGW を眺め直す.QSGW のサイクル(図14.2)の中で,本書の各章がどこに使われているかを辿ると,線形応答理論が第一原理計算の中心にあることが見える.

表14.7 QSGW のサイクルと本書の対応
サイクルの段階使われている内容本書の章
$G^0$ の構成 \eqref{eq:14-G0}時間順序積 Green 関数,極の位置と粒子・正孔,Lehmann 表示第6・8章,付録C C.1
$\Pi^0$ の計算 \eqref{eq:14-Pi0}一般のバンドに対する Lindhard 関数;$\Im\Pi^0\to\Re\Pi^0$ の Kramers–Kronig 変換第10章,第4章
$W=v/\epsilon$ の構成 \eqref{eq:14-W}自己無撞着な遮蔽,RPA,誘電関数;局所場補正第9章
$\Sig=\ii G^0W$ の $\omega'$ 積分 \eqref{eq:14-contour}留数定理,Jordan の補題,積分路の変形第5章
$\Sig$ の実部と虚部くりこみと寿命,$Z$ 因子,Dyson 方程式第13章,付録C C.1・C.6
$\Gamma=1$ の妥当性Hedin の方程式,頂点補正,$Z$–$\Gamma$ 相殺,Ward 恒等式付録C C.8
系統誤差の診断$\epsilon_\infty$,$\Im\epsilon(\omega)$,励起子効果,$f$ 和則第8・11・12章

自己エネルギーの相関部分 $\Sigma_c=\ii G^0W^c$ の物理的な意味は,第9章の言葉でこう言える.電子を1個付け加えると,その電荷に周囲の電子気体が線形応答し($\chi^0$,$\epsilon$),分極雲ができる.分極雲が作るポテンシャル $W^c=W-v$ が,元の電子自身に跳ね返る.その反作用のエネルギーが $\Sigma_c$ である.静的に近似すれば,これは付録C で触れた COHSEX の「Coulomb 孔」$\tfrac12[W(\rr,\rr,0)-v]$——自分の周りに掘った正孔との相互作用——になる.線形応答で計算した反作用だから,応答が線形でなくなる強相関の極限では GW は破綻するが,多くの半導体・金属・酸化物では,14.5 節で見たように驚くほど良い.

そして QSGW の系統誤差は,線形応答理論の言葉で正確に診断できる.RPA の $\chi^0$ は独立な粒子‐正孔対の応答であり,対の中の電子と正孔の引力(第8章のスペクトル表示で言えば,励起エネルギー $E_n-E_0$ が独立粒子の差 $\epsilon_j-\epsilon_i$ より下がる効果)を含まない.その分 $\epsilon_\infty$ が小さく,$W$ が強く,ギャップが開きすぎる.$f$ 和則(第8章)は RPA でも保たれるが,非局所な $\Veff$ から作った $\Pi^0$ では厳密には破れる(「はさみ演算子」と同じ事情)——これも QSGW の $\epsilon(\omega)$ を評価する際の注意点である.

QSGW とは,線形応答理論(第9〜12章)で $W$ を作り,Dyson 方程式(第13章・付録C)で $\Sig$ を作り,Landau の準粒子描像で $H^0$ に戻す,という一つの自己無撞着ループである.本書で学んだ道具は,このループのすべての段階に現れる.

14.8 まとめと演習

この章のまとめ

  1. one-shot GW($G^{\rm LDA}W^{\rm LDA}$)は全電子で見るとギャップを系統的に過小評価し,出発点に依存し,LDA 軌道が悪い系では定性的に誤る.完全自己無撞着 GW は $Z\times Z$ で抑制された $\Pol$ のために $W$ を過小遮蔽し,バンド幅を広げすぎる.
  2. QSGW は独立粒子ハミルトニアン $H^0=-\nabla^2/2m+\Veff$(静的・Hermite・非局所)を,裸の準粒子 $\{\epsilon_i,\psi_i\}$ と着衣の準粒子 $\{E_i,\Phi_i\}$ が一致するように自己無撞着に決める.基本方程式は式 \eqref{eq:14-QSGW}:$\Vxc=\tfrac12\sum_{ij}\ket{\psi_i}\{\Re[\Sig(\epsilon_i)]_{ij}+\Re[\Sig(\epsilon_j)]_{ij}\}\bra{\psi_j}$.
  3. 収束すると,$H^0$ のバンドがそのまま GW の準粒子バンドになり,1次補正は消え,$Z$ の問題は消え,$W$ は重み 1 の準粒子から作られる.$W\to v$ で厳密に Hartree–Fock に戻る.
  4. 正当化は二つ:摂動のノルム $M[\Veff]$ の最小化(式 \eqref{eq:14-norm},導出14.3)と,Ward 恒等式 $\Gamma\to1/Z$ による $Z$ 因子の相殺($\Sig\simeq\ii G^0W$,$\Pol\simeq-\ii G^0G^0$ が正しい組合せ).
  5. 結果:$sp$ 半導体から MnO・NiO まで,ギャップ・$d$ 準位・バンド幅・磁気モーメントが系統的に改善.残る誤差はギャップ $+10$〜$20\%$,$\epsilon_\infty$ $-20\%$ で,向きが揃っている.原因は RPA の $W$ に電子‐正孔相互作用がないこと.梯子図形を $W$ に入れた QSG$\hat W$ で解消される.
  6. 実装では,混合基底による2点関数の展開,$\omega'$ 積分の虚軸への経路変形(第5章),Kramers–Kronig による $\Re\Pi^0$(第4章),offset-$\Gamma$ 法が鍵になる.

演習14.1 Lindhard 関数との対応

(1) 式 \eqref{eq:14-Pi0} で $\psi_i=V^{-1/2}\ee^{\ii\kk\cdot\rr}$,$\epsilon_i=\epsilon_\kk$ とおき,$\Pi^0(\rr,\rr',\omega)$ が $\rr-\rr'$ だけの関数になることを示し,Fourier 変換して第10章の $\chi^0(\qq,\omega)=\frac1V\sum_{\kk\sigma}\frac{n_\kk-n_{\kk+\qq}}{\omega+\epsilon_\kk-\epsilon_{\kk+\qq}+\ii\delta}$ を再現せよ.(2) 式 \eqref{eq:14-W} を $\qq$ 空間で書き,$W(\qq,\omega)=v(q)/\epsilon(\qq,\omega)$,$\epsilon=1-v\chi^0$ が第9章の式と一致することを確かめよ.

ヒント:(1) 第1項が $n_\kk(1-n_{\kk+\qq})$,第2項が $n_{\kk+\qq}(1-n_\kk)$ の寄与を与え,和をとると $n_\kk-n_{\kk+\qq}$ になる(第10章 導出の逆をたどる).

演習14.2 基本方程式の二通りの導出

(1) 導出14.2 を自分で再現し,mode A の対角要素と mode B(式 \eqref{eq:14-modeB})の対角要素が一致することを確かめよ.(2) 導出14.3 で,$\Vxc$ の Hermite 性を課さずに $M$ を最小化すると,非 Hermite な $R$(式 \eqref{eq:14-R})が出ることを示せ.(3) ノルムの重みを $\rho=\delta(\omega-E_F)$(すべて Fermi エネルギーで評価)に変えると,どんな $\Vxc$ が出るか.mode B との関係を論ぜよ.

演習14.3 Hartree–Fock 極限と静的自己エネルギー

(1) 定理14.1 を,$\Sig(\omega)$ が任意の静的 Hermite 演算子 $S$ の場合に一般化せよ:QSGW の不動点で $\Vxc=S$ となることを示せ.(2) 逆に,$\Sig(\omega)=S_0+(\omega-\mu)S_1$($S_0,S_1$ は Hermite,$\mu$ は定数)のとき,式 \eqref{eq:14-QSGW} の非対角要素が $\tfrac12(\epsilon_i+\epsilon_j-2\mu)(S_1)_{ij}$ になることを示し,$\Sig$ の振動数依存性が $\Vxc$ にどう取り込まれるかを説明せよ.

演習14.4 $Z$ 因子の効果の見積もり

one-shot GW で $\Sig(\omega)\simeq\Sigma_0+(\omega-\epsilon_i)\Sigma_1$($\Sigma_1=-a$,$a>0$)と線形化する.(1) 式 \eqref{eq:14-oneshot} の $Z_i=1/(1+a)$ を確かめよ.(2) $a=0.3$($Z=0.77$),$\Delta\equiv\bra{\psi_i}\Sigma_0-\Vxc_{\rm LDA}\ket{\psi_i}=1.0\,\mathrm{eV}$ のとき,$Z$ を掛けた補正と掛けない補正の差を求めよ.(3) 表14.4 の Si(one-shot $0.98$,$Z=1$ で $1.13\,\mathrm{eV}$)と GaAs($1.44$,$1.75\,\mathrm{eV}$)について,伝導帯と価電子帯の補正の差から実効的な $Z$ を逆算せよ.(4) QSGW の不動点ではなぜこの問題が消えるのか,14.3.4 の項目1を使って一文で述べよ.

演習14.5 ギャップ・有効質量・誘電率の鎖

(1) 2バンドの $\kk\cdot\pp$ 模型では $m_0/m_c\simeq1+E_P/E_g$($E_P$ は運動量行列要素で決まるエネルギー,GaAs で $\sim25\,\mathrm{eV}$).$E_g$ が $16\%$ 過大なとき $m_c$ が何 $\%$ 過大になるか見積もり,表14.5 の GaAs の値と比べよ.(2) Penn 模型 $\epsilon_\infty-1\simeq(\omega_p/E_g^{\rm avg})^2$ を使い,$\epsilon_\infty$ が $20\%$ 小さいことが平均ギャップの何 $\%$ の過大評価に相当するか求めよ.(3) 長波長の $W(q\to0,0)=v(q)/\epsilon_\infty$ が $20\%$ 強すぎるとき,交換項によるギャップの開き($\propto W$)の過大評価の向きと大きさの目安を論ぜよ.

演習14.6 積分路の変形

(1) 図14.4 に従い,式 \eqref{eq:14-contour} の $X_{\rm img}$ を導け:実軸の積分路を虚軸に回し,$\omega'=\ii u$ と置換して $W^c(\ii u)$ を $W^S$,$W^A$ に分けよ.(2) 回転の途中で横切る極が「$0<\omega_\epsilon<\omega-E_F$ の非占有状態」だけであることを,各極の位置($G^0$:$\omega-\epsilon_j+\ii\delta$(非占有),$\omega-\epsilon_i-\ii\delta$(占有);$W^c$:$\pm(\Omega_n-\ii\delta)$)から確かめよ.(3) 絶縁体で,伝導帯下端から測った電子のエネルギーが $E_g$ 未満なら $\Im\bra{\psi_i}\Sig(\epsilon_i)\ket{\psi_i}=0$ となる理由を,$X_{\rm real}$ と $\Im W^c(\omega')$ がゼロでない $\omega'$ の範囲から説明せよ.

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